「適性検査Ⅱ」をみてみましょう。
大問1
〔問題1〕
さいころの展開図です。絶対に落とせない問題です。
〔問題2〕
「かけ算の答え」と「割り算の答え」を足して、7になる計算式を考える問題です。
使えるのは1から6までの整数のうち、異なる4つだけです。
□×□+□÷□=7 (□÷□+□×□=7)
答えが7になる「足し算」の式は、以下の3つです。
・4+3=7(3+4=7)
・5+2=7(2+5=7)
・6+1=7(1+6=7)
「4と3」、「5と2」、「6と1」の組み合わせになるものを考えます。
・4×1+6÷2
・5×1+4÷2
・5×1+6÷3
以上のような解答があります。
(「6と1」の組み合わせは存在しません。)
〔問題3〕
使われているさいころは、「1」の面を上に置いているので、「6」の面が下になっています。
したがって、2・3・4・5が横の面になっています。「2と5」、「3と4」は向かい合っているので、となりあうことはありません。「2と3」の組み合わせを除くと、以下の組み合わせが残ります。
・2と4
・3と5
・4と5
図6と同じように、8個のさいころを書いて「見えている面」の合計を出せば、「60」になることがわかります。
そうすると、太朗さんのいう「おもしろいこと」というのは、「1の面を上にした」さいころの「見えている面」の合計は、常に「60」になるということなのではないかと推測できます。
「6」以外の面はすべて4つずつ存在します。
したがって、「見えている面」の合計は、常に「60」になるわけです。
(1+2+3+4+5)×4=60
大問2
〔問題1〕
東京スカイツリーは634mです。
一方、東京タワーは、333mです。
私たちの目には、「近く」にあるものは大きく見え、「遠く」にあるものは小さく見えます。
東京スカイツリーは東京タワーの2倍の高さです。
東京タワーが、東京スカイツリーと同じ高さに見えるということは、東京タワーが自分の「近く」にあるためであるということになります。
〔問題2〕
・三大都市圏・・・東京都市圏(首都圏)・名古屋都市圏(中京圏)・大阪都市圏(近畿圏)
・三大工業地帯・・・京浜工業地帯・中京工業地帯・阪神工業地帯
東海道新幹線は、「三大都市圏」・「三大工業地帯」を結ぶ高速鉄道であるととらえることができます。
表1の「人口」の資料からは、さらに横浜と京都を説明に加えることができます。
表2の「工業地帯・工業地域」の資料からは、さらに東海工業地域を説明に加えることができます。
〔問題3〕
グラフと割合の計算です。
定規を用意するように、という指示があったので、「グラフ」かもしれないと受検生に伝えていたのですが、やはりそうでしたね。
図4は、家電製品や乗用車などの普及率が大きく上昇していることが示されています。
図3のグラフの「その他」の支出割合は、1965年から1990年の間に増加しています。それは、多くの家庭で家電製品や自動車などの「耐久消費財」を購入するようになったからだということがわかります。
「食料」の支出が減っているのは、いわゆる「エンゲル係数」が低下しているということを示しています。
「東京都」には、オリンピック・パラリンピックを盛り上げ、成功させたいという大願があります。
「都立中学」の入試問題に、そうした「意気込み」が反映されていると考えることができます。
たぶん、「都立高校」の入試問題にも、同じような「傾向」が見られるでしょう。
大問3
〔問題1〕
この問題が、本年度の入試の「要所」となりました。
「1㎠」は「1㎝×1㎝」、つまり「10㎜×10㎜」=「100㎟」です。
したがって、「4㎟」の25倍です。
しかし、「2.5倍」であると勘違いをした受検生が多くいたはずです。
「単位」をきっちりと「攻略」していない受検生は当然失点したでしょう。
のみならず、普段なら間違うはずのない学力レベルの受検生でも、何人かは失点をしてしまったのだろうと思います。
「算数」の試験であれば慎重に対処できたはずの問題であっても、「適性検査」では、落としてしまうことがあります。
「適性検査」は、問いの説明や構成、解答形式がより複雑で、さらにスピードが求められます。
正確に、速く問題を「処理」しなければならないことが「あせり」を生み、受検生の「注意力」を散漫にしてしまいます。
〔問題2〕
会話文を読んで図をみれば、解答を導ける問題でした。
〔問題3〕
・「図5」→① 夏になると雨が降るので、地表の砂はかわいた状態ではなくなる
・「図6」→×
・「図7」→② 夏になると強い風が吹く回数が減るため、砂が巻き上げられなくなる
・「図8」→③ 夏になると東に向かう風が弱まるため、砂が日本まで運ばれない
今年の入試は、かなり易化しました。
「ボーダー」は相当高くなりそうです。
本年度の南多摩中の入試の「ポイント」を2つ挙げることができます。
1つ目は、調査書の点数の比重が高まったということです。
入試問題が易化するということは、多くの受検生の得点が、高得点域で均衡するということを意味します。したがって、調査書の点数が乏しい受験生は、「逆転」が難しくなります。逆にいえば、調査書の点数=学校の成績が良い受検生ほど有利になります。
2つ目は、私立中受験の勉強をしてきた受験生ほど有利になる「傾向」がいっそう強まったことです。
「適性検査Ⅰの問題1・問題2」は、私立中の入試問題と遜色ありません。
「適性検査Ⅱ」は、よりいっそう私立中入試に近接しました。
「共通」の入試問題を作成するということは、ある意味で、都立中の「適性検査」の「一般化」「普遍化」を促しているといえると思います。
それは、また同時に「易化」を進行させています。
つまり、「訓練を積んだ受験生」にとって「解きやすい」問題であるということです。
南多摩中は、これまで、「理科」や「算数」などの理系科目で、難解な問題が出されることが多くありました。そのため、理系科目を攻略することは、合格へ大きく近づくことを意味しました。
しかし、理系科目が易化しています。おそらく、大問1と大問3では、受検生の得点に大きな「差」はつかないでしょう。
したがって、今年の南多摩の入試は、「適性検査Ⅰの問題3」=「作文」が、合格への「鍵」になったかもしれません。
(ivy 松村)