都立中「適性検査」作文指導の例

小6都立中受検コースで勉強している生徒は、何度も作文を書き直します。

生徒と「議論」をして、構成や内容を煮詰めた後に、作文の書き直しをスタートさせます。

なぜその部分を直さなければならないのか、を説明し、どう直すのか、を問いかけます。

そして、書き直しの際にも、必ず作文の「枠組み」を作ってから書き始めるように指示しています。

 

「完成形」が出来上がったら、次のテーマの作文に取り組むことができます。

 

 

今日は第Ⅲ期の最終日でしたが、短期間でずいぶんと上達しましたね。

これからが楽しみです。

 

 

 

あまりにも素晴らしいので、生徒の承諾を得て、ちょっとだけ、作文の取り組みをご紹介したいと思います。

 

以下は、適性検査の模試を受けた後の「作文」の直しの事例です。

 

 

 

その「作文」の問題は、仕事に関する2つの文章を読んだうえで、「将来働くときに心がけておきたいこと」について書くというものでした。

 

問には、

 

(1)「日々の生活の中で、働いた経験を具体的に書く」

(2)「そのときどのようなことを心がけていたのかを書く」

(3)「(1)(2)をふまえて、将来働くときに心がけておきたいことにどう生かしていくかを書く」

 

という「条件」が設けられていました。

 

 

まず、最初に書いた作文です。

 

 

 

ぼくは学校の委員会活動で全クラスのせん風機の掃除をたのまれました。

 

ぼくがそのとき心がけていたのは、自分たちのクラスじゃないせん風機を掃除するので、全校にかかわる大事な仕事だから、ていねいにやろうと心がけました。また昨年は自分たちが掃除したせん風機じゃないせん風機を取り付けたクラスのみんなが、お礼を言いに聞てくれたのですが、自分たちが掃除したせん風機のクラスからは、文句を言われたので今年は昨年のお礼をしに来てくれたクラスのせん風機よりもきれいにしようと思いました。そしてぼくたちが掃除したクラスのみんながお礼を言いにきてくれてうれしかったです。

 

ぼくが将来働くときには、日本や世界に関わる仕事になってくるので、一回目からどうすればいようになり文句を言われないようになるか考えうまくいったことは続けうまくいかなかったことを直し働くことをよりよいものにしていきたいです。

 

 

 

 

「適性検査」として、制限時間を設けて入試形式の作文を書いたのは、これが2度目です。

 

最初の段落が一文だけになっているのは、条件(1)(2)(3)をそれぞれ段落として構成させようという意図によるものです。

その考えは間違っていません。授業でも、そのように指導しています。

 

ただ、作文を書きなれていないことと、緊張によるあせりから、不自然な「配分」になってしまいました。また、誤字や誤文も目立ちます。

 

実は、これは全国模試だったのですが、この生徒の「作文」の答案は、印象よりも高得点がつけられました。その偏差値は60を超えています。率直にいえば、採点には疑問点もありますが、条件に忠実にしたがって書いたことが高評価につながったといえるでしょう。

 

 

今の時期は、誤字や誤文、主語述語の対応、句読点などの間違いを厳しく指導しません。もちろん、間違いを指摘して正しい表現に直させますが、「絶対にミスをするな」というようなことは言いません。

 

少し想像力を働かせればわかりますが、作文指導で重要なのは「誤字」の根絶ではありません。作文の「上達」にとって重要なのは、「ミスをしないこと」ではなく、「ミスを恐れずにトライすること」です。生徒たちは、さまざまな文章表現に挑戦し、表現の可能性を広げていくことを通して、「日本語の文章」というものを理解していくのです。

 

 

 

まず、構成の見直しから始めます。

 

1段落.「働いた経験」

2段落.「どのようなことを心がけたのか」

3段落.「将来働くときに心がけておきたいこと」

 

 

上のような段落構成を確認し、「経験」の内容と定義を説明しました。

 

「経験」の段落にはいくつかの「ルール」が設定されていますが、最も重要なのは、「事実」以外を書きこまないということです。これは、文章全体の構成を整えるうえでも重要です。また、文章の「筋道」をぶれないようにする効果もあります。

意見や考えは別の段落で展開します。

 

優れた随筆の多くは、上記のような構成になっています。国語の参考書にも書いてある内容ですね。

 

実は、「体験作文」=「随筆」です。そのことに気づいていない指導者があまりにも多いのは残念ですね。

 

 

 

さて、「書き直し」です。

 

まず、第1段落に、「どのように掃除をしたのか」を詳しく書くことにします。

 

すると、洗剤を使わずに掃除をした、ということを書くべきだということがわかりました。

さらに、なぜそのように掃除をしたのかもあわせて書くようにしました。

また、終わったときの心情も書くようにしました

 

 

第2段落で述べる「心がけていたこと」について、内容の変更を検討します。

 

「文句を言われないように」という内容をあらためることにしました。

「なんのために掃除をするのか」ということを考え直し、「みんなのため」という動機がみえてきました。

 

第3段落では、具体的な将来像と「心がけていきたいこと」を結び付けて書くようにします。

 

 

 

ぼくは環境委員会で全クラスの扇風機の掃除を行いました。どうやってやったかというとスポンジに水をつけてこすり洗いました。なぜ洗剤を使わなかったかというと環境のことを考えたり、洗剤を使うと泡が立ってしまい流すまでどのくらいきれいになっているかわからないけど、水でぬらすと扇風機がどんどんきれいになっているのが分かり達成感があることと気持ちがすっきりしました。

 

このとき心がけていたことは洗剤を使った方がよく落ちるけど環境のことを考えて時間がかかるけど終わったときの達成感が洗剤を使ったときよりも大きいから全校のみんなのために頑張ろうという強い気持ちよく授業をしてもらえるように頑張ろうということです。

 

将来ぼくは先生になりたいから仕事がいくら大変でもみんなのために頑張ろうと強い気持ちを持って頑張りたいです。

 

 

 

 

第1段落で、なぜ洗剤を使わないことが環境ことを考えることにつながるのかを書き加えるようにします。

 

第2段落には「達成感」という心情を表わす語彙を入れないようにします。

 

第3段落の内容が後退してしまいました。

具体的な将来像である「先生」と「心がけていきたいこと」がうまく結びつかなかったためです。

なぜ教師になりたいのか、教師という仕事に大切なものなにか、ということを思案してみます。

 

 

 

ぼくは環境委員会の仕事で、全校クラスの扇風機の掃除を行いました。洗剤を使わずに、スポンジを水にぬらしこすってよごれを落としました。なぜ洗剤を使わなかったかというと環境のことを考えて、川や海を汚さないようにしようと思ったからです。スポンジでこすりながら洗っていくと、扇風機がどんどんきれいになっていくのが分かります。全ての扇風機を洗いおえると、達成感がすごく大きいです。

 

このとき心がけていたことは、洗剤を使った方がよく落ちるが、環境のことを考えて、時間と手間はかかるけど、やりきろうと思っていました。また、全校のみんなに気持ちよく授業をしてもらえるようにきれいにしようということも考えていました。

 

将来ぼくは小学校の教師になりたいと思っています。仕事がいくら大変でもそういう仕事にこそやりがいがあるから頑張りぬきたいと思っています。

 

 

 

 

第1段落はほぼ「完成」です。

 

第2段落も、内容面は固まり、あとは正しい自然な文章に練り直すだけです。

 

第3段落はまだ推敲が必要です。

「完成版」に至るまで、これからさらに3、4回書き直しを行いました。

 

 

 

ぼくは環境委員会の仕事で、全校クラスの扇風機の掃除を行いました。洗剤を使わずに、スポンジを水にぬらし、こすってよごれを落としました。なぜ、洗剤を使わなかったかというと、環境のことを考えて、川や海を汚さないようにしようと思ったからです。スポンジでこすりながら洗っていくと、扇風機がどんどんきれいになっていくのが分かります。全ての扇風機を洗いおえると、達成感がすごく大きいです。

 

ぼくがその仕事をするとき心がけていたのは、水だけで洗うのは時間と手間がかかるけれど、最後までしっかりとやりきろうということでした。また、全校のみんなに気持ちよく授業を受けてもらえるようにきれいにしようということも考えていました。

 

ぼくは将来小学校の教師になりたいと思っています。教師という仕事はやりがいがありますが、とても大変な仕事だと思います。だから、何ごとにも全力で取り組んでいくことが大切だと思います。そうやって一つ一つのことをしっかりと成しとげ、立派な教師になりたいと思います。

 

 

 

 

第3段落には、まだ改善の余地がありますが、文章の整合性、表現の精密性が「基準」に達したので、「完成形」として認定しました。

 

 

「将来像」については、夏期講習でも何度か書く機会がありました。

これから、さらに具体的で明確な「将来像」を育んでいきます。

 

 

 

「正しく自然な日本語の文章」を書く訓練を行うという理念が、ivyの都立中受検コースの作文指導のベースになっています。

 

それは、受検という目的に限定されることなく、生徒たちの未来を切り開く「武器」になるものであると確信しています。

 

 

(明言しますが、「いりたま」のような作文は、傍流亜流です。「条件」に合致したときには「効力」を発揮しますが、これを普遍化してしまうと、とんでもない「副作用」が生じます。そのことを理解していない人が多すぎるのは、ちょっと怖いな、と思います。)

 

 

 

さて、夏期講習は折り返し地点を迎え、いよいよ佳境に入ります。

 

このクールではずいぶん作文に苦労しました。

そのぶん、書き上げたときの喜びも格別だったことでしょう。

文字通り「泣き笑い」の日々でしたね。

そのすべての経験が、人生の財産となるはずです。

 

残りの日々も、いっしょにがんばろう。

 

 (ivy 松村)

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