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昨年度の中1の国語のテキストに「敬語」にについて書かれた印象深い文章が掲載されていました。

それは金田一秀穂氏の文章で、「コンビニ敬語」について述べられたものでした。

 

 

例:

「千円からお預かりします。」

「こちらが牛丼弁当になります。」

「お箸のほうはお付けしますか。」

 

 

本来の敬語:

(千円、お預かりします。) ※「千円、頂戴します。」

(こちらが牛丼弁当です。) ※「こちらが牛丼弁当でございます。」

(お箸をお付けしますか。) ※「お箸をお付けいたしましょうか。」

 

 

上のような例が挙げられ、なぜそういった「奇妙な」敬語が広まっていったのかを分析した文章でした。

 

ちなみに、生徒たちは、どこがまちがっているのかわからない様子でした。

これから身につけていきましょう。

 

 

金田一氏は、以下のような理由を挙げていました。

 

・少ない会話のなかに、できるだけ丁寧な要素を盛り込もうとするため

・「接客敬語」は、普通敬語とは異なったものであるから

・「仰々しい敬語」よりも、「自分に見合った敬語」を使いたいという意識がはたらくから

 

 

「できるだけ丁寧な要素を盛り込もうとする」という説明は、私にも身に覚えのあることなので、なるほど、と感じました。

 

余計な助詞や接頭語、形式名詞、補助語などを、つい付け足してしまうことがあるのですね。

 

 

 

そのうちのひとつ、「~(さ)せていただく」が口癖になってしまっている人も多いのではないかと思います。

私も、つい、過剰に使ってしまうことがあります。

 

 

 

「~(さ)せていただく」というのは、本来、相手に対して「自分の意志を実行する」ときに使われる表現です。

 

「(さ)せる」には「使役」の意味があります。

「相手によって自分の行動が規制されている」という構図を(無理にでも)形作ることで、自分が行いたいことを相手に了承させようとしているわけです。

 

たとえば、「私から説明させていただきます。」というような使いかたをするときですね。

 

 

この用法は、相手の立場や事情に関係なく、自分の意志を押し通す、というニュアンスを帯びるため、ちょっと注意して使わなければならないものです。

 

たとえば、人が集まっている中で自分だけが帰ろうとする際、「そろそろ私は・・・」とか、「この後用事が・・・」という表現を使うのではなく、「帰らせていただきます。」と言った場合には、「あなたがなんと言おうと私は帰るつもりだ」という「意志」を表すことになるわけです。

 

場合によっては、「自分は非常に不快な思いをしたので、この場を立ち去るのだ」という心情を込めて使われることさえあります。

 

 

 

一方で、別の用法もあります。

「使役」を敷衍すれば「相手が自分の行動を認める」という意味内容が生じます。

そこで、「~(さ)せていただく」という表現を「誰かの厚意や許しを得て、希望がかなう」という状況を言い表すために使うことができるわけです。

 

たとえば、「ご一緒させていただくことになった。」というような使い方をするときですね。

 

しかし、この場合も、文脈によっては「自分がそうしたかったので」「迷惑だったかもしれないが」というような微妙なニュアンスを発生させます。

それは、「~(さ)せていただく」という表現が、本来「自分の意志を実行する」という意図で使われるものだからです。

 

 

一方、この用法は、自分の意志や能力でものごとを決定する立場にある人が「あえて」使うのであれば「謙遜さ」や「つつましさ」を演出することができます。

 

圧倒的な強さでオリンピックの選考会を勝ち抜いたスポーツ選手が、「オリンピックに出場させていただくことになりました。」と言えば、なんて謙虚な人なんだろう、と思われるわけです。「周りの人々に支えてもらったおかげで」という「暗示」になるからです。

 

また、文章家などに対して「最新作を読ませていただきました。」と伝えるようなコミュニケーションもみられるようになりました。これは、「あなたが書いてくれたおかげで、読むことができました」というような意を含むと解釈されるので、立派に(?)謙譲語として機能するからです。

 

 

 

「~(さ)せていただく」という言い方は、テレビに出演する「芸能人」の言葉づかいが広まっていったのだろうと思っています。

 

テレビの中では、「出演させていただいた」「歌わせていただいた」というような表現が多く使われます。

 

この表現は、「芸能人」にとって非常に「効果」のある表現なのだろうと思います。

 

まず、何といっても、「へりくだっている印象」が醸し出されるので、視聴者の「好感度」が上がります。あの人は「芸能人」という「特別な存在」であるにもかかわらず、低姿勢で遠慮深い態度を示している(感心!)というわけです。

 

 

しかし、一部の視聴者は気づいていることですが、彼らは、実は、視聴者にへりくだっているのではなく、プロデューサーなどの「制作者」に対してへりくだっているのです。

「ありがたいことに、番組に出演させていただけることになりました。」というような「不思議な言葉づかいのメッセージ」は、番組をチェックしている、企画やキャスティングの権限を持っている人たちに向けて発せられたものなのです。

 

 

 

世間に広く浸透してしまった「~(さ)せていただく」という言葉づかい。

使い勝手がいいので、つい使いたくなって困ります。

 

なるべく丁寧さを詰め込もうとして、付け足してしまうわけです。

 

 

たとえば、「お得なキャンペーンをお知らせしたくて、お電話させていただきました。」というような使い方です。

 

「電話しました」だと、自分が素っ気ない態度を取っているような気がして、不安になってくるわけです。

 

 

その「敬意」が伝わるのならまだいいのですが、言われたほうが、その言い方になんとなく違和感を覚えてしまうことがあります。あまりいい気分にならないこともあります。

 

それは「~(さ)せていただく」という言葉から、「自分の意志」を押し通そうとするニュアンスが染み出てきてしまうからです。

 

相手を持ち上げようと、過剰に言葉を盛り込んだ結果、相手をぞんざいに扱うような言葉づかいになってしまっているのです。

 

 

注意しながら使わせていただかなければなりませんね

注意しながら、使わなければなりませんね。

 

 

 

ちなみに、受験業界にも、「お受験」とか「合格をいただく」とか「ご縁をいただく」などの「過剰な敬語」があふれています。

 

こうした表現は、今では一般化しつつありますね。

 

(ivy 松村)

 

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