「受験相談」報道について考えてみる②

前回のブログでは、関大一高の新聞記事を取り上げつつ、東京都の私立高校受験には「入試相談」という制度が存在することを説明しました。

 

やはり、大阪にも同様の制度があります。

大阪では「受験相談」あるいは「事前相談」と呼ばれるものです。

 

 

新聞報道によれば、関大一高は、受験生の知らないところで「受験相談」を行い、「内定」を出した生徒は、当日の入試得点で、他の受験生の得点を下回っていても合格させていたということです。

 

高校受験の仕組みをよく知らない人が読むと、以下のような印象を持つに違いありません。

 

・高校と中学が秘密裏に談合で合格者を決めている

・入試得点を基準にして合否を判定していない

・入学試験が「出来レース」であることを受験生は知らされていない

 

総じて、読者は「不公平」な入試選抜が行われていたのだ、と受け止めることでしょう。

 

 

多くの記事やコメントで、憤り、非難、怒りの声が噴出しています。

そうした声に触れる度に、残念な気持ちが湧いてきます。

この高校に同情しているからではありません。

多くの人が「思惑通り」にはめられてしまっているからです。

 

この記事には、ある種の「狙い」があるように思います。

 

 

 

記事には、「関大一高の関係者」が大阪府私学・大学課に指導を要請したと書かれています。

まあ、仰々しくいうと、「内部告発」をしたわけです。

それで、「私学・大学課」は、関大一高に改善を求めた、ということです。

 

ところで、大阪で個人塾をやっておられる方のブログに興味深いことが書かれていました。

「私学・大学課」も「受験相談」のことなど当然知っているのだから、形だけの指導をして終りだっただろう、と。

 

それで、もしかしたら、今度は新聞社に情報提供したのかもしれません。

 

 

 

ともかく、関大一高の入試状況を確認してみましょう。

 

問題となった、2015年度入試の入試データです。

 

 

志願者 合格者 入学者
専願 男子 129 89 89
女子 78 68 68
合計 207 157 157
併願 男子 33 31 3
女子 21 20 4
合計 54 51 7

 

 

「専願」というのは、受験校を第一志望とし、合格すれば必ず入学手続きを取ることを条件に「優遇」を受ける受験カテゴリーです。関大一高の場合、「15点の加点」となっています。

(後述しますが、関大一高の「専願」は、さらに細分化された区分が存在します。しかし、ホームページの資料では合算された「専願」のみのデータとなっています。)

 

「併願」というのは、複数の受験をするという意味になりますが、この場合は、要するに加点のない「一般入試」を受けるということです。

 

 

極端に「専願」の受験者が多いことが分かります。

「専願」と「併願」を合わせた全受験生の約79.3パーセントが「専願」で受験しています。

また、気になるのは、「併願」で受験した受験生のほとんどが合格し、また、ほとんどが入学していないということです。

 

合格率の高さに注目しなければなりません。

「専願」は約75.8パーセントです。

一方、「併願」は約94.4パーセントにのぼります。

 

 

加点がなく、不利な入試となっているはずの「併願」の方が、合格率が高くなっています。

これは、得点力を持った、さらに上位校を第一志望としている受験生ばかりが、関大一高を「併願」するという状況になっているからでしょう。特に、府立の最上位校を狙うような受験生は内申点も持っているでしょうから、内申点を入試点に加点するタイプの関大一高の入試では、その分強みがあるはずです。

 

 

関大一高は、数十人の、最上位に近い学力の受験生が「併願」を受験し、上位中堅学力の受験生のうち、関大一高を第一志望と定めた受験生が「専願」でしのぎを削る、という構図になっています。

 

「専願」が主戦場となっているので、大勢の受験生をかき集めて行われるような入試にはなり得ません。

必然的に、入学の意思を強く持っている生徒を評価、審査するような選抜に傾きます。というよりも、最初からそのような指向があったのかもしれません。

 

 

 

報道によれば、事前に合格を得ている「内定者」は119人おり、「当日枠」での合格者が16人、不合格者が50人となっています。

そして、その50人のうち、47人が「内定者」の合格最低点を上回っていたということになっています。

 

問題となっている「受験相談」は、もちろん「専願」に対して行うものです。

「内定」を出した「専願」の受験生と、「内定」を出さなかった「専願」の受験生がいるということになります。

 

 

 

関大一高のホームページでは、入試結果では「専願」は単一の受験カテゴリーとしてあつかわれています。

しかし、入試区分を説明する「生徒募集概要」のページでは、2種類の「専願」があることを明記しています。

 

・「専願A」・・・生徒会活動や部活動、社会活動、検定などの実績が評価される出願

・「専願B」・・・入試得点に15点が加算される出願(一般専願)

 

 

さらにそのページには、「中学校を通じて提出された活動実績報告書により、専願A枠に該当しないときは、専願Bでの合否判定となります」と書かれています。

 

つまり、「専願A」のほうが「専願B」よりも「優先度」の高い出願であるということになります。「専願A」で出願できなかった受験生が、「専願B」で受験するのです。

 

 

 

前回のブログで取り上げた新聞記事は、「受験相談」問題の「火付け」報道でした。

その後の他紙の記事では、さらに詳細が述べられています。

 

関大一高、入試前に合格内定 「受験相談」と称し面談

 

 

この新聞記事では、「内定者」は全員「専願A」の受験生であったと説明しています。

 

一方、前回紹介した新聞記事は、故意に「専願」の区分に触れずに記事を書いたのではないかという疑いを持たざるを得ません。

 

 

 

関大一高は、「関関同立」の一角を占める関西大学の併設校(付属高)です。評価にかげりが出てきていますが、全国に名の知れた名門大学に、ほとんどの生徒が進学します。

 

関西のことはよく知らないので、あくまでイメージでの話ですが、あえて、首都圏の高校でたとえてみると、もしかしたら法政大学高校が近いのではないかという気がします。

(大学ブランドは法政大学の方が上だと思いますが)

 

もし、関大一高が、「専願」を主体とした入試を行わないとしたら、法政大学高校のように、2~3倍の倍率になると思います。

 

 

関大一高の「専願」の志願者の割合の高さや受験倍率などは、一見特異で不可解に思えます。しかし、それが「受験相談」を通して志願者を絞っているためであることを知れば、この高校の特徴をよく理解できます。

 

関大一高は、明らかに、「学校での成績」がよく、生徒会などで積極的な活動を行っていたり、部活動やコンクールなどで優秀な成績を収めたり、社会奉仕活動などを行ったりしている「優等生タイプ」の生徒を求めています。そのうえで、自校を第一志望とする受験生を求めています。

 

ですから、そういった生徒が目指すべき「専願A」に力を入れています。

 

そうすると、中学校とのパイプを通して「まちがいのない」志願者を集めることが最も合理的です。

 

募集枠のほとんどを「受験相談」を通して集めた生徒に割り当て、残りのわずかな「枠」を、得点力をもった受験生たちが争うという構図になります。

 

 

上に紹介した新聞記事によれば、「専願A」の受験生は全員合格し、それ以外の「専願B」で出願した受験生は、当日の入試得点が「専願A」の生徒を上回っていても不合格となっています。

「専願A」の基準を満たせば「内定」がもらえ、「専願B」は入試得点次第ということですね。

 

 

「専願A」の出願を、高校側が「受理」すれば「内定」です。

高校側が難色を示したときには、「専願B」での受験となるわけです。

 

ある意味で、非常にわかりやすい形になっているのですから、受験生や関係者が「受験相談」というものがあることを知らなかったというのは、ちょっと考え難いように思うのです。

 

 

要するに、「推薦合格」を果たした生徒が、形の上で、一般受験者に交じって入試問題を解くという「儀式」を行っていたのだと考えるとわかりやすいと思います。

 

 

オリンピック出場権を手にしているマラソン選手が、調整のために、出場権獲得を目指す他の選手と一緒に、選考を兼ねている大会に出ると。

それで、結果、順位が他の選手よりも下だったからといって、出場権をはく奪しろ、と叫んでいる輩がいたら、アホだと思いますよね。そんなイメージです。

 

 

一応つけ加えておきますが、私は、入試制度はできるだけシンプルで、わかりやすく、透明なほうがいいと思っています。でも、それと、不実を明かすことは別なのです。

 

 (ivy 松村)

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