「一貫校」への高校進学(高校受験考察③)

学校教育の段階を分類すると、

 

・初等教育…(小学校)

・中等養育…(中学校・高等学校)

・高等教育…(大学、短大、専門学校など)

 

という3分類になります。

 

勘違いしやすいのですが、「高等学校」は「高等教育機関」ではありません。

 

「高等学校」という名称と、その役割がくいちがっているのは、第二次世界大戦後、学校制度の改革があったためです。

現在の学校制度が整えられる前は、「高等学校」は大学に直結する「予備門」のような位置づけで、その名のとおり「高等教育機関」だったのです。

 

現在の高等学校は、「後期中等教育」を担う教育段階という位置づけになります。

 

 

現在の日本の公教育の制度の下では、中等教育は前期(中学)と後期(高校)で分断されています。

前期にあたる中学までが義務教育期間であり、後期にあたる高校は、入試という「選抜制度」を経て振り分けられるシステムになっています。

 

 

その一方で、私立(国立)の学校では、中等教育課程を一体化した「一貫校」が存在します。

 

さらに近年では、「完全一貫校」へ移行したり、中学校を併設したりして、一貫校としての機能を拡張・強化する私立の学校が増えてきました。

また、公立一貫校が続々と誕生しました。

 

「完全一貫校」のいくつかの学校は、「中等教育学校」という名称を使用していますね。

(制度上は「中等教育学校」と「中高一貫校」は違うものですが、実質上の違いはないといっていいと思います。)

 

ある意味で、ゆるやかな教育の「複線化」が顕在化しつつあるといえるのかもしれません。

 

中等教育課程には2つのルートが存在することになります。

 

・中学校3年間+高校3年間――というルート

・中高一貫校6年間――というルート

 

 

 

問題は、「高校受験」です。

 

高校受験は、後期中等教育課程を選択する(あるいは選抜される)機会であるということになります。

 

一般的な認識では、中学を卒業すれば、高校に入学し、新しい区切りがスタートすることになります。

 

次の3年間を通うことになる学校を探すわけです。

公立中学を卒業する中学生にとっては、「高校からの生徒を募集する一貫校」もその対象のひとつとなります。(受験生の側からみれば、こうした高校は「中学併設型高校」ということになります。)

 

 

高校の募集は、一貫校側からすると、「6年制」の教育課程のうちの後半の3年間を、「外部」に開放しているという意味合いを持ちます。

 

この場合、中学から進学してくる「内部進学生」と、高校受験に合格し入学してくる「外部生」とが合わされることになりますが、当然、「内進生」が主体として位置付けられることになります。

形の上では「高校入学」ですが、構造的には、一貫校に途中から「編入する」という意味を持つことになります。

 

このような高校を選択する場合、注意しなければならないことがあります。

 

よく話のネタになるのは、「内進生」の結束や仲間意識が強すぎて、「外部生」の肩身が狭い…というような、学校生活面での不都合ですが、もっと本質的な問題を考えなければなりません。

 

 

「内進生」と「外部生」の学力差が大きすぎて、同じ内容の授業を行うことができないのです。

 

中学を併設している進学校――特に難関国立大学への合格実績が高い学校――は、公立中学よりもハイレベルな授業を行っています。

「内進生」は、中学受験時に密度の高い勉強を経験したうえで入学しています。その知識や思考力を下地としたカリキュラムのもとに中学3年間の学習を行って、それから高校に「上がって」くるのです。

 

そのため、多くの場合、「内部進学生」と「外部受験生」の合流がうまくいきません。私立の進学校の場合、1年次は「内進生」と「外部生」を「合流させない」で別立ての授業をする学校がほとんどです。

その後、「内進生」と「外部生」を2年次で混合するところ、3年次で混合するところもありますが、混合しないところもあります。

 

混合しない高校では、お互いに交流がほとんどないような高校もあります。

この場合には、「高校に入学する」というよりも、「おじゃまする」という印象になってしまうことがあります。

 

別立てのクラス編成も含めて、「外部生」は、「内進生」に比べて、さまざまな面でデメリットを感じることがあるようです。

 

その学校が、大学進学実績も高く、さらに、校風や設備の面で非常に魅力を感じたとしても、実際に入学するかどうかは、こういった指導体制も含めて考えた方がよいと思います。

 

 

 

「まともな」進学塾で学習指導を 受けていればまだしも、ちょと微妙な塾に通っていた生徒は苦労すると思います。

一例を上げると、「うちは『都立専門』だから、国語で、古文は教えない」というような塾があるそうです。単純に、古文の知識は、都立入試に有利になることを理解していないのが「残念すぎる」だけでなく(どうして有利になるかわからない講師はアホだと思います)、私立入試を考えていないという態度が無責任極まりなく、悪質です。

まして、私立難関高の合格実績を自慢しているような塾がそうであったなら、意味不明どころか、もはや怪談の世界です。

そして、そんな塾に通っていた生徒は、高校でゼロから勉強を始めるわけです。

 

 

 

ちなみに、私立大学附属高の一貫校の場合は、生徒間の学力差は本質的な問題にはなりません。

大学進学への路線が定まっていますから、私立大学附属高校の授業は、大学受験に照準したものにはなっていません。ですから、生徒間の競争や序列化を前提として学習指導を行わなくてもよいのです。

 

「内進生」と「外部生」との間に学力差があっても、クラス編成において、基本的には、そのことを考慮する必要がないのです。

 

 

 

よく、受験勉強を必死にしてきた「外部生」の学力のほうが高い、というようなことをいう人がいますが、その場合、「そういう結果となる相手」と比較していることが多くあります。

一部の優れた「外部生」と、学力テストなどで下位にいる「内進生」と比較することに意味はありません。

 

もちろん、逆に、明らかに「外部生」の学力のほうが高いという学校は、実際にあります。その場合、問題は別のところにあります。

単純に、その学校の指導力に難があるということです。

「外部生」の方が優秀で、「やったー!」となりますか?

まともな感性の人間なら不安になって、そんな高校にはあまり入りたくないと思うのではないでしょうか。

 

 

華々しい大学進学実績に惹かれて入学してみたのはいいが、実際には、手厚く面倒をみてもらえるのは「内進生」だけ、ということも大いにあり得ます。

 

クラス別の進学実績を見てみると、難関大学合格者のほとんどが「内部生」ということも少なくありません。

 

 

 

難関中学の入試問題は、例えば、社会だと、都立高校の入試問題よりもはるかに難しいです。

 

彼らは、高校入試に必要な知識よりももっと深い内容を、「小学生の時点」で学習しています。

 

私は、以前に、多摩地区最難関に位置づけられる中学をめざす小6を指導していた経験があります。

ある生徒が、解いてみたいというので、ある年度の都立高校入試の社会の問題をやらせてみたことがあるのですが、彼は20分もたたないうちに満点の解答を作りました。

 

 

「社会科」に関していえば、「彼ら」は中学入学の時点で、公立中学3年生の知識はほぼすべて習得しています。(一方、特に私立を第一志望にしている中学生は、社会をなおざりにしていることが多いでしょう)

 

さらに、「彼ら」は、中学の3年間でさらに奥深い内容を学習します。

公立中学校が使っているような教科書は使いません。

 

別の、完全一貫校の上位進学校の事例を紹介します。

その学校では、中1から「世界史の内容」を教えています。中1の一学期の定期テストの範囲が「古代ギリシャの社会と文化」でした。中堅高校と同じレベルの学習内容です。

 

おそらく、「中学を卒業する」までには、「大学受験に直結する内容」の3分の1から、半分くらいの知識を得ることになるのではないでしょうか。

 

もちろん、難関中学の授業についていけなくなる生徒も大勢います。

同じ中学内にも学力差があり、中には、「外部生」に負けてしまう生徒もいるはずです。

しかし、実は、最大の焦点は、「学力差」ではありません。

「勉強文化」がまるで違っているということです。

 

 

「一貫校」の方向性は明確です。

中学受験を勝ち抜いて入学してきた能力の高い生徒を6年間鍛えぬいて大学受験に送り出そう、というものです。

高校からの募集枠は「本業」ではありません。高い能力の生徒が入ってくる可能性を残しておくというものです。

 

近年では、優秀な生徒の多くは都立高校に流れていますから、期待できる「外部生」も少なくなっています。

 

名門の一貫校は、基本的に「6年制の学習指導ノウハウ」を洗練させることで大学合格実績を高めてきました。それに加えて、別立てで、3年間で生徒の能力を高める指導を維持しようとすれば、非常に大きなコストがかかります。

 

(もちろん、「内進生」「外部生」ともに熱心に指導を行っている学校もあると思います。もし、そのような学校の情報を得られたら、生徒・保護者の方にもお伝えしていこうと思います。)

 

 

学校が「内進生」と「外部生」との格差は埋めがたいものであるという認識をもったとき、「外部生」への指導は負担となります。

「内進生」に対する指導に集中したほうが、学校運営にとってプラスになると考えた高校は、高校募集を停止するのでしょう。

 

それは誤った方針ではないと思います。そうすることによって、「内進生」への指導が充実します。また、放置される「外部生」という存在をなくすことにもつながるわけですから。

 

 

 

私が述べたいのは、難関私立に通う中学生はすごい、ということではありません。

お伝えしたいのは、「中学併設校」に高校入学するときに、被る可能性があるデメリットについてです。

ただ単に、学校「全体」の情報からは見えてこないことがあります。特に、大学進学実績の数字には注意が必要だと思います。

(同じことは、「特進クラス」を設置している高校にもいえます。)

 

以上のようなことから、難関大学への進学を希望する公立中学校に通う中学3年生が、次の3年間通う高校として選ぶのは、3年間で大学受験に備える指導を行ってくれる「単独」の高校のほうが望ましいということが、改めてわかります。

 

指導ノウハウの蓄積がある高校では、「3年間」で一貫校の生徒に追いつき、追い越す生徒が数多く現れます。

 

(ivy 松村)

 

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