「合格難易度」を読む

私立高校の「合格難易度」が大きく変化することがあります。

 

 

たとえば、ある高校の入試日程が変更された場合、受験生の分散や集中が起こります。

 

昨年度は慶應義塾高校が、神奈川県の県立高校入試の日程変更の影響で、一次試験日を従来の2月13日から2月12日へ変更しました。

これによって、例年2月12日を入試日に設定している明大明治や青学と日程が競合しました。

逆に、慶應義塾と2月13日に入試を行っている国立大附属高校の併願が可能になりました。

 

今年の入試では、桜美林高校の2回目の入試日が2月12日から2月13日に変更されます。

 

 

また、よく知られている中学受験の用語に「サンデーショック」というものがありますが、同じような例は高校受験にも起こります。

「サンデーショック」というのは、主にプロテスタント系の学校が教義で「安息日」とされている日曜日の試験実施を避けて、その年だけ試験日をずらす処置をいうものです。

本来ならば同一日に入試が行われる学校のうちの一部が、入試日程を変更してしまうために、例年とは違った併願受験が可能となります。

(また逆に、併願が不可能となる場合もあるわけですが。)

 

 

その他、選抜基準や試験科目の変更が影響する場合もあります。

 

(選抜基準という点では、私立高校ではありませんが、本年度、東京都立高校入試の内申点の計算方法が変更され、「特別選考枠」が廃止となったことが挙げられます。)

 

法政二高は、神奈川にある男子校ですが、今年度から女子の募集を行います。

共学化によって人気が高まり、受験者数が増加するだろうと予想されています。

 

私立高校の入試では、優遇制度や加点制度が度々変更されることもあるので注意が必要です。

 

配点や試験内容が変更されることもあります。

この場合、あらかじめ告知される場合と、入試本番にそれに気づかされる場合があります。

「その情報」を高校側が発信している場合には、それを見逃すことがないようにしましょう。

 

 

 

さて、「合格難易度」の変化をもたらすもっとも大きな要因は、募集人員や定員の増減であるといえます。

 

ある私立高校が、「特進コース」や「英語科」のような特別クラスを設けた場合には、募集人員に変化が生じます。

 

あるいは、全体の募集人数が固定されている場合、複数の選抜方式の選抜人数の「配分」によって、結果的に定員が増減することがあります。

たとえば、推薦入試の定員が増やされたときには、その分、一般入試の定員が削減されることになります。

または、推薦入試で予定より多くの合格を出した場合、必然的に、一般入試の定員数が削減されることになるでしょう。

 

 

中学併設校の場合は、中学の生徒数との兼ね合いで、高校の募集人員が増減します。

中学を新しく併設した学校は、当然その分、高校募集枠を減らさなければならなくなります。

また、中学入試で、予想以上の手続きがあった場合には、内部進学生が「超過」状態になってしまうので、高校の募集で「調整」をするために、定員が絞られることになります。

 

 

もちろん、中学を併設していない高校であっても、過去2年の入学者数に応じて、定員を増やしたり減らしたりすることになります。

 

単純化していえば、前の年度で多くの生徒が入学したら、次の年度は合格者数が絞られることになるわけです。

 

各高校で収容できる生徒数は決まっています。一部の高校を除いて、ある意味で「営利団体」でもある私立高校は、限度に近い生徒数を抱えようとします。

ですから、常に生徒数を一定に保とうとするのではなく、「超えてしまったら、減らす」というような対処法的処置を行います。

 

調べてみるとわかりますが、各学年の生徒数が「いびつ」な高校がいくつかあります。

 

高校側は、どれくらいの割合の生徒が入学手続きを行うのか、予測を立てて合格者を出すわけですが、特に、他校の合否結果の影響を強く受ける「位置」にある高校は、「手続率」(歩留まり)を読み間違ってしまうことがあるわけです。

 

 

 

たとえば、ある高校が一般受験で200人の生徒を募集し、「手続率」を4割と予想していたとします。

600人の受験生が集まり、500人が合格を手にします。

500人のうちの4割に当たる、200人が入学する計算でした。

 

ところが、予想以上に「手続率」が高く、5割の生徒が手続きを行い、250人が入学することになりました。

生徒数が「超過」しています。

 

「超過」している「50人」を、次の年で調整しなければなりません。

 

そうすると、次年度、同じように600人が受験した場合でも、150人の入学者となるよう「調整」しなければいけないわけです。

今度は「手続率」を「5割」で考えなければなりませんから、合格者数を300人に絞ることになります。

 

こうして、この高校では、ある年度とその次の年度で、合格者数が「500人」→「300人」へと減少します。

そのため、実質倍率が「1.2倍」→「2.0倍」へと上昇することになります。

 

 

これは、私立高校の「合格難度」が上昇したり下降したりするメカニズムを示すための簡易的なシミュレーションにすぎませんが、実際に起こりうるものです。

 

私立高校の入試は、単純な「高校ランキング」のような指標だけで計るべきではないのです。

 

他の高校の受験状況の影響をうけたり、過年度の入試結果が反映されたりして、「合格難易度」は推移するのです。

 

 

蛇足の話になりますが、学校の「格」や「ランク」を計る一つの目安は、「補欠」や「追加合格」にあると思います。経営や運営に「ゆとり」のある学校は、できる限り合格者数の調整を次年度に持ち越さないようにしているわけです。

 

 

 

さらに、「合格難易度」の話をもう少し。

 

なるべく多くの受験生を集めたい、なるべく多くの生徒を収容したい、と考えている高校は、「併願優遇」を活用します。

 

高校の先生方の「営業努力」が実って、多くの「併願優遇」を利用した受験生を集めることができれば、その分、「フリー受験」の合格者が絞られることになります。

それによって、「合格難易度」が変化する高校があります。

 

 

たとえば、一般受験で200人の募集をしている高校があるとします。

その高校に、合格の「確約」をもらえる「併願優遇」を使って応募した受験生が300人いるとしましょう。

また一方、「併願優遇」ではない「フリー受験」の受験生も同じく300人いるとしましょう。

 

高校側が全体の「手続率」を4割であると予想していたとすると、合格者の合計は500人としなければなりません。

そのうち、「併願優遇」を利用した受験生は300人全員が合格します。

ですから、「フリー受験」の受験生の中から合格できるのは残りの200人ということになります。

 

「入試全体」では600人受験して500人合格ですから、実質倍率は「1.2倍」です。

しかし、「フリー受験」の実質倍率は、300人受験して200人合格ですから、「1.5倍」ということになります。

 

 

さらに、高校の先生方の並々ならぬ努力によって「併願優遇」の受験生がさらに増えると、「フリー受験」はより難化します。

 

次年度、「併願優遇」の生徒がさらに50人増え、350人集まったとします。

「フリー受験」の受験生は前年同様300人としましょう。

「入試全体」の受験生の合計は650人ということになります。

前年と同じように募集人数は200人で、「手続率」の予想は4割です。

 

そうすると、合格する500人のうち、350人が「併願優遇」の受験生ですから、「フリー受験」をする300人のうち、合格者は150人です。

 

「入試全体」の実質倍率は、受験者が増えたために、前年の「1.2倍」から「1.4倍」に上がります。

もちろん、「併願優遇」の実質倍率は「1.0倍」です。つまり、合格率100パーセントは変わりません。

 

一方、「フリー受験」の実質倍率は、「1.5倍」から「2.0倍」へと大きく上昇することになります。

 

「併願優遇」に力を入れている高校の「フリー受験」は、「併願優遇」がより広範に活用されるほどに、厳しい受験となります。

 

 

そのこと自体は、必定のことです。愚痴を言ってもはじまりません。

受験生は、自身の学力や受験制度など、さまざまな葛藤と向き合って自分の「受験パターン」を決めていくのです。それが受験というものの宿命だと思います。

 

 

しかし、仮に、の話ですが、ある私立高校が、「併願優遇」の制度を、特定の受験生だけが参入できるような方法で「極端に拡大」する戦略をとった場合、私は、もう、その高校を生徒たちに勧めることはできません。

 

実際以上に受験が厳しくなるということもありますが、その高校が、生徒たちを大切にしてくれるとは思えないのです。

 

 

(一応念のために 付け加えますが、「併願優遇」という制度そのものは、必ずしも否定的にとらえるべきものではないと思います。この制度が公平に運用されていないのだとしたら、それは問題であるということです。)

 

 

 

私たちのような塾の「ストロングポイント」は、「併願優遇」の安売りを仲介したり斡旋したりすることではありません。

 

しばりのある「併願優遇」に頼らなくても、しっかりとした信頼できる私立高校に、正当な手だてで合格する力と方法を伝えられることです。

 

そして、そのために、可能な限り受験の情報に向き合うのです。

 

(ivy 松村)

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