都立高校入試の社会の取り組み方

都立高校入試の社会の対策として、もっとも有効なのは過去問を解くことです。

ただし、過去問の扱い方次第で、その効果が違ってきます。

 

過去問は、問題作成者からのメッセージがつまっています。

 

自分の力で都立高校入試に立ち向かっていかなければならない受験生には、過去問を、問題の文章も含めて、隅々まで読み尽すことをお勧めします。

そうすると、どのような知識が重視されていて、どのようなヒントの出し方をしているのかがわかってきます。

 

 

都立の社会の入試問題には、明らかに出題に偏りがあります。

それは、地理、歴史の分野ではっきりと確認できます。

 

ですから、まずは、その「偏り」をとらえておくことが何よりも大切になります。

それが本年度においても、もっとも出題されやすいトピックとなるからです。

 

 

ちなみに、公民分野は、以前は、他の道府県と比べて、少し特殊な出題のされ方をしていました。

地理・歴史の知識を使って答えたり、常識的な判断で解答できたりする問題が比較的多くみられました。

 

それは、都立高校入試直前になっても、公民分野を、中学校で十分に学習していない中学3年生がかなりの数にのぼるためで、おそらく、その配慮だったのだと思います。

東京都は、「公民をまともに教えない中学校の教師」が相当数いることを認識していており、それが出題に影響していたのだと考えられます。

 

ところが、近年では、選挙、三権分立、社会保障関係、環境問題、国際社会などを中心に、それなりに深い知識を求める問題が増えてきました。

 

 

 

歴史についてみてみましょう。

 

以下は都立入試で過去に出題された社会の問題の抜粋です。

 

いずれも、「二毛作」を題材としていることがわかります。

 

 

 

※平成13年、大問4、〔問1〕の問題。

次の文章は,わが国の13世紀末ごろの農村のようすについて述べたものである。このころに描かれた絵画に当たるのは,下のア~エのうちのどれか。

・畿内を中心に二毛作がはじめられるなど農業技術が進歩するなかで,農具などをつくる手工業者が農村にあらわれ,手工業品を定期市で売るようになった。

 

 

※平成16年、大問4、〔問2〕問題。

Bさんは,人々の仕事について調べた。絵巻物で調べているうちに,時代とともに人々の仕事も変化していることがわかった。右の絵は,Bさんが調べた絵巻物のうち,室町時代につくられた「七十一番職人歌合絵巻」から抜き出したものである。

上の絵に描かれている人々の仕事を見て,この時代における農業や商業の発達の様子について,「二毛作」,「定期市」の2語を必ず用いて簡単に述べよ。

 

 

※平成18年、大問4、〔問2〕の「ア」の選択肢。

ア ニ毛作が広まり,耕作に牛馬を利用したり,肥料を使ったりするなどの工夫がされるようになった。また,茶を飲む習慣が広がり,茶の栽培が盛んになった。

 

 

※平成26年、大問4、〔問1〕の「イ」の選択肢。

イ 牛馬や鉄製農具の利用が進むとともに肥料に草や木の灰などが使われるようになり,麦を裏作とする二毛作が普及する中で,川の流れを利川した水車が使用された。

 

 

 

 

二毛作は、鎌倉時代にはじまり、室町時代に各地に広まります。

また、定期市は、鎌倉時代に3回、室町時代に6回開かれるようになります。

 

都立入試の社会は、「産業の発展」にともなう生産体制や社会構造の変化について出題する傾向があります。

その中でも、特に、中世の農業、工業、商業の進展について問われることが多いのです。

 

さらに中世(鎌倉、室町)の産業史をあつかった問題を集めてみました。

 

 

 

※平成10年、大問4、〔問1〕問題文および選択肢「イ」。

室町時代になると商品の流通が進み,港町や陸上交通の要地では,問丸馬借といった運送業者の活動が盛んになった,とあるが,室町時代の産業や流通のようすについて述べているのは,次のうちではどれか。

イ 商人や手工業者は,座と呼ばれる同業者の組合をつくり,京都や奈良では,土倉酒屋が多くなり,諸国の農村で月に6度の定期市が開かれるようになった。

 

 

※平成17年、大問4〔問2〕の選択肢「イ」。

イ 延暦寺の門前町としてだけでなく,琵琶湖水運の物資の集散地としても発達し,馬で物資を運ぶ運送業者酒屋土倉などの金融業者が多く集まっていた。

 

 

※平成22年、大問4、〔問1〕の選択肢「イ」。

イ 港では商品の保管や輸送を行う問丸が,交通の要地では輸送業者の馬借が活動し,幕府の置かれた都と地方とを,琵琶湖や瀬戸内海などを活用して結ぶ経路が整ってきた。

 

 

※平成23年大問4、〔問1〕の選択肢「ア」。

ア 月に3回開かれる定期市で鍛冶職人が作った農具も売られるようになる中で,荘園領主や地頭の支配下にある農村などでは,農民が鍬や鋤,鎌などの鉄製農具を利用して農作業を効率的に進めた。

 

 

※平成25年度、大問4、〔問2〕Ⅱの文章。

月3回開かれていた定期市の中で、回数を増やし月6回開催する定期市が現れた。

○商品の売買には、宋銭に加えて、明銭も使われ始めた。

○幕府が置かれた都と港町や宿場町で、馬借などの運送業者が活動した。

 

 

 

 

 

「二毛作」、「定期市」、「馬借」、「問丸」、「土倉」、「酒屋」といった、中世の社会や産業の様子を表すキーワードが非常に重要であるということがわかると思います。

 

多くの問題集や参考書では、こうしたトピックは、政治史や文化史に比べて、比較的軽いあつかいになりがちです。

ものによっては、記載されていないこともあるかもしれません。

 

このような傾向を知らない塾の人は、「マニアックな出題」などといって、驚くことになります。

 

 

都立の入試問題は毎年ただ1種類ですから、分析も解剖も非常に容易です。

通常の進学塾は、その結果をふまえて、数か月かけて都立の入試問題に対応する力を伝授していきます。

 

 

 

 

もうひとつ例を挙げます。

 

 

 

※平成10年度、大問4、〔問4〕の「ウ」の選択肢。

ウ 関東大震災後,私鉄やバスが交通機関として一層発達し,バスの車掌として働く女性が,はじめて登場した。

 

 

※平成24年大問4、〔問4〕の「ア」の選択肢。

ア バスの車掌やタイピストなど新しい職業に就く女性が増える中で,和装から洋装への転換が進み,洋装や洋裁の技術を学ぶ学校が芝に開かれた。

 

 

 

 

上の二つは、ともに「大正時代」について述べられた選択肢です。

 

平成10年度は、「関東大震災」というキーワードによって、大正時代であると特定できますが、平成24年度は、明確なキーワードがないため、特定に少し迷います。

さらに、後者は、時代順に並べ替える問題でしたので、思いのほか苦戦する生徒もいます。

(近年の入試問題の難化は、こうした細部に表れています。)

 

しかし、当然、平成10年度の問題を解いたことのある受験生は、平成24年度の問題を解くのに重要な情報を持っていることになるのです。

 

「バスの女性車掌」という 知識は、過去問以外から得ることはなかなか難しいと思います。

(太宰治の『富嶽百景』に思い当たった受験生がいたとしたら、すごいと思います。)

 

 

実際には、この問題は「和装から洋装への転換」が大きなヒントになります。

「ヒントの拾い方」を知ることも、都立の社会の攻略には重要です。

 

 

 

このような知識や方法論は、「一問一答」の問題集では身につけることはできません。

 

 

 

歴史は、大まかに、古代・中世・近世をあつかう「前近代」と明治・大正・昭和前期をあつかう「近代史」と第二次世界大戦後をあつかう「現代史」のパートに分かれています。

 

このうち、「近代史」では、

 

・明治前期(明治維新、近代化)

・明治後期(産業革命、立憲政治、対外戦争、条約改正)

・大正時代(第一次世界大戦、大正デモクラシー)

・昭和前期(世界恐慌、満州事変、第二次世界大戦)

 

という区分けを用い、4つの選択肢「ア、イ、ウ、エ」を設定するのが基本となっていました。

 

この区分けは、以前は明確だったのですが、あまりにも単純だったために、ほとんどの受験生が対応するようになってしまいました。

 

そのために、近年は、この区分けを越えて、設問がなされるようになってきました。

 

しかし、それでも、この区分けを意識して歴史の流れを考えるのは重要です。

何事であっても、基礎があって、その上に応用があるのです。

 

 

 

「近代史」の中では、大正時代が特に重要です。

 

歴史的に重要なのはもちろんですが、入試問題の解答作業において、大正時代を特定することは、「明治」と「昭和」を分断することでもあります。

その作業が、正解への筋道を示すことが多いのです。

 

ですから、私の授業では、しつこいほどに大正時代のキーワードに言及します。

 

大正時代のキーワードは、「第一次世界大戦」関係、「大正デモクラシー」関係、その他、国際連盟、関東大震災など、数多くあります。

しかし、都立の入試では、実は、社会生活の変化を捉えておくことが、非常に重要です。

 

例えば、「バス」、「地下鉄」、「サラリーマン」、「デパート」、「ラジオ放送」、「電気」などです。

 

大正時代は、短い期間ですが、日本人の(都市の)生活様式が大きく変わった時期です。

 

 

 

 

今から、入試当日までに、社会の知識を完全に網羅することはできません。

ですから、社会に不安のある受験生は、重要度の高いトピック、すなわち、出題傾向の高い内容を、残された時間で優先的につかんでいかなければなりません。

そして、重要度が高いものが一体何なのかは、過去問を熟読することでみえてくるのです。

 

 

 

受験生のみなさん、悔いのない受験を。

 

 

 (ivy 松村)

 

2 thoughts on “都立高校入試の社会の取り組み方

  1. おはようございますm(__)m
    はじめまして私は高校受験を控えた子供を持つ者です。
    この短期間で社会の点数をあげたいのですが効率的な勉強法があれば教えていただきたいのですが
    因みに塾には行っておらず私が教えます。
    社会の過去問をやらせたら15点でした。60点取らせたいので短期間で点数を伸ばせる教え方があればお願いいたします。

    • こんにちは。

      しばらくコメント欄を確認していなかったので、返信が遅れてしまいました。
      すみません。

      都立高校入試の社会の勉強法は、他にもいろいろ書いたものを参考にしていただ来たいと思います。

      それにしても、過去問の点数が15点ということですので、ほとんど過去問を解いたことがないのだと思います。
      この時期、基礎的な積み上げをする時間もありませんので、とにかく過去問を解いてください。
      まず、50分で問題を解き、解説等を参考にしながら、時間をかけて復習してください。選択問題は、必ず各選択肢に埋め込まれているキーワードを抜き出して、内容や対応を確認してください。できれば、ノートなどに「まとめ」をつくるとよいと思います。
      以前の記事にも書きましたが、都立の入試問題は、同じテーマやポイントが再度狙われることが多いので、過去問をすみからすみまでじっくり丁寧に復習し直すのが本も効果的な「対策」になると思います。

      がんばってください。

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