「受験相談」報道について考えてみる①

8月20日の新聞報道で、大阪にある関西大学第一高等学校が、入学試験前に合格の「内定」を出していたことが問題として取り上げられました。

 

<大阪・関大一高>入試前に大半「合格」 中学側と調整

 

記事によれば、「関大一高」は、受験日の約1か月前に、中学校側との「受験相談」を行い、受験生の中学校での成績に基づいて、合格を決め、中学校側に伝えていたのだそうです。

 

合格の「内定」をもらった受験生は、入試得点いかんによらず、全員合格。

そのために、「内定合格者」よりも高い得点を取ったにもかかわらず、不合格となってしまった生徒が出てしまったということです。

 

 

 

この記事を読んだ当初、違和感を覚えました。問題の焦点がわからなかったのです。

私と同じように、ほとんどの塾関係者や学校関係者は、記事の内容について、あまりにも一般的でありふれた高校受験の一幕だと感じたことでしょう。

 

狐につままれたような感覚に居心地の悪さを感じながら、記事を丹念に読んでみることにしました。

それで、やっと少し状況が整理できました。

 

 

 

このニュースに取り上げられている内容は、高校受験に関わる人にとっては既知のものです。

 

 

東京都の私立高校受験のシステムにも、同じような「入試相談」というものがあります。

中学の先生が高校に出向かれて、生徒の「合格の可能性を相談する」というものです。

 

基本的には、推薦・専願(単願)・併願優遇を利用して受験をする生徒が対象となりますが、高校によっては「一般受験」の入試についても相談を受け付けるところもあるようです。

 

 

「入試相談」は、なかば公的な制度となっています。

現在、東京都の公立中学校に通っている生徒や保護者の方は、自分の中学の「年間行事予定」を見てください。

12月15日に「入試相談」と書かれてあるはずです。

本年度は、この日が「入試相談」の「解禁日」となっています。

 

この日から、ようやく中学校と高校は「相談」をしてもよいということになっています。

が、実際には、この日よりも前に根回しは終わっていて、12月15日には、ただ、中学の先生が、高校を回って「受験者リスト」を受け渡していく慣例的、儀礼的行為を行うだけです。

 

中学校は、2学期の三者面談の際に生徒・保護者に受験の意志を確認し、受験の意志のある生徒の「合格の可能性」を高校に問い合わせます。「合格の可能性」の高い生徒には、当該校の受験を容認し、「合格の可能性」が厳しい生徒には再考を促します。

 

ですから、厳密には、12月15日よりも前に「合格の可能性」がとても高い高校を受験するかどうかが決まっています。

 

 

まあ、はっきりいってしまえば「確約」を出すわけです。

 

 

現実には、12月15日の前には「確約」が出されていますから、「入試相談」の実際は、「12月15日」には完了しているわけです。

 

 

このようにして「入試相談」を通して出願した受験生は、「よほどのことがない限り」合格を手にします。

 

中学の先生は、「入試相談」を使って生徒の進学先や、「保険」となる進学先を確保しようとします。一方、高校側は、「入試相談」を多くの受験生を集める「営業ツール」として活用します。

また、受験生・保護者にとっても確実に合格を押さえることができるというメリットがあります。

 

 

一方で、「入試相談」を受け付けていない私立高校もあります。

人気のある私立のブランド校、特に難関大学の付属高や系列校は、中学校と「合格の可能性」について話をすることはほとんどありません。

ですから、私立上位校の入試は、ほぼ「ガチンコ」の本番勝負になります。

 

 

 

対照的に、東京の私立高校には、「入試相談」を積極的に活用しているところがいくつかあります。

受験生が1,000人を超えるようなところもめずらしくありません。

そのうち、「入試相談」を通さずに受験をする場合、極端に「ボーダー」が上昇する高校があります。「入試相談」を通して「確約」を大量に出しているため、「確約」を持たない受験生が競う「一般入試」で、合格者を出す「枠」がとても少なくなっているからです。

 

こうした高校は、「偏差値」と「難易度」がかみ合っていません。

あるいは、状況を利用して「偏差値」を上昇させようという戦略なのではないかとうがった見方をしたくなります。

 

(「ランキング表」を盲信して高校の「格」をはかろうとするのは、危険です。特に、最近の私立高校の「ランキング表」は、あまりにも多くの思惑を反映し過ぎています。)

 

 

しかしそれにしても、たとえ入試以前に「確約」を出していても、上記のような高校をことさら非難する声は起こりません。

「入試相談」はある意味で「平等」な制度です。端的に、当該の高校にどうしても合格したければ、「推薦」「専願(単願)」「併願優遇」を利用して受験をすればいいからです。

 

「入試相談」と「確約」は呼応関係にありますが、無条件ではありません。そこには「基準」があります。

多くの場合、内申点の「基準」を満たしているかどうかで「確約」が決まります。

ですから、こうした制度は、別の見方をすれば、「学校の成績をもとに入試を行っている」ということになります。

 

大枠で捉えれば、生徒の学力を判定するという「入試の機能」と同等であるといえます。

 

「学力が足りないために入試で不利になる」という事態は、極めて普遍的なものであり、問題視するべきものであるとは思われていません。

 

 

 

この制度の是非にも触れたいところですが、ひとまず置いておきましょう。

ともかく、関大一高が行っていた「受験相談」というものは、東京では「入試相談」と呼ばれ、同じように行われているものです。

 

しかし、この件は、文部科学大臣を始め、識者がこぞってコメントを出したり、議論に取り上げられたりして、大きくクローズアップされることとなりました。

どうしてこの件が大きな問題として取り上げられるに至ったのか、次回、もう少し考察してみましょう。

 

(ivy 松村)

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