「受験相談」報道について考えてみる③

8月20日に、関大一高の「受験相談」の記事が掲載されました。

 

その記事は複数の記者の署名記事でしたが、その翌日、同じ「記者チーム」によって、新たな記事が書かれています。

 

<首都圏の私立高5校>模試の結果で合格確約

 

 

全国展開する大手学習塾が、塾内で実施した模試の成績によって、私立高校から合格の「確約」をもらっていたという記事です。

しかも、その塾内模試を生徒に受けさせる前に、出題される問題を生徒に知らせていたという内容です。

 

 

どうやら、「話」は関大一高だけでは終わらないようです。

 

 

学習塾と私立高校の「癒着」に踏み込んで、「不正を暴こう」という、報道機関の「動き」があり、そのうえで、「火付け」を行って、報道の「波」を作ろうとする意図があったのではないかと思います。

「キャンペーン」、といってよいのかわかりませんが、ある種の「プロジェクト」として一連の流れが仕込まれています。

 

 

上掲の新聞記事では、問題の学習塾名を公表していません。

報道機関にもいろいろなしがらみや思惑、制約があり、思うように記事を書けないことがありそうです。

 

 

記事によれば、件の学習塾は関東と東海に展開しているようです。

すると、「名古屋」あたりが拠点となる塾のようですが、その塾と東京と埼玉の私立高校との間で「約束」があったということなので、首都圏の教室で、記事に書かれているような動きがあったのでしょう。なるほど。

 

ところで、昨年、私はこのブログに、上の新聞記事と関連のありそうな内容を書いています。

あわせて読んでいただくと見えてくることがあるかもしれません。

 

塾の「併願優遇」?

 

 

 

さて、今、ここで焦点となっている「受験相談」の報道ですが、以下のように展開しています。

 

 

1.関大一高の「受験相談」が発覚

<大阪・関大一高>入試前に大半「合格」 中学側と調整(前々回のブログの記事)

 

 

2.文部科学大臣が記者会見で「不透明な入試」についてコメント

文科相:関大一高の選抜、不適切と認識

 

 

3.過去に、首都圏の私立高校が塾に合格の「確約」を出していた

<首都圏の私立高5校>模試の結果で合格確約(上掲の記事)

 

 

4.関西でも私立高校と塾の間で「確約」があったことがわかった

<近畿・一部私立高>塾相談会で合格確約 入試2カ月前

 

 

 

これらは、すべて同じ新聞に掲載された記事です。

下村文部科学大臣の記者会見をあつかった「2」以外は、すべて同じメンバーの「記者チーム」による記事です。

こうしてみると、一連の報道の「流れ」が周到に用意されてあったことが分かります。

 

 

「1」の関大一高の記事が「導入」となって、論難の矛先は、徐々に「本題」に近づいていきます。

以降の記事では、特定の塾名や学校名は伏せられたままです。

世間の耳目をひきつけるには、具体的な「対象」が必要です。それゆえに、「先鋒」の記事にはインパクトが求められたのかもしれません。

 

「2」の記者会見は、「1」の記事の翌日に開かれています。

これは閣議後の定例会見ですが、ここで教育行政のトップからコメントをとって、後の「展開」に組み込めるように、最初の記事を出すタイミングを8月20日にしたのかもしれません。

同じ新聞社の記者が質問をしていましたが、あらかじめ質問内容を知らせていたようです。大臣は、ペーパーを読んで答えていました。

 

「3」の記事は、昨年の報道を「蒸し返す」ものですが、合格の「確約」を得るために、塾側が模試の「予習」を行っていたという新しい事実も明るみになっています。

この記事は、「4」の記事を引き出すために据えられたのかもしれません。

 

「4」の記事の舞台は再び「大阪」です。

今年の入試で、大阪の私立高校と塾との間で「談合」があったことを取材しています。

 

 

実は、関大一高の記事が出た8月20日には、別のニュースも報じられています。

大阪府の府立高校入試で、「全国学力テスト」の結果を高校入試に反映させることが、本年度に限り認められることになったのです。

この件で、かねてから大阪府と文科省は「対立状態」になっていましたが、いったん、混乱は回避される見通しとなりました。

 

これが偶然なのか必然なのかはわかりませんが、もしかすると、府立高校の入試制度改革と一連の報道は、裏でつながっているのかもしれません。

 

 

 

「2」の記事の元になった、下村文部科学大臣の記者会見の該当部分をテキストに起こしてみました。

 

(後ろに要点をまとめておきましたので、読むのが面倒であれば、読み飛ばしてください。)

 

 

下村文部科学大臣の発言:

 

大坂の関西大学第一高等学校、今春の入試で、選抜試験の一ヶ月前に、受験生本人たちに知らせず、複数の中学校と受験相談を行い、中学校での成績に基づき、大半の合格者を事実上内定していたため、選抜試験で高い点数を取ったのに、不合格とされた受験生がいたとの報道は承知をしております。

 

当該学校を所管する大阪府によると、報道は概ね事実とのことであり、文科省としては、入学者選抜は、私立学校を含め、入学者選抜要項に示す内容に沿って行われるべきであり、例えば、中学校の成績を重視して入学を許可する方針であれば、一般入試とは別枠で推薦入試を実施することを含め、その方針を明確に反映した選抜方法を対外的に明示することが適切であると考えます。

 

また中学校側も特に、個別の生徒の進路について高校と相談する場合は、保護者や生徒に対して適切な情報提供を行うことが必要であると認識をしております。

 

全国の学校にあっては、保護者や地域の信頼を得られるよう、今後とも入学者選抜の公正・公平な実施に向けた取り組みを進めていただきたいと思います。

 

本来は、高等学校への入学は校長が許可するものであり、また、特に私立高校の入学者選抜については、自主的・主体的な改善が図られるべきものであります。

 

が、改めて文部科学省として、来月、9月30日に行う全国の都道府県の担当者を集めた会議の場で、ひとつは高等学校において、選抜要項における各学校の選抜方針を明確に反映した選抜方法を明示すること、ふたつ目に、中学においては、生徒や保護者に向けた適切な情報提供など、適切な選抜の実施に向けた取り組みを促すことを、この会議の場で文部科学省としても提起していくことによって、徹底を図ってまいりたいと思います。

 

 

要点:

 

・関大一高の報道は知っとるよ

・関大一高は、「推薦」などの別枠の入試を用意するべきやったね

・入試の方針と合格の基準はわかりやすく示さんとあかんよ

・中学校も、高校との「入試相談」の結果を保護者・生徒に伝えんとダメやろ

・まあ、でも、私立高校の入試のやりかたは、本来高校が自分で決めるべきものやからね

(せやから、ホンマはワイらがとやかく言うことでもないんやで)

・来月全国の「担当者」が集まるから、そこで注意しとくんで、それでよろしく

 

あえて「関西弁」でまとめてみました。

 

 

 

下村大臣の会見では、件の新聞社の記者が「3」の記事の内容についても質問していました。

首都圏の塾で、ある塾の塾内テストの結果をもとに、複数の私立高校が合格の「確約」を出していた問題ですね。

これも、質問内容をあらかじめ伝達してあったようで、大臣はペーパーを読んで答えていました。

 

 

下村文部科学大臣の発言:

 

 

ご指摘の点ですが、文部科学省では、平成五年の通知により、高等学校の入学者選抜は公教育としてふさわしい適切な資料に基づいて行われるべきものであり、業者テストの結果を資料として用いた入学者選抜が行われることのないよう要請をしてきております。

 

昨年、同様の指摘があった際、報道された塾および東京都・埼玉県に確認したところ、域内において確約を行っているような事案はないと、認識しているとのことでありました。

 

また、今後とも、通知の趣旨をふまえ、都道府県等に対し、公教育にふさわしい適切な資料に基づいた入学者選抜が実施されるよう要請してまいりたいと思います。

 

 

 

要点:

・文科省は20年前から、塾のテストを使って合格を出してはダメだと言っている

・去年ニュースになったので、塾のテストで合格を出した高校があるか聞いてみた

・東京と埼玉の担当者は、「ないと認識している」と答えた

 

 

 

俗にいう「つっこんだら負け」というやつですね。

 

 

 

高度に発達した文明の社会集団の中で、原則論や基本道徳にもとづいて、社会や組織の矛盾を指摘することは「痛い行動」であるとみなされることがあります。つまり、「野蛮」な行動であるということです。

 

なぜなら、精巧に組み上げられた人為的システムが完成するまでには、長い時間と労力をかけて、さまざまな利害関係の調整や、現実的判断、理想などの取捨選択がなされており、無責任な煽りは、極めて繊細な構造物を破滅させるきっかけになり得るからです。

 

「受験」の中枢にいる人ほど、横行している「入試の実態」を「公の問題」にできないわけです。

 

現在稼働している受験システムが崩壊したとき、どれほどの混乱が起き、どれだけの受験生や関係者が途方に暮れるのか、想像することができる人間にはその引き金を引くことができないのです。

 

 

一方で、多くの人がそのシステムの疲弊を感じ取っています。

「風穴」を開けてくれるような発言者が求められていることも事実です。

 

個人的には、「3」の記事のように、大手塾が特権的に「併願優遇」や「推薦」を出しているのは大きな問題だと思うので、報道機関には果敢に取り上げていただきたいと思います。

 

(「4」の記事にあるように、塾団体が個人塾を集めて「進学相談会」を開くのもそれが原因です。連合して大手のアドバンテージを追尾しなければならなくなるのです。)

 

 

 

さて、今回のブログでは、関大一高に端を発する「受験相談」報道を追いかけてきました。

 

ありきたりなことをいうようですが、メディア情報には、演出や思惑、打算などが反映されることがありますから、そのままを「鵜呑み」にしてはいけません。

 

 

情報を評価・分析・判断する力のことを「情報リテラシー」といいますが、この力は、これからの時代、さらに重要なものになっていくと思います。

 

 

受験は「情報戦」でもあるので、私を含め、塾の教師は特に情報を深く読もうとします。

 

 

ふと思ったのは、関大一高の入試です。

分かりづらい人には分かりづらいのでしょう。

しかし、インターネットを使って、少し情報を収集するだけで、この高校の入試の全容を理解することができました。

 

 

 

「入試の仕組みが分かりづらい」と多くの人が口に出します。

もちろん、分かりやすい方がいいのでしょう。前回の記事にも「入試制度はわかりやすいほうがいい」と書きました。しかし、なんでもかんでも「1から10まで」説明することが果たして全面的に良いことなのかどうか、という疑問もあります。

 

 

将来を左右する入試という一大事に際して、成り行き任せで情報も集めない人間に、豊かな未来があるとも思えません。

 

 

「オトナの世界」では、「全部」を説明してくれることなどあり得ません。

事態や事情を自分で読み取れない人間は、「その程度」だと評価されるでしょうし、事態や事情を読み取れないおかげで、重大な失敗や損失を招くこともあるでしょう。

 

 

まあ、未来のことはともかく、受験に際しては、周りが噛み砕いてくれるのを待っているのではなく、自ら主体的に情報と向き合べきだと思います。

 

 

 (ivy 松村)

 

 

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