日比谷高校の英語の「発音問題」

日比谷高校は、英語で、他の都立高校にはない出題があります。

 

それは、「発音問題」です。

 

 

今年の日比谷高校の英語の入試問題の、大問3の〔問8〕を見てみましょう。

 

 

次の五つの単語のうちで,下線の引かれている部分の発音が他の四つと異なるものを,次のア~オから一つ選びなさい。(下線を表示できないので、太字で表します。)

 

ア know   イ only   ウ both   エ most   オ from

 

 

それぞれの発音を確認してみましょう。

 

ア「ノウ」 [nou

イ「オウンリ」 [ounli]

ウ「ボウス」 [bouθ]

エ「フロム」 [frəm]

 

 

正答は、「エ」です。

 

「from」の発音は[frəm]、あるいは[frʌm]、[frɑːm]、[frɔːm]などと発音されますが、いずれにしても[ou]ではありません。したがって、他とは発音の異なるのは「エ」ということになります。

 

 

 

昨年の入試問題でも、日比谷高校は「発音問題」を出しています。

昨年の29年度は、いわゆる「グループ作成」による入試選抜が行われました。

この年、日比谷高校は、大問3の差し替えを行い、あえて「発音問題」を出題したわけです。

 

去年の「説明会」で、前年の「発音問題」に関して熱のある言及があったということだったので、おそらく今年も出すのだろうと考えていましたが、やはり出題されました。

(来年は、どうなのでしょうか。)

 

 

 

それにしても、都立高校で「発音問題」を出しているのは、日比谷高校だけです。

 

以前は、都立高校でも「発音問題」が出題されていましたが、平成9年度に「リスニング問題」が導入されたために、都立高校入試から「発音問題」は姿を消しました。

 

 

高校受験では、一般的に、「発音問題」は「聞く力」を測る「代替措置」であると考えられています。

ですから、私立高校入試でも、「発音問題」を多く出すのは、「リスニング試験」を実施しない高校であることが多いわけです。

 

もう少しいえば、多くの英語教師は、「発音問題」よりも「リスニング問題」のほうが望ましいと考えています。「生きた英語」をあつかう能力のほうが、より重要であるというわけです。

さらに、「発音問題」の対策は、最終的に「暗記作業」に行き着いてしまう、ということも「発音問題」が不人気な理由のひとつであるといえるでしょう。

 

それで、「リスニング問題」が一般化するにつれて、「発音問題」は下火になっていったわけです。

 

大学受験でも、今後センター試験がなくなれば、「発音問題」は廃れていくのかもしれません。

 

 

 

さて、そういうわけで、日比谷高校が「発音問題」を出題しているというのは、ちょっと珍しいわけです。

 

しかし、もちろん、きまぐれや酔狂で「発音問題」を出しているわけではありません。

 

日比谷高校が「発音問題」を「復活」させた理由は、「話す力」を測るためであると考えられます。

 

これには、「正確に」英語を話す能力を培ってほしい、という受験生に向けたメッセージがこめられています。

 

「発音問題」をとおして、日比谷高校は、すでに英語の「四技能」を視野に入れた入試選抜を行っているということができると思います。

 

つまり、「発音問題」に、「新しい意味」が与えられているわけです。

 

 

これは、都立高校入試に「スピーキングテスト」が導入されるまでの過渡的なものなのかもしれませんが、ちょっと興味深く思います。

 

 

 

ちなみに、平成6年の都立高校の英語の入試問題(共通)の大問4の〔問8〕は、以下のような設問でした。

 

次の語のうちに、下線の部分の発音がsawの下線の部分の発音と同じものが一つある。それはどれか。(下線を表示できないので、太字で表します。)

 

ア look   イ father   ウ so   エ call

 

 

 

また、平成4年の都立高校の英語の入試問題(共通)の大問4の〔問8〕は、以下のような設問でした。

 

次の語のうちに、下線の部分の発音がhomeの下線の部分の発音と同じものが一つある。それはどれか。(下線を表示できないので、太字で表します。)

 

ア among   イ love   ウ stop   エ told

 

 

 

 

わかった人には、「飴」を差し上げましょう。

松村まで、どうぞ。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

 

平成30年度都立高校入試の社会の平均点

今年の都立高校入試の社会の平均点は、昨年と比べて少し上昇しました。

 

◎社会の平均点

 

・平成30年度…「61.5」

・平成29年度…「58.6」

 

昨年と比べて、2.9ポイント上がったことになります。

 

この結果は、少し意外な気がしました。

今年の平均点は、もう少し低くなると感じていたからです。

 

それで、ちょっと子細を確認してみました。

 

 

 

東京都教育委員会が公表している「東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査」によれば、今年の社会の小問、大問ごとの「正答率」は以下のようになっています。

 

 

大問 小問 小問正答率  大問正答率
1 1 95.7 65.9
2 28.4
3 73.5
2 1 53.8 45.6
2 38.8
3 44.2
3 1 75.7 72.4
2 75.1
3 66.5
4 1 41.6 52.1
2 62.4
3 58.5
4 45.8
5 1 94.5 72.0
2 78.1
3 60.2
4 55.3
6 1 24.4 38.8
2 59.4
3 32.5

 

 

 

このデータは、「抽出調査」によって求められたものです。

そのことには、ちょっと気をつけなければならないと思います。

つまり、これらは、都立高校の受験生のすべての得点状況を集計したものではないということです。

 

平均点と得点分布は、全ての受験者の得点から算出されていますが、「正答率」は、一部の受験生のデータをもとに、「全体」の数値を「推測」する手法で算出されています。

 

 

受験生一人ひとりの得点は、採点の際に、各校ごとにデジタルのデータで入力、保存されます。それを合算すれば、平均点や得点分布を出すことができます。

しかし、さすがに小問ごとにすべての得点を入力するのは手間がかかりすぎるのでしょう。

受験生全体の学力差をふまえて、いくつかの学校を選び、そこで得られたデータを「処理」して「正答率」を出しているのだと思います。

 

調査法が示されていないので、詳細はよくわかりませんが、きっと、「統計学」の理論にもとづいて、「信頼度」が担保できるような方法がとられているのだろうと思います。

 

 

 

「小問正答率」から「平均」を求めると、「58.2」になります。(「大問正答率」から「平均」を求めると、「57.8」になります。)

 

先ほど述べたように、「小問正答率」は全受験生のデータではないので、実際の平均点と齟齬が出るわけです。実際の平均点は「61.5」なので、その差は「3.3」になります。過去10年の「小問正答率」を出して確認してみましたが、今年は、例年に比べて差異が大きくなっています。

 

 

また、「正答率」は、「部分正答も含めた割合」になっています。

 

つまり、「記述問題」などの解答に不備があり、点数を引かれていても、「正答」としてあつかっているわけです。

都立高校入試の社会は全ての問題が5点の配点となっていますが、そのうち、4点や3点、2点や1点しか得られなかった場合でも、その解答を「正答」に含めて「正答率」を出しているわけです。

 

そうすると、「小問正答率」の「平均」は、そうした「満点ではない解答」を「5点」として計算することになります。

 

したがって、「正答率」を算出するのに用いられた「サンプル」の「実際の平均点」は「58.2」よりもさらに低い数値になるはずです。

 

 

 

まあ、ともかく、「正答率」のデータを信頼して読み解いてみましょう。

 

 

 

データをよく見てみると、「正答率」が、90パーセントを超えた設問が、2題あります。

大問1の〔問1〕と大問5の〔問1〕です。「正答率」はそれぞれ95.7パーセント、94.5パーセントになります。

 

この2題が、今年の社会の「平均点」を押し上げました。

 

仮に、この2題の「正答率」が80パーセントだったならば、「小問正答率」の「平均」は、「56.7」まで下降します。

 

 

 

過去10年間で、「正答率」が90パーセントを超えた設問は、3題しかありません。

そのうちの2題が、「今年」だったわけです。

 

ちなみに、「正答率」が90パーセントを超えているもう1題は、平成25年度の大問1の〔問2〕です。「正答率」は、91.0パーセントです。

 

 

今年の都立高校の入試の社会は、ほとんどの受験生が造作もなく答えられる設問が2題あり、約95パーセントの受験生が、10点を易々と確保できたわけです。

 

また、それ以外にも、「正答率」70パーセントを超える設問が、さらに4題ありました。

 

 

 

その一方で、今年は難度の高い出題がみられました。

 

「正答率」30パーセントを下回る設問が、2題あります。

大問1の〔問2〕と大問6の〔問1〕です。

 

 

過去10年間で、「正答率」が30パーセントを下回った設問は、9題あります。

そのうちの2題が、「今年」だったわけです。

 

ちなみに、その9題のうち、5題が、「世界地理/世界史」の問題です。

今年の2題も、「世界地理/世界史」の問題でした。

 

 

また、「正答率」30パーセントを下回った9題のうち4題は「完全一致問題」です。また、2題が「語句筆記」の問題です。残りの3題が、「4択問題」です。

 

 

くじ引きのように、完全に恣意的な選択を行った場合、「4択問題」の「正答率」は25パーセントに収束します。したがって、「4択問題」の「正答率」が30パーセントを切って25パーセントに近似するということは、その設問はことのほか受験生を苦しめる問題だったということになります。

 

 

今年の社会の入試問題の大問1の〔問2〕は、「4択問題」で、「正答率」は28.4パーセントでした。

 

大問6の〔問1〕は「完全一致問題」で、「正答率」は24.4パーセントでした。

 

 

 

今年の社会の入試問題は、正答を求めるのが難しい設問が用意されました。その設問の印象から、私や、何人かの教師は難度が上がったと判断しました。

 

その一方で、ほとんどの受験生が正答できるような、著しく簡単な出題があり、平均点を押し上げました。

 

こうした点が、入試問題に対する「印象」と平均点に乖離をもたらした、というわけです。

 

 

 

今年西高に合格した生徒が、過去問演習時に比べて、入試本番で点数を少し落としていました。

 

得点分布をみても、やはり「95~100点」の割合が、昨年に比べて減っています。

 

 

このあたりは、難度の高かった例の2題の影響ですね。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

平成30年度 都立高校「自校作成」の国語

進学指導重点校の英数国の入試問題は、本年度から「自校作成」となりました。

各校が、5年ぶりに独自問題を作成するとあって、「業界」でも大きな注目が集まりました。

 

 

私は、各校がリリースしている「出題の方針」に注目していました。

 

これをみれば、各校の出題構成と内容が、かなり精密に把握できると理解していたからです。

 

特に気を配っていたのが、国語でした。

国語の「記述」がどうなるのか、が本年度の入試の大きなポイントでした。

 

 

 

日比谷、西、戸山の3校が、大問3で「記述」を課すことは数か月前から判明していました。

また、国立が、大問3で「記述」を出題しないことも、数か月前から判明していました。

 

 

4校は、「出題の方針」をホームページに掲載し、公表していました。

 

いずれの高校も、入試選抜という「プロジェクト」を周到に準備してきたということがわかります。

 

4校の入試問題は、「出題の方針」に沿って作問されています。

 

 

 

一方、青山、八王子東、立川の3校は、「出題の方針」をホームページに掲載していませんでした。

 

 

青山は、都立の入試日になっても、まだ昨年の「出題の方針」をホームページに掲載したままでした。しかし、意外にも、今年の入試問題を最も早くホームページに掲載したのは青山高校でした。

その際に、今年の「出題の方針」もアップされました。

(ちなみに2番目は日比谷で、3番目は八王子東です。)

 

 

国語の入試問題は、すぐにはホームページ等に掲載できないので、現時点で問題を見ることはできませんが、「解答」と照らし合わせて「出題状況」を確認しました。

 

 

青山は、「出題の方針」で「記述」を示唆しないまま、「記述」を出題しています。

 

まあ、「出題の方針」で示された内容には「出題形式」自体への言及がなされていないので、「記述」が出題されたとしても、「出題の方針」に適合していないとは言えない、という「弁解」が、なんとか可能かもしれません。

 

 

この塾に青山を受ける受験生がいたら、ちょっと困ったことになったかもしれませんが、それでも、私は、青山の問題作りは評価できると考えています。

 

 

私は、一貫して、

 

・「記述」を出すべきである

・難度を上げるべきである

 

という主張をしてきました。

 

 

「解答」を見ただけの印象に過ぎませんが、青山高校の入試問題は、非常に熱が入っていると思います。

 

問題点は、入試選抜、もっといえば「生徒募集」が、ちょっと「ちぐはぐ」になっているということです。

 

英語でも、大問3の文章が、「物語文」なのか「説明文」なのかを明示していません。

おそらく、「出題の方針」は、実際の入試問題を想定しないまま作られたのではないかと思います。

「出題の方針」を出さなければいけないので、「とりあえず」あいまいな形でリリースして、後で問題を作り込んでいったのかもしれません。

 

 

「担当者」どうしの「連携」が取れていないとか、「生徒募集」を総括する人が総合的な指示を出していないとか、そういう部分があったのかもしれません。

 

 

 

そして、八王子東と立川です。

私は、2校の「資料」を手にし、「出題の方針」を確認することができました。

 

八王子東と立川は、ともに「入試説明会」で「グループ作成のものと同じような問題」を作ると説明していました。

 

それで、国語の入試問題で「記述」が出題されないという「予断」を持った受験生や受験関係者は多かったはずです。

しかし、八王子東と立川の「出題の方針」には、大問3について以下のように記されていたのです。

 

 

八王子東「文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力及び読み取った内容をまとめ、表現する能力などをみる。」

 

立川「文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力及び読み取った内容を適切にまとめ、表現する能力などをみる。」

 

 

ともに大問3で「表現する能力」を検査すると書かれてあります。

したがって、私は、両校は大問3で「記述」を出題すると判断しました。

 

 

 

八王子東は、「記述」を出題しました。これは、まったくの予想どおりでした。

 

一方、立川は、大問3で「記述」を出題しませんでした。

 

 

 

八王子東は、この一年、いろいろな面で非常に精力的な取り組みをしているのが伝わってきました。

とりわけ、今回の入試問題は気合が入っていると思います。

問題作りに「攻め」の姿勢があって、ちょっとグッときますね。

 

八王子東の取り組みが変わってきた理由の1つは、昨年の入試で応募人数を大きく減らしてしまったことでしょう。

また、もうひとつは、このままでは進学指導重点校の指定が危うくなるという危機感だと思います。実は、八王子東は、難関4大学の合格実績が下降し、進学指導重点校の「基準」のひとつを満たしていません。ある意味で、「酌量」されて、昨年の進学指導重点校の再指定を受けたわけです。

 

 

ただ、八王子東も、統率が取れた「生徒募集」になっていなかった印象です。

「説明会」などで、魅力をアピールしきることができていませんでした。

 

「入試説明会」では、国語に関してけっこうユニークな内容のお話しがあったということですが、「記述」については触れられなかったようです。そのうえ、「独自問題」について「グループ作成と同じような問題」を出題すると表明していたそうなので、実際の入試問題を目にして、驚いた人も多かったのだろうと思います。

 

 

 

そして、立川です。「表現する能力をみる」と明言していながら、そのための設問が用意されていません。

 

立川の問題を見ましたが、国語は、ボーダーを押し上げる要因になりそうです。

大問3で苦戦した受験生は少なかったと思います。さらに、決定的なのが大問4で、ほとんどの受験生はここで無難に得点を確保できたはずです。

 

立川の国語の問題は、大問3・4と、大問5の「統一感」がバラバラで、しかも全体の「バランス」がとれていません。

大問5は、古文の先生が作っていると思います。これは「骨」のある問題でした。

しかし、多くの受験生は、大問3・4では時間を取られないので、大問5に十分な時間をかけることができたはずです。

 

 

 

立川は、「入試説明会」で合格者の「内申点」の情報などを明かしています。

たとえば、男子は「オール4」に届いていなくても、入試得点で「逆転」できることなどが、データで示されました。

こうした積極的な「情報開示」が、立川の男子の倍率を高めた要因のひとつとなりました。

 

しかし、入試問題が易化し、入試得点が高得点域で均衡してしまうと「内申点」が乏しい受験生にとっては不利な受験になるわけです。

 

 

青山や八王子東と同様に、立川も、「生徒募集」と「作問」が「ちぐはぐ」だったわけですが、他の2校とは違い、立川の場合、「作問」に対する「意識」がおろそかだったという印象です。

 

 

 

虚飾なしに、端的にいえば、日比谷、西の「情報」は、「信頼」できます。

むしろ、高校が出してくる情報を細部までしっかりと読み取ることが大事です。

 

戸山も堅実です。

 

 

国立は、実はちょっと「気がかり」です。

 

国立高校は、かつては国語の入試問題で「重厚で濃密な記述」を出題することで知られていました。現在は見る影もありません。

 

積極的な「差換え」を行わなかった近年の入試問題に大きな違和感を持っていましたが、今年の「自校作成」でも「守り」の姿勢を崩していません。

 

 

日比谷と西は、問題作りと採点に対して、「覚悟」を持っています。

 

「この御時勢」ですから、「採点ミス」などがあれば、大きな責任問題になるでしょう。

それでも、「記述」を増やしました。

 

それから、戸山、八王子東、青山も前に進む決意をしました。

 

 

でも、国立は、ちょっと「教育庁のほう」を気にし過ぎているような印象を受けます。

 

 

国立高校の「歴史」を調べてみると、この高校は、「立地」を含めて、けっこう「ラッキー」が重なって、進学校としての「地位」を向上させてきたことがわかります。

 

適切な言葉なのかどうか、あまり自信はありませんが、あえていえば、もしかすると「殿様商売」といえるのかもしれません。

 

 

「集まってくる生徒のパワーと能力」を最大限に引き出すことができるのは、伝統の「強み」なのかもしれませんが、逆にいえば、「集まってくる生徒の質」が変われば、一気に「高校の質」も変わってしまう危険性を持った高校だと思います。

 

 

ちょっと「今の方向性」は、怖い気がします。

 (ivy 松村)

「出題の方針」の確認

本年度の入試の出題構成について確認しましょう。

 

 

「グループ作成」、「自校作成」の高校は、「出題の方針」をもとに、入試に備える必要があります。

 

 

 

日比谷高校の「出題の基本方針」の「各問のねらい」を見てみましょう。

 

 

□1 漢字を正しく読む能力をみる。

 

□2 漢字を正しく書く能力をみる。

 

□3 文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力、表現する能力などをみる。

 

□4 説明的な文章を読み、叙述や文脈などに即して、語句や文の意味、文章の構成及び要旨などを正しく読み取る能力をみるとともに、考えが正確に伝わるように根拠を明らかにしながら、自分の意見を論理的に表現する能力などをみる。

 

□5 古典に関する文章を読み、古典並びに現代の語句及び文章の内容についての理解などをみる。

 

 

 

日比谷高校の国語の漢字の出題は、「グループ作成以前」とその後で構成が変わっています。

 

以前は「文章題からの引用」でした。私立の入試でよくみられるパターンのもので、文章中からいくつかの語句が取り上げられ、その漢字の「読み」や「書き」を問われるという形式でした。

「グループ作成」となってからは他校と「足並み」をそろえる必要から、大問1が「漢字の読み」、大問2が「漢字の書き取り」という独立した問題構成となりました。

 

 

「自校作成」に回帰した本年はどうなるのか、それは、「出題の方針」に示されています。

本年は、「グループ作成」と同じ構成になることがわかります。

 

 

「出題の方針」を参照せずに、暗中模索におちいっている受験生がいたら、説明会で入手したものを確認するとよいと思います。

 

 

 

さて、本年度の国語の入試を予測するうえで、「記述」がどうなるのか、気になっている人も多いと思います。

 

 

各校の大問3の「出題の方針」を比較してみましょう。

 

日比谷「文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力、表現する能力などをみる。」

 

戸山「文学的な文章を読み,叙述や描写などに即して,場面,登場人物の様子,心情などを正しく理解する能力及び読み取った内容を適切にまとめ,表現する能力をみる。」

 

国立「文学的な文章を読み,叙述や描写などに即して,場面,登場人物の様子,心情などを正しく理解する能力をみる。」

 

 

日比谷や戸山は大問3で記述問題が出題されるでしょう。

一方、国立は記述問題が出題されないでしょう。

 

 

また、いずれの高校も、大問5で「記述」は出題されないでしょう。

 

 

受験生向けの説明会や塾向けの説明会で、本年度の入試は「グループ作成と同じような出題」になると説明していた高校があったようです。

それで、たとえば、昨年と同様に「記述」は出題されないと高をくくっていると、当日に驚くことになるかもしれません。

その高校の「出題の方針」を見てみると、ちょっと違った出題になるということがみえてきます。

 

 

 

日比谷は、英語の「出題の方針」の「各問のねらい」も確認しておく必要があります。

 

 

□1 自然な口調で話される英語を聞いて、その具体的な内容や大切な部分を把握したり、聞き取った事柄について英語で表現したりする能力をみる

 

□2 まとまりのある対話文を読み、その流れや大切な部分を把握したり、読み取った事柄などについて英語で表現したりする能力をみる

 

□3 物語文を読み、そのあらすじや大切な部分を把握したり、読み取った事柄などについて英語で表現したりする能力などをみる

 

4 短い対話文を読み、読み取った事柄について、異なる2つの意見を適切に英語で表現する能力をみる

 

 

大問1は、全校共通のリスニングです。

大問2~4が独自問題ですが、それぞれ大問2は「長大な対話文」、大問3は「物語文」、大問4は「短い対話文」の問題であることがわかります。

したがって、「説明文」ではなく、「対話文」や「物語文」を読む「準備」をしておかなければなりません。

 

また、すべての大問で「英語で解答する設問」があることがわかります。

それは「抜き出し」の問題なのかもしれませんが、「英語で解答を記述する」問題である可能性が高いと思います。

 

注目すべきは、大問4で「異なる2つの意見を適切に英語で表現する能力」を検査されるという点です。

ここでは、2つの意見が交換される「対話文」が示され、受験生は、「2つの立場」に立ってそれぞれの意見を英語で要約する、あるいは主張を代理する、というような英作文を課せられるのかもしれません。

 

 

 

他塾の方も見ているでしょうから、このへんで。

 

 

 

都立入試に挑む受験生には、本年度の入試の「概要」を伝えています。

 

みなさんは、これまでの受験勉強、そして私立入試を通して、大きく成長しています。

私が、こんこんと伝えるまでもなく、一人ひとりが自分で「入試」をいうものを理解し、取るべき行動を判断することができるようになっています。

 

当日、思いもよらない問題が出ても、落ち着いて対処できるだけの力をつけています。

自信を持ってください。

 

 

 

みなさんといっしょに勉強してきた日々が、すでになつかしく思えます。

もう、「授業」の必要もありません。

 

私は、採点と問題の準備に追われる日々です。

後は、リスニングの「スタート」のボタンを押す係。

 

そして、くだらない質問に対して、くだらない受け答えをする人。

 

月日が過ぎて、あのくだらないやり取りの断片が、みなさんの記憶にかすかに残っていて、あるとき、ふと思い出して、ちょっとだけ愉快な気持ちになってくれたら、うれしく思います。

 

 

 

受験という「航海」の果てに、英作とリスニング、作文と漢字に立ち返ってきました。

これらが「最後のピース」です。

 

 

 

あと少し。がんばろう。

 

 

 

 (ivy 松村)

 

平成29年度都立高校入試の社会④

平成29年度都立高校入試の社会の解説の最終回です。

 

 

○大問5 公民

 

 

〔問1〕

 

自由権のうち、「経済活動の自由」について書かれた憲法の条文を選ぶ問題です。

 

正解は、「イ」になりますが、この問題、ちょっと気になります。

実は、過去に「全く同一の内容」が出題されています。

「憲法の条文」なので、答えの選択肢の内容も一字一句そのまま同じです。

平成25年度の大問5〔問1〕です。

 

故意なのか、それとも別の理由があるのか。

どうなんでしょうね。

 

 

 

〔問2〕

 

「株式会社」という「テーマ」はこれまでにないものでしたが、「○×の組み合わせ」を答える問題は、平成23年の大問5〔問2〕、22年の大問5〔4〕でも出されています。

 

「知識系」ですが、2つの項目について正誤判断を行うだけなので、それほど「難しい」問題というわけではありません。

しかし、これまでにない「テーマ」で、「単純すぎる構成」の作りがちょっと気になります。

 

 

 

〔問3〕

 

2000年代以降の「現代」がとり上げられています。

受験生の「記憶」にあるような「身近な時代」が出題されるのは、ちょっと珍しいと思います。

 

しかし、本問の「テーマ」は「グラフの読み取り」なので、「知識」に頼らなくても、しっかりとグラフを見て、選択肢の記述と照らし合わせて検討することで、正答を導くことができます。

 

 

「ア」…景気は緩やかに回復した

「イ」…景気回復を目指し…景気は2年間回復したが、その後すぐに後退した

「ウ」…景気が急速に回復

「エ」…大幅に景気が後退…景気回復は短い期間にとどまった

 

 

景気が回復に向かう時期を示している「ア」と「ウ」が、BとDのいずれかに当てはまります。

したがって、Cに当てはまらない「ア」と「ウ」を解答の候補から除外します。

 

 

一応、それぞれの記号の対応を確認しましょう。

 

Bの時期に、後退する局面もありましたが、わが国の経済成長率は「-1パーセント」から「1パーセント」に回復しています。

Dの時期には、わが国の経済成長率は「-2パーセント」から「2パーセント」に回復しています。

 

「全体」で、Bの時期に経済成長率は「2パーセント」回復し、Dの時期には「4パーセント」回復したことになります。

つまり、それぞれの選択肢を整合させると、「ア」がB、「ウ」がCに当てはまるということになります。

 

「ウ」で述べられている「新たな経済政策」というのは、いわゆる「アベノミクス」です。また、消費税が8パーセントに引き上げられたのは、2014年です。

最近のことなので、ほとんどの受験生はDの時期が「ウ」であると判断することができたでしょう。

 

 

さて、Aの時期を見てみると、景気が後退→2年間景気が回復→2年間景気が後退、となっています。

この時期の「全体」では、経済成長率は「2パーセント」から「-1パーセント」に後退しています。

 

A~Dの中で、「2年間景気が回復した後に、後退する」という経過を示しているのはAとBだけですが、Bは、先に述べたように、「景気が回復に向かう時期」になるので、「イ」の内容に合致するのはAの時期ということになります。

 

 

正解は「エ」になります。

 

 

Cは、グラフに示された18年間で、もっとも景気が後退した時期です。

2009年に、経済成長率は「-6パーセント」にまで落ち込みます。

翌年、景気は回復し、「2パーセント」となりますが、次の年には再度景気が後退し、経済成長率は「-2パーセント」となります。

これは、「エ」の選択肢にある「大幅に景気が後退」、「景気回復は短い期間にとどまった」という記述と一致します。

 

 

Cは、2007年から2011年の期間なので、今年の受験生の「小学校時代」と重なります。

この時期の「世相」が記憶にあれば、かなり有利でした。

「アメリカ合衆国の証券会社の破綻」というのは、2008年に起こった、いわゆる「リーマンショック」です。翌年に、日本だけでなく世界中の景気が後退することになりました。

 

 

 

〔問4〕

 

これは、何というか、「都立らしくない」問題でした。

〔問2〕もそうですが、本問も、「不親切」というか「大雑把」な作りになっていて、ちょっと気になりました。

(もしかすると、当初は「記述問題」として作られた設問だったのかもしれません。)

 

 

 

「テーマ」は、「消費者問題」です。これは、わりとよく出題される「テーマ」です。

過去には、平成25年度の大問5〔問3〕、平成18年度の大問1〔3〕、平成12年度の大問5の〔問2〕などでも出題されました。

 

 

Ⅰの文章に書かれてある法律は「製造物責任法(PL法)」です。

「製造物責任法」については、平成19年度の大問5〔問2〕(2)の「ア」、平成13年度の大問5〔問3〕の「ウ」でもとり上げられています。

 

 

「製造物責任法」が制定されたのは1994年です。

 

Ⅲのグラフを見ると、1993年ごろから、「危害や危険がある可能性のある製品の情報件数」が増加していることがわかります。

 

「消費者の権利」への関心が高まってきた時期に「製造物責任法」は、制定されました。

そして、また、この法律が制定されたことによって、さらに「消費者の権利」への関心いっそう高まっていったことを、グラフは示しているというわけです。

 

 

正解は「ウ」になるわけですが、Ⅰで述べられている法律を、2004年に改正された「消費者基本法」のことだと勘違いし、「エ」を選んでしまった受験生も多くいたのではないかと思います。

 

この設問は、「製造物責任法」というワードを、あえて出さない「作り」になっているわけですが、それが意図的なものなのか、それとも「作問上の成行き」なのか、ちょっと気になります。

 

 

 

それにしても、今年の大問5は、ちょっと「奇異な印象」を受けます。作問をした人がどんな意図を持っていたのか、気になりますね。

 

 

 

○大問6 融合問題

 

 

〔問1〕

 

A メキシコ

B ベトナム

C バングラデシュ

D エジプト

 

 

「ア」のヒント

・フランス領インドシナ→東南アジア

・1976年に社会主義国として統一

・米の輸出国→アジア諸国

・ドイモイ政策

→B ベトナム

 

「イ」のヒント

・オスマン帝国による支配

・運河→スエズ運河

・人為的な国境線→緯線・経線に沿った直線の国境線

・石油、天然ガス→中東・北アフリカ

→D エジプト

 

「ウ」のヒント

・ムガル帝国による支配→南アジア

・パキスタンから独立

→C バングラデシュ

 

「エ」のヒント

・アステカの遺跡

・1968年の夏季オリンピック

・隣国の巨大な消費市場→アメリカ合衆国

→A メキシコ

 

 

 

「ア」の「フランス領インドシナ」というワードは、近現代史に登場します。

第二次世界大戦が勃発し、ドイツはフランスを占領します。それに乗じて、フランスの植民地だった「フランス領インドシナ」に日本軍が侵攻します。

当時、そう呼ばれていた地域が、東南アジアであると特定できれば、「ア」とBを整合させることができます。

 

ちなみに、「インドシナ」は、「インド」と「シナ」を合わせた造語です。「シナ」とは「China」のことで、フランス語で「シナ」と発音します。

「東シナ海」という海がありますが、もちろん、「中国の東の海」という意味です。

 

 

 

19世紀から20世紀にかけての東南アジアの「状況」をおさえておきましょう。

 

・ベトナム、カンボジア、ラオス…フランスの植民地

・マレーシア、ミャンマー、シンガポール…イギリスの植民地

・インドネシア…オランダの植民地

・フィリピン…スペインの植民地→アメリカの植民地

・タイ…フランスとイギリスの「緩衝地帯」として独立を維持

 

 

 

「イ」の選択肢は、ヒントとなるワードが多くあるので、比較的容易にDと特定することができます。

 

エジプトのスエズ運河に関する問題は、ちょっと前の入試では、よく出題されていました。

平成11年の大問6〔問3〕、平成10年の大問6〔問1〕、平成7年大問2の〔問4〕、平成6年大問2の〔問4〕などです。

 

 

 

「ウ」は、やはり「ムガル帝国」から、南アジアを選ばなければなりません。

ちょっとびっくりさせられますが、インドをはさんで東西に位置するパキスタンとバングラデシュは、かつては同じ国だったのです。

(まあ、でも、アメリカ合衆国も「メインランド」とアラスカ州がカナダにはさまれているので、似たようなものでしょうか。)

 

インド、パキスタン、バングラデシュは、ともにイギリスの植民地でした。

第二次世界大戦後、この地域が独立することになるのですが、インドは、ヒンドゥー教徒が多くを占める国で、パキスタンとバングラデシュはイスラム教徒が多い地域でした。

そのため、インドとは別に「その東西の地域」がパキスタンとして独立したのです。

そして、その後、「東側」がバングラデシュとしてパキスタンから分離独立したわけです。

 

バングラデシュは、なじみの薄い国なので、受験生はちょっと迷ったかもしれませんが、他の国の位置と記述内容を整合させていくと、最終的には、「ウ」とCを一致させることができます。

 

ちなみに、バングラデシュは、本問とは別のテーマでしたが、平成16年の大問2〔問1〕および〔問2〕でとり上げられました。

 

 

 

「エ」は、「アステカの遺跡」というワードから、Aのメキシコであると特定できます。

 

余談ですが、サッカーの日本代表が、国際大会で初めて「入賞」を果たしたのがメキシコオリンピックでした。この大会で、日本代表は銅メダルを獲得しています。

近年、日本のサッカーは大きく発展し、アジア大会やアジアカップでは何度も優勝するまでに躍進しました。しかし、「世界大会」で3位になったのは、このときだけです。

(女子は、ワールドカップで優勝し、オリンピックで銀メダルを獲得しています。)

 

メキシコオリンピックは、1964年の東京オリンピックの「次に」開かれた大会でした。

日本サッカー協会は、当初、東京オリンピックに向けて計画的に代表チームの強化を図ったのですが、「結果」が出たのは、その4年後だったわけです。

 

サッカーに限らず、何事も、実力を養うには一朝一夕にはいかないものですね。

 

まあ、というわけで、この問題も、サッカーファンに有利な問題だったのかもしれません。

 

 

また、アジア・アフリカ諸国の中で、オリンピックを開催したことがあるのは日本、韓国、中国だけであるということを知っていれば、必然的に「ウ」の選択肢はAのメキシコとなることがわかります。

 

 

 

ちなみに、私はメキシコにも行ったことがあるんですね。

下の写真は、メキシコのビリャエルモサという町の、野外博物館で撮ったものです。

そこは古代文明のいろいろな石像がたくさんあって、楽しかったですね。

 

 

Villahermosa

 

私がかぶっているメキシコの独特のぼうしをソンブレロというのですが、これが気に入って、キューバに行くまでずっとかぶってましたね。

 

そうそう、メキシコに行って、そこからキューバに入国したのです。

キューバの飛行機の「ドライアイス」の写真が見つかったので、ついでに載せておきますね。

 

 

Cubana_air

 

…機内が「ドライアイス」の煙だらけですね。でも、ちょっとお祭りみたいで楽しかったですよ。

 

 

 

〔問3〕

 

Ⅱの文章には、「この時期の前半…中東依存度は下降傾向を示した」とあるので、「ウ」と「エ」の選択肢が消去されます。

「エ」の時期に中東依存度の下降が見られますが、これは、この時期の「後半」に起こっているので、「エ」は当てはまりません。

 

さらに、この時期の前半に「原油の総輸入量も減少した」とあります。

 

これによって、正解は「イ」であると特定できます。

 

また、この時期の後半に「原油の総輸入量は再び増え、中東依存度も上がった」とあるので、やはり当てはまるのは「イ」であると確認できます。

 

 

 

〔問3〕

 

「記述問題」ですが、大問3〔問3〕と同じく、「理由」を述べるだけなので、それほど難しくはありません。

 

「テーマ」は、「国際競争力」です。

 

この設問は一見、新出の「内容」のように思えますが、その「テーマ」は既出です。

平成25年の大問3の〔問3〕と酷似しています。

 

「グローバル化」に対応し国際競争力を高める近隣諸国に対し、日本の「優位性」が相対的に低下しているという「課題」が、設問の「テーマ」となっています。

 

都立の社会の「記述問題」は、日本あるいは世界の「課題」、「問題」を取り上げることが多いので、普段から意識しておきましょう。

(推薦入試を考えている人は、「なおさら」ですね。)

 

 

 

さて、今年の都立の社会ですが、1問ずつチェックしながら、実感したのは、「国語の能力」がなければ得点できない、ということでした。

 

なによりも、設問を「読解」できなければ答えを導けないわけです。

 

それから、「社会の知識」というよりも、むしろ、「広範な一般常識」を持っているほうが「有利」になるような作りになっています。普段から、本や文字媒体を通して「いろいろな知識」に「アンテナ」を張っている受験生は強さを発揮するでしょう。

「読書量」、そして語彙を含む「知識量」は、「国語の能力」に直結します。

 

そして、やはり「記述問題」ですね。

5科の中で、「本格的」な「記述問題」が出題されるのは社会だけになっています。(理科の「記述問題」はシンプルな内容になってしまいました。)

 

 

国語の入試問題が荒廃的な様相を強める一方で、社会の入試問題が「国語の能力」を検査する機能を果たすという、ちょっとねじれた状況になっています。

 

 

 

最後に、このブログを読んで、「勘違い」をする人がいそうな気がしたので、念のため、ちょっとだけ書きます。

 

よく、あちらこちらで、入試問題の「傾向」という話題がとり上げられますが、その本質をとらえ違えている人が割と多くいるように思います。

 

「ある事項」の「出現頻度」だけを見ても、それだけでは、有用なデータとはなりません。

 

また、「出題パターン」のような、表面上の「形式」ばかりにとらわれるのも、ちょっと危ないと思います。特に歴史分野で、過去の「出題パターン」に特化した「マニュアル」に依存しすぎてしまうと、対応力が退化し、新しい形式や新出の内容が出てきたときに困るかもしれません。

 

 

 

重要なのは、入試問題の「構造」をとらえることです。

 

「構造」を理解していれば、新奇の形式や初出の内容がちりばめられた問題が、本当に「新傾向」なのかどうか、見定めることができます。また、それに対応することができるわけです。

 

 

で、その「構造」って何?という話ですが、長くなるので、また、いつか。

 

 

(ivy 松村)

 

 

平成29年度都立高校入試の社会③

○大問3 日本地理

 

 

〔問1〕

 

 

A 山形県、酒田市・最上川

B 千葉県、銚子市・利根川

C 広島県、広島市・太田川

D 宮崎県、宮崎市・大淀川

 

 

 

「ア」のヒント

・三角州

・城下町

→A 広島市

 

「イ」のヒント

・流域面積16840㎢→最大の流域面積

・潮目、漁港

→B 銚子市

 

「ウ」のヒント

・冬期でも温暖な気候

→D 宮崎市

 

「エ」のヒント

・雪解けの時期の水の水量が最も多い→日本海側の豪雪地帯

・銘柄米、穀倉地帯

→A 酒田市

 

 

 

「三角州」といえば、広島市です。

これは「鉄板」なので、覚えておかなければなりません。

 

ちなみに、前回の記事でも触れましたが、以前に時事問題について書きました。

その中で、広島が出題されやすいと述べていました。

 

2016年の時事問題

 

この記事では、他にも「ブラジル」が「ポルトガルの植民地」だったことについて指摘していました。

「選挙」「ブラジル」「広島」について、「ドンピシャ」でした。けっこうな「打率」です。

 

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試では、圧倒的に有利でした。

 

 

 

太田川については、22年度の大問3の〔問1〕、平成13年の大問3の〔3〕、平成6年の大問3〔問1〕でも出題されました。

 

また、最上川については、平成15年度の大問3の〔1〕の「ウ」、平成9年大問3の〔2〕で出題されています。

 

 

 

〔問2〕

 

 

P 室蘭港

Q 新潟港

R 名古屋港

S 大阪港

 

 

Ⅱの文章に「南西から北東へ入り込む湾の奥に位置し」とあるので、PとQが消去されます。

 

さらに、「製鉄所」、「家庭用電気製品の工場」というヒントにより、Rの名古屋港が消去されます。名古屋港は、トヨタ自動車で有名な豊田市で生産された自動車の積出港です。

もし、正解がRならば、そのことに触れないはずはありません。

 

よって、答えはSの大阪港になります。

 

ちなみに、「家庭用電気製品の工場」とは、枚方市や門真市にあるパナソニックの工場のことです。また、工場跡地に建設されたテーマパークとは、「ユニバーサルスタジオジャパン」のことです。

 

 

Ⅰを検討します。

輸出額と、輸出品目に占める自動車および関連部品の割合の大きさから、「ウ」がRの名古屋港であることがわかります。

 

「エ」の輸出品目に「鉄鋼」があるので、「エ」を選びたくなりますが、輸出額が少なすぎることと、「鉄鋼」の割合が大きすぎることに気づけば、この選択肢を回避できます。「エ」は、「製鉄所」がある室蘭です。

 

「ア」が新潟で、大阪は「イ」になります。

 

1970年は、日本の高度成長期にあたりますが、この時期の日本は、「鉄鋼」が「花形産業」でした。この年、大阪港や名古屋港からも、盛んに「鉄鋼」が輸出されています。

 

現代の日本は、高度な技術力を活かした高品質の機械工業製品や「ハイテク製品」が輸出の主力になっていますので、「鉄鋼」の割合は大きくありません。

 

ですから、「エ」の室蘭のように、近年も「鉄鋼」の割合が大きいのは、かなり特殊です。

(今も「鉄鉱」が主力であるということは、ある意味で、室蘭は、産業構造が転換されていないということでもあります。)

 

 

この設問では、Ⅱの文章の「製鉄所」にひきつけられて、「エ」を選んで不正解となった受験生が多くいたはずです。

 

大阪という日本有数の港湾のデータとして、「エ」は釣り合わないということに気づくことができるかどうかが、本問の「ポイント」でした。

 

別の考え方としては、「高度経済成長期をけん引する役割を果たしてきた」港であるということなので、1970年に441億円という輸出額は少なすぎるということ、また、「もみ及び玄米」という輸出品目が上位3位に入るのはおかしいということ、それが、「エ」を消去する「決め手」になります。

 

 

「輸出港」という題材を使った出題は、平成12年の大問3の〔問2〕でも見られました。

この設問でも、名古屋港、大阪港がとり上げられています。

 

 

 

〔問3〕

 

Ⅱから、A村では、高齢化が進んでいることを読み取ります。

Ⅲから、唯一のガソリンスタンドが廃業した場合、A村の住人は村外にガソリンを買いに行かなければならなくなるということを読み取ります。

 

 

今年の「記述」は2題でしたが、どちらもそれほど難しい問題ではありません。

「採点」のことを考慮して作られていると思います。

 

 

 

○大問4 歴史

 

 

〔問1〕

 

「ア」は飛鳥時代、「聖徳太子」「推古天皇」「冠位十二階」「隋」

「イ」は平安時代、「平清盛」「平治の乱」「大輪田の泊」「宋」

「ウ」は弥生時代、「卑弥呼」「邪馬台国」「魏」

「エ」は奈良時代、「大宝律令」「唐」

 

 

それぞれの選択肢のトピックが、過去に取り上げられているかどうか調べてみました。

 

「ウ」の「卑弥呼」は、意外にも初出です。

 

「ア」は、平成24年度大問4の〔問1〕。

 

「イ」は、平成23年度大問4の〔問3〕、平成12年度大問4〔問3〕。

ちなみに、平成12年度の問題では、「大和田の泊」という表記でした。

 

「エ」は、平成25年度大問4〔問1〕、平成24年度大問4〔問1〕、平成22年度大問4〔問1〕、平成17年度大問4〔問1〕、平成年度9大問4〔問1〕。

 

 

 

〔問2〕

 

「元禄文化」は、17世紀後半から18世紀前半に栄えた文化です。

そのことを知っていれば、即座に「ウ」を選ぶことができます。

 

ちなみに、私は、過去に以下のような記事を書きました。

 

都立高校入試の社会対策

 

この中で、「絵画の歴史」を取り上げて、歴史の入試対策をレクチャーしています。

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試で、圧倒的に有利でした。

 

 

 

「見返り美人図」の作者である菱川師宣は、浮世絵の創始者とされる「画家」です。

 

 

過去に、「画家」や「絵画」が題材となった問題を調べてみました。

 

以下の年度で、「画家」や「絵画」の問題が出ました、

 

 

・平成24年度の大問4〔問2〕(A)

・平成20年度の大問4〔問2〕(B)

・平成13年度の大問4〔問1〕(C)

・平成10年度の大問4〔問2〕(D)

・平成9年度の大問4〔問2〕(E)

・平成9年度の大問6〔問1〕(F)

 

 

その「内容」を「時代順」に並べました。確認してみましょう。

 

 

※「高松塚古墳壁画」(E)

※…踊り念仏などによって修業や布教をする一遍の様子が絵巻物に描かれた。(B)

※一遍が…踊り念仏などによって布教活動を行い、時宗を開いていく「一遍上人絵伝」(C)

※「一遍上人絵伝」(E)

※雪舟は宋や元、明の画風を取り入れ、「破墨山水図」を描いた。(A)

※雪舟は、中国から帰国後、…水墨画を大成した(D)

※雪舟は、自然の風景を墨の濃淡で巧みに表現し「秋冬山水図」を描いた(F)

※狩野永徳は、…城や寺院の襖や屏風に絢爛豪華な絵を多数描いた。(A)

※俵屋宗達は宋の画法を取り入れ、「源氏物語関屋澪標図屏風」を描いた。(A)

※尾形光琳は、はなやかな色彩で「紅白梅図屏風」を描いた。(F)

※葛飾北斎は西洋の画法を取り入れ、「富嶽三十六景」を描いた。(A)

※葛飾北斎は、はっきりした線や強烈な色彩で「富嶽三十六景」を描いた。(F)

※黒田清輝は、明るいのびやかな画調で「湖畔」を描いた。(F)

 

 

 

こうしてみると、「菱川師宣」の「見返り美人」は、「意表を突く」出題だったことがわかります。

 

かねてより、私は、都立高校の社会の入試問題には、出題に「偏り」があることを指摘してきました。

たとえば、上の表を見ると、「一遍」や「雪舟」は3度も出題されていることがわかります。

 

こうした「偏り」をつかむことは、「受験指導」のひとつの「要素」ではあったわけです。

 

ところが、今年から、「傾向」が変わりました。

「歴史」だけでなく、「地理」や「公民」でも「初出」の単元や事項が多く盛り込まれました。

 

もちろん、「これまで出題されなかったものが、ある年に初めて出題された」というようなことはいくらでもあり得るわけですが、今年は、かなりの「量」が「投入」されています。

 

 

これは、意図的なものなのだろうと思います。

 

これまでも、都立高校の入試では、「受験者側の研究」が進むと、出題傾向が変更されるということが何度かありました。

これまでのものは、いってみれば、ちょっとした「マイナーチェンジ」程度のものだったのですが、今回は、かなり「作り込んできた」印象です。「意志」が感じられます。

 

 

今年の入試問題を「基準」にすると、「受験者側」は、今後、「何が狙われやすいか」という観点とは「別の視角」を持つ必要があるわけです。

すなわち、「これまで出題されていないものが狙われる」というものです。

 

 

「これまで出題されていたものが狙われる」+「これまで出題されていないものが狙われる」…。

 

それは、結局、「どれもが狙われる可能性がある」ということです。

 

「出題者側」は、「偏った出題」を修正することで、「受験生側」の「偏った受験勉強」を是正しようとしているわけです。

 

 

昨年までの都立高校入試の社会は、「過去の出題傾向」をおさえる勉強方法が「効果的」でした。

 

しかし、今年の入試の「変化」にともなって、指導方法を変えなければならない塾が出てきそうです。

 

 

ちなみに、当塾は、次年度も、今までどおりの指導を行います。

 

今年都立高校を受験した生徒の得点は、過去問演習時と比べてまったく落ちることはなかったので、一切変える必要がありません。

 

 

 

ついでながら書き添えると、「絵画の歴史」では、過去に出題された「内容」の他に、

 

・国風文化 「絵巻物」「源氏物語絵巻」

・鎌倉文化 「似絵」

・化政文化 「歌川広重」「東海道五十三次」

 

 

などもおさえておく必要が出てきたわけです。

 

 

 

〔問3〕

 

 

グラフから、当時の日本は、「綿花」の輸入が多く、「繭」の輸入が少ないことがわかります。

 

以下の知識を知っておかなければなりません。

 

・「綿花」→「綿糸」→「綿織物」

・「繭」→「生糸」→「絹織物」

 

 

ちなみに、「綿糸」(や「毛糸」)を作ることを「紡績」、「生糸」を作ることを「製糸」といいます。

 

「綿糸」や「生糸」の段階で輸出することもあれば、「綿織物」「絹織物」に仕上げて輸出する場合もあるわけです。

 

 

輸出額(外国に売る額)が輸入額(外国から買う額)を下回ることを「赤字」(損益が出る)といいます。

逆に、輸出額(外国に売る額)が輸入額(外国から買う額)を上回ることを「黒字」(利益が出る)といいます。

 

 

当時の日本は、一般に「綿織物」が普及していました。

国内の需要に対して、原料となる「綿花」の国内生産が追いつかなかったので、「綿花」を輸入していたわけです。

「綿糸」や「綿織物」の輸出も行われていましたが、原料の輸入額が製品の輸出額を上回っていたので、これは「赤字」の状態だったわけです。

 

一方、当時の日本は、国内で「繭」の生産を行っていたので、生産された「生糸」や「絹織物」を輸出すれば、「黒字」となりました。

 

 

 

〔問4〕

 

 

大正時代の出来事を選ぶ問題です。

大正時代は1912年から1926年までの期間ですが、この「期間」を覚えるのではなく、大正時代のトピックと照合させて、Aの期間が大正時代であると特定するわけです。

 

 

大正時代のトピック:

 

・1914年 第一次世界大戦

・1915年 21か条の要求

・1916年 吉野作造が「民本主義」を提唱

・1917年 ロシア革命

・1918年 米騒動、シベリア出兵、原敬内閣成立

・1919年 ベルサイユ条約、三・一独立運動、五・四運動

・1920年 国際連盟

・1922年 ワシントン会議

・1923年 関東大震災

・1925年 普通選挙法

 

 

以上の「年号」のうち、1914年と1919年、1925年を覚えておけば、後は「何とかなる」でしょう。

 

この問題でも、この3つの「年号」を知っておくことで、Aが大正時代であることが特定できました。

 

 

正答となる「ウ」の選択肢のうち、「ラジオ放送」はおさえておく必要があります。

 

平成21年度の大問4〔問4〕の「エ」、平成16年度の大問6〔問1〕の「イ」などの選択肢に、「ラジオ放送」が組み込まれています。

 

 

ところで、私は過去に以下のような記事をかいています。

 

都立高校入試の社会の取り組み方

 

 

都立の「歴史」は、大正時代をおさえることが重要であると説明しています。

その中で、大正時代を特定する「ワード」として、「ラジオ放送」などを覚えるとよいと、述べています。

 

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試では、圧倒的に有利でした。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

平成29年度都立高校入試の社会②

昨年に引き続き、都立高校入試の社会の解説をしようと思います。

 

 

その前に、感じたことなど。

 

「作問の方向性」が変わっています。

世界地理分野で「マイナー」な国が積極的に取りあげられています。

また、ちょっとマニアックな構成の設問が見られました。

 

これまでの「流れ」をあえて分断するような構成になっています。

20年分の過去問と対照させてみましたが、その感が強くなりました。

 

おそらく、意図的に、過去に出題されていないトピックを増やしているのだと思います。

 

これは、ちまたにあふれる「マニュアル的な対策」への対抗なのでしょう。

(すごくいいことですね。)

 

 

 

では、各問を見ていきましょう。

 

 

 

○大問1 融合問題(小問集合)

 

 

〔問1〕

 

平成24年度の大問1〔問1〕の類題でした。

 

今年は、「Ⅰ」の地図に経路を書き、そのルートを「Ⅱ」に記入する問題となっています。

解答を記入するまでの「手順」が増えたので、24年度よりも問題が複雑になりました。

 

 

 

〔問2〕

 

 

・奥州藤原氏

・前九年の役、後三年の役

・世界遺産、内部が金で装飾された阿弥陀堂→中尊寺金色堂

 

以上のヒントから、東北・岩手を示す「ア」が正答であると特定できます。

 

中尊寺金色堂に関しては、世界遺産登録される前の平成8年度の大問1〔問2〕で出題されました。

 

 

その他の選択肢:

 

「イ」は富岡製糸場

「ウ」は姫路城

「エ」は石見銀山

 

 

ちなみに、選択肢「ア」が示す「平泉の位置」は、過去に頻出しています。

平成27年度、平成25年度、そして平成24年度の大問1〔問2〕のいずれの選択肢「ア」も、全く同じ平泉を示す地点を指しています。

 

 

 

〔問3〕

 

「時事問題」です。

昨年実施された「18歳選挙」が題材となっています。

 

都立高校の入試では、設問の「周辺」に「時事ネタ」がちりばめられることがたまにありますが、「時事問題」であると言い切れるような設問は、これまで記憶にありません。

 

内容自体は、「選挙の原則」ですから、社会科の知識としては一般的なものですが、質的には、「新傾向」であるといっていいと思います。

 

 

ちなみに、私は昨年、このブログに以下のような記事を書きました。

 

2016年の時事問題

 

記事の中で、「選挙権の拡大」や「選挙の原則」について説明しています。

これを読んでいた受験生は、かなり有利だったでしょう。

 

 

ところで、入試に出る「時事問題」の対策としては、当たり前ですが、入試に出る可能性のある出来事を抽出し、絞り込んでチェックしなければなりません。

あちらこちらで「時事ニュース」を紹介するようなサイトなどを見かけますが、話題となったニュースを羅列しただけのものもありますね。

 

 

 

○大問2 世界地理

 

 

〔問1〕

 

世界地理の問題は、正答を導くのに国名と場所を特定する必要はありませんが、説明のために記号と国名を記します。

 

 

A ナミビア、アフリカ州・南半球

B アイスランド、ヨーロッパ州・北半球

C アルゼンチン、南アメリカ州・南半球

D ドミニカ共和国、北アメリカ州・北半球

 

 

Bに当てはまる記号を選ぶ問題なので、アイスランドについて書かれてある選択肢を選び出すわけですが、当然、「アイスランドに関する知識」の有無をもとめられているわけではありません。

 

 

設問の「テーマ」は、「海流」です。

海流について書かれた部分から「ヒント」をつかんで、それをもとに正答にせまります。

 

また、気候や地形、産物などの記述もまた、「ヒント」となっています。

 

 

「ア」のヒント

・東から西へ暖流

・熱帯低気圧→ハリケーン

・年間を通して高温、雨季と乾季→熱帯気候

・コーヒー

→D、ドミニカ共和国

 

「イ」のヒント

・北上する暖流→北半球

・暖流と偏西風の影響で緯度の割に(高緯度なのに)温暖→ヨーロッパ

→B、アイスランド

 

「ウ」のヒント

・北上する寒流→南半球

・西側にある山脈→アンデス山脈

・大草原→パンパ

・小麦、牧畜

→C、アルゼンチン

 

「エ」のヒント

・北上する寒流→南半球

・砂漠

→A、ナミビア

 

 

アンデス山脈を越えたアルゼンチン西部には砂漠が広がっています。

そのことを知っている受験生はAとCを混同したかもしれませんが、ともに「南半球」に位置することを読み取ることができれば、両者を解答の候補から外すことができます。

 

Bの位置は、かなりの高緯度であり、「年間を通して高温」ではないと判断できれば、答えを「イ」と特定できます。

 

 

海流に関する知識として、赤道付近から流れてくるものを「暖流」といい、極地(北極・南極)から流れてくるものを「寒流」いうことを知っておかなければなりません。

 

しかし、「常識的な発想」のもとに考えれば、一年中気温の高い赤道付近から「あたたかい海の流れ」が発生するはずであると思い当るはずです。

 

 

暖流は、地球上の「熱」を循環させる働きをします。

 

暖流の「通り道」は気温が高くなり、温暖な気候になるということも「社会」では必要とされる知識です。

 

世界地図を見るとよくわかりますが、ヨーロッパはかなり高緯度にある地域です。

たとえば、イタリアの緯度は、北海道と同じくらいです。ですから、イタリアよりも北にあるフランスやドイツなどの国は、冷帯に属する北海道よりもさらに北に位置していることになります。

それほど高緯度にあるヨーロッパの国は、大部分が温帯の気候です。

それは、暖流のおかげなのです。北大西洋海流という暖流によって、「熱」がヨーロッパ近海まで運ばれます。その「熱」を偏西風が陸地に運ぶため、ヨーロッパは高緯度地域であるにも関わらず、比較的過ごしやすい気候となっているのです。

 

実は、ヨーロッパの気候を特徴づける「暖流」と「偏西風」というワードは、社会の入試問題では頻出です。

 

特に有名なのが平成21年度の大問1の〔問1〕です。

それから、平成10年度の大問2の〔問1〕の「ウ」のように、ヨーロッパ西岸の気候を説明するのに、必ず用いられるものです。

 

今年の都立の問題は、「定型を外す」という企画意図を感じます。

あえて、西ヨーロッパの国ではなく、北欧のアイスランドを指定しているわけです。

 

アイスランドが火山国で、魚介類をよく食べる国だと知っている中学生は、ほとんどいないでしょう。もちろん、ポイントはそこではありません。

 

この設問の「テーマ」は「海流」なのです。

 

 

ちなみにCのアルゼンチンですが、都立入試ではよく取り上げられる国なので、基本的な知識をおさえておかなければなりません。

平成27年度の大問2の〔問2〕、平成23年度の大問2の〔問2〕、平成13年度の大問2の〔問2〕などで出題されています。

 

 

 

〔問2〕

 

W モーリタニア、北アフリカ

X ブラジジル、南アメリカ

Y キューバ、カリブ海の島国

Z アメリカ合衆国、北アメリカ

 

 

モーリタニアを知っている必要はありません。

受験生のほとんどは、アメリカ合衆国とブラジルを知っているので、それを足掛かりに考えます。

 

まず、「ウ」がアメリカ合衆国であることがわかります。

ブラジルがポルトガルの植民地だったと知っていれば、「エ」がブラジルであると判断できます。

 

 

そして、西アジア、北アフリカにイスラム教徒が多いこと、また、アフリカの多くの国がかつてフランスの植民地であったことを知っていれば、「イ」をWであると特定できます。

 

鋭い洞察力を持った受験生は、独立した「1960年」に反応するでしょう。

「1960年」は、いわゆる「アフリカの年」です。この年に多くのアフリカ諸国が独立したために、そう呼ばれています。

 

あるいは、なじみの薄い「モーリタニア」という国は、「新しい国」であり、そのために、独立前に使われていたフランス語がまだ使用されていると思いつくことができれば、「イ」を消去できます。

 

 

以上のような解答作業にしたがって、「ア」がYのキューバであると特定できます。

 

しかし、キューバがスペインの植民地であったこと、また、キューバ革命によって社会主義国となったことを知っていれば、よりシンプルにキューバを特定できるでしょう。

 

「キューバ危機」という言葉を、何となく覚えている人もいると思いますが、その内容を簡単に確認しておきましょう。

冷戦のさなか、アメリカのすぐ近くに位置するキューバに革命が起き、新たな社会主義国が誕生しました。キューバは、隣国のアメリカと仲たがいし、社会主義国の「親分」であるソ連と親しくなりました。それで、ソ連は、キューバに核ミサイルを配備しようとしました。それにアメリリカが猛反発し、一触即発で核戦争が起きそうになったのが、キューバ危機です。

地図を見ると、キューバがいかにアメリカに近いか、わかりますね。

 

 

 

ちなみに、キューバについて、「近年、世界各地から観光客を受け入れ、経済を活性化させている」と書かれていますが、私もキューバに行ったことがあります。

 

下の写真は私が、キューバに入国したときのものです。

タラップで、右手を上げているのが私です。

飛行機に乗るとき、「飛行機、ちっさ!」と思ってびびりました。

 

cuba-1

 

 

実は、この飛行機、エアコンがきかないので「ドライアイス」をイスの下に置いて機内を冷やすという素敵なシステムでした。離陸してしばらくして、モクモクと煙が出てくるので、最初、事故かと思って、死ぬほどあせりました。

乗っていた乗客はほとんどメキシコ人とアメリカ人だったのですが、しまいには煙でまわりが真っ白になって、これ、国際線かよ!って、つっこみながら、みんなで爆笑していました。

で、まあ、無事に到着したのですが、空港の、よくわからないへんてこりんなところに降ろされて、困惑しました。

それで、入国手続きをするターミナルまで、テクテク歩かされました。

 

でも、キューバは、いろいろと愉快な国でした。

また行きたいですね。

 

 

 

〔問3〕

 

P 南アフリカ共和国

Q ポルトガル

R ウルグアイ

S カナダ

 

 

ウルグアイは、南米の小国ですが、サッカーの強豪国として知られています。

サッカーファンにはおなじみの国なので、サッカーが好きな人には少しだけ有利だったかもしれません。

 

Ⅲの文章に「大西洋とインド洋を分ける東経約20度の子午線が通っており」とあります。

大西洋はアフリカ大陸の西側、インド洋はアフリカ大陸の東側に広がっています。

また、東経・西経0度の本初子午線がイギリスを通っていますので、Ⅲで述べられているのはイギリスの東側に位置する国であるとわかります。

 

以上のことから、Ⅲの文章で述べられている国はPの南アフリカ共和国であることがわかります。

 

そして、「2013年の日本の輸入額の上位3位の品目の中に…乗用車が入るようになった」という記述をもとに、Ⅰの表の選択肢「イ」と「ウ」を解答の候補にしぼることができます。

 

そして、2013年の貿易相手国に中国が入っていない「イ」が消去されて、「ウ」を選びます。

 

 

余談ですが、世界地理の「貿易」に関する設問に対処するときに、「貿易は、近い国と活発に行われる」という「傾向」を念頭に考察すると正答に近づけることがあります。

 

「貿易相手国」というのは、その国の「立地」を探る手掛かりになるのです。

 

アメリカ、と中国を外して考えてみましょう。

 

日本、イギリス、メキシコと活発に貿易している「ア」はカナダになります。

スペイン、ドイツ、フランスなどと活発に貿易している「イ」はポルトガルになります。

ブラジル、アルゼンチンなどと活発に貿易している「エ」はウルグアイになるわけです。

 

南アフリカ共和国は、ちょっと特殊な国で、アフリカ諸国ではなく他地域の国との貿易が活発です。

 

 

ちなみに、南アフリカ共和国との貿易に関する問題は、平成25年の大問2〔問2〕、平成7年の大問2〔問3〕などで出題されています。

 

また、カナダとの貿易に関する問題は、平成22年度の大問2の〔問2〕、平成9年度の大問2の〔問2〕などで出題されています。

 

 

 

 (ivy 松村)

 

 

平成29年度都立高校入試の社会①

今年の都立高校入試の社会は、「易化」したのか、「難化」したのか、人によって評価が分かれると思います。

 

暗記したことがらを「アウトプット」して解答する「知識系」の問題が減り、資料や選択肢などに組み込まれた「情報」を抽出し、総合して答えを「判断」する「思考系」の問題が増えました。

 

そのため、たとえば、「一問一答」などの問題集をひたすらやり続け、「社会のポイントをがっちりおさえる」ような「馬力」の受験勉強をしてきた受験生は、苦労したかもしれません。

あるいは、その受験勉強の「コスト」に見合った「対価」を得られなかったかもしれません。

 

一方、一部の受験生は、社会の受験勉強をほとんどやってこなかったにもかかわらず、かなりの高得点を取ることができました。

正確に「情報」を読み取ることを「苦」としない受験生にとっては、得点源の多い入試問題であるといえるわけです。

 

 

 

個人的には、「易化」したと思います。

しかし、全体の「平均点」は下がるのかもしれません。

「馬力」の受験勉強をしている受験生は、意外と多いように思います。

 

 

もともと、社会は「馬力」に比重をおいた指導をしていないので、当塾の受験生はうまく対応できたようです。

「記述」で少し減点されても、9割は確保できました。

 

 

 

さらに「構成」について、気づいたことなど。

 

 

まず、経済、現代史、時事問題などの中から、「これまで重視されていなかったトピック」をあえて「メイン・テーマ」に据える問題が見られました。

 

それから、表などから「数値」を読み取るタイプの問題が減り、「情報」を汲み取るタイプの問題が多くなりました。

 

さらに、(歴史だけではなく)地理、公民の分野で、「時代の流れ」や「時代の変化」を読み取ったり、ふまえたりすることを求める傾向が強まったように思います。

 

そして、これは非常に重要なポイントだと考えますが、「設問あたりの情報量」が増えました。そのおかげで、「情報処理能力」の高い受験生は、数多くの「ヒント」を整理、検討することで、正答率を上げることができたでしょう。一方、「情報」の多さが「ノイズ」となってしまった受験生は、対処することができずに失点を増やしてしまったでしょう。

 

 

「形式」の面からは、語句を筆記して答える問題が無くなったこと、「記述」問題が2題に削減されたことが指摘できます。

が、これは、想定されていたことでした。

 

また、4つの選択肢から正答を選ぶ単純な「四択」の問題ではなく、全ての選択肢を整合させる問題が「復活」しましたが、これも、想定どおりでした。

 

「記述」を減らす必要性から、全体の「難度」を上げなければならなかったからです。

そのために、マークシートの「利便性」を活かして、「完全一致型」の問題が組み込まれたわけです。

 

「完全一致型」は、平成26年度以前の問題によく見られた形式です。

 

実は26年度の入試問題で「発覚」した「採点の誤りの問題」について、東京都教育委員会は、「完全一致型」の問題が、その元凶であると見なしていたのです。実際、その設問で、多くの「採点ミス」が起きました。

27年度の入試では、「完全一致型」を撤去しなければなりませんでした。

そして、28年度は、マークシート実施初年度ですから、シンプルな解答形式に揃えたかったのです。

 

で、今年、難易度の調整のために、「完全一致型」を再び登場させたわけです。しかし、これは唐突な「変化」というわけではなく、東京都教育委員会のホームページで事前に示唆されていました。

 

 

個人的には、「完全一致型」の問題の中で、大問4の〔問3〕のような語句を補充するタイプは、都立の社会では珍しい形式だったで、ちょっと気になりました。来年度、さらにこの形式を「発展」させた問題が出されるかもしれません。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

平成29年度の都立高校入試

都立高校入試が終わりました。

 

これで、本年度のすべての入試が終了しました。

 

(これから入試本番をむかえる人は、がんばってください!)

 

あとは、発表を待つばかりです。

落ち着かない日々を過ごすことになるのでしょうが、それも受験の一部分であり、また、人生の一部です。いろいろと考えて、自分に合ったやりかたで、当日までを過ごしてください。

 

 

 

中1、中2の生徒たちは、学年末テストが近づいています。

明日も、教室を開放しますので、「家では勉強がはかどらない」という人は、ぜひ、テスト勉強にきてください。

 

また、ローマ字、英語に苦戦している新中1の生徒で、「しっかり復習したい」という人も歓迎しますので、ぜひ、来てください。

 

 

 

さて、都立高校入試について、思ったことなどを書きたいと思います。

 

両国の男子と大泉の女子の「受験倍率」が、「1」を切ってしまいました。

かなり微妙な状況ですね。

 

 

そして、入試問題です。

やはり、東京都教育委員会の意向が大きく働き、「解答形式」を単純化しようという意図が強く出ています。

 

近年、都立高校入試の大きな「テーマ」となってしまった「採点ミス撲滅」のために、「記述」を抑え、記号で答える形式の「問」(←「もん」と読むらしいです)を増やす傾向が強化されました。

 

社会では、「記述」が2題となりました。また、語句筆記問題が削減されました。

英語のリスニング問題で、筆記で答える問題が1題のみとなりました。また、英単語を書き込んで答える問題もなくなりました。

数学でも、選択問題が増えました。

理科は、図やグラフに「線」を記入する問題と、「記述」が1題だけです。

国語は、昨年と同様に「記述」は出題されませんでした。

 

 

つまり、なるべく「文字」を書かせないような試験問題になっているわけです。

 

 

これは、結構いろいろな功罪をはらむことになりそうです。

 

一点、指摘するならば、自校作以外の都立高校を目指す生徒の「受験勉強の質」が変化することになるでしょう。

 

もう一点。いずれ、国語の「作文」の「採点基準」が、「議論の的」になるかもしれません。

しかし、「作問側」もそれに気づかないはずはないので、近いうちに「作文」を「なんとかする」ように処置するのかもしれません。

(「作文」があったほうがいいのか、ないほうがいいのか、というのはちょっと「難しい」です。)

 

 

 

本年度のグループ作成校の「独自問題」の出題状況を調べました。

 

(他の学校と違う問題を使用していても、それが「自校作成」なのか、それとも、1校だけが「共通問題」を使用している状況なのかわからない場合があるので、「別問題」という表記にしました。)

 

 

新宿、墨田川、国分寺の単位制高校のグループ作成は、数学は大問1が、学校ごとに「別問題」でした。

英語は、墨田川の大問2、新宿の大問4が「別問題」となっています。

また、国語では、新宿高校が漢字の「読み」と「書き」を1問ずつ「別問題」にしていました。

 

 

 

進学指導重点校を見てみましょう。

 

 

まずは国語です。

 

 

1 2 3 4 5
日比谷 共通 共通 A 別問題 A
戸山 共通 共通 A 別問題 B
青山 共通 共通 B A B
西 共通 共通 B 別問題 A
八王子東 共通 共通 A A A
立川 共通 共通 A A A
国立 共通 共通 B 別問題 A

 

 

国語は、大問4の「説明的文章」を差替える高校がありました。

日比谷、戸山、西、国立の「問題」がその他の高校と違っています。

 

今の時点では分からないのですが、もしかすると、国立は、「独自問題」ではなく、「もうひとつの共通問題」を使用しているのかもしれません。

 

 

 

次に英語です。

 

 

1 2 3
日比谷 共通 A 別問題
戸山 共通 B 別問題
青山 共通 A 別問題
西 共通 別問題 A
八王子東 共通 A A
立川 共通 B 別問題
国立 共通 A 別問題

 

 

大問3は、5校が「別問題」となっていますが、立川(あるいは青山)は、「もうひとつの共通問題」かもしれません。

 

気になるトピックとしては、西高でリスニングに「トラブル」があり、男子の受験者全員に一律20点が加点されることになったそうです。

 

 

 

最後に、数学です。

 

 

1(1) 1(2) 1(3) 1(4) 1(5) 2 3 4
日比谷 A A A A A A A 別問題
戸山 A A B A B B A 別問題
青山 A A A A A A B 別問題
西 A A 別問題? 別問題? B A A 別問題
八王子東 B 別問題 別問題 A B B B 別問題
立川 B B A A B A B 別問題
国立 A B B A A B A 別問題

 

 

 

大問4は、全ての高校が「別問題」となっていました。

 

しかしその中で、もしかすると八王子東の問題は、「共通問題」として作成されたものかもしれません。

 

 

 

個人的な見解ですが、「独自問題」に積極的な高校であるかどうかと、「倍率」の「差」には、「何かつながり」があるのではないかと思っています。

受験生が「それ」に着目するという話ではありません。

「すこしでも精度の高い選抜を行いたい」という、その高校の「意志」が、「それ」に反映されるのではないかと思います。そして、トップ校を目指す受験生は、結局「その意志」に、感応するのではないか、と思うわけです。

 

この数日、このブログでは、立地などの「外部的要因」によって「倍率」が上下するというメカニズムについて考えてきました。

しかし、一方で「倍率」は、やはり「内部的要因」に強く規定されます。

 

 

 

日比谷高校は、「この状況下」で「守り」に入りません。

「採点ミスが起きたら、責任を取る気はあるのだろうね」ぐらいのことは、軽く言われているはずです。

 

 

でも、屈しない。

 

 

「ビリビリ」きますね。

 

 

(ivy 松村)

 

 

国語の入試問題の「易化」がもたらすもの

今年の都立高校入試では、共通問題の国語の平均点が70点の「大台」を超えて73.9点となりました。

 

都立高校入試が「易化」すると、「学力判定」への影響が切実になります。

今年は、ちょっと見過ごせないほどに試験の水準が低下しました。

 

 

73.9点という都立共通問題の平均点は、下位の高校も上位の高校も、すべて合同で算出されています。

その平均点が70点を超えているということは、上位校の受験生の点数は、満点に近い高得点で拮抗しているということになります。

 

東京都教育委員会が公表した「得点分布」のデータによれば「分布のピーク」が80~84になっています。実際にグラフを見れば一目瞭然ですが、平均が73.9点で「ピーク」が80~84になっているわけですから、「分布」が高得点域に大きく偏っているわけです。

 

この国語の試験で50点以下の点数をとった受験生は、約10パーセントでした。

 

一方、90点以上を取った受験生は15パーセント以上います。

 

したがって、今年、都立高校の国語の問題を受験した約39,977人の受験生のうち、約6,000人が90点以上を獲得していることになります。(驚くべきことに、さらにそのうちの2,000人以上が95点以上を獲得していることになります。)

 

 

さて、次のような高校が、共通問題を使用する都立上位校です。

小山台、駒場、国際、竹早、三田、小松川、北園、武蔵野北、町田、小金井北、日野台、調布北。

 

12校の高校の今年の受験者数の合計は、4,067人です。

 

全受験生のうち、90点以上を取った受験生が6,000人いるわけですから、共通問題上位校に挑む約4,000人にとっては、90点以上の得点を取ることが「基準」となるでしょう。

 

上記の学校群の入試では、結局のところ、ほとんどの受験生がそれに近い点数を確保していたはずです。

 

 

 

しかし、問題の本質は、試験が「簡単すぎた」ということではありません。

得点差が無くなり、「入試点」が膠着してしまうと、合否を分かつ決定打になるのが、「内申点」となってしまうことです。

本番の入試得点で差がつかないのですから、「持ち点勝負」となってしまうわけです。

 

 

このブログでも、再三にわたって指摘しているとおり、恣意的な指標である「内申点」の比重が高まるほどに、入試の公平性は揺らいでいくわけです。

「簡単すぎる入試問題」は、「内申点」という「しばり」が存在する限り、都立高校入試の「選抜機能」を溶融させてしまいます。

 

 

入学試験が「易化」するほどに、内申点の価値が高まるとういう「メカニズム」は、入試を不安定にさせるある種の「呪縛」なのです。

 

 

その意味では、共通問題と同様に記述問題が激減した「グループ作成」の高校群も、同種の「気がかり」がぬぐえないわけです。

 

西高のホームページを見てみると、同校を受験した受験生の国・数・英の平均点が掲載されています。

 

今年の平均点は、国語が71.3点、数学が51.2点、英語が69.8点です。

やはり、国語の平均点が上昇しています。

また、英語の平均点も高くなっています。

西高の国語の平均点が70点を超えたのは、自校作を導入した最初の年以来です。

 

西高と同様に、「グループ作成校」全体の国語の平均点も上昇していると推測されます。

 

 

今年の入試では、過去の「入試情報」をもとに精度の高い分析を行っていた学習塾ほど、「内申基準」と「ボーダーライン」を読み違えていると思います。

 

 

 

ところで、話は変わりますが、国語の入学試験問題が「簡単」だった場合、「国語が得意な生徒」と「国語が苦手な生徒」のどちらが有利になるでしょうか。

 

多くの場合、「国語が苦手な生徒」に有利になると思います。

 

「簡単」というのは、要するに、得点を取る受験生が多くなるということです。

したがって、「国語が得意な生徒」は、国語の得点で他の受験生に対して「差」を付けることができなくなるということになります。

 

今回の都立共通問題の試験では、「国語の能力」が「抜群の生徒」と「平凡な生徒」に「差」がつかないばかりか、比較的国語を苦手にしていた生徒であっても、「おつりがくるほど」の得点を確保することができたわけです。

 

 

 

「セオリー」をいえば、高校受験の要諦は「数学の強化」です。

 

概して、難関校の入試では最も平均点の低い教科となるのが数学です。

「スペシャルな数学の能力」は、他の全ての不利を力づくで覆すだけの「可能性」を持っています。

 

たとえば、西高の入試では、過去に数学の平均点が30点台だったことが2度ありました。

そのような入試で、自分だけが80点、90点取れるような「能力」を持っていれば、圧倒的に有利です。

 

 

高得点域で受験生の平均的な学力が拮抗する試験では、「得点力」は「宝の持ち腐れ」となってしまいます。一方、低得点域で受験生の平均的な学力が拮抗する試験では、「得点力」を最大限に発揮できるわけです。

 

そして、数学は、後者の試験となることが非常に多いのです。

 

 

そうなると、「ベタな結論」としては、受験勉強は、国語よりも、数学に比重を置いて取り組むほうが「効率的」であるという話になります。

 

 

しかし、国語を「過小評価」する言説を躊躇なく口にする者は、その浅薄で安直な教育観を盛大に露呈させてしまいます。

 

受験の世界にも国語を軽んじる考えの人間が結構多いので、ぞっとすることがあります。

 

 

 

中学受験では、国語は、「核」となる教科として位置付けられています。受験科目としては算数が「最重要」となりますが、算数も含め理科・社会の「学力」を伸ばすためには、まず、「国語の能力」を鍛える必要があると考えられているわけです。「日本語の文章」が理解できなければ、説明を飲み込むこともできないし、問題も解けないからです。

 

大学受験では、「現代文」が「鍵」となります。「現代文」の出来がセンター試験の「結果」を左右することが多くあります。その上、多くの国公立大学の二次試験では、「国語の能力」をバックボーンとした「記述力」が必要となります。また、小論文や作文、あるいは、面接などに対応する「スキル」の土台となるのは「国語の能力」です。

 

 

国語という教科は、言語を扱う力を育むものです。

言語とは、思考とコミュニケーションを司るものです。

そして、「テスト」というものの内実は、「思考すること」と、「作問者や採点者と、問題や答案用紙を媒介にしてコミュニケーションをとること」なのですから、その根幹は「国語の能力」にあるといっても過言ではないわけです。

 

 

 

なぜか、高校受験では、国語は軽んじられる傾向にあります。

 

あからさまに国語の授業時間を削っているような塾もたくさんあります。

大手チェーン塾で、大学生講師が優先的に配置されるのも国語の授業です。

「答えは傍線部の近くにある!」というような、泥水のように低質な指導を行う講師もたくさんいます。

 

 

 

もしかすると、私立一貫校の生徒に比べて、都立高校出身の生徒が国公立大学受験に苦戦する原因のひとつは、「高校入試の国語」にあるのかもしれません。

 

 

来年以降の国語の作問を担当される方には、ぜひ気合を入れて「よい問題」を作っていただきたいと思います。

 

 

 

ちなみに、気づいておられる方も多いと思いますが、一言補足すると、今の方向性だと、都立高校の入学試験はセンター試験に接近していきます。これから消えゆく運命の試験に、近づいていくわけです。

 

 

また、余談ですが、この塾の生徒の国語の力は、他の生徒に比べて伸びていると思います。

その要因ひとつは、このブログを読む機会を持っていることなのかもしれません。

 

ということで、生徒の皆さん 、特に受験生、死ぬ気で数学に食らいついてください。数学が、君たちの未来を切り拓きます。

 

 (ivy 松村)