都立高校入試の社会の記述問題について

都立高校入試が近づいてきました。

 

社会の「記述問題」(論述問題)のポイントを書こうと思いますが、その前にまず、ある情報について書きます。

 

もしかすると、知らないままの受験生がいるかもしれません。

それで、この記事を書いておこうと思ったのです。

 

 

 

都立入試の各教科の記述問題の採点基準は、以前は、おそらく各高校にある程度「裁量」がゆだねられていたはずです。

しかし、一昨年度の入試で、都立高校の「採点ミス」の問題が大きく取り上げられ、それをきっかけとして都立高校入試の制度が「改革」されることになりました。

 

耳目を集めた変化のひとつに「マークシート」の導入がありましたが、実は、記述問題の「採点基準の統一」も、その大きな流れの中で明確化されていたのです。

 

 

都立高校入試の理科・社会は、上位校であろうとなかろうと、同じ基準で採点される「方針」となっています。

 

もし、「採点基準」を知らないまま受験勉強をしている受験生がいるとすれば、それはちょっと「怖い」状況です。

今の時点で知らないという人がいたら、東京都教育委員会のホームページで確認しておきましょう。

 

 

当然ですが、記述問題は、「何となく」書けばよいというものではなく、何を、どう書けば点数が得られるのかを認識したうえで「解答」を作らなければなりません。

 

「部分点」の集積によって「解答」が成り立つという、記述問題の基本的な「設計」を理解していなければ、「組み上げる」記述ができずに、点数を取りこぼしてしまうことも起こり得ます。

 

 

 

記述問題の基本的なアプローチは、「資料」から読み取れる複数の「要素」を「言葉」に置き換えて、設問に対して整合するように連結して「解答」を作るというものです。

 

能動的に「言葉」を使うことに対して、苦手意識を持っている中学生は多くいるのだろうと思います。

こうした訓練の経験が少ない人は、かなり高度な能力が求められているように思うかもしれません。

しかし、記述問題は、ある程度定式化された「作業」を行うことで、得点を確保することができるものです。

 

 

 

昨年度の社会の入試問題を使って、記述問題を「攻略」してみましょう。

 

 

◎平成27年度 都立高校入試問題 社会 大問3〔問3〕

 

次のIの表は,ある町の1965年から2010年までの総人口,0~14歳の人口,15~64歳の人口,65歳以上の人口を示したものである。Ⅱの文章は, 2009年4月からこの町で施行された事業の一部を示したものである。IとⅡの資料から読み取れる,この町がⅡの事業を施行した理由と目的について,簡単に述べよ。

 

 

1965年 1980年 1995年 2010年
総人口 15479 11972 9536 7304
0~14歳 6393 3077 1595 643
15~64歳 8164 7543 5729 3837
65歳以上 922 1352 2212 2824

 

 

○奨励金の支給年度において,定住世帯構成員の一人以上が満45歳未満であれば,定住世帯に奨励金を支給する。奨励金の基本額は,定住世帯一世帯につき15万円とし,単身世帯の場合は5万円とする。

 

○中学生以下の子供がいる場合,基本額に,当該中学生以下の子供一人につき5万円を加算した額の奨励金を支給する。

 

○満65歳未満の人が,定住する目的で,町内の土地を取得し,町が定めた期限までに住宅を建築することを確約すれば,一世帯につき奨励金を30万円支給する。

 

 

 

 

①問題の形式を確認する(解答の形式を定める)

 

 

→「理由」と「目的」を答える

※理由・・・どうして「奨励金」を支給するのか(どんな問題があるためなのか)

※目的・・・何のために「奨励金」を支給するのか(何を求めてのことなのか)

 

 

「理由」と「目的」という言葉について、同一の概念をわざわざ2語並べて使っているのだと勘違いしてしまうと、「解答」の形が設問に対応しなくなってしまいます。

 

「と」という、「語を並立させる助詞」を使っているので、「理由」と「目的」の2つを答えるのだと考えなければならないわけです。

 

正答例では、「~ため、~を目的としている。」という記述形式になっています。

他にも「~から、~ため。」「~ので、~しようとしている。」といった記述の形が考えられます。

 

 

 

②「解答」の「構造」を把握する

 

 

この問題の「解答」には、「理由」と「目的」という2つの要素を組み込めばいいということがわかりました。

 

しかし、「理由」と「目的」という2つの「似たような」概念を結びつけるのは、ちょっと大変だと思います。

 

もしかすると、こういった問題を攻略する鍵になるのは、さまざまな事柄の結びつきを「発見」することができるような、抽象的な思考力なのかもしれません。

 

この2つの要素は、大きくとらえると「因果関係」にあると考えることができます。

 

 

「理由」 「目的」
=(問題点) =(対応策)
=原因 =結果

 

 

実は、社会の記述問題の「解答」は、「因果関係」の説明を求めるものが非常に多いのです。

 

「難解」に感じた記述問題は、まず「因果関係」に照応させることができるかどうかを考えてみるとよいかもしれません。

 

 

 

③必要な「情報」の「所在」を確認する

 

 

「因果関係」という「構造」をとらえることができたら、次に、「資料」から「理由」(因)と「目的」(果)の情報を得られるかどうかを確認します。

 

 

「資料」を用いた記述問題で「因果関係」を説明するときには、以下のうち、どのタイプの問題を解いているのかを判断する必要があります。

 

※「資料」から「因」の情報が読み取れる / 「資料」から「果」の情報も読み取れる

※「資料」から「因」の情報が読み取れる / 「資料」から「果」の情報は読み取れない

※「資料」から「因」の情報が読み取れない / 「資料」から「果」の情報は読み取れる

 

 

この問題の場合、多くの受験生は、ほとんど直感的に「Ⅰ」が「因」の情報を示していることを読み取ることができます。

すなわち、「奨励金」という事業が施行された「理由」は「Ⅰ」を使って記述するということになります。

 

 

原理的に、「Ⅱ」から「果」の情報を読み取るのだと把握できれば、「解答」に大きく近づきます。

しかし、「Ⅱ」には、「果」の情報が「直接」述べられていないので、「奨励金」という事業が施行された「目的」については、言葉を補って記述しなければならないということになります。

 

 

 

④「資料」から、記述に必要な「要素」を抽出し、言語化する

 

 

「Ⅰ」は、「少子高齢化」と「過疎化」が進行していることを示す「資料」であると気づかなければなりません。

 

日本の「人口問題」に関して、受験生のほとんどは、すぐに「少子高齢化」に思い当るでしょう。これが、「解答」を構成する「要素」のうちのひとつになります。

 

同時に、(「過疎」が進行し)「総人口」が減少していることを「要素」として「解答」に組み込まなければなりません。

(そこに、「部分点」である「1点」が設定されています。)

 

 

「人口問題」は常に2つの面から考えなければなりません。

ひとつは、人が「生まれる」「死ぬ」という「生物的要因」です。

もうひとつは、「流入する」「流出する」という「社会的要因」です。

 

過密/過疎、都市化、ドーナツ化現象、ベッドタウン、昼間人口/夜間人口、移民などの問題は、要するに「社会的要因」から人口にまつわる現象をとらえたものです。

つまり、「社会科」という教科においては、地理的な人口の分布や移動の状況を、「人口問題」の対象として意識しておかなければならないのです。

 

 

「総人口の減少」に言及して「部分点」を獲得するのは、上記のような、「社会科」の知識や問題意識などを装備している受験生か、問題の構成を精密に読み取って、「総人口の減少」を必要な「要素」として解答に組み込むことができる「センス」を持った受験生ということになります。

 

(一応、念のために述べておきますが、「センス」とは、「頭のよさ」といったような胡散臭いものを表しているわけではありません。試験時間の、まさにその問題を解いているそのときに、誠実に問いに相対し「考え尽くす」ことで研ぎ澄まされる「得点感覚」のことをいっているのです。それは、「誰」であっても身につけられるものです。)

 

 

都立高校入試の社会の記述問題は、基本的に、表、グラフ、図、年表、文章などの「資料」を活用したものになっていて、直接「知識」を問われることはほとんどありません。しかし、「背景」を知っていることで、設問の「意図」や、答えるべき「内容」に気づける場合があります。

 

何を答えていいのか迷ったときには、落ち着いて、問いの「周辺知識」を洗い出してみると、思いあたることがあるかもしれません。

 

 

次に、「Ⅱ」の内容から、必要な「要素」を拾わなければなりません。

 

○その町に45歳未満の人が住んでいると「お金」がもらえる(「家族」だと多くもらえる)

○町に住んでいる「家族」に「子供」(中学生以下)がいれば、さらに「お金」がもらえる

○高齢者ではない人がずっと定住するつもりであれば、さらに「お金が」もらえる(家を建てたり土地を取得したりする)

 

→若い人がその町に住むと「経済的なメリット」が得られる

(その町に引っ越してくる「動機」を作った)

 

※このような事業を行う「目的」:

 

・町の人口を増やすため

・若い人を増やすため

・定住(ずっと暮らしてくれる)してくれる人を呼び寄せるため

 

 

 

④「部分点」を意識しながら「解答」を「組み上げる」

 

 

 

記述に使う「言葉」は、抽象的な語彙を用いたほうが「きれい」にまとまりますが、そういった語彙が思いつかなければ、「資料」の表現を使ってまとめるとよいでしょう。

 

たとえば:

 

「・・・45歳未満の人や中学生以下の子供を持った世帯の定住を増やすという目的で奨励金を支給している。」

 

というような表現でもぎりぎり許容されると思います。

 

 

正答例:

「総人口の減少と少子高齢化の課題があるため、町外から若年層の定住者を増加させることを目的としている。」

 

 

「Ⅰ」で読み取った「少子高齢化」という「理由」と対応した「目的」を書かなければならないので、「若い」定住者が求められていることを記さなければなりません。

ですから、単に「定住者の増加」と記述した場合には、「部分点」の「2点」を得ることはできないということなのでしょう。

 

 

 

部分点の基準:

 

・理由として,「総人口の減少」について述べられている。(1点)

 

・理由として,「少子高齢化」について述べられている(2点)

※少子化又は高齢化のどちらかのみについて述べられている場合は部分点を与えない。

 

・目的として,「町外から若年層の定住者を増加させること」について述べられている。(2点)

※年齢層(若年層,子育て世代など)又は定住者の増加のどちらかのみについて述べられている場合は部分点を与えない。

 

・誤字・脱字が1か所以上ある。(1点減点)

 

 

 

この問題の正答率は69.3パーセントとなっていますが、5点満点を獲得した受験生はあまり多くないと思います。

(この正答率は「部分点」を得た受験生をカウントしたものです。したがって、「0点」だった受験生が3割以上いたわけです。)

 

 

 

記述問題は、「部分点」を組み合わせて作られています。

逆にいえば、「部分点」に分解できるというわけです。

 

ですから、「部分点」を構成する「要素」を組み上げて「解答」を作る、という意識を持つことが大切です。

そうすることで、「部分点」を確実に確保することができ、かつ、失点を防ぐことができます。

 

 

また、「部分点」を意識することで、解答への筋道をより速く、正確につかめるようになるでしょう。

問いの「構造」を分析的に考えることで、「何」をどう「解答」に組み込めばいいのかが見えてきます。

 

 

 

ここに書いたものは、特定の問いに対するアプローチの一例にすぎませんが、それでも、多くの示唆を含んでいると思います。

 

 

最初は、もっと総合的な攻略法を書くつもりだったのですが、「文字」だとなかなか難しいですね。ちょっと冗長な説明になってしまいました。授業であれば、もう少し簡潔に包括的な説明ができるのですが。

 

 

本当は、今年は、都立高校入試の「支援」を書くつもりはなかったのです。

思い立って勢いで書いてしまいましたが。

そのせいで、文章が散漫になってしまいました。

 

それでも、このブログを覗いた受験生にとって、参考になれば、と思います。

 

 

 

受験生のみなさん、悔いのない受験を。

 

 

 

(ivy 松村)

 

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