「音読み」の話④

まずは、「前段」。

 

平安時代の人々は、「はひふへほ」を「ぱぴぷぺぽ」と発音していたといわれています。つまり、昔の日本では、「ハ行」は「パ行」だったわけです。

 

たとえば、「母」は、現代では「ハハ」と発音しますが、古代の日本では、「パパ」と発音していたわけです。

 

また、「はひふへほ」は、安土桃山時代ごろには、「ふぁ・ふぃ・ふ・ふぇ・ふぉ」に近い発音に変化していたことがわかっています。

 

たとえば、当時の人々は、「日本」を「ニフォン」、平戸を「フィラド」と発音していました。

 

 

日本語には、「ぱぴぷぺぽ」→「ふぁ・ふぃ・ふ・ふぇ・ふぉ」→「はひふへほ」という発音の変化があったわけです。

 

 

 

では、「本題」に入りましょう。

 

前回の記事で、漢字には、本来、末尾に[k]や[t]の発音を持つものがあったことを紹介しました。

実は、「末尾の子音」には、もう一種類あるのです。

 

[p]です。

 

古代中国語には、末尾が[k]・[t]、そして[p]の発音となっている漢字が存在していたのだということになります。

これらを合わせて、「入声」と呼びます。

(「入声」は「ニッショウ」とも、「ニュウセイ」とも読みます。)

 

 

「入声」は、現代中国語の標準語(普通語)、いわゆる「北京語」には、存在しません。

モンゴル人の支配を受けた元代までに、華北(中国北部)の口語は大きく変質したといわれています。

 

一方、南方の「方言」には、古代の発音体系の一部が残存しています。

たとえば、香港などで使われている「広東語」には、語末の[k]・[t]・[p]の発音が見られます。同じように、日本語や朝鮮語に取り入れられた「漢語」にも、「入声」の「痕跡」を見ることができます。

 

 

 

ということで、日本語に残る「入声」の[p]の発音を「発掘」してみましょう。

 

 

「納」・「合」・「十」という漢字を使って考えてみます。

 

これらの字は、それぞれ「ノウ」・「ゴウ」・「ジュウ」と読みます。

 

確認してみましょう。

 

 

入(「ノウ」ニュウ)、品(「ノウ」ヒン)

格「ゴウ」カク)、同(「ゴウ」ドウ)

時「ジュウ」ジ)、代(「ジュウ」ダイ)

 

 

これらは、なんの変哲もない普通の漢字の音読みのように思えますが、それぞれを「歴史的仮名遣い」を用いて表記すると:

 

 

・納→「ナフ」

・合→「ガフ」

・十→「ジフ」

 

 

になるのです。

 

ここで、「ハ行」は、以前「パ行」であった、ということを思い出しましょう。

 

古代の日本人は、「プ」という音を、「フ」と表記していたのです。

 

「納」・「合」・「十」の「読み仮名」は、それぞれ「ナフ」・「ガフ」・「ジフ」と書かれたわけですが、それらは「ナプ」・「ガプ」・「ジプ」と発音されていたということになります。

 

つまり、これらの語は、従来、末尾に[p]の発音を持っており、そのために「プ」という日本語の発音があてられ、ゆえに「フ」と表記されたわけです。

 

 

古代中国語では、それぞれ、[nap]・[gap]([kap])・[zip]という発音に近い音だったと考えられます。

 

 

ちなみに、「広東語」では、これらの字を以下のように発音します。

(中国語に存在する「声調」の表記を省きました。)

 

 

・「納」→[naap]

・「合」→ [hap]

・「十」→ [sap]

 

 

末尾に[p]の音があります。

「広東語」は、古代中国語の発音を、よく残しています。

 

 

 

「納」・「合」・「十」は、現代では「ノウ」・「ゴウ」・「ジュウ」と読まれ、「二重母音」の発音に組み込まれています。

そのために、もともと「入声」であったことがわかりづらくなっています。

 

 

しかし、これらが本来「入声」であったことを物語る現象があります。

それが、「促音化」です。

 

以下の熟語を見てみましょう。

 

 

豆「ノウ」(ナプ)→「ナッ」トウ

体「ゴウ」(ガプ)→「ガッ」タイ

階「ジュウ」(ジプ)→「ジュッ」カイ(「ジッ」カイ)

 

 

末尾の「ウ」(プ)が、「ッ」に変化する「促音化」が起こっていることがわかります。

 

これは、古代中国語の「入声」の「残余」なのです。

 

 

 

普段、意識しないで 使っている「表現」の中に、「言葉の歴史」が隠されています。

「面白い」と思うか、「だから、何?」と思うか、さて、みなさんはどちらなのでしょう。

 

 

 

今回の「シリーズ」では「音読み」について見てきました。

これについて書こうと思ったのは、最近の国語の授業で、「漢字の読み」について話す機会が多くなったからです。

 

学年の最初は、どの学年も「語句の知識」の単元があります。

各学年ともに、「漢字の成り立ち」や「漢字の音訓」、「熟語の組み立て」などについて学びます。

 

時間的な制約もありますので、授業では、それほど深く説明しないこともあります。

いろいろと知りたいかたは、過去に書いた以下の記事が役に立つと思います。

ぜひ、参考にしてしてください。

 

 

「呉音・漢音・唐音」

「難しい読みの熟語」

「熟語の読み方」

「漢字の音訓」

「漢字の成り立ち(六書)」

「対義語」「熟語の構成」

 

 

(ivy 松村)

 

「音読み」の話③

漢字の音読みは、ほとんどが「一音節」となっていますが、例外的に「二音節」となっているものもあります。

「二音節」の音読みの漢字は、語末の音が「キ・ク・ツ・チ」となっています。

 

このうち、「キ」と「ク」には「同質性」があり、「ツ」と「チ」にも「同質性」があります。

 

 

古代中国語の発音には、末尾に[k]の音が現れるものと、[t]の音が現れるものがありました。

 

[k]の音は、日本語の発音体系では、「キ」あるいは「ク」と表示されるわけです。

[t]の音は、日本語の発音体系では、「チ」あるいは「ツ」と表示されるわけです。

 

 

ですから、「キ・ク」と「ツ・チ」は、それぞれが同系統の発音の「グループ」であるということになります。

 

 

 

ところで、語末に[k]や[t]の音があらわれるような「末尾の子音」は、英語にもよく見られるものです。

 

以下の単語の発音を確認してみましょう。

 

※ kick、cook、sick、tick、took、neck、knock、hook、luck、lock、rock、back、book…

※ at、cut、sat、sit、set、knit、net、not、hat、hit、foot、hot、mat、met、rat、let、lot…

 

 

これらの単語は、「一音節」です。

実は、音声学的には、(「子音」+)「母音」+「子音」の発音は「一音節」になるのです。

 

たとえば、「knock」の発音は、簡易的に表示すると[nok]となります。

末尾の[k]の音には「母音」が付いていません。

ですから、これは、[o]というひとつの「母音」で完結する「一音節」の発音であるということになります。

 

[nok]は「一音節」です。

 

 

一方、日本人は、「knock」を「ノック」と表記し、[nokku]と発音します。

 

「ノック」の発音には、「母音」が二つ現れています。

[o]と[u]の2つの「母音」を有しているので、この場合の発音は「二音節」となります。

 

[nokku]は、「二音節」です。

 

 

 

日本語の発音体系では、全ての「音」に母音が付属します。

つまり、「子音」だけの発音が存在し得ないのです。(「ん」は例外。)

 

そのため、外来語の「末尾の子音」にも「母音」が付けられ、結果、その語が「二音節」となってしまうわけです。

 

 

 

同様に、漢字の発音も、日本語の特性が作用して、変化してしまうのです。

 

本来、漢字の発音はすべて「一音節」です。

それが、日本語に取り入れる際に、「末尾の子音」に「母音」を付加してしまったために、一部の発音が「二音節」になってしまったのです。

 

 

 

古代中国語の発音がどのようなものだったのか、実は、よくわかっていません。

ですが、たとえば、「国」という字は、本来、[kok]のような音だったと推測することができます。

 

わかりやすく言うならば、ニワトリの鳴きまねをして「コッ・コッ・コッ」というときの「コッ」のような音だったと考えられるわけです。

 

これは「一音節」です。

 

その発音は、「コク」という音読みを与えられて、日本語に「移入」されました。

 

これは、「二音節」です。

 

 

「国」という字は、「国語」(「コク」ゴ)「国民」(「コク」ミン)「国際」(「コク」サイ)などの熟語を構成するときには「コク」という「二音節」の読みになります。

 

ところが、「国家」(「コッ」カ)「国旗」(「コッ」キ)「国境」(「コッ」キョウ)などの熟語を構成するときには「コッ」という「一音節」の読みになります。

 

これは、後ろにあらわれる「音」によって、「国」の「本来の発音に近い音」が出現するためなのです。

 

 

 

実は、現代の中国語の共通語(北京語・普通語)では、末尾に[k]や[t]が置かれる発音は、完全に消失してしまっています。

 

一方、中国語の「方言」には、古代中国語の発音(の一部)を残しているものもあります。

 

その代表は、香港などで話されている「広東語」(粤語)です。

「広東語」には、末尾の[k]や[t]が残存しています。

 

 

「広東語」の「国(國)」の発音を簡易的に表すと、 [gwok]になります。

日本人には、「グォッ」と聞こえます。

 

末尾の[k]は、聞こえるか聞こえないか、くらいの音で、のどの奥を閉めて、音を遮断するようにして発音します。

音声学的には、「声門閉鎖音」と呼ばれるものです。これは、日本語の「促音」(「ッ」の音)に近い音です。

 

 

 

音読みの末尾が「キ・ク・ツ・チ」になる漢字には、同じように、末尾が「ッ」に変化する「促音化」が起こります。(一部、例外がありますが。)

 

 

・石鹸「セキ」→「セッ」ケン

・敵機「テキ」→「テッ」キ

 

・学校「ガク」→「ガッ」コウ

・落下「ラク」→「ラッ」カ

 

・鉄柱「テツ」→「テッ」チュウ

・決心「ケツ」→「ケッ」シン

 

・日記「ニチ」→「ニッ」キ

・吉報「キチ」→「キッ」ポウ

 

 

それぞれの漢字は、「広東語」では以下のような発音になります。(「声調」の表記を省きました。)

 

・石 [sek]

・敵 [dik]

 

・学(學) [hok]

・落 [lok]

 

・鉄(鐵) [tit]

・決 [kuet]

 

・日 [yat]

・吉 [gat]

 

 

やはり、末尾に[k]と[t]が現れていますね。

 

 

 

(ivy 松村)

 

「音読み」の話②

漢字の「音読み」は、基本的には「一音節」ですが、中には、「二音節」の音読みの漢字があります。

 

「二音節」の音読みの漢字の末尾の音は、下のいずれかの音になります。

 

 

「キ」「ク」「ツ」「チ」

 

 

これらの漢字は、「訓読み」と間違えやすいので気をつけましょう。

 

漢字の語末の読みが「キ・ク・ツ・チ」となっているときには音読みの場合が多い、と知っておくととても便利です。

 

 

 

◎音読みの語末が「キ」となる漢字の例:

 

域「イキ」、駅・液「エキ

式・色「シキ」、席・咳「セキ

敵・的「テキ

壁・癖「ヘキ

力「リキ」、歴・礫「レキ

劇・激「ゲキ

直「ジキ

 

 

 

◎音読みの語末が「ク」となる漢字の例:

 

悪・握「アク」、育「イク」、屋・億「オク

各・角「カク」、菊「キク」、国・告「コク

策・柵「サク」、則・足「ソク

宅・択「タク」、竹・築「チク」、特・得「トク

肉「ニク

白・箔「ハク」、福・服「フク」、北「ホク

幕・膜「マク」、目・木「モク

訳・約「ヤク」、欲・翌「ヨク

楽・落「ラク」、陸「リク」、六「ロク

額・学「ガク」、極・獄「ゴク

軸・竺「ジク」、俗・賊「ゾク

濁・諾「ダク」、毒・独「ドク

爆・漠「バク」、僕、墨「ボク

客・脚「キャク」、局・曲「キョク

借・尺「シャク」、祝・宿「シュク」、食・職「ショク

着・嫡「チャク」、直・勅「チョク

若「ニャク

百「ヒャク

脈「ミャク

略・掠「リャク」、力・緑「リョク

逆・虐「ギャク」、玉「ギョク

弱・若「ジャク」、宿・塾「ジュク」、辱「ジョク

白・百「ビャク

 

 

 

◎音読みの語末が「ツ」となる漢字の例:

 

圧「アツ」、逸「イツ」、鬱「 ウツ」、越・悦「エツ」、乙「オツ

活・克「カツ」、喫・詰「キツ」、屈・窟「クツ」、血・決「ケツ」、骨・惚「コツ

冊・察「サツ」、失・室「シツ」、節・設「セツ」、卒「ソツ

達「タツ」、秩・窒「チツ」、鉄・哲「テツ」、突・凸「トツ

熱・捏「ネツ

発・髪「ハツ」、必・筆「ヒツ」、仏・沸「フツ

末「マツ」、密・蜜「ミツ」、滅「メツ」、物「モツ

率・律「リツ」、列・劣「レツ

月「ガツ」、月「ゲツ

雑「ザツ」、実・日「ジツ」、絶・舌「ゼツ

奪・脱「ダツ

罰・抜「バツ」、仏・物「ブツ」、別・蔑「ベツ」、没・勃「ボツ

出「シュツ

術・述「ジュツ

 

 

 

◎音読みの語末が「チ」となる漢字の例:

 

一「イチ

吉「キチ

七・質「シチ」、節「セチ

日「ニチ

八・鉢「ハチ

律「リチ

罰「バチ

 

 

 

訓読みの末尾が「き・く・つ・ち」となっている漢字もあるので注意しましょう。

 

 

◎末尾が「き・く・つ・ち」となっている訓読みの漢字の例:

 

※(  )内は音読み

 

 

息「いき」(ソク)

粋「いき」(スイ)

沖「おき」(チュウ)

垣「かき

柿「かき

茎「くき」(ケイ)

先「さき」(セン)

崎「さき」(キ)

隙「すき」(ゲキ)

関「せき」(カン)

滝「たき

月「つき」(ガツ、ゲツ)

時「とき」(ジ)

軒「のき」(ケン)

牧「まき」(ボク)

巻「まき」(カン)

匹「ひき」(ヒツ)

雪「ゆき」(セツ)

脇「わき」(キョウ)

 

奥「おく」(オウ)

枠「わく」 ※国字

 

厚「あつ」(コウ)

且「かつ

靴「くつ」(カ)

竜「たつ」(リュウ)

筒「つつ」(トウ)

夏「なつ」(カ)

初「はつ」(ショ)

松「まつ」(ショウ)

 

市「いち」(シ)

内「うち」(ナイ)

口「くち」(コウ)

幸「さち」(コウ)

土「つち」(ド・ト)

栃「とち」 ※国字

後「のち」(ゴ、コウ)

蜂「はち」(ホウ)

縁「ふち」(エン)

淵「ふち」(エン)

町「まち」(チョウ)

街「まち」(ガイ)

道「みち」(ドウ)

餅「もち」(ヘイ)

 

 

(ivy 松村)

 

「音読み」の話①

漢字の音読みは、基本的に「一音節」です。

 

たとえば、以「イ」、呂「ロ」、波「ハ」、似「ニ」…というように、漢字の音読みの発音は、ひとつの「母音」を基準にしています。

 

 

漢字の中には、音読みの発音が「二重母音」のものもあります。

しかし、一般的には、「二重母音」は「一音節」として数えますので、これらはやはり「一音節」の漢字ということになります。

 

 

◎「二重母音」の音読みの漢字の例:

 

藍・愛「アイ」、英・永「エイ」、王・桜「オウ

会・回「カイ」、空「クウ」、計・系「ケイ」、甲・項「コウ

再・最「サイ」、水・酔「スイ」、数・枢「スウ」、正・政「セイ」、層・双「ソウ

体・帯「タイ」、対・追「ツイ」、通・痛「ツウ」、帝・亭「テイ」、塔・党「トウ

内「ナイ」、寧「ネイ」、能・脳「ノウ

灰・肺「ハイ」、封・風「フウ」、兵・塀「ヘイ」、報・邦「ホウ

毎・枚「マイ」、明・命「メイ」、毛・網「モウ

唯・遺「ユイ」、有・憂「ユウ」、用・様「ヨウ

来・雷「ライ」、類・累「ルイ」、令・礼「レイ」、郎・老「ロウ

歪・賄「ワイ

 

外・街「ガイ」、偶・宮「グウ」、芸・迎「ゲイ」、号・郷「ゴウ」

在・材「ザイ」、随・隋「ズイ」、税・勢「ゼイ」、象・蔵「ゾウ」

台・題「ダイ」、泥「デイ」、堂・銅「ドウ

倍「バイ」、米「ベイ」、棒・某「ボウ

 

九・旧「キュウ」、凶・京「キョウ

週・州「シュウ」、将・賞「ショウ

中・注「チュウ」、丁・腸「チョウ

乳・柔「ニュウ」、尿「ニョウ

票・豹「ヒョウ

妙・名「ミョウ

竜・流「リュウ」、両・量「リョウ

 

牛「ギュウ」、行・凝「ギョウ

銃・重「ジュウ」、情・条「ジョウ

謬「ビュウ」、秒・病「ビョウ

 

 

 

また、語末が「ン」の発音となっている音読みの漢字もあります。

しかし、語末の「ン」は、それのみを「音節」にカウントしないことになっているので、やはりこれらの漢字も「一音節」の音読みの漢字ということになります。

 

 

◎音読みの語末が「ン」となる漢字の例:

 

安・暗「アン」、印・院「イン」、運・雲「ウン」、演・円「エン」、音・恩「オン

感・勘「カン」、金・菌「キン」、訓・君「クン」、県・件「ケン」、紺・根「コン

三・算「サン」、真・進「シン」、寸「スン」、線・栓「セン」、損・尊「ソン

単・丹「タン」、珍・陳「チン」、点・天「テン」、豚・頓「トン

難・南「ナン」、任・忍「ニン」、年・念「ネン

判・班「ハン」、品・貧「ヒン」、分・墳「フン」、辺・変「ヘン」、本・奔「ホン

万・満「マン」、民・眠「ミン」、面・綿「メン」、門・紋「モン

乱・蘭「ラン」、林・輪「リン」、連・恋「レン」、論「ロン

湾・椀「ワン

 

岸・癌「ガン」、銀・吟「ギン」、軍・郡「グン」、玄・現「ゲン」、権、言「ゴン

残・斬「ザン」、陣・仁「ジン」、全・善「ゼン」、存「ゾン

段・団「ダン」、伝・田「デン」、鈍・呑「ドン

番・晩「バン」、瓶・便「ビン」、文・聞「ブン」、弁・便「ベン」、盆、凡「ボン

 

旬・駿「シュン

順・準「ジュン

 

 

(ivy 松村)

 

 

お知らせ「春期講習会」

春期講習会のお知らせです。

 

 

ivyの春期講習会が、3月27日(月)からはじまります。

 

新規講習生は、全学年「春期講習料無料+4月度授業料免除」となります。

ぜひご検討ください。

 

 

 

syunki_1

 

 

 

 :mrgreen: 小学部

 

 :lol: 小4 :lol: 

   :oops: 4/1~4/4  (4日間

   :arrow: 13:30~15:20    算数・国語

 

 

 :lol: 小5 :lol: 

   :oops: 4/1~4/4 (4日間

   :arrow: 13:30~15:20    算数・国語

 

 

:lol: 小6 :lol: 

   :oops: 3/27~3/30 (4日間

   :arrow: 13:30~15:20    算数・国語

 

 

 :lol: 小6 都立中受検コース :lol: 

   :oops: 3/27~3/29、4/2~4/4 6日間

   :arrow: 15:30~18:20 文系・理系・作文

 

 

 

 :mrgreen: 中学部

 

 :lol: 中1 :lol: 

   :oops: 3/27~3/30 (4日間

   :arrow: 18:40~21:30 英語・数学・国語

 

 

 :lol: 中2 :lol: 

   :oops: 3/27~3/30、4/1~4/4  (8日間

   :arrow: 18:40~21:30 英語・数学・国語

 

 

 :lol: 中3 :lol:   

   :oops: 3/27~3/30、4/1~4/4  8日間

   :arrow: 18:40~21:30 英語・数学・国語

 

 

 

塾では、学校よりも一足早く新年度がはじまり、期待とやる気に満ちあふれた表情で勉強に取り組む生徒たちの姿が見られます。

 

さらに、これから塾での勉強を始めようとしている人。

 

 

この春に、みなさんがどれだけ力を伸ばしていくのか、とても楽しみです。

 

いっしょにがんばりましょう。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

平成29年度都立高校入試の社会④

平成29年度都立高校入試の社会の解説の最終回です。

 

 

○大問5 公民

 

 

〔問1〕

 

自由権のうち、「経済活動の自由」について書かれた憲法の条文を選ぶ問題です。

 

正解は、「イ」になりますが、この問題、ちょっと気になります。

実は、過去に「全く同一の内容」が出題されています。

「憲法の条文」なので、答えの選択肢の内容も一字一句そのまま同じです。

平成25年度の大問5〔問1〕です。

 

故意なのか、それとも別の理由があるのか。

どうなんでしょうね。

 

 

 

〔問2〕

 

「株式会社」という「テーマ」はこれまでにないものでしたが、「○×の組み合わせ」を答える問題は、平成23年の大問5〔問2〕、22年の大問5〔4〕でも出されています。

 

「知識系」ですが、2つの項目について正誤判断を行うだけなので、それほど「難しい」問題というわけではありません。

しかし、これまでにない「テーマ」で、「単純すぎる構成」の作りがちょっと気になります。

 

 

 

〔問3〕

 

2000年代以降の「現代」がとり上げられています。

受験生の「記憶」にあるような「身近な時代」が出題されるのは、ちょっと珍しいと思います。

 

しかし、本問の「テーマ」は「グラフの読み取り」なので、「知識」に頼らなくても、しっかりとグラフを見て、選択肢の記述と照らし合わせて検討することで、正答を導くことができます。

 

 

「ア」…景気は緩やかに回復した

「イ」…景気回復を目指し…景気は2年間回復したが、その後すぐに後退した

「ウ」…景気が急速に回復

「エ」…大幅に景気が後退…景気回復は短い期間にとどまった

 

 

景気が回復に向かう時期を示している「ア」と「ウ」が、BとDのいずれかに当てはまります。

したがって、Cに当てはまらない「ア」と「ウ」を解答の候補から除外します。

 

 

一応、それぞれの記号の対応を確認しましょう。

 

Bの時期に、後退する局面もありましたが、わが国の経済成長率は「-1パーセント」から「1パーセント」に回復しています。

Dの時期には、わが国の経済成長率は「-2パーセント」から「2パーセント」に回復しています。

 

「全体」で、Bの時期に経済成長率は「2パーセント」回復し、Dの時期には「4パーセント」回復したことになります。

つまり、それぞれの選択肢を整合させると、「ア」がB、「ウ」がCに当てはまるということになります。

 

「ウ」で述べられている「新たな経済政策」というのは、いわゆる「アベノミクス」です。また、消費税が8パーセントに引き上げられたのは、2014年です。

最近のことなので、ほとんどの受験生はDの時期が「ウ」であると判断することができたでしょう。

 

 

さて、Aの時期を見てみると、景気が後退→2年間景気が回復→2年間景気が後退、となっています。

この時期の「全体」では、経済成長率は「2パーセント」から「-1パーセント」に後退しています。

 

A~Dの中で、「2年間景気が回復した後に、後退する」という経過を示しているのはAとBだけですが、Bは、先に述べたように、「景気が回復に向かう時期」になるので、「イ」の内容に合致するのはAの時期ということになります。

 

 

正解は「エ」になります。

 

 

Cは、グラフに示された18年間で、もっとも景気が後退した時期です。

2009年に、経済成長率は「-6パーセント」にまで落ち込みます。

翌年、景気は回復し、「2パーセント」となりますが、次の年には再度景気が後退し、経済成長率は「-2パーセント」となります。

これは、「エ」の選択肢にある「大幅に景気が後退」、「景気回復は短い期間にとどまった」という記述と一致します。

 

 

Cは、2007年から2011年の期間なので、今年の受験生の「小学校時代」と重なります。

この時期の「世相」が記憶にあれば、かなり有利でした。

「アメリカ合衆国の証券会社の破綻」というのは、2008年に起こった、いわゆる「リーマンショック」です。翌年に、日本だけでなく世界中の景気が後退することになりました。

 

 

 

〔問4〕

 

これは、何というか、「都立らしくない」問題でした。

〔問2〕もそうですが、本問も、「不親切」というか「大雑把」な作りになっていて、ちょっと気になりました。

(もしかすると、当初は「記述問題」として作られた設問だったのかもしれません。)

 

 

 

「テーマ」は、「消費者問題」です。これは、わりとよく出題される「テーマ」です。

過去には、平成25年度の大問5〔問3〕、平成18年度の大問1〔3〕、平成12年度の大問5の〔問2〕などでも出題されました。

 

 

Ⅰの文章に書かれてある法律は「製造物責任法(PL法)」です。

「製造物責任法」については、平成19年度の大問5〔問2〕(2)の「ア」、平成13年度の大問5〔問3〕の「ウ」でもとり上げられています。

 

 

「製造物責任法」が制定されたのは1994年です。

 

Ⅲのグラフを見ると、1993年ごろから、「危害や危険がある可能性のある製品の情報件数」が増加していることがわかります。

 

「消費者の権利」への関心が高まってきた時期に「製造物責任法」は、制定されました。

そして、また、この法律が制定されたことによって、さらに「消費者の権利」への関心いっそう高まっていったことを、グラフは示しているというわけです。

 

 

正解は「ウ」になるわけですが、Ⅰで述べられている法律を、2004年に改正された「消費者基本法」のことだと勘違いし、「エ」を選んでしまった受験生も多くいたのではないかと思います。

 

この設問は、「製造物責任法」というワードを、あえて出さない「作り」になっているわけですが、それが意図的なものなのか、それとも「作問上の成行き」なのか、ちょっと気になります。

 

 

 

それにしても、今年の大問5は、ちょっと「奇異な印象」を受けます。作問をした人がどんな意図を持っていたのか、気になりますね。

 

 

 

○大問6 融合問題

 

 

〔問1〕

 

A メキシコ

B ベトナム

C バングラデシュ

D エジプト

 

 

「ア」のヒント

・フランス領インドシナ→東南アジア

・1976年に社会主義国として統一

・米の輸出国→アジア諸国

・ドイモイ政策

→B ベトナム

 

「イ」のヒント

・オスマン帝国による支配

・運河→スエズ運河

・人為的な国境線→緯線・経線に沿った直線の国境線

・石油、天然ガス→中東・北アフリカ

→D エジプト

 

「ウ」のヒント

・ムガル帝国による支配→南アジア

・パキスタンから独立

→C バングラデシュ

 

「エ」のヒント

・アステカの遺跡

・1968年の夏季オリンピック

・隣国の巨大な消費市場→アメリカ合衆国

→A メキシコ

 

 

 

「ア」の「フランス領インドシナ」というワードは、近現代史に登場します。

第二次世界大戦が勃発し、ドイツはフランスを占領します。それに乗じて、フランスの植民地だった「フランス領インドシナ」に日本軍が侵攻します。

当時、そう呼ばれていた地域が、東南アジアであると特定できれば、「ア」とBを整合させることができます。

 

ちなみに、「インドシナ」は、「インド」と「シナ」を合わせた造語です。「シナ」とは「China」のことで、フランス語で「シナ」と発音します。

「東シナ海」という海がありますが、もちろん、「中国の東の海」という意味です。

 

 

 

19世紀から20世紀にかけての東南アジアの「状況」をおさえておきましょう。

 

・ベトナム、カンボジア、ラオス…フランスの植民地

・マレーシア、ミャンマー、シンガポール…イギリスの植民地

・インドネシア…オランダの植民地

・フィリピン…スペインの植民地→アメリカの植民地

・タイ…フランスとイギリスの「緩衝地帯」として独立を維持

 

 

 

「イ」の選択肢は、ヒントとなるワードが多くあるので、比較的容易にDと特定することができます。

 

エジプトのスエズ運河に関する問題は、ちょっと前の入試では、よく出題されていました。

平成11年の大問6〔問3〕、平成10年の大問6〔問1〕、平成7年大問2の〔問4〕、平成6年大問2の〔問4〕などです。

 

 

 

「ウ」は、やはり「ムガル帝国」から、南アジアを選ばなければなりません。

ちょっとびっくりさせられますが、インドをはさんで東西に位置するパキスタンとバングラデシュは、かつては同じ国だったのです。

(まあ、でも、アメリカ合衆国も「メインランド」とアラスカ州がカナダにはさまれているので、似たようなものでしょうか。)

 

インド、パキスタン、バングラデシュは、ともにイギリスの植民地でした。

第二次世界大戦後、この地域が独立することになるのですが、インドは、ヒンドゥー教徒が多くを占める国で、パキスタンとバングラデシュはイスラム教徒が多い地域でした。

そのため、インドとは別に「その東西の地域」がパキスタンとして独立したのです。

そして、その後、「東側」がバングラデシュとしてパキスタンから分離独立したわけです。

 

バングラデシュは、なじみの薄い国なので、受験生はちょっと迷ったかもしれませんが、他の国の位置と記述内容を整合させていくと、最終的には、「ウ」とCを一致させることができます。

 

ちなみに、バングラデシュは、本問とは別のテーマでしたが、平成16年の大問2〔問1〕および〔問2〕でとり上げられました。

 

 

 

「エ」は、「アステカの遺跡」というワードから、Aのメキシコであると特定できます。

 

余談ですが、サッカーの日本代表が、国際大会で初めて「入賞」を果たしたのがメキシコオリンピックでした。この大会で、日本代表は銅メダルを獲得しています。

近年、日本のサッカーは大きく発展し、アジア大会やアジアカップでは何度も優勝するまでに躍進しました。しかし、「世界大会」で3位になったのは、このときだけです。

(女子は、ワールドカップで優勝し、オリンピックで銀メダルを獲得しています。)

 

メキシコオリンピックは、1964年の東京オリンピックの「次に」開かれた大会でした。

日本サッカー協会は、当初、東京オリンピックに向けて計画的に代表チームの強化を図ったのですが、「結果」が出たのは、その4年後だったわけです。

 

サッカーに限らず、何事も、実力を養うには一朝一夕にはいかないものですね。

 

まあ、というわけで、この問題も、サッカーファンに有利な問題だったのかもしれません。

 

 

また、アジア・アフリカ諸国の中で、オリンピックを開催したことがあるのは日本、韓国、中国だけであるということを知っていれば、必然的に「ウ」の選択肢はAのメキシコとなることがわかります。

 

 

 

ちなみに、私はメキシコにも行ったことがあるんですね。

下の写真は、メキシコのビリャエルモサという町の、野外博物館で撮ったものです。

そこは古代文明のいろいろな石像がたくさんあって、楽しかったですね。

 

 

Villahermosa

 

私がかぶっているメキシコの独特のぼうしをソンブレロというのですが、これが気に入って、キューバに行くまでずっとかぶってましたね。

 

そうそう、メキシコに行って、そこからキューバに入国したのです。

キューバの飛行機の「ドライアイス」の写真が見つかったので、ついでに載せておきますね。

 

 

Cubana_air

 

…機内が「ドライアイス」の煙だらけですね。でも、ちょっとお祭りみたいで楽しかったですよ。

 

 

 

〔問3〕

 

Ⅱの文章には、「この時期の前半…中東依存度は下降傾向を示した」とあるので、「ウ」と「エ」の選択肢が消去されます。

「エ」の時期に中東依存度の下降が見られますが、これは、この時期の「後半」に起こっているので、「エ」は当てはまりません。

 

さらに、この時期の前半に「原油の総輸入量も減少した」とあります。

 

これによって、正解は「イ」であると特定できます。

 

また、この時期の後半に「原油の総輸入量は再び増え、中東依存度も上がった」とあるので、やはり当てはまるのは「イ」であると確認できます。

 

 

 

〔問3〕

 

「記述問題」ですが、大問3〔問3〕と同じく、「理由」を述べるだけなので、それほど難しくはありません。

 

「テーマ」は、「国際競争力」です。

 

この設問は一見、新出の「内容」のように思えますが、その「テーマ」は既出です。

平成25年の大問3の〔問3〕と酷似しています。

 

「グローバル化」に対応し国際競争力を高める近隣諸国に対し、日本の「優位性」が相対的に低下しているという「課題」が、設問の「テーマ」となっています。

 

都立の社会の「記述問題」は、日本あるいは世界の「課題」、「問題」を取り上げることが多いので、普段から意識しておきましょう。

(推薦入試を考えている人は、「なおさら」ですね。)

 

 

 

さて、今年の都立の社会ですが、1問ずつチェックしながら、実感したのは、「国語の能力」がなければ得点できない、ということでした。

 

なによりも、設問を「読解」できなければ答えを導けないわけです。

 

それから、「社会の知識」というよりも、むしろ、「広範な一般常識」を持っているほうが「有利」になるような作りになっています。普段から、本や文字媒体を通して「いろいろな知識」に「アンテナ」を張っている受験生は強さを発揮するでしょう。

「読書量」、そして語彙を含む「知識量」は、「国語の能力」に直結します。

 

そして、やはり「記述問題」ですね。

5科の中で、「本格的」な「記述問題」が出題されるのは社会だけになっています。(理科の「記述問題」はシンプルな内容になってしまいました。)

 

 

国語の入試問題が荒廃的な様相を強める一方で、社会の入試問題が「国語の能力」を検査する機能を果たすという、ちょっとねじれた状況になっています。

 

 

 

最後に、このブログを読んで、「勘違い」をする人がいそうな気がしたので、念のため、ちょっとだけ書きます。

 

よく、あちらこちらで、入試問題の「傾向」という話題がとり上げられますが、その本質をとらえ違えている人が割と多くいるように思います。

 

「ある事項」の「出現頻度」だけを見ても、それだけでは、有用なデータとはなりません。

 

また、「出題パターン」のような、表面上の「形式」ばかりにとらわれるのも、ちょっと危ないと思います。特に歴史分野で、過去の「出題パターン」に特化した「マニュアル」に依存しすぎてしまうと、対応力が退化し、新しい形式や新出の内容が出てきたときに困るかもしれません。

 

 

 

重要なのは、入試問題の「構造」をとらえることです。

 

「構造」を理解していれば、新奇の形式や初出の内容がちりばめられた問題が、本当に「新傾向」なのかどうか、見定めることができます。また、それに対応することができるわけです。

 

 

で、その「構造」って何?という話ですが、長くなるので、また、いつか。

 

 

(ivy 松村)

 

 

平成29年度都立高校入試の社会③

○大問3 日本地理

 

 

〔問1〕

 

 

A 山形県、酒田市・最上川

B 千葉県、銚子市・利根川

C 広島県、広島市・太田川

D 宮崎県、宮崎市・大淀川

 

 

 

「ア」のヒント

・三角州

・城下町

→A 広島市

 

「イ」のヒント

・流域面積16840㎢→最大の流域面積

・潮目、漁港

→B 銚子市

 

「ウ」のヒント

・冬期でも温暖な気候

→D 宮崎市

 

「エ」のヒント

・雪解けの時期の水の水量が最も多い→日本海側の豪雪地帯

・銘柄米、穀倉地帯

→A 酒田市

 

 

 

「三角州」といえば、広島市です。

これは「鉄板」なので、覚えておかなければなりません。

 

ちなみに、前回の記事でも触れましたが、以前に時事問題について書きました。

その中で、広島が出題されやすいと述べていました。

 

2016年の時事問題

 

この記事では、他にも「ブラジル」が「ポルトガルの植民地」だったことについて指摘していました。

「選挙」「ブラジル」「広島」について、「ドンピシャ」でした。けっこうな「打率」です。

 

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試では、圧倒的に有利でした。

 

 

 

太田川については、22年度の大問3の〔問1〕、平成13年の大問3の〔3〕、平成6年の大問3〔問1〕でも出題されました。

 

また、最上川については、平成15年度の大問3の〔1〕の「ウ」、平成9年大問3の〔2〕で出題されています。

 

 

 

〔問2〕

 

 

P 室蘭港

Q 新潟港

R 名古屋港

S 大阪港

 

 

Ⅱの文章に「南西から北東へ入り込む湾の奥に位置し」とあるので、PとQが消去されます。

 

さらに、「製鉄所」、「家庭用電気製品の工場」というヒントにより、Rの名古屋港が消去されます。名古屋港は、トヨタ自動車で有名な豊田市で生産された自動車の積出港です。

もし、正解がRならば、そのことに触れないはずはありません。

 

よって、答えはSの大阪港になります。

 

ちなみに、「家庭用電気製品の工場」とは、枚方市や門真市にあるパナソニックの工場のことです。また、工場跡地に建設されたテーマパークとは、「ユニバーサルスタジオジャパン」のことです。

 

 

Ⅰを検討します。

輸出額と、輸出品目に占める自動車および関連部品の割合の大きさから、「ウ」がRの名古屋港であることがわかります。

 

「エ」の輸出品目に「鉄鋼」があるので、「エ」を選びたくなりますが、輸出額が少なすぎることと、「鉄鋼」の割合が大きすぎることに気づけば、この選択肢を回避できます。「エ」は、「製鉄所」がある室蘭です。

 

「ア」が新潟で、大阪は「イ」になります。

 

1970年は、日本の高度成長期にあたりますが、この時期の日本は、「鉄鋼」が「花形産業」でした。この年、大阪港や名古屋港からも、盛んに「鉄鋼」が輸出されています。

 

現代の日本は、高度な技術力を活かした高品質の機械工業製品や「ハイテク製品」が輸出の主力になっていますので、「鉄鋼」の割合は大きくありません。

 

ですから、「エ」の室蘭のように、近年も「鉄鋼」の割合が大きいのは、かなり特殊です。

(今も「鉄鉱」が主力であるということは、ある意味で、室蘭は、産業構造が転換されていないということでもあります。)

 

 

この設問では、Ⅱの文章の「製鉄所」にひきつけられて、「エ」を選んで不正解となった受験生が多くいたはずです。

 

大阪という日本有数の港湾のデータとして、「エ」は釣り合わないということに気づくことができるかどうかが、本問の「ポイント」でした。

 

別の考え方としては、「高度経済成長期をけん引する役割を果たしてきた」港であるということなので、1970年に441億円という輸出額は少なすぎるということ、また、「もみ及び玄米」という輸出品目が上位3位に入るのはおかしいということ、それが、「エ」を消去する「決め手」になります。

 

 

「輸出港」という題材を使った出題は、平成12年の大問3の〔問2〕でも見られました。

この設問でも、名古屋港、大阪港がとり上げられています。

 

 

 

〔問3〕

 

Ⅱから、A村では、高齢化が進んでいることを読み取ります。

Ⅲから、唯一のガソリンスタンドが廃業した場合、A村の住人は村外にガソリンを買いに行かなければならなくなるということを読み取ります。

 

 

今年の「記述」は2題でしたが、どちらもそれほど難しい問題ではありません。

「採点」のことを考慮して作られていると思います。

 

 

 

○大問4 歴史

 

 

〔問1〕

 

「ア」は飛鳥時代、「聖徳太子」「推古天皇」「冠位十二階」「隋」

「イ」は平安時代、「平清盛」「平治の乱」「大輪田の泊」「宋」

「ウ」は弥生時代、「卑弥呼」「邪馬台国」「魏」

「エ」は奈良時代、「大宝律令」「唐」

 

 

それぞれの選択肢のトピックが、過去に取り上げられているかどうか調べてみました。

 

「ウ」の「卑弥呼」は、意外にも初出です。

 

「ア」は、平成24年度大問4の〔問1〕。

 

「イ」は、平成23年度大問4の〔問3〕、平成12年度大問4〔問3〕。

ちなみに、平成12年度の問題では、「大和田の泊」という表記でした。

 

「エ」は、平成25年度大問4〔問1〕、平成24年度大問4〔問1〕、平成22年度大問4〔問1〕、平成17年度大問4〔問1〕、平成年度9大問4〔問1〕。

 

 

 

〔問2〕

 

「元禄文化」は、17世紀後半から18世紀前半に栄えた文化です。

そのことを知っていれば、即座に「ウ」を選ぶことができます。

 

ちなみに、私は、過去に以下のような記事を書きました。

 

都立高校入試の社会対策

 

この中で、「絵画の歴史」を取り上げて、歴史の入試対策をレクチャーしています。

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試で、圧倒的に有利でした。

 

 

 

「見返り美人図」の作者である菱川師宣は、浮世絵の創始者とされる「画家」です。

 

 

過去に、「画家」や「絵画」が題材となった問題を調べてみました。

 

以下の年度で、「画家」や「絵画」の問題が出ました、

 

 

・平成24年度の大問4〔問2〕(A)

・平成20年度の大問4〔問2〕(B)

・平成13年度の大問4〔問1〕(C)

・平成10年度の大問4〔問2〕(D)

・平成9年度の大問4〔問2〕(E)

・平成9年度の大問6〔問1〕(F)

 

 

その「内容」を「時代順」に並べました。確認してみましょう。

 

 

※「高松塚古墳壁画」(E)

※…踊り念仏などによって修業や布教をする一遍の様子が絵巻物に描かれた。(B)

※一遍が…踊り念仏などによって布教活動を行い、時宗を開いていく「一遍上人絵伝」(C)

※「一遍上人絵伝」(E)

※雪舟は宋や元、明の画風を取り入れ、「破墨山水図」を描いた。(A)

※雪舟は、中国から帰国後、…水墨画を大成した(D)

※雪舟は、自然の風景を墨の濃淡で巧みに表現し「秋冬山水図」を描いた(F)

※狩野永徳は、…城や寺院の襖や屏風に絢爛豪華な絵を多数描いた。(A)

※俵屋宗達は宋の画法を取り入れ、「源氏物語関屋澪標図屏風」を描いた。(A)

※尾形光琳は、はなやかな色彩で「紅白梅図屏風」を描いた。(F)

※葛飾北斎は西洋の画法を取り入れ、「富嶽三十六景」を描いた。(A)

※葛飾北斎は、はっきりした線や強烈な色彩で「富嶽三十六景」を描いた。(F)

※黒田清輝は、明るいのびやかな画調で「湖畔」を描いた。(F)

 

 

 

こうしてみると、「菱川師宣」の「見返り美人」は、「意表を突く」出題だったことがわかります。

 

かねてより、私は、都立高校の社会の入試問題には、出題に「偏り」があることを指摘してきました。

たとえば、上の表を見ると、「一遍」や「雪舟」は3度も出題されていることがわかります。

 

こうした「偏り」をつかむことは、「受験指導」のひとつの「要素」ではあったわけです。

 

ところが、今年から、「傾向」が変わりました。

「歴史」だけでなく、「地理」や「公民」でも「初出」の単元や事項が多く盛り込まれました。

 

もちろん、「これまで出題されなかったものが、ある年に初めて出題された」というようなことはいくらでもあり得るわけですが、今年は、かなりの「量」が「投入」されています。

 

 

これは、意図的なものなのだろうと思います。

 

これまでも、都立高校の入試では、「受験者側の研究」が進むと、出題傾向が変更されるということが何度かありました。

これまでのものは、いってみれば、ちょっとした「マイナーチェンジ」程度のものだったのですが、今回は、かなり「作り込んできた」印象です。「意志」が感じられます。

 

 

今年の入試問題を「基準」にすると、「受験者側」は、今後、「何が狙われやすいか」という観点とは「別の視角」を持つ必要があるわけです。

すなわち、「これまで出題されていないものが狙われる」というものです。

 

 

「これまで出題されていたものが狙われる」+「これまで出題されていないものが狙われる」…。

 

それは、結局、「どれもが狙われる可能性がある」ということです。

 

「出題者側」は、「偏った出題」を修正することで、「受験生側」の「偏った受験勉強」を是正しようとしているわけです。

 

 

昨年までの都立高校入試の社会は、「過去の出題傾向」をおさえる勉強方法が「効果的」でした。

 

しかし、今年の入試の「変化」にともなって、指導方法を変えなければならない塾が出てきそうです。

 

 

ちなみに、当塾は、次年度も、今までどおりの指導を行います。

 

今年都立高校を受験した生徒の得点は、過去問演習時と比べてまったく落ちることはなかったので、一切変える必要がありません。

 

 

 

ついでながら書き添えると、「絵画の歴史」では、過去に出題された「内容」の他に、

 

・国風文化 「絵巻物」「源氏物語絵巻」

・鎌倉文化 「似絵」

・化政文化 「歌川広重」「東海道五十三次」

 

 

などもおさえておく必要が出てきたわけです。

 

 

 

〔問3〕

 

 

グラフから、当時の日本は、「綿花」の輸入が多く、「繭」の輸入が少ないことがわかります。

 

以下の知識を知っておかなければなりません。

 

・「綿花」→「綿糸」→「綿織物」

・「繭」→「生糸」→「絹織物」

 

 

ちなみに、「綿糸」(や「毛糸」)を作ることを「紡績」、「生糸」を作ることを「製糸」といいます。

 

「綿糸」や「生糸」の段階で輸出することもあれば、「綿織物」「絹織物」に仕上げて輸出する場合もあるわけです。

 

 

輸出額(外国に売る額)が輸入額(外国から買う額)を下回ることを「赤字」(損益が出る)といいます。

逆に、輸出額(外国に売る額)が輸入額(外国から買う額)を上回ることを「黒字」(利益が出る)といいます。

 

 

当時の日本は、一般に「綿織物」が普及していました。

国内の需要に対して、原料となる「綿花」の国内生産が追いつかなかったので、「綿花」を輸入していたわけです。

「綿糸」や「綿織物」の輸出も行われていましたが、原料の輸入額が製品の輸出額を上回っていたので、これは「赤字」の状態だったわけです。

 

一方、当時の日本は、国内で「繭」の生産を行っていたので、生産された「生糸」や「絹織物」を輸出すれば、「黒字」となりました。

 

 

 

〔問4〕

 

 

大正時代の出来事を選ぶ問題です。

大正時代は1912年から1926年までの期間ですが、この「期間」を覚えるのではなく、大正時代のトピックと照合させて、Aの期間が大正時代であると特定するわけです。

 

 

大正時代のトピック:

 

・1914年 第一次世界大戦

・1915年 21か条の要求

・1916年 吉野作造が「民本主義」を提唱

・1917年 ロシア革命

・1918年 米騒動、シベリア出兵、原敬内閣成立

・1919年 ベルサイユ条約、三・一独立運動、五・四運動

・1920年 国際連盟

・1922年 ワシントン会議

・1923年 関東大震災

・1925年 普通選挙法

 

 

以上の「年号」のうち、1914年と1919年、1925年を覚えておけば、後は「何とかなる」でしょう。

 

この問題でも、この3つの「年号」を知っておくことで、Aが大正時代であることが特定できました。

 

 

正答となる「ウ」の選択肢のうち、「ラジオ放送」はおさえておく必要があります。

 

平成21年度の大問4〔問4〕の「エ」、平成16年度の大問6〔問1〕の「イ」などの選択肢に、「ラジオ放送」が組み込まれています。

 

 

ところで、私は過去に以下のような記事をかいています。

 

都立高校入試の社会の取り組み方

 

 

都立の「歴史」は、大正時代をおさえることが重要であると説明しています。

その中で、大正時代を特定する「ワード」として、「ラジオ放送」などを覚えるとよいと、述べています。

 

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試では、圧倒的に有利でした。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

There we go.

本日、都立高校の合格発表がありました。

 

以前、教えていた生徒も、結果の報告に来てくれました。

 

(推薦入試の後、報告に来てくれた生徒もいました。ありがとうございました。)

 

 

これで、平成29年度のすべての受験の日程を終えました。

 

 

 

今年卒業の学年は、今日までにいろいろなことがありすぎて、何か書こうとしてもなかなか考えがまとまりません。

 

 

 

1月の段階で進学先が決まった生徒が多かったのですが、合格の知らせを聞いて、もちろん喜びが湧きあがってくるのですが、すぐに「次の受験」に頭が切り替わってしまいます。

まだ、「先」が残っている人が「優先」になってしまうのです。

 

がんばって一足早く受験を終えた人ほど、「自分任せ」にしてしまいました。

 

でも、わかってもらえると思うのですが、これから「本番」をひかえた人を放っておいて、受かった人と楽しそうにわいわいやっているような無神経の塾講師がいたら、それこそ、ぞっとするはずです。

 

 

 

入塾の際、勉強は大嫌いなので、できれば塾には入りたくない、でも、しょうがないので塾に入ろうと思うが、できるだけ勉強したくない、と言っていた生徒。

あきれて、絶句しました。

でも、その「図太さ」に、何かある、と感じさせられたのも事実でした。

 

最後は、人一倍勉強していました。

周りに流されず、黙々と、当たり前のように勉強を続けました。

 

 

 

教師やまわりの友人を軽んじて、自信家で、損得意識が強かった生徒。

一度、おまえ、その性格直さないと先がないぞ、と言ってブチ切れました。

 

実は繊細で、心配性で、そして、ノリがいい。

少しずつ自分の「美点」を表現できるようになり、本当に「強い」人間に成長した。

 

思いやりと我慢を覚え、真っすぐに、前を見つめて奮闘する日々でした。

 

 

 

平日は5時間、土日は10時間以上毎日毎日勉強。

 

 

 

私は、他の生徒たちが帰った後、整序や適語補充に挑み続けた、あの時間をこれからもずっと、忘れることはないでしょう。

 

 

 

前にも言ったけれど、きみたちは、私にとって、真実、特別な存在です。

 

 

能力を有したものが能力を発揮するのに、どれほどの覚悟がいるというのだろうか。

 

「そういうこと」ではないのです。

 

 

これほどに努力の価値を示した挑戦者を、私は、見たことがないのです。

 

 

 

しかし、私は、あのとき、あとほんの少し、もう少しだけ、「可能性」を引き出さなければならないと感じてしまったのです。「ぎりぎりの状態」から絞り出される必死の「もがき」が、「最後の力」になるのだと。

 

 

今の思いが、伝わってくれているのなら、うれしいです。

 

 

 

全員の進むべき道が定まりました。

 

 

受験を終えたみなさんが、これから、充実した高校生活をおくられることを、心より祈念申し上げます。

 

 

(ivy 松村)

 

 

平成29年度都立高校入試の社会②

昨年に引き続き、都立高校入試の社会の解説をしようと思います。

 

 

その前に、感じたことなど。

 

「作問の方向性」が変わっています。

世界地理分野で「マイナー」な国が積極的に取りあげられています。

また、ちょっとマニアックな構成の設問が見られました。

 

これまでの「流れ」をあえて分断するような構成になっています。

20年分の過去問と対照させてみましたが、その感が強くなりました。

 

おそらく、意図的に、過去に出題されていないトピックを増やしているのだと思います。

 

これは、ちまたにあふれる「マニュアル的な対策」への対抗なのでしょう。

(すごくいいことですね。)

 

 

 

では、各問を見ていきましょう。

 

 

 

○大問1 融合問題(小問集合)

 

 

〔問1〕

 

平成24年度の大問1〔問1〕の類題でした。

 

今年は、「Ⅰ」の地図に経路を書き、そのルートを「Ⅱ」に記入する問題となっています。

解答を記入するまでの「手順」が増えたので、24年度よりも問題が複雑になりました。

 

 

 

〔問2〕

 

 

・奥州藤原氏

・前九年の役、後三年の役

・世界遺産、内部が金で装飾された阿弥陀堂→中尊寺金色堂

 

以上のヒントから、東北・岩手を示す「ア」が正答であると特定できます。

 

中尊寺金色堂に関しては、世界遺産登録される前の平成8年度の大問1〔問2〕で出題されました。

 

 

その他の選択肢:

 

「イ」は富岡製糸場

「ウ」は姫路城

「エ」は石見銀山

 

 

ちなみに、選択肢「ア」が示す「平泉の位置」は、過去に頻出しています。

平成27年度、平成25年度、そして平成24年度の大問1〔問2〕のいずれの選択肢「ア」も、全く同じ平泉を示す地点を指しています。

 

 

 

〔問3〕

 

「時事問題」です。

昨年実施された「18歳選挙」が題材となっています。

 

都立高校の入試では、設問の「周辺」に「時事ネタ」がちりばめられることがたまにありますが、「時事問題」であると言い切れるような設問は、これまで記憶にありません。

 

内容自体は、「選挙の原則」ですから、社会科の知識としては一般的なものですが、質的には、「新傾向」であるといっていいと思います。

 

 

ちなみに、私は昨年、このブログに以下のような記事を書きました。

 

2016年の時事問題

 

記事の中で、「選挙権の拡大」や「選挙の原則」について説明しています。

これを読んでいた受験生は、かなり有利だったでしょう。

 

 

ところで、入試に出る「時事問題」の対策としては、当たり前ですが、入試に出る可能性のある出来事を抽出し、絞り込んでチェックしなければなりません。

あちらこちらで「時事ニュース」を紹介するようなサイトなどを見かけますが、話題となったニュースを羅列しただけのものもありますね。

 

 

 

○大問2 世界地理

 

 

〔問1〕

 

世界地理の問題は、正答を導くのに国名と場所を特定する必要はありませんが、説明のために記号と国名を記します。

 

 

A ナミビア、アフリカ州・南半球

B アイスランド、ヨーロッパ州・北半球

C アルゼンチン、南アメリカ州・南半球

D ドミニカ共和国、北アメリカ州・北半球

 

 

Bに当てはまる記号を選ぶ問題なので、アイスランドについて書かれてある選択肢を選び出すわけですが、当然、「アイスランドに関する知識」の有無をもとめられているわけではありません。

 

 

設問の「テーマ」は、「海流」です。

海流について書かれた部分から「ヒント」をつかんで、それをもとに正答にせまります。

 

また、気候や地形、産物などの記述もまた、「ヒント」となっています。

 

 

「ア」のヒント

・東から西へ暖流

・熱帯低気圧→ハリケーン

・年間を通して高温、雨季と乾季→熱帯気候

・コーヒー

→D、ドミニカ共和国

 

「イ」のヒント

・北上する暖流→北半球

・暖流と偏西風の影響で緯度の割に(高緯度なのに)温暖→ヨーロッパ

→B、アイスランド

 

「ウ」のヒント

・北上する寒流→南半球

・西側にある山脈→アンデス山脈

・大草原→パンパ

・小麦、牧畜

→C、アルゼンチン

 

「エ」のヒント

・北上する寒流→南半球

・砂漠

→A、ナミビア

 

 

アンデス山脈を越えたアルゼンチン西部には砂漠が広がっています。

そのことを知っている受験生はAとCを混同したかもしれませんが、ともに「南半球」に位置することを読み取ることができれば、両者を解答の候補から外すことができます。

 

Bの位置は、かなりの高緯度であり、「年間を通して高温」ではないと判断できれば、答えを「イ」と特定できます。

 

 

海流に関する知識として、赤道付近から流れてくるものを「暖流」といい、極地(北極・南極)から流れてくるものを「寒流」いうことを知っておかなければなりません。

 

しかし、「常識的な発想」のもとに考えれば、一年中気温の高い赤道付近から「あたたかい海の流れ」が発生するはずであると思い当るはずです。

 

 

暖流は、地球上の「熱」を循環させる働きをします。

 

暖流の「通り道」は気温が高くなり、温暖な気候になるということも「社会」では必要とされる知識です。

 

世界地図を見るとよくわかりますが、ヨーロッパはかなり高緯度にある地域です。

たとえば、イタリアの緯度は、北海道と同じくらいです。ですから、イタリアよりも北にあるフランスやドイツなどの国は、冷帯に属する北海道よりもさらに北に位置していることになります。

それほど高緯度にあるヨーロッパの国は、大部分が温帯の気候です。

それは、暖流のおかげなのです。北大西洋海流という暖流によって、「熱」がヨーロッパ近海まで運ばれます。その「熱」を偏西風が陸地に運ぶため、ヨーロッパは高緯度地域であるにも関わらず、比較的過ごしやすい気候となっているのです。

 

実は、ヨーロッパの気候を特徴づける「暖流」と「偏西風」というワードは、社会の入試問題では頻出です。

 

特に有名なのが平成21年度の大問1の〔問1〕です。

それから、平成10年度の大問2の〔問1〕の「ウ」のように、ヨーロッパ西岸の気候を説明するのに、必ず用いられるものです。

 

今年の都立の問題は、「定型を外す」という企画意図を感じます。

あえて、西ヨーロッパの国ではなく、北欧のアイスランドを指定しているわけです。

 

アイスランドが火山国で、魚介類をよく食べる国だと知っている中学生は、ほとんどいないでしょう。もちろん、ポイントはそこではありません。

 

この設問の「テーマ」は「海流」なのです。

 

 

ちなみにCのアルゼンチンですが、都立入試ではよく取り上げられる国なので、基本的な知識をおさえておかなければなりません。

平成27年度の大問2の〔問2〕、平成23年度の大問2の〔問2〕、平成13年度の大問2の〔問2〕などで出題されています。

 

 

 

〔問2〕

 

W モーリタニア、北アフリカ

X ブラジジル、南アメリカ

Y キューバ、カリブ海の島国

Z アメリカ合衆国、北アメリカ

 

 

モーリタニアを知っている必要はありません。

受験生のほとんどは、アメリカ合衆国とブラジルを知っているので、それを足掛かりに考えます。

 

まず、「ウ」がアメリカ合衆国であることがわかります。

ブラジルがポルトガルの植民地だったと知っていれば、「エ」がブラジルであると判断できます。

 

 

そして、西アジア、北アフリカにイスラム教徒が多いこと、また、アフリカの多くの国がかつてフランスの植民地であったことを知っていれば、「イ」をWであると特定できます。

 

鋭い洞察力を持った受験生は、独立した「1960年」に反応するでしょう。

「1960年」は、いわゆる「アフリカの年」です。この年に多くのアフリカ諸国が独立したために、そう呼ばれています。

 

あるいは、なじみの薄い「モーリタニア」という国は、「新しい国」であり、そのために、独立前に使われていたフランス語がまだ使用されていると思いつくことができれば、「イ」を消去できます。

 

 

以上のような解答作業にしたがって、「ア」がYのキューバであると特定できます。

 

しかし、キューバがスペインの植民地であったこと、また、キューバ革命によって社会主義国となったことを知っていれば、よりシンプルにキューバを特定できるでしょう。

 

「キューバ危機」という言葉を、何となく覚えている人もいると思いますが、その内容を簡単に確認しておきましょう。

冷戦のさなか、アメリカのすぐ近くに位置するキューバに革命が起き、新たな社会主義国が誕生しました。キューバは、隣国のアメリカと仲たがいし、社会主義国の「親分」であるソ連と親しくなりました。それで、ソ連は、キューバに核ミサイルを配備しようとしました。それにアメリリカが猛反発し、一触即発で核戦争が起きそうになったのが、キューバ危機です。

地図を見ると、キューバがいかにアメリカに近いか、わかりますね。

 

 

 

ちなみに、キューバについて、「近年、世界各地から観光客を受け入れ、経済を活性化させている」と書かれていますが、私もキューバに行ったことがあります。

 

下の写真は私が、キューバに入国したときのものです。

タラップで、右手を上げているのが私です。

飛行機に乗るとき、「飛行機、ちっさ!」と思ってびびりました。

 

cuba-1

 

 

実は、この飛行機、エアコンがきかないので「ドライアイス」をイスの下に置いて機内を冷やすという素敵なシステムでした。離陸してしばらくして、モクモクと煙が出てくるので、最初、事故かと思って、死ぬほどあせりました。

乗っていた乗客はほとんどメキシコ人とアメリカ人だったのですが、しまいには煙でまわりが真っ白になって、これ、国際線かよ!って、つっこみながら、みんなで爆笑していました。

で、まあ、無事に到着したのですが、空港の、よくわからないへんてこりんなところに降ろされて、困惑しました。

それで、入国手続きをするターミナルまで、テクテク歩かされました。

 

でも、キューバは、いろいろと愉快な国でした。

また行きたいですね。

 

 

 

〔問3〕

 

P 南アフリカ共和国

Q ポルトガル

R ウルグアイ

S カナダ

 

 

ウルグアイは、南米の小国ですが、サッカーの強豪国として知られています。

サッカーファンにはおなじみの国なので、サッカーが好きな人には少しだけ有利だったかもしれません。

 

Ⅲの文章に「大西洋とインド洋を分ける東経約20度の子午線が通っており」とあります。

大西洋はアフリカ大陸の西側、インド洋はアフリカ大陸の東側に広がっています。

また、東経・西経0度の本初子午線がイギリスを通っていますので、Ⅲで述べられているのはイギリスの東側に位置する国であるとわかります。

 

以上のことから、Ⅲの文章で述べられている国はPの南アフリカ共和国であることがわかります。

 

そして、「2013年の日本の輸入額の上位3位の品目の中に…乗用車が入るようになった」という記述をもとに、Ⅰの表の選択肢「イ」と「ウ」を解答の候補にしぼることができます。

 

そして、2013年の貿易相手国に中国が入っていない「イ」が消去されて、「ウ」を選びます。

 

 

余談ですが、世界地理の「貿易」に関する設問に対処するときに、「貿易は、近い国と活発に行われる」という「傾向」を念頭に考察すると正答に近づけることがあります。

 

「貿易相手国」というのは、その国の「立地」を探る手掛かりになるのです。

 

アメリカ、と中国を外して考えてみましょう。

 

日本、イギリス、メキシコと活発に貿易している「ア」はカナダになります。

スペイン、ドイツ、フランスなどと活発に貿易している「イ」はポルトガルになります。

ブラジル、アルゼンチンなどと活発に貿易している「エ」はウルグアイになるわけです。

 

南アフリカ共和国は、ちょっと特殊な国で、アフリカ諸国ではなく他地域の国との貿易が活発です。

 

 

ちなみに、南アフリカ共和国との貿易に関する問題は、平成25年の大問2〔問2〕、平成7年の大問2〔問3〕などで出題されています。

 

また、カナダとの貿易に関する問題は、平成22年度の大問2の〔問2〕、平成9年度の大問2の〔問2〕などで出題されています。

 

 

 

 (ivy 松村)