都立高校入試の理科の「出題ミス」について

本年度の都立高校入試の理科の問題に「出題ミス」があったのではないか、と話題になっているようです。

 

大問3の〔問1〕の「金星の位置」を答える問題です。

 

 

個人的な「意見」を述べるならば、私は、中学生が解く理科の問題として「成立している」と考えます。

 

 

 

この件は、塾の先生方の間でも、かなり話題になっているようです。

福岡や大阪の塾の先生もコメントをされていました。

やはり、東京の塾の先生方にとっては重大な関心事ですので、大きく取り上げる方も多かったようです。

 

 

ところで、本題とは関係ない話ですが、塾の先生で、「読める文章」を書ける人は「理系」の人が多い気がします。というよりも、ほとんど「そう」です。

 

「理系」の方か、「理系」の背景をもった「オールラウンダー」タイプの方か、「文系」の出身で「理系」を教えている方ばかりです。

 

文章を書くという行為には、「論理的な資質」が必要なのかもしれません。

 

同時に、あらためて思うのは、ほとんどの「文系」の「先生」は、「書くこと」を苦手としているということです。「文章を書けない人間」が「作文」や「小論文」を教えていたりすることも、往々にしてありそうです。

 

 

 

塾の先生方の意見を拝読すると、当該の理科の問題は「おかしい」という見解が多数を占めています。

 

(大手塾の先生は意見を書きづらいと思いますが、その中で、「ポイント」の概説にとどめた記事は印象に残りました。)

 

私が知る限り、「問題ない」という意見をおっしゃっていたのは1人だけでした。

 

 

 

「理系」を「専門」とする先生方が口をそろえて「おかしい」といっているのに、「理系」を「専門」としない私は、身が縮む思いで、その「逆」の意見を述べようとしています。

 

 

それは、もしかすると、私が「専門外」の人間であるからこそ、持ち得る判断なのかもしれません。

 

さらにいえば、私が「この問題」を「学者」の目線でみておらず、ある意味で、「政治的」な立場でとらえていることも理由のひとつであるといえます。

 

ここでいう「政治的」という言葉のニュアンスを正確に伝えるのは難しいのですが、あえて換言するならば、「理性的」に「この問題」をみようとしているつもりです。

 

 

 

当該の設問は、「図1」と「図2」のヒントから、「図3」における金星の位置を4つの選択肢から選ぶものでした。

 

 

「図1」には「西の空」から見える「金星の位置」が示されています。

「図2」には観察した「金星の形」が描かれています。

 

このうち「ミス」として指摘されたのは、「図1」に示された「西の空」に描かれている金星の位置が「正しくない」という点でした。

 

それはもちろん「正しくない」わけですが、この設問の「テーマ」から考えれば、それは「主眼」ではないわけです。

 

 

この設問の「重心」は、「図2」の「金星の形」にあります。

 

「金星の見え方」と「金星と地球の位置関係」に関する知識こそが、「中学生の理科」の主要な学習内容であり、それを確認することがこの設問の「テーマ」なのです。

 

 

 

日野市や八王子市の公立中学校では、理科の教科書は啓林館のものが使われています。

 

啓林館の理科の3年生の教科書の54ページおよび55ページで、この地域の中学生は「地球から見た金星の位置と見え方」を学習します。

 

 

つまり、公立中学で理科を学んだ中学生が、その知識をもとに本問を解こうとするときには、「図2」の情報をもとに答えを導くわけです。

 

教科書を一瞥しただけで明らかになることですが、金星の見え方が「図2」のようになるのは選択肢の「イ」以外にはあり得ません。

 

 

 

一方、「おかしい」と指摘されている「図1」ですが、これが「正確ではない」ということは間違いありません。

しかし、見過ごすべきでないのは、知っておくべき知識を装備していなかった受験生は、「図2」から正答に直結する情報を読み取れなかったために、しかたなく「図1」のみに頼って答えを得ようとしていたのだということだと思います。

 

都立高校の入試問題は、社会もそうですが、なるべく複合的な「ヒント」を組み合わせた問題を作ります。

複数の「脈絡」から正答に迫ることができるような作りになっているのです。

 

都立の入試に精通している教育関係者、あるいは受験に携わる人間であれば容易に思いあたると思いますが、そのような作問が行われているのは、いってみれば「救済措置」であるわけです。語弊を恐れずにいえば、学力が乏しい生徒であっても、必死でがんばれば解答できるような設問を忍ばせているわけです。

 

どちらかといえば、「図1」の情報は、平面的な情報を、空間的、立体的に再構成してとらえられるかどうかをみようとするものであって、理科の知識からややかけ離れたものです。そして、これは結局「主観的」な「感覚」にすぎないことではありますが、やはり、一般的には、「イ」の位置に金星がありそうだというとらえ方のほうが有力になると思います。

 

このようないいかたが正しいのかどうかはわかりませんが、「図1」のような「ヒント」は、理科を苦手とする生徒に対する「思いやり」として、付け加えられたものです。

 

 

要するに、「図2」を考慮せずに、「図1」だけの情報をもとに「ウ」を解答してしまった生徒は、根本的に、正当な、正答への筋道を見失っていたわけです。

 

 

 

理科の入試問題で、「科学」をないがしろにしてしまったのは、確かに良くないことでした。

 

しかし、なぜ「不正確な図」が出来上がってしまったのかは、少しわかる気がします。

 

今回の場合は、難度を下げようという「配慮」が「裏目」に出てしまったということなのだと思います。

 

 

 

端的にいって、「ウ」を選んでしまった受験生は、必要とされるべき理科の知識を欠いています。

 

この設問の解答を求めるのに、「図1」の情報のみに依存してしまった受験生が「ウ」を選んでしまったとしたら、それは、どちらかといえば「あてずっぽう」に近い行動だといえるでしょう。

 

また、高度な理科の知識を持った生徒であるほど間違える可能性があるという見方もあるかもしれませんが、その考えには違和感を覚えます。

概して、思考力の優れた、言い換えるならば、取るべくして点を取るような受験生であるならば、設問の「意図」というものを考えるはずだからです。理科の学力が高い受験生であるほど「イ」という解答に行き着くでしょう。

 

 

中学で学ぶべき理科の知識をしっかりと学び、吸収してきた受験生ほど正答率が高くなるように作られているわけですから、この設問は、入試問題として「成立している」と判断せざるを得ません。

 

 

あえて指摘するならば、この件について、入試直後に速やかに「おかしい」と言う声が上がらなかったのは、「そのまちがい」が本質的なものではないからです。

 

 

 

「この問題」が「炎上」してしまったのは、東京都教育委員会がホームページでおこなった「釈明」が「おそまつ」だと思われたからなのだと思います。

 

「専門家」の目から見れば、あきれるくらいに「おかしい」のだと思います。

しかし、「補助線」がどうのこうの、という話は、もはや「入試問題」という焦点からはかけ離れすぎていると感じます。

 

 

東京都教育委員会に対して、「物申し」をしたくなる気持ちはよく理解できます。

 

しかし、ちょっと冷静に「大局的」に考えることも必要だと思います。

 

塾の人間は、小学生や中学生に勉強を教える仕事をしているわけですが、萎縮してしまった生徒ほど「ミス」をおかすということをよくご存じなのではないかと思います。

 

もちろん、「大人」を子供のように扱えというのでは、アホっぽい話にはちがいありませんが、それでも、人間や人間の集まりである組織は、そもそもそういうものなのでしょう。

 

事態が悪くなるのは、「本人の資質」が問題なのではない、と思うことは多々あるわけです。

 

 

別に、大目に見ろ、といいたいわけではありません。

 

今回の件に関しては、ちょっと「ずれている」と思います。

 

指摘されている「ポイント」は、入試選抜の機能を損なっていません。

 

 

(私が、自分はずいぶん「政治的」な人間だな、と感じるのはこういう思考をするからなのかもしれませんが。)

 

 

(ivy 松村)

 

 

(注:後日、この記事の間違いの訂正や補足の記事を書きました。こちらもあわせてお読みください。)

 

 

8 thoughts on “都立高校入試の理科の「出題ミス」について

  1. 金星の満ち欠けの様子から正解を判断するべきだという意見ですが、
    金星の満ち欠けの様子を判断するときには補助線を使って考えるのではないでしょうか?

    • 「補助線」が焦点になっているのは、「図3」の太陽、地球、金星、月の配置を検討するために用いられたからです。
      「図1」と「図3」における「イ」の金星の位置が正確に対応しているかどうかを示すために、ミスを指摘している人や都教委が、自分たちで「補助線」を引いて説明しているわけです。

      しかし、「補助線」を引いて「金星の配置」を読み取るような行為は、一般的な公立中学の学習内容にはありません。

      あくまで「図2」の「金星の形」がポイントです。
      「補助線」を考慮する必要はありません。「図2」から「ウ」は不正解であると確定できます。

      中学の理科の「金星」の単元に、「補助線」は一切関係ありません。

  2. ご回答ありがとうございました。

    たしかにここまで高度な問題は中学校では教えないことの方が多いですよね。
    ただ、実はH28年、神奈川県入試では同様の問題が出題されております。
    仮にこの問題を解いた受験生であれば、「高度」の問題と考えるはずです。
    (S○P○X中学部さんの見解でも「高度」の問題と指摘しています。)

    個人的には金星の図2の様子は非常にあいまいであり、「イ」とも「ウ」とも
    言えると思います。少なくとも補助線をひかなければ金星の満ち欠けの授業はできません。
    (90°だと半分になるから覚えなさい!という指導はしませんよね。)

    図2の曖昧さから図1を判断すると。中心から引くのか接線をひくのかでかなり違ってきます。
    ちなみに補助線の引き方ですがH23年入試では「地球の中心」から補助線がひかれるような
    模式図になります。

    東京都さんの意見でも正解だと思いますが、
    「ウ」が勉強不足というのは勘違いがはなはだしい。あなたが勉強不足です。

    • なぜ「ウ」が不正解になるのか、3月21日付の「平成28年度都立高校入試の理科の大問3〔問1〕の説明」という記事に書きました。
      やはり、「図2」によって「ウ」は消去されます。お読みになっていただきたいと思います。

      「図1」は、選択肢「ア」を排除するためのヒントです。「補助線」は中心から引くべきだと思いますが、「図1」を検討するときには、もはや「ウ」は正答の候補から外れています。

      (同じ文面の投稿を他にもされていたので、それは表示しませんがよろしいでしょうか。)

  3. 数年前の文章にコメントするのもどうかと思いますが、見つけてしまったので書かせていただきます。
    読める文章を書けるのが理系が多いだとか、文系の先生は書くことが苦手としているとか、まあ大層なことをおっしゃってますが、あなたの文章もたいがい読みづらいですよ。
    「」が多すぎです。強調したくて「」を付けているのでしょうが、そこまで多くの語句を強調しては、真に強調して読むべき語句が何なのか不明になります。
    やたらめったら「」を使うべきではないですよ。

    • いったい、どのような「動機」で、そのような空虚なコメントを書き込もうと思ったのでしょうか。

      「そう」いわれた私は、どのように「反応」するべきなのか、ちょっと思いつきません。

      「以後、気をつけます」とでも?

      「文脈」を考慮したり「事情」を汲み取ったりする努力をすることなく、即射的に「主観的な非難」を書き送ってしまうような短絡的で浅薄な人間にとって読みやすい文章を書くことが、私の義務ですか?

        • あなたは「修辞」というものを理解していません。
          私は、「質問」をしたわけではなく、「反語」を用いたのです。

          ですから、あなたの再度にわたる速射的な「返し」は、まったく「的外れ」です。

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