日比谷高校の英語の「発音問題」

日比谷高校は、英語で、他の都立高校にはない出題があります。

 

それは、「発音問題」です。

 

 

今年の日比谷高校の英語の入試問題の、大問3の〔問8〕を見てみましょう。

 

 

次の五つの単語のうちで,下線の引かれている部分の発音が他の四つと異なるものを,次のア~オから一つ選びなさい。(下線を表示できないので、太字で表します。)

 

ア know   イ only   ウ both   エ most   オ from

 

 

それぞれの発音を確認してみましょう。

 

ア「ノウ」 [nou

イ「オウンリ」 [ounli]

ウ「ボウス」 [bouθ]

エ「フロム」 [frəm]

 

 

正答は、「エ」です。

 

「from」の発音は[frəm]、あるいは[frʌm]、[frɑːm]、[frɔːm]などと発音されますが、いずれにしても[ou]ではありません。したがって、他とは発音の異なるのは「エ」ということになります。

 

 

 

昨年の入試問題でも、日比谷高校は「発音問題」を出しています。

昨年の29年度は、いわゆる「グループ作成」による入試選抜が行われました。

この年、日比谷高校は、大問3の差し替えを行い、あえて「発音問題」を出題したわけです。

 

去年の「説明会」で、前年の「発音問題」に関して熱のある言及があったということだったので、おそらく今年も出すのだろうと考えていましたが、やはり出題されました。

(来年は、どうなのでしょうか。)

 

 

 

それにしても、都立高校で「発音問題」を出しているのは、日比谷高校だけです。

 

以前は、都立高校でも「発音問題」が出題されていましたが、平成9年度に「リスニング問題」が導入されたために、都立高校入試から「発音問題」は姿を消しました。

 

 

高校受験では、一般的に、「発音問題」は「聞く力」を測る「代替措置」であると考えられています。

ですから、私立高校入試でも、「発音問題」を多く出すのは、「リスニング試験」を実施しない高校であることが多いわけです。

 

もう少しいえば、多くの英語教師は、「発音問題」よりも「リスニング問題」のほうが望ましいと考えています。「生きた英語」をあつかう能力のほうが、より重要であるというわけです。

さらに、「発音問題」の対策は、最終的に「暗記作業」に行き着いてしまう、ということも「発音問題」が不人気な理由のひとつであるといえるでしょう。

 

それで、「リスニング問題」が一般化するにつれて、「発音問題」は下火になっていったわけです。

 

大学受験でも、今後センター試験がなくなれば、「発音問題」は廃れていくのかもしれません。

 

 

 

さて、そういうわけで、日比谷高校が「発音問題」を出題しているというのは、ちょっと珍しいわけです。

 

しかし、もちろん、きまぐれや酔狂で「発音問題」を出しているわけではありません。

 

日比谷高校が「発音問題」を「復活」させた理由は、「話す力」を測るためであると考えられます。

 

これには、「正確に」英語を話す能力を培ってほしい、という受験生に向けたメッセージがこめられています。

 

「発音問題」をとおして、日比谷高校は、すでに英語の「四技能」を視野に入れた入試選抜を行っているということができると思います。

 

つまり、「発音問題」に、「新しい意味」が与えられているわけです。

 

 

これは、都立高校入試に「スピーキングテスト」が導入されるまでの過渡的なものなのかもしれませんが、ちょっと興味深く思います。

 

 

 

ちなみに、平成6年の都立高校の英語の入試問題(共通)の大問4の〔問8〕は、以下のような設問でした。

 

次の語のうちに、下線の部分の発音がsawの下線の部分の発音と同じものが一つある。それはどれか。(下線を表示できないので、太字で表します。)

 

ア look   イ father   ウ so   エ call

 

 

 

また、平成4年の都立高校の英語の入試問題(共通)の大問4の〔問8〕は、以下のような設問でした。

 

次の語のうちに、下線の部分の発音がhomeの下線の部分の発音と同じものが一つある。それはどれか。(下線を表示できないので、太字で表します。)

 

ア among   イ love   ウ stop   エ told

 

 

 

 

わかった人には、「飴」を差し上げましょう。

松村まで、どうぞ。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

 

平成30年度 都立高校「自校作成」の国語

進学指導重点校の英数国の入試問題は、本年度から「自校作成」となりました。

各校が、5年ぶりに独自問題を作成するとあって、「業界」でも大きな注目が集まりました。

 

 

私は、各校がリリースしている「出題の方針」に注目していました。

 

これをみれば、各校の出題構成と内容が、かなり精密に把握できると理解していたからです。

 

特に気を配っていたのが、国語でした。

国語の「記述」がどうなるのか、が本年度の入試の大きなポイントでした。

 

 

 

日比谷、西、戸山の3校が、大問3で「記述」を課すことは数か月前から判明していました。

また、国立が、大問3で「記述」を出題しないことも、数か月前から判明していました。

 

 

4校は、「出題の方針」をホームページに掲載し、公表していました。

 

いずれの高校も、入試選抜という「プロジェクト」を周到に準備してきたということがわかります。

 

4校の入試問題は、「出題の方針」に沿って作問されています。

 

 

 

一方、青山、八王子東、立川の3校は、「出題の方針」をホームページに掲載していませんでした。

 

 

青山は、都立の入試日になっても、まだ昨年の「出題の方針」をホームページに掲載したままでした。しかし、意外にも、今年の入試問題を最も早くホームページに掲載したのは青山高校でした。

その際に、今年の「出題の方針」もアップされました。

(ちなみに2番目は日比谷で、3番目は八王子東です。)

 

 

国語の入試問題は、すぐにはホームページ等に掲載できないので、現時点で問題を見ることはできませんが、「解答」と照らし合わせて「出題状況」を確認しました。

 

 

青山は、「出題の方針」で「記述」を示唆しないまま、「記述」を出題しています。

 

まあ、「出題の方針」で示された内容には「出題形式」自体への言及がなされていないので、「記述」が出題されたとしても、「出題の方針」に適合していないとは言えない、という「弁解」が、なんとか可能かもしれません。

 

 

この塾に青山を受ける受験生がいたら、ちょっと困ったことになったかもしれませんが、それでも、私は、青山の問題作りは評価できると考えています。

 

 

私は、一貫して、

 

・「記述」を出すべきである

・難度を上げるべきである

 

という主張をしてきました。

 

 

「解答」を見ただけの印象に過ぎませんが、青山高校の入試問題は、非常に熱が入っていると思います。

 

問題点は、入試選抜、もっといえば「生徒募集」が、ちょっと「ちぐはぐ」になっているということです。

 

英語でも、大問3の文章が、「物語文」なのか「説明文」なのかを明示していません。

おそらく、「出題の方針」は、実際の入試問題を想定しないまま作られたのではないかと思います。

「出題の方針」を出さなければいけないので、「とりあえず」あいまいな形でリリースして、後で問題を作り込んでいったのかもしれません。

 

 

「担当者」どうしの「連携」が取れていないとか、「生徒募集」を総括する人が総合的な指示を出していないとか、そういう部分があったのかもしれません。

 

 

 

そして、八王子東と立川です。

私は、2校の「資料」を手にし、「出題の方針」を確認することができました。

 

八王子東と立川は、ともに「入試説明会」で「グループ作成のものと同じような問題」を作ると説明していました。

 

それで、国語の入試問題で「記述」が出題されないという「予断」を持った受験生や受験関係者は多かったはずです。

しかし、八王子東と立川の「出題の方針」には、大問3について以下のように記されていたのです。

 

 

八王子東「文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力及び読み取った内容をまとめ、表現する能力などをみる。」

 

立川「文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力及び読み取った内容を適切にまとめ、表現する能力などをみる。」

 

 

ともに大問3で「表現する能力」を検査すると書かれてあります。

したがって、私は、両校は大問3で「記述」を出題すると判断しました。

 

 

 

八王子東は、「記述」を出題しました。これは、まったくの予想どおりでした。

 

一方、立川は、大問3で「記述」を出題しませんでした。

 

 

 

八王子東は、この一年、いろいろな面で非常に精力的な取り組みをしているのが伝わってきました。

とりわけ、今回の入試問題は気合が入っていると思います。

問題作りに「攻め」の姿勢があって、ちょっとグッときますね。

 

八王子東の取り組みが変わってきた理由の1つは、昨年の入試で応募人数を大きく減らしてしまったことでしょう。

また、もうひとつは、このままでは進学指導重点校の指定が危うくなるという危機感だと思います。実は、八王子東は、難関4大学の合格実績が下降し、進学指導重点校の「基準」のひとつを満たしていません。ある意味で、「酌量」されて、昨年の進学指導重点校の再指定を受けたわけです。

 

 

ただ、八王子東も、統率が取れた「生徒募集」になっていなかった印象です。

「説明会」などで、魅力をアピールしきることができていませんでした。

 

「入試説明会」では、国語に関してけっこうユニークな内容のお話しがあったということですが、「記述」については触れられなかったようです。そのうえ、「独自問題」について「グループ作成と同じような問題」を出題すると表明していたそうなので、実際の入試問題を目にして、驚いた人も多かったのだろうと思います。

 

 

 

そして、立川です。「表現する能力をみる」と明言していながら、そのための設問が用意されていません。

 

立川の問題を見ましたが、国語は、ボーダーを押し上げる要因になりそうです。

大問3で苦戦した受験生は少なかったと思います。さらに、決定的なのが大問4で、ほとんどの受験生はここで無難に得点を確保できたはずです。

 

立川の国語の問題は、大問3・4と、大問5の「統一感」がバラバラで、しかも全体の「バランス」がとれていません。

大問5は、古文の先生が作っていると思います。これは「骨」のある問題でした。

しかし、多くの受験生は、大問3・4では時間を取られないので、大問5に十分な時間をかけることができたはずです。

 

 

 

立川は、「入試説明会」で合格者の「内申点」の情報などを明かしています。

たとえば、男子は「オール4」に届いていなくても、入試得点で「逆転」できることなどが、データで示されました。

こうした積極的な「情報開示」が、立川の男子の倍率を高めた要因のひとつとなりました。

 

しかし、入試問題が易化し、入試得点が高得点域で均衡してしまうと「内申点」が乏しい受験生にとっては不利な受験になるわけです。

 

 

青山や八王子東と同様に、立川も、「生徒募集」と「作問」が「ちぐはぐ」だったわけですが、他の2校とは違い、立川の場合、「作問」に対する「意識」がおろそかだったという印象です。

 

 

 

虚飾なしに、端的にいえば、日比谷、西の「情報」は、「信頼」できます。

むしろ、高校が出してくる情報を細部までしっかりと読み取ることが大事です。

 

戸山も堅実です。

 

 

国立は、実はちょっと「気がかり」です。

 

国立高校は、かつては国語の入試問題で「重厚で濃密な記述」を出題することで知られていました。現在は見る影もありません。

 

積極的な「差換え」を行わなかった近年の入試問題に大きな違和感を持っていましたが、今年の「自校作成」でも「守り」の姿勢を崩していません。

 

 

日比谷と西は、問題作りと採点に対して、「覚悟」を持っています。

 

「この御時勢」ですから、「採点ミス」などがあれば、大きな責任問題になるでしょう。

それでも、「記述」を増やしました。

 

それから、戸山、八王子東、青山も前に進む決意をしました。

 

 

でも、国立は、ちょっと「教育庁のほう」を気にし過ぎているような印象を受けます。

 

 

国立高校の「歴史」を調べてみると、この高校は、「立地」を含めて、けっこう「ラッキー」が重なって、進学校としての「地位」を向上させてきたことがわかります。

 

適切な言葉なのかどうか、あまり自信はありませんが、あえていえば、もしかすると「殿様商売」といえるのかもしれません。

 

 

「集まってくる生徒のパワーと能力」を最大限に引き出すことができるのは、伝統の「強み」なのかもしれませんが、逆にいえば、「集まってくる生徒の質」が変われば、一気に「高校の質」も変わってしまう危険性を持った高校だと思います。

 

 

ちょっと「今の方向性」は、怖い気がします。

 (ivy 松村)

「出題の方針」の確認

本年度の入試の出題構成について確認しましょう。

 

 

「グループ作成」、「自校作成」の高校は、「出題の方針」をもとに、入試に備える必要があります。

 

 

 

日比谷高校の「出題の基本方針」の「各問のねらい」を見てみましょう。

 

 

□1 漢字を正しく読む能力をみる。

 

□2 漢字を正しく書く能力をみる。

 

□3 文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力、表現する能力などをみる。

 

□4 説明的な文章を読み、叙述や文脈などに即して、語句や文の意味、文章の構成及び要旨などを正しく読み取る能力をみるとともに、考えが正確に伝わるように根拠を明らかにしながら、自分の意見を論理的に表現する能力などをみる。

 

□5 古典に関する文章を読み、古典並びに現代の語句及び文章の内容についての理解などをみる。

 

 

 

日比谷高校の国語の漢字の出題は、「グループ作成以前」とその後で構成が変わっています。

 

以前は「文章題からの引用」でした。私立の入試でよくみられるパターンのもので、文章中からいくつかの語句が取り上げられ、その漢字の「読み」や「書き」を問われるという形式でした。

「グループ作成」となってからは他校と「足並み」をそろえる必要から、大問1が「漢字の読み」、大問2が「漢字の書き取り」という独立した問題構成となりました。

 

 

「自校作成」に回帰した本年はどうなるのか、それは、「出題の方針」に示されています。

本年は、「グループ作成」と同じ構成になることがわかります。

 

 

「出題の方針」を参照せずに、暗中模索におちいっている受験生がいたら、説明会で入手したものを確認するとよいと思います。

 

 

 

さて、本年度の国語の入試を予測するうえで、「記述」がどうなるのか、気になっている人も多いと思います。

 

 

各校の大問3の「出題の方針」を比較してみましょう。

 

日比谷「文学的な文章を読み、叙述や描写などに即して、場面、登場人物の様子、心情などを正しく理解する能力、表現する能力などをみる。」

 

戸山「文学的な文章を読み,叙述や描写などに即して,場面,登場人物の様子,心情などを正しく理解する能力及び読み取った内容を適切にまとめ,表現する能力をみる。」

 

国立「文学的な文章を読み,叙述や描写などに即して,場面,登場人物の様子,心情などを正しく理解する能力をみる。」

 

 

日比谷や戸山は大問3で記述問題が出題されるでしょう。

一方、国立は記述問題が出題されないでしょう。

 

 

また、いずれの高校も、大問5で「記述」は出題されないでしょう。

 

 

受験生向けの説明会や塾向けの説明会で、本年度の入試は「グループ作成と同じような出題」になると説明していた高校があったようです。

それで、たとえば、昨年と同様に「記述」は出題されないと高をくくっていると、当日に驚くことになるかもしれません。

その高校の「出題の方針」を見てみると、ちょっと違った出題になるということがみえてきます。

 

 

 

日比谷は、英語の「出題の方針」の「各問のねらい」も確認しておく必要があります。

 

 

□1 自然な口調で話される英語を聞いて、その具体的な内容や大切な部分を把握したり、聞き取った事柄について英語で表現したりする能力をみる

 

□2 まとまりのある対話文を読み、その流れや大切な部分を把握したり、読み取った事柄などについて英語で表現したりする能力をみる

 

□3 物語文を読み、そのあらすじや大切な部分を把握したり、読み取った事柄などについて英語で表現したりする能力などをみる

 

4 短い対話文を読み、読み取った事柄について、異なる2つの意見を適切に英語で表現する能力をみる

 

 

大問1は、全校共通のリスニングです。

大問2~4が独自問題ですが、それぞれ大問2は「長大な対話文」、大問3は「物語文」、大問4は「短い対話文」の問題であることがわかります。

したがって、「説明文」ではなく、「対話文」や「物語文」を読む「準備」をしておかなければなりません。

 

また、すべての大問で「英語で解答する設問」があることがわかります。

それは「抜き出し」の問題なのかもしれませんが、「英語で解答を記述する」問題である可能性が高いと思います。

 

注目すべきは、大問4で「異なる2つの意見を適切に英語で表現する能力」を検査されるという点です。

ここでは、2つの意見が交換される「対話文」が示され、受験生は、「2つの立場」に立ってそれぞれの意見を英語で要約する、あるいは主張を代理する、というような英作文を課せられるのかもしれません。

 

 

 

他塾の方も見ているでしょうから、このへんで。

 

 

 

都立入試に挑む受験生には、本年度の入試の「概要」を伝えています。

 

みなさんは、これまでの受験勉強、そして私立入試を通して、大きく成長しています。

私が、こんこんと伝えるまでもなく、一人ひとりが自分で「入試」をいうものを理解し、取るべき行動を判断することができるようになっています。

 

当日、思いもよらない問題が出ても、落ち着いて対処できるだけの力をつけています。

自信を持ってください。

 

 

 

みなさんといっしょに勉強してきた日々が、すでになつかしく思えます。

もう、「授業」の必要もありません。

 

私は、採点と問題の準備に追われる日々です。

後は、リスニングの「スタート」のボタンを押す係。

 

そして、くだらない質問に対して、くだらない受け答えをする人。

 

月日が過ぎて、あのくだらないやり取りの断片が、みなさんの記憶にかすかに残っていて、あるとき、ふと思い出して、ちょっとだけ愉快な気持ちになってくれたら、うれしく思います。

 

 

 

受験という「航海」の果てに、英作とリスニング、作文と漢字に立ち返ってきました。

これらが「最後のピース」です。

 

 

 

あと少し。がんばろう。

 

 

 

 (ivy 松村)

 

日比谷、国立、八王子東の「正答率」の比較

私立高校入試が一段落し、次は都立高校入試です。

 

明日から、「都立のターン」です。

 

最後まで、気を抜かず、しっかり頑張っていきましょう。

 

 

 

都立の入試問題について、少し情報を書きます。

 

 

本年度は、「自校作成」が復活します。

 

日比谷、西、戸山、青山、国立、立川、八王子東、それに加えて国分寺、新宿、および墨田川は、それぞれの学校が独自の英数国の入試問題を作成し、実施します。

また、国際高校は英語のみ自校作成、白鷗、両国、富士、大泉、武蔵はグループ作成問題となります。

 

 

昨年度までは、「グループ作成」となっていました。

 

したがって、「差替え」が行われた問題を除いて、各校が「同じ問題」を使っていたわけです。

 

日比谷、国立、八王子東は、過去の入試の「正答率」を公表しています。

そこで、3校の昨年度の入試問題の「正答率」を比べてみました。

 

本年度の入試問題から、こうした比較はできなくなります。

 

3校の「正答率」を比べてみると、いくつかの興味深い事実が明らかになってきます。

 

 

 

まずは、英語です。

 

 

大問1 (リスニング)

 

日比谷 国立 八王子東 共通問題
問題A 1 ほぼ10割 98.6 94.3 72.3
2 ほぼ10割 99.2 99.1 87.8
3 9割強 90.0 84.4 56.6
問題B Q1 ほぼ10割 98.1 97.6 78.5
Q2 8割弱 56.2 53.3 26.1

 

 

 

正答率は、学校の「序列」を反映し、日比谷>国立>八王子東になっています。

 

特に、記述で答える問題BのQ2で、日比谷とそれ以外の2校の「正答率」に大きな差が生じています。

 

 

 

大問2 (会話文)

 

 

日比谷 国立 八王子東
問1 a ほぼ9割 84.8 78.1
b 97.5 97.6
問2 ほぼ10割 94.2 94.0
問3 9割強 81.7 66.1
問4 9割弱 96.4 91.3
問5 ほぼ10割 93.4 83.5
問6 ほぼ9割 82.0 74.6
問7 9割弱 94.5 90.4
問8 ほぼ7割 53.7 41.1
77.6 72.5

 

 

 

問3の「正答率」に差が出ています。

 

日比谷の「正答率」は「9割強」です。受験者のほとんど全員が正解を導いています。

一方、八王子東は、「66.1」です。「正答率」は3分の2程度にとどまっています。

 

この問題は整序(並べ替え)問題でした。

私立によくあるタイプの、「文章題に組み込まれている」整序問題です。

 

明八などによく出題される形式です。

 

 

日比谷を受ける受験生のほとんどが、難関私立高校の入試問題に対応する能力を有していることがわかります。

 

一方、八王子東は、問3のような、典型的な私立入試の問題パターンへの対応力が乏しい受験生が多くいることがわかります。

 

しかも、この問題は、完全な整序問題ではなく、特定の順番に配置される語の組み合わせを選ぶ問題です。つまり、「選択問題」だったわけです。

 

「6択」にまで正解の選択肢が絞られていれば、日比谷の受験生は正答にたどり着くことができます。

しかし、八王子東の受験生は、3分の1が対応できません。

 

 

八王子東は、「併願優遇」を利用した受験パターンを組み、ほとんど「私立型」の受験勉強をしていない受験生が多くいるのだろうと思われます。

 

 

さらに、問5、問6、問8のような、文脈・内容把握、読解の力を問うような問題でも、「正答率」に差が出ます。

 

 

昨年の日比谷の合格者のほとんどが、大問1・大問2をほぼ「全正解」していると思います。

 

 

「差」のつかない入試問題には意味がありません。

 

日比谷は、入試説明会で難度を上げると公言しています。

 

一方、八王子東は、「グループ作成問題」と同程度の難易度であると説明しています。

 

 

 

次に国語を見てみましょう。

 

大問1 (漢字の読み取り)

 

 

日比谷 国立 八王子東
(1) 10割弱 99.2 98.2
(2) 7割5分 66.5 59.6
(3) 9割弱 91.7 84.9
(4) 7割 67.0 58.0
(5) 9割5分 97.2 94.9

 

 

 

大問2 (漢字の書き取り)

 

 

日比谷 国立 八王子東
(1) 10割 99.7 97.3
(2) 9割 91.7 90.5
(3) 5割 42.7 32.1
(4) 8割強 81.4 74.8
(5) 9割弱 88.1 84.6

 

 

 

大問3 (文学的文章)

 

国立は、別問題でしたので、日比谷と八王子東の比較です。

 

 

日比谷 国立 八王子東
問1 7割 62.2
問2 9割 89.8
問3 10割弱 97.0
問4 9割弱 86.8
問5 8割 70.6
問6 8割 68.7

 

 

 

 

大問5 (融合文)

 

 

日比谷 国立 八王子東  
問1 5割 53.5 54.5  
問2 9割 90.0 85.6
問3 9割 86.1 81.3
問4 6割 54.3 49.8
問5 6割弱 52.1 48.8

 

 

 

問1が、わずかですが、八王子東の正答率が最も高くなっています。

また、「5割」という表記になっているので、日比谷がもっとも低くなっているのだと考えられます。

 

この問題は、選択肢「エ」を選んでしまって、不正解になった受験生が多かったのだろうと思います。

 

正答率が「逆転」している理由について、少し考えています。

 

 

 

最後に数学です。

 

(3校の入試問題のうち、「同一の問題」の「正答率」が表示してあります。)

 

 

 

大問1 (小問集合)

 

 

日比谷 国立 八王子東
問1 9割強 87.4
問2
問3
問4 8割強 87.5 80.2
問5 7割5分 63.2

 

 

大問2 (関数)

 

 

日比谷 国立 八王子東
問1 72.3 61.0
問2 (1) 58.1 53.1
(2) 65.7 55.9

 

 

大問3 (平面図形)

 

 

日比谷 国立 八王子東
問1 9割強 81.4
問2 (1) 6割5分 72.0
(2) 4割弱 25.2

 

 

 

問2(1)は証明問題ですが、日比谷と国立の「正答率」が「逆転」しています。

おそらく、日比谷の「採点基準」が厳しいのだろうと思われます。

 

 

 

さて、3校を比較して、いくつかのことがわかってきます。

 

 

ひとつは、受験生の「違い」です。

各校の「得点力」が判明し、それぞれの高校の「序列」があきらかになります。

また、「どのようなタイプ」の受験生が多いのかが、わかります。

 

 

 

もうひとつは、採点の「違い」です。

 

都立高校入試は、以前、「採点の誤り」の問題の影響で、一度「採点基準」を「厳格」に統制しようとする「動き」がありました。

 

たとえば、ある年には、英作文など、「内容」をほとんど考慮せず、「文法的に間違いのない文」であれば、一律「正答」とみなすような採点がなされました。

 

本年度は、「独自入試問題」を実施するわけなので、採点も「独自」の「基準」を用いることができます。

 

「自校作成」が復活するということで、どんな問題が出るのか、大きく注目されています。

しかし、「試験」ですから、どんな採点がなされるのか、というのも見過ごせない重要な「テーマ」ですね。

 

 

(ivy 松村)

町田市出身の日比谷、西、戸山の合格者数

今日は英検の二次試験でした。

試験のあと、校舎に来た生徒たちにどうだったか聞いてみましたが、みんなかなり良い感触だったようです。

この2週間、しっかり練習してきたので、落ち着いて対応することができたみたいです。

 

準2級は、対策した内容が多く出題されたので、答えやすかったみたいです。

 

3級は、5つ目の質問で、「〜へ行ったことがありますか」というような現在完了の疑問文が使われたようです。

2年生の生徒たちはまだ現在完了を習っていないので、少し戸惑ったそうですが、なんとか答えることができたみたいです。

 

前に英検について記事を書いたときに、現在完了の経験用法を用いた表現について言及した記憶があります。

「~をしたことがあるか」という質問は、極めて自然な話題のひとつだといえます。

ですから、英検がよりいっそう「実用的な英語」を志向するのであれば、こういった表現を試験に組み込むことは必然であるといえるでしょう。

 

今後、中3までに英検3級を目指す生徒には、現在完了について少し触れておく必要があるかもしれません。

 

 

受検したみなさん、おつかれさまでした。

 

これから、期末試験です。

切り替えて、しっかり取り組んでいきましょう。

 

 

 

今日は、期末試験勉強のために、午後から校舎を開けました。

 

中1~中3の生徒たちが集まって、しっかりと勉強をして帰っていきました。

 

特に、中3の生徒たちは、ある意味で、高校受験の最初の「山場」を迎えます。

どうか精一杯頑張ってほしいと思います。

 

 

 

さて、「出身中学別合格者数」の話です。

今回は、特に、町田市について見てみようと思います。

 

以前このブログに八王子東高校の倍率が下がっているという話を書いたことがあります。

その際に、八王子東の応募が低調となっている理由のひとつとして、旧第7学区の一角であった町田市から「人員」が流出していることを挙げました。

 

それで、今年、日比谷高校、西高校、戸山高校に合格した町田市出身者を調べてみました。

 

 

日比谷 西 戸山
町田第一中学校 1
町田第二中学校 2 1
南大谷中学校 1
南中学校 4
つくし野中学校 5 1 2
成瀬台中学校 1
南成瀬中学校 1 1
鶴川中学校
鶴川第二中学校 2 3
薬師中学校 1
金井中学校 1 2 2
忠生中学校 1
     計 15 6 11

 

 

 

本年度は町田市から3校に、計32人が合格しています。

 

 

かつては、学区制という「しばり」があったために、町田市の受験生は区部の都立高校を受けることができませんでした。

ゆえに、町田市に居住する都立高校志望の学力上位者は、八王子東に集中していたわけです。

しかし、学区制が廃止されたことで町田市出身の学力上位者が他のトップ校を受験できるようになりました。

 

 

 

町田市という「後背地」を失ったことは、大学合格実績にも影響を及ぼしています。

 

学区制の時代、八王子東の「高校ランク」は日比谷をもしのぎました。

八王子東は、西高と双璧を成す都立最高峰の地位にあったのです。

 

現在の八王子東は、都立最難関の一角を占めているとはいえ、都立トップ校の後塵を拝しています。

 

今年の八王子東は、都立高校の中で最も多く国公立大学の合格者を出しましたが、「東京一工」のような最難関大学に照準してみると、トップ校にかなりの差をつけられていることがわかります。最難関大学の実績は、かつてよりも落ちています。

 

 

 

八王子東高校は、町田市からアクセクしやすい立地ではありません。

 

特に、鶴川やつくし野など、小田急線や田園都市線の沿線の地域は、電車やバスの乗り換えが煩雑になります。

 

そのうえ、最寄り駅から高校への距離にも苦労させられます。横浜線で八王子駅まで行き、そこからバスに乗るか自転車、あるいは、八王子で乗り換えて北八王子駅か豊田駅で降りて自転車、徒歩などで十数分かけて高校に向かわなければなりません。

 

乗換案内等で調べてみましたが、最寄り駅から高校まで移動する時間を含めると、町田市の南部・東部からは、日比谷や西、戸山に通うほうが、八王子東に通うよりも通学時間が短くなります。

 

 

 

さらに、青山高校についても考える余地がありそうです。

町田市から青山へのアクセス時間は日比谷、西、戸山と同じくらいです。

 

青山のデータが手元にないので正確な人数はわかりませんが、進学実績を公表している町田市にある塾のホームページなどを調べてみると、合計で数人の青山高校の合格者が確認できました。

やはり、一定数の生徒が町田市から青山高校に進学しています。

 

 

 

そして、実は、町田市から立川高校や国立高校へのアクセス時間も、同じくらいなのです。

 

町田市内から立川駅や国立駅への移動時間は、都心のターミナル駅につく時間と変わりありません。

それどころか、むしろ遅い場合さえあります。

 

東京都内の鉄道路線は、東西の輸送を主としています。

したがって、西から東への移動は容易です。反面、南北の輸送力は脆弱です。

 

東京都の南部に突起するように位置する町田市から、公共交通機関を使って北上し、中央線の駅にたどり着くためには、非常に面倒で鈍重な経路をたどらなければなりません。

 

 

 

以上のように、町田市は「特殊な交通事情」を抱えているといえます。

 

日比谷、西、戸山、青山、立川、国立そして八王子東へのアクセス時間が、ほとんど変わりません。

 

そうなると、結果的に、町田市の受験生は、受験校を選択するうえで「通学時間」という要素を排除して検討することができるわけです。

 

 

 

ついでに、3校に合格した町田市出身の合格者の、過去4年間の推移をみてみましょう。

 

 

日比谷 西 戸山
29年度 15 6 11
28年度 10 12 5
27年度 16 15 1
26年度 11 11 6

 

 

 

今年は西の合格者数が減っています。

反面、日比谷、戸山の合格者数が増えています。

 

戸山高校は、「現役の進学」に強い高校です。

その点が、評価されてきたのかもしれません。

また、複々線化によって、小田急線を使った通学経路が見直されているのかもしれません。

 

 

 

ちなみに、今年を含めて過去4年間、日野市、八王子市出身の戸山高校の合格者は0人です。

日比谷は、今年日野市が0人、八王子市が2人です。

西は、今年日野市が1人、八王子市が9人です。

 

 

日野市、八王子市は、八王子東の「お膝元」であるというだけでなく、立川、国立へのアクセスが容易です。また、国分寺高校があります。身近な距離に複数の選択肢がそろっています。

そのため、「安易に」受験校を決める受験生も多く、区部への受験が活性化しません。

 

 

しかし、実は、八王子市や日野市から日比谷高校や戸山高校にアクセスする時間は、1時間程度なのです。

それは、町田市から日比谷や戸山にアクセスする時間とほとんど変わりありません。

 

むろん、西高へは、より短い時間でアクセスすることができます。

 

 

 

この数年、高校受験に関して考えさせられることが多々あるのですが、そのうちのひとつは、多摩地区の高校と区部の高校の、募集に対する「温度差」についてです。

 

うかうかしていると、「差」が広がってしまうような気がします。

 

 

(ivy 松村)

 

 

高校の国公立大学合格実績②(都立G7)

都立高校「G7」の大学合格実績を比べてみましょう。

 

 

まず、「東京一工」の現役の合格者数です。

 

 

現役 東大 京大 一橋 東工
日比谷 33 3 6 4 46
国立 6 3 18 7 34
西 14 2 7 6 29
戸山 5 3 12 7 27
青山 6 1 4 5 16
立川 1 3 5 1 10
八王子東  0  0 4 5 9

 

 

八王子東と立川の合格実績が、他校に引き離されていることがわかります。

 

 

 

次は、浪人生も加えた「合格人数」です。

 

 

合格人数 東大 京大 一橋 東工
日比谷 45 8 9 5 67
西 27 14 10 10 61
国立 17 6 26 9 58
戸山 10 5 14 7 36
青山 6 1 6 7 20
立川 2 5 7 5 19
八王子東 2 0 7 9 18

 

 

日比谷、西、国立の「特徴」がくっきりと表れています。

 

 

・日比谷→東大

・西→京大

・国立→一橋

 

3校の「ストロングポイント」が明確です。

 

(西に関しては「全方位」に強さを発揮するというという見方もできるかもしれませんが。)

 

 

国立の一橋大合格者26人というのは、特筆すべきものです。

これは、全国1位の「合格人数」となります。

 

よく知られているように、一橋大学は国立高校に隣接しています。

国高は、その「アドバンテージ」を最大限に生かしているということになりそうです。

 

 

 

浪人生を加えると、八王子東、立川と青山の「差」が小さくなっています。

 

青山の「東京一工」の浪人生の合格者は4人しかいませんが、八王子東と立川の浪人生の合格者はそれぞれ9人います。

 

 

 

「条件」をそろえて比べてみましょう。

 

「合格率」を算出します。

 

今年の各校の卒業生数をもとに、「100人あたりの合格者」を求めることができます。

100人のうち何人が合格したのか、を確認するわけです。

 

現役の合格者における「合格率」は、今年の卒業生の人数を用いて「適正な数値」を求めることができますが、浪人をあわせた合格人数を、今年の卒業生数で割って「合格人数の合格率」を求めるのは、少し「微妙」です。

 

それでも、「条件」をそろえて「合格率」を比べることで「見えてくるもの」があります。

精密なデータであるとはいえませんが、「参考」として、各校の「合格率」を算出して、比較してみましょう。

 

 

 

現役の「東京一工」の「合格率」と現役と浪人を合わせた合計の「東京一工」の「合格率」です。

 

 

 

卒業生

人数

現役

合格率 

合計

合格率 

日比谷 321 14.3 20.9
西 328 8.8 18.6
国立 369 9.2 15.7
戸山 357 7.6 10.1
青山 286 5.6 7.0
立川 314 3.2 6.1
八王子東 311 2.9 5.8

 

 

「序列」に変化は生じていないように見えます。

 

 

「東京一工」という指標は、非常に一般化されていて、多くの人がこれを「基準」として高校の「合格力」を測ろうとします。

 

これに基づくならば、日比谷、西、国立の「トップ3」に戸山が続き、青山、立川、八王子東の3校が遅れをとっているという「構図」になります。

 

 

特に、立川と八王子東が「苦戦」をしているという「見立て」になるわけです。

 

 

さらに、別の指標を用いて7校の比較をしてみましょう。

 

 

 

「東京一工」に、以下の大学の合格者数を加えたデータを確認します。

 

・北海道大学

・東北大学

・名古屋大学

・大阪大学

・九州大学

 

・筑波大学

・千葉大学

・横浜国立大学

・東京学芸大学

・東京外語大学

・お茶の水大学

・神戸大学

・東京医科歯科大学

・東京藝術大学

 

 

 

まず、現役の「難関国立大」の合格者数のデータです。

 

 

 

現役

日比谷 46 2 2 0 0 0 7 7 3 2 3 5 1 3 0 81 25.2
戸山 27 2 4 2 1 0 1 14 7 5 7 7 1 1 2 81 22.7
国立 34 7 5 1 0 0 4 5 7 3 8 2 1 0 2 79 21.4
西 29 5 2 2 3 1 5 4 3 1 4 4 1 1 0 65 19.8
八王子東 9 7 6 0 1 0 2 1 8 12 3 4 0 0 0 53 17.0
青山 16 3 0 1 3 0 3 7 2 1 6 1 0 1 1 45 15.7
立川 10 3 5 1 1 1 6 1 1 7 3 0 0 0 0 39 12.4

 

 

八王子東の実績が「上昇」していることがわかります。

 

次に、現役と浪人生を足した「難関国立大」の「合格人数」のデータです。

 

 

合格人数

日比谷 67 3 5  0 1 2 9 8 4 2 4 7 1 5 0 118 36.8
国立 58 11 9 1 2 2 7 11 13 4 11 2 1 1 2 135 36.6
西 61 9 4 2 4 2 7 6 3 2 6 4 1 2 1 114 34.8
戸山 36 6 6 2 1 1 1 16 10 6 7 7 1 1 3 104 29.1
八王子東 18 8 7 2 1 2 3 2 11 16 4 5 0 0 0 79 25.4
立川 19 9 8 3 2 3 8 1 5 12 5 0 0 0 2 77 24.5
青山 20 4 0 1 4 0 4 10 3 4 7 3 0 1 1 62 21.7

 

 

 

青山が遅れをとっていることがわかります。

 

 

立川の「浪人指向」が明確に表れています。

「現役」の数字は厳しくなりますが、現役と浪人を合わせた「合格人数」は他校に迫ります。

 

特に、東大、京大以外の「旧帝大」に強さを発揮しています。

北大、東北、名大、阪大、九大の計25人は、日比谷に並ぶ数字です。

 

 

八王子東は、「最難関」の下の「カテゴリー」で強さを発揮します。

横国10人、学芸16人です。

 

ちなみに、農工大26人、首都大27人です。

 

八王子東の受験指導の「真骨頂」は、校内中位層の学力を、中堅の国公立大学合格までに引き上げるところにあるのかもしれません。

 

 

 

最後に、7校の「国公立大学」の「合格者数」と「合格率」を見てみましょう。

 

まず、「現役」のデータです。

 

 

現役 現役

合格者

現役

合格率

八王子東 120 38.6
戸山 116 32.5
国立 119 32.2
日比谷 100 31.2
西 90 27.4
立川 86 27.4
青山 58 20.3

 

 

次に、現役と浪人を合わせた「合格人数」と「合格率」です。

 

 

合格者 合格

人数

合格率
八王子東 185 59.5
国立 201 54.5
立川 156 49.7
西 162 49.4
日比谷 158 49.2
戸山 158 44.3
青山 85 29.7

 

 

ともに八王子東がトップに立っています。

 

国立は、「母数」が多いということもありますが、国公立大学の合格者数が唯一200を超えました。(その中には、学位の認定されない「航空大学校」の合格者も含まれていますが。)

 

「現役」では6番手だった立川は、浪人生を合わせた「合格率」で、3位に浮上しました。

 

 

多摩地区の3校が「合格率」の「トップ3」を占めています。

 

 

 

おそらく、多摩地区の3校と、日比谷、西、戸山の「受験指導」には「差異」があります。

 

前者のグループは、「国公立大学」という「カテゴリー」で最大限の成果を出そうとしているはずです。

また、「浪人→国公立大学受験」という「路線」が、現実的な選択として、受験の「戦略」に組み込まれているように思います。

 

一方、後者のグループは、校内の学力上位層に対して、医学部を含めた「最難関」へのチャレンジを積極的に「後押し」するような指導体制になっているのではないかと想像します。

 

 

 

多摩地区3校のうち、特徴的な八王子東の「方向性」は、ちょっと評価が分かれると思います。

「東京一工」のような「強力な指標」のもとでは「埋没」してしまい、印象が悪くなってしまうからです。

 

今の「方向性」では、「入口」の「応募者」に対する訴求力が弱まって、じりじりと「出口」の「ターゲットゾーン」が後退しそうです。「学芸に行くなら、八王子東。」というように。

 

そうなると、さらに最難関大学を目指す生徒の受験回避傾向が強まり、「負のスパイラル」に陥る可能性があります。

 

個人的には、「最難関の実績」というのは、やはり「進学校」の宿命だと感じます。

 

 

 

そして、青山は、ちょっと「劣勢」に立たされていますね。

 

それは、「青山高校、今年、現役で東大6人」という「部分」だけを見ていても、わからないわけです。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

日比谷高校の東大合格者数の推移

1950年  82人

1951年  84人

1952年  86人 「学区合同選抜」導入

1953年  98人

1954年 105人

1955年 108人←「学区合同選抜」最初の卒業生

1956年  99人

1957年 107人

1958年 126人

1959年 169人

1960年 141人

1961年 171人

1962年 186人

1963年 168人

1964年 192人

1965年 181人

1966年 128人

1967年 134人 「学校群制度」導入

1968年 131人

1969年 大学紛争により入学試験中止

1970年  99人 ←「学校群制度」最初の卒業生

1971年  57人

1972年  52人

1973年  29人

1974年  27人

1975年  16人

1976年  17人

1977年  14人

1978年  14人

1979年  18人

1980年   9人

1081年   4人

1982年   4人 「グループ合同選抜」導入

1983年   5人

1984年   6人

1985年   6人 ←「グループ合同選抜」最初の卒業生

1986年  10人

1987年  10人

1988年  11人

1989年  10人

1990年   8人

1991年   7人

1992年   8人

1993年   1人

1994年   7人 「単独選抜」導入

1995年   4人

1996年   3人

1997年   6人←「単独選抜」最初の卒業生

1998年   2人

1999年   2人

2000年   6人

2001年   3人 「自校作」入試導入

2002年   5人

2003年   5人 学区制度撤廃

2004年   3人←「自校作成問題」入試最初の卒業生

2005年  14人

2006年  12人←学区制度撤廃後最初の卒業生

2007年  28人

2008年  13人

2009年  16人

2010年  37人

2011年  29人

2012年  30人

2013年  29人

2014年  37人

2015年  37人

2016年  53人

 

 

(ivy 松村)

「日比谷つぶし」と都立高校入試⑤

「特別選考」を廃止するということは、見方を変えていうならば、「内申点」を都立高校入試の「絶対の条件」にするということになります。

 

 

当然ながら、「内申点」の「しばり」を強めるほど、これに見切りをつける受験生が出てきます。受験生は、私立高校へ流れることになるのです。

 

「東京都立高校入学者選抜検討委員会報告書」にも、以下のような「危惧」が述べられています。

 

 

※「都立高等学校への進学を希望する中学生に対して、『都立高等学校は、意欲をもって全教科を偏りなく学習する生徒を求める。』というメッセージになる。一方、特定の教科で選抜を行う私立高等学校を受検しようと考える中学生が増えると考える。」(p27「有識者」の意見)

 

 

 

「東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書」を読んでみると、どうやら、最初から「特別選考」を廃止する「結論ありき」で、議論が「準備」されていたのではないか、という疑いが生じてきます。

 

 

 

この「報告書」は、平成26年の1月23日に発表されています。

 

実は、その3年前にも「平成24年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書」が作成されています。

その「平成24年度版」は、平成23年7月に発表されました。これは、石原氏が都知事をされていた期間に取りまとめられたものです。

 

 

その内容の違いに驚きます。

「論調」が180度違っているのです。確認してみましょう。

 

 

まず、「平成24年度版」の17ページには、「特別選考」に関する調査結果が示されています。

その結果は、特別選考を実施した高校の83.4%が「特別選考」に対して肯定的な意見だった、というものです。

 

「特別選考」を実施した高校からは、以下のような意見が寄せられています。

 

※「本校の特色を中学生に対して示すことができた。」(p17)

※「中学校において思うように調査書点が伸びなかった受検者に、チャンスを与えることにつながる。」(p17)

 

 

また、委員会の審議でも、委員から以下のような「意見」が述べられています。

 

 

※「調査書点と学力検査等の得点による総合成績という尺度だけではなく、特別選考という異なる尺度で選抜を行うことができ、受検者の様々な能力をみることができた。」(p17「高校」の意見)

 

※「高等学校が求める生徒像を明確にして特別選考を実施することで、受検者の多様な面をみることができ、成果は大きい。」(p17「高校」の意見)

 

※「専門学科においては、中学校で真面目に取り組み、高等学校入学後に伸びる可能性のある生徒を入学させることができるような、受検者の意欲や特性等が重視される選抜を特に検討してほしい。」(p17「中学」の意見)

 

 

そして、「平成24年度以降の基本的な考え方」として、「特別選考は、一定の効果があることから、次年度についても引き続き実施する」(p18)と明言されているのです。

 

 

また、「24年度版」では、中学の評定について、「中学校間や同一中学校の教科間で評定の分布状況に大きな差があるなど生徒や保護者等に対して説明が難しい状況が一部にあるということも事実である」(p23)と述べられています。

 

つまり、「内申点」に不公平性が存在し、それを補う「装置」として、「特別選考」というものが機能していると、言外で認めているわけです。

 

 

たった2年で、「特別選考」に対する「評価」がまったく「正反対」になっていることがわかります。

石原氏が都知事を辞められた直後に、劇的な「転調」があったわけです。

 

 

 

「審議経過」をみてみると、「24年度版」の「委員会」は、全部で4回の会合が開かれていたことがわかります。

 

 

・平成24年度東京都立高校入学者選抜委員会審議経過

 

第1回(平成23年5月16日)

題2回(平成23年5月27日)

第3回(平成23年6月 6日)

第4回(平成23年6月21日)

 

 

一方、26年度は11回です。

 

 

・平成26年度東京都立高校入学者選抜委員会審議経過

 

第1回 5月13日(月)

題2回 5月21日(火)

第3回 6月10日(月)

第4回 6月24日(月)

第5回 7月 5日(金)

第6回 8月26日(月)

第7回 9月11日(水)

第8回 10月 4日(金)

第9回 10月31日(木)

第10回 11月21日(木)

第11回 12月25日(水)

 

 

強引に議論を誘導しようとする人間がいて、審議が停滞し、進捗しなくなっていたことがよくわかります。

 

26年度の「報告書」をよく読んでみると、特に中学と高校の教員が、おかしなことをいっています。

 

 

それでも、中学の教員の立場は理解できます。中学の教員が、中学校の評定を重視するような制度にしてもらいたいという希望を持つのは自然なことです。

 

 

高校の教員が高校入試を台無しにしようとする言動を行う理由を読み解くヒントは、委員の「属性」にあります。

 

24年度の審議には、町田高校や竹早高校といった進学校の教員が参加していました。

 

一方、26年度は以下の高校の教員が出席しています。

 

工芸高校(58)

墨田川高校(56)

本所高校(50)

砂川高校(44)

第四商業高校(44)

 

( )内は、晶文社の「高校受験案内2013」で確認した「当時」の男子の偏差値です。

 

墨田川は、上掲の高校の中で、唯一、特別選考を実施していた「単位制」高校です。

砂川は「定時制・単位制」、工芸は「専門家」、第四商業も「専門科」の高校です。

 

 

参考までに、「特別選考」とともに「自校作成」を実施していた高校の偏差値を掲載します。

 

日比谷高校(71)

西高校(71)

国立高校(71)

戸山高校(70)

立川高校(70)

青山高校(68)

国分寺高校(68)

武蔵高校(67)

新宿高校(66)

両国高校(66)

大泉高校(65)

富士高校(62)

白鷗高校(60)

 

 

 

26年度の東京都立高校入学者選抜検討委員会に召集された高校の教員の「属性」が、著しく偏っているのがよくわかります。

 

上位難関校の意見が反映されないような体制のもとに、審議を進めているわけです。

 

うがった見方をすれば、上位難関校から反発が起こるような「計略」を行っていたわけです。加担してくれない人間はなるべく呼びたくなかったのかもしれません。

 

 

これは一般論ですが、こうした「審議の場」に出席する人は、個人の意見を述べることももちろんありますが、「誰か」の意見を代弁する場合もあるわけです。あるときには、自分が属する「集団」や「団体」の要望を述べることもあるでしょう。ないしは、「仕切り役」の意向に沿って発言したり、「スポンサー」などの利益を確保するために「ごり押し」を行ったり「ポジショントーク」を繰り広げたりすることもあるのでしょう。

 

 

 

ところで、あまり注目されていないことですが、「特別選考」の廃止は、「公立中学」出身ではない受験者に、多大な不利をもたらします。

 

日比谷には、毎年、国立や私立の中学からの受験者が一定数います。やはり学芸大附属中の受験生がもっとも多いはずですが、それ以外にもさまざまな理由で「学校を替える」生徒がいます。

あるネット上のデータによれば、日比谷の合格者の約1割が国立や私立の出身のようです。最近では、都立中からの受験者も出てきているかもしれません。

 

こうした「中受組」にとっては、都立高校入試における「内申点」は、非常に大きな「ハンデ」となります。

 

「一貫校」の先生は、生徒が高校受験をして「途中で抜ける」のを非常に嫌がります。

まことしやかな噂では、高校受験をすると学校に伝えると、中3の2学期の成績が露骨に下降してしまうのだそうです。

その真相は確かめるべくもありませんが、そうでなくても、優秀な生徒が集まる名門の一貫校では、相対的に、成績を維持するのが難しいという現実があります。

 

こうした学校の生徒にとって、「特別選考」はまさしく「生命線」だったわけです。

 

「特別選考」がなければ、都立トップ校合格に見合う学力を有していても、「内申点」の差で合格が厳しくなるのではないかという不安が大きくなります。

 

特に国私立中男子の受験回避が、今年の日比谷の応募人数が減少した理由の一端となっている可能性があります。

 

 

(ivy 松村)

 

 

「日比谷つぶし」と都立高校入試③

もっとも効果的に学校を「衰退」させる方法は、入試選抜を「機能不全」にすることです。

 

「内部工作」のような大掛かりなことをする必要はありません。学校の「内部」は「外」からはほとんど見えないのですから、学校の「空気」が悪くなったり生徒指導の「質」が低下したりしても、「出口」の実績や生徒募集に影響が出るまでには「タイムラグ」が生じます。

 

即効性があり、そして、確実な方法は、受験生がその学校の受験を回避するように仕向けることです。

 

入試選抜を麻痺させるのです。そうすれば、どれほどの名声を得た名門校であろうとも、瞬く間に支持を失っていきます。

 

 

十分な学力を有した受験生が妥当に選抜されなければ、優秀な生徒を迎え入れることができなくなるので、その学校の「学力」は低下します。

 

しかし、それ以上に深刻なのは、適切な選抜が行われなくなった学校には、合理的な思考をする――つまり、優秀な頭脳を持った受験生が集まらなくなるということです。

 

「学校群制度」の歴史が、そのことを証明しています。

 

 

 

50年後の現在、どのような方法を用いることが、入試選抜機能を損傷させるのに効果的なのでしょうか。

 

現代は、大掛かりな入試制度の変更が難しくなっているので、段階的な毀損を行うことが現実的です。

 

 

以下のような要素を「入試」から排除することで、入試選抜機能を壊滅させることが可能となります。

 

 

①独自性・自主性

②公平性・信頼性・客観性

 

 

 

これらを駆逐するためには、入試選抜の「内容」と「方法」を腐敗させることが必要になります。

 

まず、入試選抜の「内容」ですが、独自に「良質の入試問題」が作れないように、「作問」の自由を奪います。

完全に「作問」の権利を取り上げることはできなくても、入試問題の「メッセージ性」や「ブランド力」を削ぐことができれば、有効な打撃となります。

 

また、入試問題の「出題形式」を制限し、受験生の学力判定が適正に行えないようにします。

何かしらの手立てで、受験生の本質的な学力を計る「記述問題」を封じ込めることができれば、上々の成果です。

 

 

次に、「方法」ですが、合否判定に、恣意的な尺度を取り入れます。

「運不運」の要素が大きくなればなるほど、学力にもとづいた適正な選抜ができなくなります。

具体的には、合否への「内申点」の依存度を強くします。中学の評定は、学校によって評価基準が著しく異なるため、入試選抜に対する不公平感を増大させることができます。

 

特に、努力で「学力」を補うことが難しく、「センス」や器用さ、身体能力などが大きく成績に影響する実技教科の比重を大きくします。そうすることで、生徒に徒労感や挫折感を植え付け、やる気やチャレンジ精神を削ぐことができます。

 

 

 

さて、石原氏が都知事を辞められた直後の平成25年に、国分寺高校の「入試問題流用」が明るみになりました。

 

当時、都立の難関校は、英・数・国の入試問題を独自に作成する「自校作成」の入試を行っていましたが、国分寺高校が独自に作成した国語の入試問題が、過去の他の入試問題を「剽窃」したものだったことが明るみになったのです。

 

このとき、東京都教育委員会の対応は敏速でした。

すぐさま、入試問題の「自校作成」が改められ、「グループ作成」体制に移行したのです。

 

 

これが、「第二次日比谷つぶし」の嚆矢となりました。

 

「グループ作成」化は、入試選抜機能の「独自性・自主性」を奪います。

 

特に、「自校作成」の「作問」に意欲的だった日比谷高校は、大きな痛手を被ることになります。

 

 

「グループ作成」体制となったことで、「特徴」のある入試問題を作ることができなくなったのです。

もちろん「グループ作成」となった今でも、入試問題の一部を「独自問題」に差替えることはできます。しかし、一律ではないとはいえ、「入試問題の共通化」は、「選抜機能」を高度に維持していかなければならない「進学校」にとって、重い「足枷」となります。

 

 

 

日比谷高校の「復活」の大きな原動力となったのは、平成13年に他校に先駆けて行われた「自校作成」入試でした。

 

入試問題というものは、ある意味で学校から受験生に向けて発せられる「メッセージ」です。

日比谷高校は、「作問」をとおして、感応力、理解力の高い受験生に向けて骨太の「メッセージ」を発信してきました。作問の「質」が、日比谷高校のブランド力を高めてきたといっても過言ではありません。

 

他校との差別化を念頭においた「作問」を重視していた日比谷にとっては、「グループ作成」体制への移行は、大きな「後退」となりました。

 

 

偶然にしろ何にしろ、ある一人の愚鈍で不精な教員が引き起こした「入試問題流用」事件は、退潮的な入試制度変更の「名目」を提供することになりました。

 

 

「グループ作成」への移行は、明らかな「災難」ですが、もしかすると、「作問」の「負担」から解放されて、喜びの声を上げている教員もいるのかもしれません。あえて指摘しますが、結局のところ、彼らは、「日比谷つぶし」に加担する一味です。足を引っ張っているわけです。

 

「作問」の「負担」に同情したり理解を示したりする人もいるかもしれません。そういう人は、職業意識が根本的に欠如している人か、「受験」という世界からかけ離れた人生を生きている人です。

 

名門校であればあるほど、「入試問題」をおろそかにはできません。

 

とかく怠惰な存在は、意欲と熱意を持った人間の障害になるものです。

 

 

 

いずれにしろ、「グループ作成」というのは「突破口」でした。これが、都立高校を「凋落」させるための足掛かりとなるのです。しかし、このときはまだ、さらに大規模な「攻勢」が準備されつつあったことに気づくことができた者はほとんどいなかったのです。

 

 

(ivy 松村)

 

 

「日比谷つぶし」と都立高校入試①

今年、日比谷高校は53名の東大の合格者を出しました。

 

日比谷高校の東大合格者数が50名を超えるのは、44年ぶりになるということです。

「東大合格者ランキング」でも、トップ10をうかがう位置にまで来ました。

 

日比谷高校の「躍進」が、ネットサイトや週刊誌等で大きく取り上げられています。

 

その裏で、「第二次日比谷つぶし」が着々と進められています。

 

 

 

日比谷高校は、都立高校の「復権」の象徴であり、都立高校の「牽引役」を担っています。

重厚な「伝統」、そして英雄的な「復活」を果たすという波乱の「歴史」が、この高校に、その宿命を帯びた役割を与えているのでしょう。

そして、その意味で、日比谷の「趨勢」は都立高校全体に非常に大きな影響をおよぼすのです。

 

 

都立高校を「凋落」させるのは、造作もないことです。もし仮に、だれかが都立高校の「活躍」を快く思わず、なんとかして都立高校を押さえこみたいという背徳的な考えを抱いているとするならば、ただ、日比谷高校を「狙い撃ち」すればいいわけです。

 

 

 

現在では、「日比谷つぶし」という言葉を知らない受験関係者も多くいると思います。

「日比谷つぶし」というのは、今から50年前に行われた都立高校の入試制度改革の、「本当の目的」を称して広まった言葉です。

 

1967年に都立高校入試に「学校群制度」が導入されました。

これは、全国トップの進学校であった日比谷高校の「力」をそぎ落とすために行われたのだということが、誰の目にも明らかだったわけです。

 

つまり、「日比谷高校をつぶすため」に、「学校群制度」が設けられたわけです。

 

 

1960年代までは、東大の合格者数の1位は、日比谷高校の「指定席」でした。

日比谷は、都内に限らず、日本の高校のトップに君臨する進学校だったのです。

 

日比谷をはじめとする都立高校が「隆盛を極めた」のは、1964年です。この年、日比谷高校の東京大学合格者数は192人にのぼり、やはり全国トップでした。続く2位は西高(156人)、3位は戸山(110人)でした。また、新宿高校も全国4位(96人)に入り、小石川高校が全国6位(79人)、両国高校が全国8位(63人)でした。東大合格実績のトップ3を都立高校が独占し、ベスト10内に6校が名を連ねていたのです。

 

 

1960年代をとおして、日比谷高校は東大合格者数の1位を他校に譲ったことはありません。

ところが、70年代に入ると、日比谷の大学合格実績は急落の一途をたどり、80年代には2けたの合格者数を維持することも困難になっていきます。

 

「日比谷つぶし」によって、日比谷の「覇権」はあっけなく崩れました。それに引きずられるかのように、都立の「低迷時代」が訪れました。

 

 

 

「学校群制度」の導入を境として、日比谷の「衰退」は加速度的に進行していきますが、それは「予想外の結果」だったわけではありません。

なぜなら、この制度が導入されれば、日比谷が低落していくことは誰の目にも自明のことであって、その「衰退」は、想定された結果にすぎないものだったからです。

 

あえて断言すれば、それが「目的」だったわけです。

 

 

「学校群制度」の主眼は、「教育の平準化」でした。

優秀な生徒が集中する「突出した高校」とその他の高校の「格差」をできるだけ「なだらか」にしようという考えのもとに計画された制度なのです。

 

つまり、これは、明白に、日比谷高校を「引きずり下ろす」ことを「目的」として実施されたわけです。

 

東京都立高校の入試に「学校群制度」が導入されたのは、1967年です。都立高校が「隆盛を極めた」3年後のことです。

 

 

 

この制度の「要所」は、「合格」しても志望する都立高校に進学できない受験生を生み出すことです。

そのために、都立高校は避けられ、高校受験の重心が国私立へと移っていきました。

 

 

「学校群制度」のもとでは、都立高校は2校ないし3校のグループにまとめられて「学校群」を形成し、受験生は「学校群」を受験します。

 

単独の「高校」を受験するわけではないので、「合格」したとしても、その受験生は「学校群」に「合格」したということになります。したがって、合格者は、その「学校群」のいずれかの高校に通うことになるわけです。

 

たとえば、A校、B校、C校がそれぞれ「学校群α」を形成している場合、A校を志望する生徒は、その「学校群α」を受験することになります。しかし、「合格」しても、A校ではなく、B校やC校に進学することになる可能性があるわけです。

 

 

つまり、「学校群制度」のもとでは、受験生は、入学先を自分で決めることができないのです。

都立高校の入試は、どの高校に進学することになるのかわからないまま、受験しなければならなくなったわけです。

 

 

日比谷高校は、九段高校、三田高校とともに「第11群」を形成しました。日比谷高校を志望する生徒は「第11群」を受験するわけですが、「合格」しても日比谷以外の高校に進学しなければならない場合があるわけです。

 

なぜ、志望校に進学ができなくなるのかというと、「学校群」を形成するそれぞれの高校の「学力」が、同じくらいになるように調整されたからです。

 

一部の高校の学力が突出しないように、学力の高い生徒を、第一志望ではない「ほかの高校」に入学させることができるわけです。

 

日比谷高校に、特別、学力が高い生徒が集まっていることが「問題」だったのです。

信じがたい話ですが、抜群の大学合格実績をあげることが「良くない」と考えられたわけです。

 

 

日比谷高校の属した「第11群」は、他校と「学力差」が大きい日比谷高校に「不利」なものでした。

たとえば、西高校は青山とペアを組み、戸山高校は富士とペアを組みました。そして、多摩地区では立川と国立がペアを組みました。これらの「学校群」は、比較的学力が拮抗している高校同士が2校のみで「学校群」を形成しました。

そのため、第一志望に進学できない場合の「ダメージ」が相対的に少なかったのです。

 

 

 

「学校群制度」は、「学校間の格差」を「是正」するために設計されたものであるということになっています。

そのために、学力の高い生徒は「平等」に、「学校群」のそれぞれの高校に「配分される」わけです。

 

受験生からみれば、志望する高校に進学できるかどうかは「運しだい」というわけです。

ある意味で、入試が、「ギャンブル」そのものになってしまったのです。

 

 

たぶん、はじめて「学校群制度」について知った人は、「意味が分からない」と思うに違いありません。私も、「正気の沙汰ではない」と感じました。

 

当時の東京都教育委員会は、現実に、この悪夢のような制度を導入したわけです。

 

 

「学校群制度」導入の問題点は、その制度自体が愚劣であることはもちろんですが、実は、本質的には、「信頼」の問題なのだろうと思います。

 

受験生や保護者の目には、東京都教育委員会は都立高校をスポイルし、ダメにしようとしていると映ったはずです。

 

自分の船の計器を自分で壊す船長のようなイメージが思い浮かびます。自ら船を遭難させようとする人間が指針をとる船に、一体誰が乗りたいと考えるでしょうか。

 

 

優秀な生徒の学力を伸ばそうとするのではなく、学力を押さえつけようという発想がその根幹に横たわっています。受験生・保護者は、都立高校の教育を「信頼できなくなった」と感じたことでしょう。

 

その結果、学力上位層の「都立高校離れ」が急速に進み、漸次、都立高校の大学進学実績は下降していきました。

 

 

 

この馬鹿げた制度を実現させたのは、偏狭な「平等主義」です。

 

競争はよくない、差をつけるのはよくないという考えのもとに、教育を一律、均質なものにし、平準化させようという思想です。

 

 

運動会の徒競走で、「だれかが最下位になるのはかわいそうだから、みんなで手をつないで同時ゴールしましょう」というような驚愕の発想は、同質の思想のもとに想起されます。

 

これは、「弱者」を基準に制度を決めようという考えです。

もちろん、「平等主義」のすべてが間違っているわけではありません。

 

しかし、個人の能力や資質をもとに進路を決定する「入試選抜」という制度と、「平等主義」のような考え方は、ある意味で対極に位置するものです。

 

 

「平等主義」は、一部の教育関係者に、今も根強く浸透しています。

 

「入試選抜」を台無しにしようとする不実な計画は、こうした教条的な考えが、教育の制度設計を総括する教育委員会や文部科学省のような組織の中で「支配的」になったときに、始動するわけです。

 

 

(ivy 松村)