平成28年度都立高校入試の社会の問題③

本年度の都立高校入試の社会の、大問5と6の解説をします。

 

○大問5「公民」

 

〔問1〕

 

社会権のうちのひとつである「生存権」について述べられている選択肢を選ぶ問題です。

この問題を落とすことはできなかったはずです。

 

平成26年度の大問5の〔問1〕で、「生存権」を答える問題が出されました。

2年前に出題された内容を確認していない受験生がいたとすれば、それは「致命的」です。

 

また、平成20年の大問5〔問1〕でも、「社会権」を答える問題が出されています。

 

 

2年前の問題の内容が「そのまま」書かれている「ア」が正解になります。

 

「イ」「ウ」の選択肢には「自由」という言葉がみられます。

これらは「自由権」について述べられているということに気づくことができれば、これらの選択肢を消去できます。

また、「エ」は、公務員の地位や参政権(選挙権)について述べられたものです。

 

過去に「基本的人権」について出題された例は、平成23年度の大問5の〔問1〕や、平成22年の大問5の〔問1〕、平成21年の大問5の〔問2〕、平成17年の大問5の〔問4〕などがあります。

これらの問題には、本年度の問題の選択肢「イ」「ウ」「エ」の「内容」が「ほぼそのまま」書かれた選択肢が使われています。

(憲法の条文なので、言い換えられることはないのです。)

 

 

〔問2〕

 

労働基準法について書かれた「ウ」が正解となる選択問題です。

 

このトピックも、過去にあつかわれています。

 

まず、平成20年度の大問5の〔問3〕です。本年度の問題とほぼ同じ内容でした。

「1日8時間、週40時間の労働時間」を定めた法律を選ぶ問題です。

 

また、平成15年度の大問5の〔問2〕でも、「労働基準法」を答える問題が出されました。

 

 

〔問3〕

 

グラフを読み取る問題です。

 

文章で述べられている内容にあてはまらない選択肢を消していけば、正解の「エ」にたどり着くことができます。

 

 

〔問4〕

 

わが国の社会保障の課題について、資料を用いて説明する問題です。

 

この問題は、「因果関係」にあてはめて記述をすることで、解答しやすくなります。

 

「グラフⅠ」をみると、社会保険料による収入と、社会保障給付費は、ともに増加していますが、その「差」が年々大きくなっていることがわかります。

つまり、「収入」と「支出」の差が増大して、「赤字」が拡大しているのです。

 

これが、「結果」です。

 

 

「グラフⅡ」をみると、65歳以上の「高齢者人口」が増加していることを示すグラフであることがわかります。

(同時に15歳以上~64歳の「生産年齢人口」が減少していることもポイントです。)

 

これが「原因」です。

 

 

高齢者人口の割合が増えているため(原因)、社会保障給付費による支出が増えています(結果)。

また、生産年齢人口の割合が減っているため(原因)、社会保険料による収入が増えなくなっています(結果)。

 

 

受験生は、「少子高齢化」によって「社会保障関係費」による支出が増大していることが、わが国の財政上の大きな問題となっていることを知っておく必要があります。

 

この問題は、「財政」、「社会保障」、「人口問題(少子高齢化)」など、複数のトピックに関係しています。

 

 

 

○大問6「融合問題」

 

〔問1〕

 

「Ⅱ」の文章で述べられている国を選ぶ問題です。

 

A=ブラジル

B=カナダ

C=インド

D=フランス

 

 

「ア」は、森林面積がもっとも広く、国土に占める森林面積の割合が大きいことから、ブラジルだとわかります。ブラジルには「アマゾン」と呼ばれる熱帯林が広がっています。

 

「イ」は、森林面積が広いことと、針葉樹の伐採が盛んに行われていることから、カナダであるとわかります。カナダは木材の生産国です。

針葉樹は涼しい気候でも生長するので、「亜寒帯」に広く生い茂る樹種です。これは社会の「基礎的な知識」として知っておかなければなりません。

 

 

「ウ」と「エ」を比較します。

 

国土の広さから考えて、インドの方が、森林面積が広くなるはずであると推測することができます。また、人口の多いインドの方が木材の需要が大きいので、木材伐採高が高くなるはずです。

 

したがって、「ウ」がフランス、「エ」がインドであると特定することができます。

 

 

「Ⅱ」の文章には、「18世紀後半には、市民を中心とした、自由で平等な社会を目指す動きがあった」という記述がみられます。

これは、フランス革命のことを述べているので、正答は「ウ」になります。

 

 

また、「森林面積及び国土面積に占める森林面積の割合は増加している」というヒントによって、「ア」と「イ」の選択肢を消し、さらに、「東部国境から南東部に広がる山地には針葉樹が分布している」(これはピレネー山脈のことです)という記述に着目して、針葉樹伐採高が高い「ウ」を選ぶことで正答にたどり着くこともできます。

 

 

〔問2〕

 

この問題は、ちょっと「やっかいな問題」ですが、「環境庁の設置」が1971年であることを知っていれば、正しい答えを見つけ出すことができます。

 

 

「環境庁の設置」に関しては、平成22年の大問5の〔問3〕、平成15年度の大問6の〔問2〕の年表、平成10年度の大問6の〔問3〕など、度々取り上げられてきました。

 

また、平成26年度の大問6の〔問2〕でも「環境関連」の問題が出されています。

 

67年 公害対策基本法

71年 環境庁の設置

72年 国連人間環境会議

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といった「出来事」は、おさえておく必要があります。

 

「公害問題」と「高度経済成長」は、現代日本史の「陰と陽」をなすトピックです。「高度経済成長」と同じ時期に「公害問題」が大きくなり、法整備や政府機関の設置が求められたのです。

 

 

〔問3〕

 

この問題は、「記述問題」と「記号問題」の2つのパターンが用意されていたことがわかっています。

 

東京都教育委員会がホームページで発表している本年度の「入試問題」の大問6の〔問3〕は、「記述問題」となっています。

 

しかし、東京都教育委員会が2月26日にホームページで公表した入試日に起こった「不備」の内容を読んでみると、本年度の受験生に配られた入試問題の大問6の〔問3〕は、「記号問題」だったことになっています。

 

「記号問題」を配布しなければならないのに、誤って2名の受験生に「記述問題」を配ってしまったと記載されています。

 

ちょっとよくわかりませんね。

 

 

また、理科の入試問題でも、大問6の〔問3〕などの「記述問題」が、「記号問題」として作られている「別バージョン」のものが存在することがわかっています。複数の入試問題の「候補」が作られ、最終的に、大問6の〔問3〕が「記述問題」となっているものが入試問題として「採用」されたのだということになります。

さらに、公表された内容を読み解くと、理科の「別バージョン」は、「全て記号で答える」入試問題であったということがわかります。

 

 

なんだか、いろいろ考えさせられますね。

 

 

さて、大問6の〔問3〕ですが、「記述問題」としては、やはり、「因果関係」の構造を使って解答することができる問題です。

 

 

「変化の様子」と「その理由」を答える問題です。

 

ですから:

 

①森林面積がどうなった(増えたか減ったか)「変化の様子①」(結果)

②農地面積がどうなった(増えたか減ったか)「変化の様子②」(結果)

③それはなぜなのか「その理由」(原因)

 

という3つの「要素」を記述する必要があります。

 

 

「Ⅲ」から、記述の対象がアフリカ州であることが読み取れます。特に、「ナイル川」のヒントは見落とせません。

 

「Ⅱ」から、アフリカ州の人口増加率が27.7パーセントと他の地域よりも高いことがわかります。これが「その理由」(原因)の「要素」になります。

 

「Ⅰ」から、アフリカ州の森林面積が大きく減少し、農地面積が拡大していることがわかります。これが「変化の様子」(結果)です。

 

 

よって、記述する内容は、

 

①農地が拡大している

②森林が減少している

③なぜなら、人口が急増しているためである

 

というものになります。

 

 

ただし、「上位校」の場合には、この記述では不十分です。

(「本年度から」学校ごとの基準で「部分点」を採点するのだそうです。)

 

・人口増加→「より多くの食料が必要」

・農地の拡大→「農地を広げるために森林が減少している」

 

上記のような「補足」をしなければ整った解答にならないので、「部分点」を引かれてしまうかもしれません。

 

 

「解説」は以上です。

 

私が、授業で平成28年度の入試問題を解説するとしたら、ここまで書いてきた内容の、さらに倍くらいの情報を「肉付け」して生徒に伝えると思います。

 

「入試の日」まで、どういった「受験勉強」をしていくのか、考えることはたくさんありそうですね。

 

 

 (ivy 松村)

 

 

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