「受験相談」報道について考えてみる③

8月20日に、関大一高の「受験相談」の記事が掲載されました。

 

その記事は複数の記者の署名記事でしたが、その翌日、同じ「記者チーム」によって、新たな記事が書かれています。

 

<首都圏の私立高5校>模試の結果で合格確約

 

 

全国展開する大手学習塾が、塾内で実施した模試の成績によって、私立高校から合格の「確約」をもらっていたという記事です。

しかも、その塾内模試を生徒に受けさせる前に、出題される問題を生徒に知らせていたという内容です。

 

 

どうやら、「話」は関大一高だけでは終わらないようです。

 

 

学習塾と私立高校の「癒着」に踏み込んで、「不正を暴こう」という、報道機関の「動き」があり、そのうえで、「火付け」を行って、報道の「波」を作ろうとする意図があったのではないかと思います。

「キャンペーン」、といってよいのかわかりませんが、ある種の「プロジェクト」として一連の流れが仕込まれています。

 

 

上掲の新聞記事では、問題の学習塾名を公表していません。

報道機関にもいろいろなしがらみや思惑、制約があり、思うように記事を書けないことがありそうです。

 

 

記事によれば、件の学習塾は関東と東海に展開しているようです。

すると、「名古屋」あたりが拠点となる塾のようですが、その塾と東京と埼玉の私立高校との間で「約束」があったということなので、首都圏の教室で、記事に書かれているような動きがあったのでしょう。なるほど。

 

ところで、昨年、私はこのブログに、上の新聞記事と関連のありそうな内容を書いています。

あわせて読んでいただくと見えてくることがあるかもしれません。

 

塾の「併願優遇」?

 

 

 

さて、今、ここで焦点となっている「受験相談」の報道ですが、以下のように展開しています。

 

 

1.関大一高の「受験相談」が発覚

<大阪・関大一高>入試前に大半「合格」 中学側と調整(前々回のブログの記事)

 

 

2.文部科学大臣が記者会見で「不透明な入試」についてコメント

文科相:関大一高の選抜、不適切と認識

 

 

3.過去に、首都圏の私立高校が塾に合格の「確約」を出していた

<首都圏の私立高5校>模試の結果で合格確約(上掲の記事)

 

 

4.関西でも私立高校と塾の間で「確約」があったことがわかった

<近畿・一部私立高>塾相談会で合格確約 入試2カ月前

 

 

 

これらは、すべて同じ新聞に掲載された記事です。

下村文部科学大臣の記者会見をあつかった「2」以外は、すべて同じメンバーの「記者チーム」による記事です。

こうしてみると、一連の報道の「流れ」が周到に用意されてあったことが分かります。

 

 

「1」の関大一高の記事が「導入」となって、論難の矛先は、徐々に「本題」に近づいていきます。

以降の記事では、特定の塾名や学校名は伏せられたままです。

世間の耳目をひきつけるには、具体的な「対象」が必要です。それゆえに、「先鋒」の記事にはインパクトが求められたのかもしれません。

 

「2」の記者会見は、「1」の記事の翌日に開かれています。

これは閣議後の定例会見ですが、ここで教育行政のトップからコメントをとって、後の「展開」に組み込めるように、最初の記事を出すタイミングを8月20日にしたのかもしれません。

同じ新聞社の記者が質問をしていましたが、あらかじめ質問内容を知らせていたようです。大臣は、ペーパーを読んで答えていました。

 

「3」の記事は、昨年の報道を「蒸し返す」ものですが、合格の「確約」を得るために、塾側が模試の「予習」を行っていたという新しい事実も明るみになっています。

この記事は、「4」の記事を引き出すために据えられたのかもしれません。

 

「4」の記事の舞台は再び「大阪」です。

今年の入試で、大阪の私立高校と塾との間で「談合」があったことを取材しています。

 

 

実は、関大一高の記事が出た8月20日には、別のニュースも報じられています。

大阪府の府立高校入試で、「全国学力テスト」の結果を高校入試に反映させることが、本年度に限り認められることになったのです。

この件で、かねてから大阪府と文科省は「対立状態」になっていましたが、いったん、混乱は回避される見通しとなりました。

 

これが偶然なのか必然なのかはわかりませんが、もしかすると、府立高校の入試制度改革と一連の報道は、裏でつながっているのかもしれません。

 

 

 

「2」の記事の元になった、下村文部科学大臣の記者会見の該当部分をテキストに起こしてみました。

 

(後ろに要点をまとめておきましたので、読むのが面倒であれば、読み飛ばしてください。)

 

 

下村文部科学大臣の発言:

 

大坂の関西大学第一高等学校、今春の入試で、選抜試験の一ヶ月前に、受験生本人たちに知らせず、複数の中学校と受験相談を行い、中学校での成績に基づき、大半の合格者を事実上内定していたため、選抜試験で高い点数を取ったのに、不合格とされた受験生がいたとの報道は承知をしております。

 

当該学校を所管する大阪府によると、報道は概ね事実とのことであり、文科省としては、入学者選抜は、私立学校を含め、入学者選抜要項に示す内容に沿って行われるべきであり、例えば、中学校の成績を重視して入学を許可する方針であれば、一般入試とは別枠で推薦入試を実施することを含め、その方針を明確に反映した選抜方法を対外的に明示することが適切であると考えます。

 

また中学校側も特に、個別の生徒の進路について高校と相談する場合は、保護者や生徒に対して適切な情報提供を行うことが必要であると認識をしております。

 

全国の学校にあっては、保護者や地域の信頼を得られるよう、今後とも入学者選抜の公正・公平な実施に向けた取り組みを進めていただきたいと思います。

 

本来は、高等学校への入学は校長が許可するものであり、また、特に私立高校の入学者選抜については、自主的・主体的な改善が図られるべきものであります。

 

が、改めて文部科学省として、来月、9月30日に行う全国の都道府県の担当者を集めた会議の場で、ひとつは高等学校において、選抜要項における各学校の選抜方針を明確に反映した選抜方法を明示すること、ふたつ目に、中学においては、生徒や保護者に向けた適切な情報提供など、適切な選抜の実施に向けた取り組みを促すことを、この会議の場で文部科学省としても提起していくことによって、徹底を図ってまいりたいと思います。

 

 

要点:

 

・関大一高の報道は知っとるよ

・関大一高は、「推薦」などの別枠の入試を用意するべきやったね

・入試の方針と合格の基準はわかりやすく示さんとあかんよ

・中学校も、高校との「入試相談」の結果を保護者・生徒に伝えんとダメやろ

・まあ、でも、私立高校の入試のやりかたは、本来高校が自分で決めるべきものやからね

(せやから、ホンマはワイらがとやかく言うことでもないんやで)

・来月全国の「担当者」が集まるから、そこで注意しとくんで、それでよろしく

 

あえて「関西弁」でまとめてみました。

 

 

 

下村大臣の会見では、件の新聞社の記者が「3」の記事の内容についても質問していました。

首都圏の塾で、ある塾の塾内テストの結果をもとに、複数の私立高校が合格の「確約」を出していた問題ですね。

これも、質問内容をあらかじめ伝達してあったようで、大臣はペーパーを読んで答えていました。

 

 

下村文部科学大臣の発言:

 

 

ご指摘の点ですが、文部科学省では、平成五年の通知により、高等学校の入学者選抜は公教育としてふさわしい適切な資料に基づいて行われるべきものであり、業者テストの結果を資料として用いた入学者選抜が行われることのないよう要請をしてきております。

 

昨年、同様の指摘があった際、報道された塾および東京都・埼玉県に確認したところ、域内において確約を行っているような事案はないと、認識しているとのことでありました。

 

また、今後とも、通知の趣旨をふまえ、都道府県等に対し、公教育にふさわしい適切な資料に基づいた入学者選抜が実施されるよう要請してまいりたいと思います。

 

 

 

要点:

・文科省は20年前から、塾のテストを使って合格を出してはダメだと言っている

・去年ニュースになったので、塾のテストで合格を出した高校があるか聞いてみた

・東京と埼玉の担当者は、「ないと認識している」と答えた

 

 

 

俗にいう「つっこんだら負け」というやつですね。

 

 

 

高度に発達した文明の社会集団の中で、原則論や基本道徳にもとづいて、社会や組織の矛盾を指摘することは「痛い行動」であるとみなされることがあります。つまり、「野蛮」な行動であるということです。

 

なぜなら、精巧に組み上げられた人為的システムが完成するまでには、長い時間と労力をかけて、さまざまな利害関係の調整や、現実的判断、理想などの取捨選択がなされており、無責任な煽りは、極めて繊細な構造物を破滅させるきっかけになり得るからです。

 

「受験」の中枢にいる人ほど、横行している「入試の実態」を「公の問題」にできないわけです。

 

現在稼働している受験システムが崩壊したとき、どれほどの混乱が起き、どれだけの受験生や関係者が途方に暮れるのか、想像することができる人間にはその引き金を引くことができないのです。

 

 

一方で、多くの人がそのシステムの疲弊を感じ取っています。

「風穴」を開けてくれるような発言者が求められていることも事実です。

 

個人的には、「3」の記事のように、大手塾が特権的に「併願優遇」や「推薦」を出しているのは大きな問題だと思うので、報道機関には果敢に取り上げていただきたいと思います。

 

(「4」の記事にあるように、塾団体が個人塾を集めて「進学相談会」を開くのもそれが原因です。連合して大手のアドバンテージを追尾しなければならなくなるのです。)

 

 

 

さて、今回のブログでは、関大一高に端を発する「受験相談」報道を追いかけてきました。

 

ありきたりなことをいうようですが、メディア情報には、演出や思惑、打算などが反映されることがありますから、そのままを「鵜呑み」にしてはいけません。

 

 

情報を評価・分析・判断する力のことを「情報リテラシー」といいますが、この力は、これからの時代、さらに重要なものになっていくと思います。

 

 

受験は「情報戦」でもあるので、私を含め、塾の教師は特に情報を深く読もうとします。

 

 

ふと思ったのは、関大一高の入試です。

分かりづらい人には分かりづらいのでしょう。

しかし、インターネットを使って、少し情報を収集するだけで、この高校の入試の全容を理解することができました。

 

 

 

「入試の仕組みが分かりづらい」と多くの人が口に出します。

もちろん、分かりやすい方がいいのでしょう。前回の記事にも「入試制度はわかりやすいほうがいい」と書きました。しかし、なんでもかんでも「1から10まで」説明することが果たして全面的に良いことなのかどうか、という疑問もあります。

 

 

将来を左右する入試という一大事に際して、成り行き任せで情報も集めない人間に、豊かな未来があるとも思えません。

 

 

「オトナの世界」では、「全部」を説明してくれることなどあり得ません。

事態や事情を自分で読み取れない人間は、「その程度」だと評価されるでしょうし、事態や事情を読み取れないおかげで、重大な失敗や損失を招くこともあるでしょう。

 

 

まあ、未来のことはともかく、受験に際しては、周りが噛み砕いてくれるのを待っているのではなく、自ら主体的に情報と向き合べきだと思います。

 

 

 (ivy 松村)

 

 

「受験相談」報道について考えてみる②

前回のブログでは、関大一高の新聞記事を取り上げつつ、東京都の私立高校受験には「入試相談」という制度が存在することを説明しました。

 

やはり、大阪にも同様の制度があります。

大阪では「受験相談」あるいは「事前相談」と呼ばれるものです。

 

 

新聞報道によれば、関大一高は、受験生の知らないところで「受験相談」を行い、「内定」を出した生徒は、当日の入試得点で、他の受験生の得点を下回っていても合格させていたということです。

 

高校受験の仕組みをよく知らない人が読むと、以下のような印象を持つに違いありません。

 

・高校と中学が秘密裏に談合で合格者を決めている

・入試得点を基準にして合否を判定していない

・入学試験が「出来レース」であることを受験生は知らされていない

 

総じて、読者は「不公平」な入試選抜が行われていたのだ、と受け止めることでしょう。

 

 

多くの記事やコメントで、憤り、非難、怒りの声が噴出しています。

そうした声に触れる度に、残念な気持ちが湧いてきます。

この高校に同情しているからではありません。

多くの人が「思惑通り」にはめられてしまっているからです。

 

この記事には、ある種の「狙い」があるように思います。

 

 

 

記事には、「関大一高の関係者」が大阪府私学・大学課に指導を要請したと書かれています。

まあ、仰々しくいうと、「内部告発」をしたわけです。

それで、「私学・大学課」は、関大一高に改善を求めた、ということです。

 

ところで、大阪で個人塾をやっておられる方のブログに興味深いことが書かれていました。

「私学・大学課」も「受験相談」のことなど当然知っているのだから、形だけの指導をして終りだっただろう、と。

 

それで、もしかしたら、今度は新聞社に情報提供したのかもしれません。

 

 

 

ともかく、関大一高の入試状況を確認してみましょう。

 

問題となった、2015年度入試の入試データです。

 

 

志願者 合格者 入学者
専願 男子 129 89 89
女子 78 68 68
合計 207 157 157
併願 男子 33 31 3
女子 21 20 4
合計 54 51 7

 

 

「専願」というのは、受験校を第一志望とし、合格すれば必ず入学手続きを取ることを条件に「優遇」を受ける受験カテゴリーです。関大一高の場合、「15点の加点」となっています。

(後述しますが、関大一高の「専願」は、さらに細分化された区分が存在します。しかし、ホームページの資料では合算された「専願」のみのデータとなっています。)

 

「併願」というのは、複数の受験をするという意味になりますが、この場合は、要するに加点のない「一般入試」を受けるということです。

 

 

極端に「専願」の受験者が多いことが分かります。

「専願」と「併願」を合わせた全受験生の約79.3パーセントが「専願」で受験しています。

また、気になるのは、「併願」で受験した受験生のほとんどが合格し、また、ほとんどが入学していないということです。

 

合格率の高さに注目しなければなりません。

「専願」は約75.8パーセントです。

一方、「併願」は約94.4パーセントにのぼります。

 

 

加点がなく、不利な入試となっているはずの「併願」の方が、合格率が高くなっています。

これは、得点力を持った、さらに上位校を第一志望としている受験生ばかりが、関大一高を「併願」するという状況になっているからでしょう。特に、府立の最上位校を狙うような受験生は内申点も持っているでしょうから、内申点を入試点に加点するタイプの関大一高の入試では、その分強みがあるはずです。

 

 

関大一高は、数十人の、最上位に近い学力の受験生が「併願」を受験し、上位中堅学力の受験生のうち、関大一高を第一志望と定めた受験生が「専願」でしのぎを削る、という構図になっています。

 

「専願」が主戦場となっているので、大勢の受験生をかき集めて行われるような入試にはなり得ません。

必然的に、入学の意思を強く持っている生徒を評価、審査するような選抜に傾きます。というよりも、最初からそのような指向があったのかもしれません。

 

 

 

報道によれば、事前に合格を得ている「内定者」は119人おり、「当日枠」での合格者が16人、不合格者が50人となっています。

そして、その50人のうち、47人が「内定者」の合格最低点を上回っていたということになっています。

 

問題となっている「受験相談」は、もちろん「専願」に対して行うものです。

「内定」を出した「専願」の受験生と、「内定」を出さなかった「専願」の受験生がいるということになります。

 

 

 

関大一高のホームページでは、入試結果では「専願」は単一の受験カテゴリーとしてあつかわれています。

しかし、入試区分を説明する「生徒募集概要」のページでは、2種類の「専願」があることを明記しています。

 

・「専願A」・・・生徒会活動や部活動、社会活動、検定などの実績が評価される出願

・「専願B」・・・入試得点に15点が加算される出願(一般専願)

 

 

さらにそのページには、「中学校を通じて提出された活動実績報告書により、専願A枠に該当しないときは、専願Bでの合否判定となります」と書かれています。

 

つまり、「専願A」のほうが「専願B」よりも「優先度」の高い出願であるということになります。「専願A」で出願できなかった受験生が、「専願B」で受験するのです。

 

 

 

前回のブログで取り上げた新聞記事は、「受験相談」問題の「火付け」報道でした。

その後の他紙の記事では、さらに詳細が述べられています。

 

関大一高、入試前に合格内定 「受験相談」と称し面談

 

 

この新聞記事では、「内定者」は全員「専願A」の受験生であったと説明しています。

 

一方、前回紹介した新聞記事は、故意に「専願」の区分に触れずに記事を書いたのではないかという疑いを持たざるを得ません。

 

 

 

関大一高は、「関関同立」の一角を占める関西大学の併設校(付属高)です。評価にかげりが出てきていますが、全国に名の知れた名門大学に、ほとんどの生徒が進学します。

 

関西のことはよく知らないので、あくまでイメージでの話ですが、あえて、首都圏の高校でたとえてみると、もしかしたら法政大学高校が近いのではないかという気がします。

(大学ブランドは法政大学の方が上だと思いますが)

 

もし、関大一高が、「専願」を主体とした入試を行わないとしたら、法政大学高校のように、2~3倍の倍率になると思います。

 

 

関大一高の「専願」の志願者の割合の高さや受験倍率などは、一見特異で不可解に思えます。しかし、それが「受験相談」を通して志願者を絞っているためであることを知れば、この高校の特徴をよく理解できます。

 

関大一高は、明らかに、「学校での成績」がよく、生徒会などで積極的な活動を行っていたり、部活動やコンクールなどで優秀な成績を収めたり、社会奉仕活動などを行ったりしている「優等生タイプ」の生徒を求めています。そのうえで、自校を第一志望とする受験生を求めています。

 

ですから、そういった生徒が目指すべき「専願A」に力を入れています。

 

そうすると、中学校とのパイプを通して「まちがいのない」志願者を集めることが最も合理的です。

 

募集枠のほとんどを「受験相談」を通して集めた生徒に割り当て、残りのわずかな「枠」を、得点力をもった受験生たちが争うという構図になります。

 

 

上に紹介した新聞記事によれば、「専願A」の受験生は全員合格し、それ以外の「専願B」で出願した受験生は、当日の入試得点が「専願A」の生徒を上回っていても不合格となっています。

「専願A」の基準を満たせば「内定」がもらえ、「専願B」は入試得点次第ということですね。

 

 

「専願A」の出願を、高校側が「受理」すれば「内定」です。

高校側が難色を示したときには、「専願B」での受験となるわけです。

 

ある意味で、非常にわかりやすい形になっているのですから、受験生や関係者が「受験相談」というものがあることを知らなかったというのは、ちょっと考え難いように思うのです。

 

 

要するに、「推薦合格」を果たした生徒が、形の上で、一般受験者に交じって入試問題を解くという「儀式」を行っていたのだと考えるとわかりやすいと思います。

 

 

オリンピック出場権を手にしているマラソン選手が、調整のために、出場権獲得を目指す他の選手と一緒に、選考を兼ねている大会に出ると。

それで、結果、順位が他の選手よりも下だったからといって、出場権をはく奪しろ、と叫んでいる輩がいたら、アホだと思いますよね。そんなイメージです。

 

 

一応つけ加えておきますが、私は、入試制度はできるだけシンプルで、わかりやすく、透明なほうがいいと思っています。でも、それと、不実を明かすことは別なのです。

 

 (ivy 松村)

「受験相談」報道について考えてみる①

8月20日の新聞報道で、大阪にある関西大学第一高等学校が、入学試験前に合格の「内定」を出していたことが問題として取り上げられました。

 

<大阪・関大一高>入試前に大半「合格」 中学側と調整

 

記事によれば、「関大一高」は、受験日の約1か月前に、中学校側との「受験相談」を行い、受験生の中学校での成績に基づいて、合格を決め、中学校側に伝えていたのだそうです。

 

合格の「内定」をもらった受験生は、入試得点いかんによらず、全員合格。

そのために、「内定合格者」よりも高い得点を取ったにもかかわらず、不合格となってしまった生徒が出てしまったということです。

 

 

 

この記事を読んだ当初、違和感を覚えました。問題の焦点がわからなかったのです。

私と同じように、ほとんどの塾関係者や学校関係者は、記事の内容について、あまりにも一般的でありふれた高校受験の一幕だと感じたことでしょう。

 

狐につままれたような感覚に居心地の悪さを感じながら、記事を丹念に読んでみることにしました。

それで、やっと少し状況が整理できました。

 

 

 

このニュースに取り上げられている内容は、高校受験に関わる人にとっては既知のものです。

 

 

東京都の私立高校受験のシステムにも、同じような「入試相談」というものがあります。

中学の先生が高校に出向かれて、生徒の「合格の可能性を相談する」というものです。

 

基本的には、推薦・専願(単願)・併願優遇を利用して受験をする生徒が対象となりますが、高校によっては「一般受験」の入試についても相談を受け付けるところもあるようです。

 

 

「入試相談」は、なかば公的な制度となっています。

現在、東京都の公立中学校に通っている生徒や保護者の方は、自分の中学の「年間行事予定」を見てください。

12月15日に「入試相談」と書かれてあるはずです。

本年度は、この日が「入試相談」の「解禁日」となっています。

 

この日から、ようやく中学校と高校は「相談」をしてもよいということになっています。

が、実際には、この日よりも前に根回しは終わっていて、12月15日には、ただ、中学の先生が、高校を回って「受験者リスト」を受け渡していく慣例的、儀礼的行為を行うだけです。

 

中学校は、2学期の三者面談の際に生徒・保護者に受験の意志を確認し、受験の意志のある生徒の「合格の可能性」を高校に問い合わせます。「合格の可能性」の高い生徒には、当該校の受験を容認し、「合格の可能性」が厳しい生徒には再考を促します。

 

ですから、厳密には、12月15日よりも前に「合格の可能性」がとても高い高校を受験するかどうかが決まっています。

 

 

まあ、はっきりいってしまえば「確約」を出すわけです。

 

 

現実には、12月15日の前には「確約」が出されていますから、「入試相談」の実際は、「12月15日」には完了しているわけです。

 

 

このようにして「入試相談」を通して出願した受験生は、「よほどのことがない限り」合格を手にします。

 

中学の先生は、「入試相談」を使って生徒の進学先や、「保険」となる進学先を確保しようとします。一方、高校側は、「入試相談」を多くの受験生を集める「営業ツール」として活用します。

また、受験生・保護者にとっても確実に合格を押さえることができるというメリットがあります。

 

 

一方で、「入試相談」を受け付けていない私立高校もあります。

人気のある私立のブランド校、特に難関大学の付属高や系列校は、中学校と「合格の可能性」について話をすることはほとんどありません。

ですから、私立上位校の入試は、ほぼ「ガチンコ」の本番勝負になります。

 

 

 

対照的に、東京の私立高校には、「入試相談」を積極的に活用しているところがいくつかあります。

受験生が1,000人を超えるようなところもめずらしくありません。

そのうち、「入試相談」を通さずに受験をする場合、極端に「ボーダー」が上昇する高校があります。「入試相談」を通して「確約」を大量に出しているため、「確約」を持たない受験生が競う「一般入試」で、合格者を出す「枠」がとても少なくなっているからです。

 

こうした高校は、「偏差値」と「難易度」がかみ合っていません。

あるいは、状況を利用して「偏差値」を上昇させようという戦略なのではないかとうがった見方をしたくなります。

 

(「ランキング表」を盲信して高校の「格」をはかろうとするのは、危険です。特に、最近の私立高校の「ランキング表」は、あまりにも多くの思惑を反映し過ぎています。)

 

 

しかしそれにしても、たとえ入試以前に「確約」を出していても、上記のような高校をことさら非難する声は起こりません。

「入試相談」はある意味で「平等」な制度です。端的に、当該の高校にどうしても合格したければ、「推薦」「専願(単願)」「併願優遇」を利用して受験をすればいいからです。

 

「入試相談」と「確約」は呼応関係にありますが、無条件ではありません。そこには「基準」があります。

多くの場合、内申点の「基準」を満たしているかどうかで「確約」が決まります。

ですから、こうした制度は、別の見方をすれば、「学校の成績をもとに入試を行っている」ということになります。

 

大枠で捉えれば、生徒の学力を判定するという「入試の機能」と同等であるといえます。

 

「学力が足りないために入試で不利になる」という事態は、極めて普遍的なものであり、問題視するべきものであるとは思われていません。

 

 

 

この制度の是非にも触れたいところですが、ひとまず置いておきましょう。

ともかく、関大一高が行っていた「受験相談」というものは、東京では「入試相談」と呼ばれ、同じように行われているものです。

 

しかし、この件は、文部科学大臣を始め、識者がこぞってコメントを出したり、議論に取り上げられたりして、大きくクローズアップされることとなりました。

どうしてこの件が大きな問題として取り上げられるに至ったのか、次回、もう少し考察してみましょう。

 

(ivy 松村)

夏期講習が終了し、2学期が始まる

今日は、涼しいどころか肌寒いほどの気温で、ちょっと閉口してしまいました。

風邪をひかないように注意してください。

 

 

夏期講習が終了しました。

 

最終日の今日は、月例テストで「結び」です。

力を発揮できたでしょうか。

 

 

さて、9月1日から後期の授業がスタートしますが、各学年の9月の授業初日をご確認ください。

 

 

9月授業開始日:

 

小5進学・・・9月1日(火)

 

小6進学・・・9月3日(木)

 

小6受検・・・9月1日(火)

 

中1特訓・・・9月2日(水)

 

中2特訓・・・9月2日(水)

 

中3特訓・・・9月1日(火)

 

 

 

その他の連絡:

 

・後期から「演習」を受講する中2・中3の生徒は、土曜日も通塾日となります。

 

・中3は、9月6日の「Vもぎ」と9月13日のWもぎの案内をお渡ししています。

 

・「数検」は9月19日(土)に実施となります。

 

 

 

 

受験生の要望もあって、

 

・8月27日(木)

・8月28日(金)

 

の両日、13:00から校舎を開放します。

個別授業の生徒が優先となりますが、宿題や休み明けテストの勉強に教室を使いたい人は、連絡なしで来ても大丈夫です。

 

 

 

中3にとっては、まだ夏期講習の「延長戦」が残っているということですね。

27・28日を使って、宿題等を仕上げなければなりません。

連日10時間以上勉強していましたが、常に塾の課題や漢検対策に追われていたため、作文など、まだやりきっていない宿題があるのです。

 

漢検が終わってから、本腰を入れて宿題に取り組む計画でした。

 

この数日は、毎日作文や読書感想文の直しをやっています。

2000字ほどの作文を書きあげるのに、のべ7・8時間ほどを使っているでしょうか。

納得のいくものを書きあげる経験を積んでほしいと思っているので、何度も何度も書き直しを促します。

 

 

文章力のない人には、いずれ「学力の限界」が訪れるでしょう。

「言語」は、意味と論理の相互作用です。これを操作する能力に乏しいと、思考力が開発されません。

 

「作文」には、学力の基礎を鍛える効果があります。

 

 

しかし、それにしても目を見張ったのは、中3生たちの「学習継続力」です。

1か月前と比べて、勉強の「処理能力」と「持久力」が飛躍的にレベルアップしています。

 

 

この夏、毎日どれくらいの量の文字を書き続けたのでしょう。

よく、右手の指に力が入らない、と悔しそうな顔をしていましたが。

 

英語が、たぶん一番きつかったと思います。

2、3ページ分の板書を写し、3、4ページ分の演習と復習のレポート、1、2ページ分の英文和訳をほぼ毎日こなしていました。

 

 

今となっては、原稿用紙数枚程度では、動じることもないのでしょう。

 

 

受験勉強は、「こなせない人」には厳しいものです。

 

この夏に、勉強を推進していく能力を身につけられたのは、大きな成果です。

秋以降に、さらにタイトな勉強をこなしていく「エンジン」を搭載できました。

 

 

 

まだ、「延長戦」が残っているので、夏期講習が終わったという実感が湧かないのですが、本日が始業式だった中学もありました。

八王子市や町田市には、8月中に2学期が始まる小中学校が多くあります。

 

 

宿題は大丈夫でしょうか。心なしか、何やら浮かない顔をしていた生徒がいたような気がしていますが。もし、困っているのなら、「延長戦」に参加してください。

 

宿題の他、提出物や返却するものなど、期限までに学校に持って行かなければならないものがある人は、準備を忘れないようにしてください。

 

 

 

では、9月に、また一緒に頑張っていきましょう。

 

 (ivy 松村)

 

連絡「数学検定」について

9月19日(土)に、ivy校舎で「数学検定」(「算数検定」)を実施します。

 

ご案内では締切日が20日となっていますが、8月24日(月)までお申込みを受付けております。

受検希望の方で、まだ申込書を提出されていない方は、お早目にお申し込みください。

 

塾生に方は、お電話等での申込みも承ります。

 

 

 

今回の数検は、各中学校の中間テスト、10月の英検の日程を考慮して、9月の実施としました。

ちょっと気が緩む時期でもあります。

気合と緊張感を高めるのに、よい目標をとなるはずです。

ぜひ挑戦してください。

 

すでに申込をいただいている方には、夏期講習の間に、対策教材をお渡しできると思います。

夏休みのうちから、少しずつ進めておくようにしましょう。

 

 (ivy 松村)

What did you get from the studying for KANKEN ?

本日(8月21日)、漢字検定が行われました。

受検した生徒のみなさん、おつかれさまでした。

 

普段はなかなか味わえない緊張感の中で、生徒のみなさんが真剣に挑んでいる様子が印象的でした。

 

かなりの手応えを感じている人もいれば、そうではない人もいるでしょう。

 

 

この1か月間あまり、漢検のために多くの時間を費やしてきました。

結果はどうあれ、それは意味のある経験です。

悔しい思いもまた、人生には必要な要素です。しっかりと受け止め、次へと活かしましょう。

 

 

 

検定の間、机上巡回をしながら、生徒のみなさんの解答用紙を眺めていました。

検定終了後も、それぞれ感想などを聞いてみました。

やはり、この1か月の取り組みの差が、くっきりとあられていたように感じました。

 

 

夏休みの最初に、漢検に向けての勉強の仕方を細かに指示しました。

指示をまもって地道に取り組んでいた人は、手応えも大きかったようです。

 

夏休みの予定があっても、それを計算に入れて、ペースを考えながら勉強を続けてきた人は、蓄えた力をじゅうぶんに発揮できたでしょう。

 

何人かの人は漢検対策を通して、勉強のサイクルを理解し、自主学習のコツをつかんだようですね。

この1か月の間に培ったものは、今後の勉強に大きな成果をもたらすでしょう。

 

 

一方、「漢字検定に合格する」という目標がぼやけて、「とりあえずやる」という状態になっていた人は、「覚えたはず」の漢字でもまったく思い出せず、苦戦していたようです。

 

 

 

「漢字や語句を覚えるため」に問題集をやっていたのではなく、「問題集を終わらせるため」にやっていたのです。

 

微妙な手応えだった人は、それがなぜなのかを自分で理解できているはずです。

 

 

この1か月間行ってきた漢検対策は、取り組みの手順を様式化していました。

新出漢字の部首や読みの確認を行い、書き取り練習をした後で、読みの問題を解き、続いて語句の問題を解いて、間違いをチェックして、赤ペンで直し、ルーズリーフに復習した後に確認テストを受けて、合格したら次のステップに進むという流れでした。

 

一人ひとりに直接やり方とペース配分を説明し、確認したはずでした。

 

しかし、旅行や遊びや部活のためにペースが落ちてくると、ルール通りにやらない人が出てきました。

読みの問題を飛ばしたり、丸付けをしてなかったり、ルーズリーフに復習していなかったり。

 

そうすることでペースを上げて、周りに「追いつこう」ということなのでしょうが、ルールをないがしろにした時点で、「漢字を覚える」という目的からずれた行動になっていたのです。

 

 

「漢字を覚えるためにやる」という目的よりも、「周りと比べて勉強量が足りていないということが目立つのが嫌だからやる」という動機がまさってしまったのです。

 

そうなってしまうと、取り組みの「中身」は重要ではなくなってしまいます。

「ばれないように課題をやらずに進めてしまおう」というという劣等な発想によって、勉強の機会を自ら潰していたのです。

 

もちろん「様式」通りにこなしていても、「進めること」にとらわれていたのであれば、それは結局「同じこと」です。

 

漢字を覚えるのはなく、問題集を先に進めるために、鉛筆を動かしていたのです。

 

 

それはもう、ただの「作業」です。漢字の学習ではありません。

 

 

当たり前ですが、「ペースを上げよう」という声掛けは、「中身」を疎かにしていいという意味ではありません。

 

あえてきつい言い方をします。

努力の量を増やして前に進むのではなく、本質をないがしろにしてとりつくろおうという姑息な考えでは、能力を伸ばしていくことができません。

 

学校の定期テストがぱっとしない理由もその辺にあるということに気づいてください。

 

 

 

今回の漢検は、とてもよい機会でした。

 

重ねていいますが、不合格でさえも貴重な経験です。

経験から学んでください。

 

 

 

さて、明日から夏期講習の第6期が始まります。

講習最後の4日間です。

 

小6進学は、環境問題の論説文と詩とについて学びます。

小6受検は、新しく「日本の工業」の単元に入ります。

中1は文法の授業を始めます。

中2の英語は文章題の和訳と接続詞をあつかいます。

中3の国語は、過去問と古文です。

中3の英語は、読解問題(文章題)と関係代名詞です。

 

 

どの学年も最終日には「月例テスト」が実施されます。

 

最後まではりきっていきましょう。

 

(ivy 松村)

 

 

「ん」の話

「打消」の助動詞には「ない」「ず」「ぬ」に加えて、「ん」があります。

 

この中で、「ん」は、方言や話し言葉にみられるものです。

標準語では「~ませ」という言い方にあらわれます。

 

 

「走る」という動詞を打消してみましょう。

 

例:

走らない

走らず

走らぬ

走らん

 

 

「ん」と「ぬ」は音が近いので、口語文法の説明で、これらを同一視しているものもあります。

文語(古文)では、「ん」と「ぬ」は別の単語ですので、分けて考えなければなりません。

 

 

古文を読むときには、「ん」に注意が必要です。古文を読んでいて、「ん」が出てきても、「打消」の意味で読み取ってはいけません。

古文では、「ん」は「意志」や「推量」などの意味を持つ助動詞として使われます。

(「ん」は「む」と表記されることもあります。この場合、いずれも「ん」と発音します。)

 

例:

我、行か。 (私が行こう。) 「意志」〈~ウ/~ヨウ、~タイ〉

彼、行か。 (彼が行くだろう。) 「推量」〈~ダロウ、~ウ/~ヨウ〉

 

 

古文で「行かん」という言葉が出てきても、「行かない」という意味ではないので、注意しましょう。

 

 

では、中3の教科書(光村図書)で、「ん」の使われ方を確認してみましょう。

 

151ページ(『奥の細道』):

春立てる霞の空に白河の関を越え)、と…

 

「立春の頃に、霞の立ちこめる春の空の下で白川の関を越えようと…」

教科書では「超えたい」という訳がつけられています。

 

 

251ページ(『史記』):

虞や虞や 若(なんじ)を奈何(いかん)せ

 

「虞よ、虞よ、そなたをどうしよう。(どうすることもできない。)」

悲運の将軍項羽の嘆きの詩の書き下し文です。反語となっている表現にも注意しましょう。

 

 

 

「打消」の助動詞のまとめです。口語(現代文)と文語(古文)との意味の違いを確認しておきましょう。

 

 口語(現代文)  文語(古文)  例  現代語訳
打消 打消 行か 行かない
打消 完了(打消) 行き 行っ
打消 意志、推量など 行か 行こ、行くだろう

 (ivy 松村)

「ぬ」の話②

英語の「not」の働きを、英文法の用語で「否定」といいます。

同じような働きを、日本語の文法では「打消」といいます。

口語(現代文)では、一般的には「ない」を用いて「打消」を表します。

 

文語(古文)では、助動詞の「ず」を用いて「打消」を表します。

 

例:

犬、走ら。  (犬が走らない。)

 

 

「ず」は、現代でもたまにみられる言い回しですね。「ず」を使うと古風な印象を受けます。

 

ことわざや故事成語には、「ず」を使ったものが多くみられます。

それは、古くからの言い回しが受け継がれているためです。

また、フレーズとしてのリズムを損なわないように古い表現が固定されていることもあります。

 

 

ところで、「ず」の連体形は「ぬ」です。ですから、名詞に接続するときには、「ず」は「ぬ」に「変化」します。

 

例:

走ら犬。  (走らない犬。)

 

 

文語(古文)の文法に従えば、「打消」は、終止形に用いるときは「ず」、連体形に用いるときには「ぬ」と表さなければなりません。

 

しかし、時代が下るにつれて、話し言葉の中で、この「ぬ」の使われ方の「拡張」が起こりました。

つまり、終止形で「ぬ」を用いるような使われ方が受け入れられるようになってきたのです。

 

例:

→犬、走ら。  (犬が走らない。)

 

 

本来の文語(古文)の文法にもとづけば、このような言葉づかいは間違いだとされるものですが、次第に許容されるようになっていきました。

 

 

「ぬ」を「打消」の助動詞の終止形として用いるような表現が、話し言葉の中で一般的に使われるになったのは江戸時代からではないかと考えられています。

 

 

先日、中3の演習で取り上げた井原西鶴の『世間胸算用』にも以下のような記述がみられました。

 

 

「こなたのやうなる、大晦日に碁をうつてゐるところではうら

(あなたのような、大晦日に碁を打っているようなところでは(タコを)売らない)

 

 

大晦日に、タコの足を2本切って売り歩いていた魚屋が、そのいんちきを見破られて「逆切れ」する場面です。「売ら」というセリフが確認できます。

 

 

もともとは、「ぬ」と「ず」は同一の単語だとみなすべきものでした。しかし、現在では「ぬ」は「ず」とは分立した独自の助動詞であるとする考え方が一般的になっています。

 

現在の国語文法(口語文法)では、両者とも「打消」の助動詞であるとみなします。

しかし、文語(古文)では、「完了」の働きをする「ぬ」があるので要注意です。

 

例:

①犬、走ら。  (犬が走らない)「打消」

②犬、走り。  (犬が走った)「完了」

 

 

 

「打消」の①の「ぬ」は未然形が接続されるので、「走る」が「走ら」になっています。

「完了」の②の「ぬ」は連用形が接続されるので、「走る」が「走り」となっています。

 

 

 

さて、ことわざや慣用句、有名な言い回しの中には、「ぬ」が「打消」の助動詞の終止形として使われているものがいくつかあります。

その例をみてみましょう。

 

 

歯に衣着せ

ない袖は振れ

背に腹は代えられ

瓜のつるになすびはなら

泣く子と地頭には勝たれ

火のないところに煙は立た

柳の下にいつもどじょうはおら

あちらを立てればこちらが立た

為せば成る、為さねば成ら、何事も

 

 

「ぬ」の本来の形である連体形で使われていることわざの例も見てみましょう。

 

 

言わが花

知らが仏

転ば先の杖

捕ら狸の皮算用

鬼の居間に洗濯

まか種は生え

さわら神に祟りなし

桜伐る馬鹿、梅伐ら馬鹿

門前の小僧習わ経を読む

 

 

 

 

 

さらに、「ず」が使われていることわざや故事成語も紹介しましょう。

 

 

笛吹けど踊ら

親の心子知ら

歳月人を待た

覆水盆に返ら

後悔先に立た

悪銭身につか

頭隠して尻隠さ

立つ鳥跡を濁さ

木を見て森を見

仏作って魂入れ

天は二物を与え

弘法は筆を選ば

百聞は一見にしか

雀百まで踊り忘れ

転がる石に苔つか

頭かくして尻かくさ

虻蜂(あぶはち)とら

君子危うきに近よら

鹿を追う者は山を見

情けは人のためなら

論語読みの論語知ら

井の中の蛙大海を知ら

ローマは一日にして成ら

二兎を追う者は一兎をも得

虎穴に入らんば虎子を得

 

 

 

ちょっと、「打消」の助動詞「ず」の活用形を見てみましょう。

 

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形

ざら

ざり

 

ざる

ざれ

 

ざれ

 

 

「ず」の終止形以外の活用形が用いられていることわざや故事成語もあります。

 

 

武士は食わど高楊枝

雉(きじ)も鳴かば打たれまい

過ぎたるはなお及ばざるがごとし

 

 

なお、「疑心暗鬼を生ず」のような表現には注意してください。

「生ず」は「生じる」という意味の動詞ですから、ここには「打消」の助動詞は使われていません。

 

(ivy 松村)

 

「ぬ」の話①

夏期講習に入って、中3は、集中的に古文に取り組んでいます。

 

 

高校受験の古文は、高度な文法知識よりも、読解力が重要です。

意味や文脈を類推したり、内容を大まかに把握したりする技術や能力が求められます。

 

しかし、むしろそのために、助動詞について、ある程度の文法的な知識が必要になります。

 

 

特に注意しなければならないのは「ぬ」の識別です。

これは、多くの人が一度は勘違いをする部分にちがいありません。

 

 

古文に出てくる「ぬ」にはおもに2つの用法があります。

 

 

①「打消」の助動詞「ず」の連体形である「ぬ」 (~ない)

②「完了」の助動詞「ぬ」の終止形である「ぬ」 (~た・~してしまった)

 

 

それぞれの例文を見てみましょう。

 

① 雨降らぬ日。 (雨が降らない日。)

② 雨降りぬ。 (雨が降った。)

 

 

それぞれの接続の形を確認しておきましょう。

①の「打消」の「ぬ」には未然形が接続します。ですから、「降る」は「降ら」と活用しています。

②の「完了」の「ぬ」には連用形が接続します。ですから、「降る」は「降り」と活用しています。

 

 

 

②の解釈を間違えないようにしてください。終止形の「ぬ」は「完了」の意味です。

「ぬ」は、映画のタイトルなどでもおなじみですが、勘違いしている人もいます。

 

 

「風立ちぬ」 (風が立った)

「風と共に去りぬ」 (風と共に去ってしまった)

 

 

もちろん、それぞれ「完了」の意味で使われています。

 

 

 

さて、2学期以降の予習です。

光村図書の3年の教科書を確認してみましょう。

 

 

・63ページ(俳句):

プラタナス 夜もみどりなる 夏は来ぬ    石田波郷

 

「夏は来た」という意味ですね。

 

 

・143ページ(和歌、万葉集):

東の 野に炎の 立つ見えて かへりみすれば 月傾きぬ    柿本人麻呂

 

「月は傾いている」という現代語訳が付けられていますが、「ぬ」は「完了」の意味を持つ助動詞であることに留意してください。すでに月は「傾いた」状態にあるのです。

 

 

・146ページ(和歌、古今和歌集):

秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる    藤原敏行

 

初句は「秋が来た」となります。

(この歌は、後日もう少し詳しい文法的説明をします。)

 

 

・154ページ(『奥の細道』):

「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」と笠打ち敷きて、時のうつるまで涙を落としはべりぬ。

 

「はべる」は「です」「ます」などに相当する敬語です。文末は、「涙を落としました」という意味になります。

 

 

 

ついでに、2年の教科書も見てみましょう。

 

 

・61ページ(短歌):

はとばまで あんずの花が 散つて来て 船といふ船は 白く塗られぬ    斎藤史

 

「白く塗られた」という意味ですね。

 

 

・134ページ(『平家物語』冒頭部分より)

たけき者も遂には滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

 

「栄えるものも必ず滅びてしまう」という意味になりますね。

 

 

・145ページ(『徒然草』第五十二段「仁和寺にある法師」):

年ごろ思ひつること、果たしはべりぬ。

 

「長年思っていたことを、成しとげました」という意味になります。

 

(ivy 松村)

連絡「お盆休み期間の開校日について」

今日で夏期講習の第4期が終了です。

 

明日からはお盆休み期間になります。

授業はありませんが、教室を開放します。

 

学校の宿題や漢検対策に取り組みたい人は、ぜひ利用してください。

 

 

教室開校日:

 

12日(水) 13:00~19:00

13日(木) 13:00~19:00

14日(金) 13:00~19:00

 

 

 

漢検対策も順調に進んできました。

ほとんどの生徒は、検定日前に対策問題集を終わらせ、準備万端で検定に挑めそうです。

 

ペースが遅れてきている人は、家で「貯金」を作るか、お盆開校日に来て取り組むようにしましょう。

 

 

 

中1・中2は、夏休みの予定や部活と塾をうまく両立させてがんばっています。

「漢検」という目標があるおかげで、講習の毎日がだれることなく、ほどよい緊張感を持って取り組むことができています。

 

 

「漢検」は想像以上に生徒のみなさんによい影響をもたらしています。

 

進捗や定着度を可視化して、確認できるような流れを構築できたおかげで、モチベーションや継続性が維持されています。

 

しっかりとした準備をやりきって「本番」に挑む、という経験が、生徒のみなさんの勉強のありかたを大きく変えることとなるでしょう。

 

 

 

この機会に、「とりあえず適当にやって、点がよかったらラッキー」というような、愚鈍な感性とは決別しなければなりません。

 

何をするにしても、必ず「逆算」して行動するべきなのです。

「逆算」ができない人は、一日一日をただ何となくぼんやりと過ごし、ふと、「当日」を迎えてしまうのです。

 

「逆算」を行うことで、「本番」を迎えるまでの一日一日に「意味」を与えることができます。残り十日。その10日をどう過ごすのか、決めておきましょう。

 

生徒のみなさんには、検定日当日を、「いよいよだ」という気持ちで迎えてほしいと思います。

 

 

 

 

ついでといってはなんですが、中3生の近況報告です。

 

受験生であっても、授業や課題に取り組む時間をぬって、漢検対策に取り組んでいます。

 

最初は、受験生に漢検を受けさせるかどうか、ちょっと思案したのですが、どのみち夏期講習は国語の時間に連日たっぷりと同じレベルの漢字テストや語句テストを受けてもらうつもりだったのですから、毎日1、2時間かけて漢検用の勉強をするのとあまり変わらない、と思い直しました。

始めてみると、むしろメリットの方が大きかったと感じています。

 

 

毎朝、「漢検」を片付けてから一日が始まるという流れが固まってきました。

中3生にとっては、「漢検」が一番「軽い」課題のようです。

 

 

夏休みの最初はやきもきしましたが、非常にいい「形」が出来上がってきました。

 

野球に全力で打ち込んでいた生徒たちは、1学期と夏期講習の前半で相当の「ロス」が出ています。

現時点で、例年に比べて「2か月」ほどの遅れが出ています。出遅れが大きいので、これから「挽回」していかなければなりませんが、「馬力」のある生徒たちなので、「加速」を期待しています。

 

 

毎日塾内で10時間勉強していますが、その内容の濃さはかなりの水準だと思います。

 

滞在時間が8時間を超えてきたあたりで、疲れのためか、「脱力系」のギャグやちらほらと出始めるのがたまにきずですが、それだけ密度が高く、緊張感のある時間を過ごしているということなのでしょう。

 

かなりタフな内容の課題を出していますが、やり抜こうとする根性を見せてくるので、こちらの指導にも熱が入ります。

 

ある程度鍛えられた中学生でも、ちょっとついてくるのが大変かもしれません。

たぶん、普通の中学生が夏期講習で書く1日の文字の量の4~5倍のノートをとっているはずです。

 

国語は、古文の文章題の問題文をすべてノートに写し、授業の解説を書き加えていきます。

また、私の解説は板書が多いので、一日に3、4ページはノートをとっているはずです。

英語は、小テスト、3、4ページ分の演習に、間違えた問題の分析を行う「レポート」、そしてまた大量の板書です。さらに、文章題の全訳も始めました。

それに加えて、毎日1、2時間を要する数学の確認テストと「漢検」です。

 

 

今年の中3は人数が少ないので、かなり密な指導が可能です。

「遅れ」にあわせてスケジュールやメニューを調整しています。

また、少人数ですので、志望校に照準した対策をとることができるメリットもあります。

国語は、夏期講習でそれぞれの志望校の過去問をすでに3回解き、入念な解説を行うことができました。

 

口はばったいことをいうようですが、かなり「ぜいたく」な塾だと思います。

 

 

彼らがどこまでいけるのか、とても楽しみです。

 

 (ivy 松村)