「日比谷つぶし」と都立高校入試④

平成26年1月23日に「東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書」が公表されました。

 

この中で、都立高校を「凋落」させるための具体的な施策がはじめて公開されました。

 

 

①内申点は、実技4教科を2倍に換算して算出する

②入試得点と内申点の比重をすべて「7:3」とする

③「特別選考」を廃止する

 

 

①と②の「内申点」にまつわる2つの変更は、ある意味で、「布石」であるといえます。

 

「本丸」は、③の「特別選考」の廃止です。

 

 

「東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書」には、審議に参加した中学と高校の教員の「意見」が載せられています。

 

 

「特別選考」に関する「中学」と「高校」の意見をみてみましょう。

 

 

※「特別選考の1割部分において、学力検査の得点のみを選考資料として合格者を決定する学校にいたが、特別選考により順位の変動はあまりみられず、合格者はそれほど変わらないという結果であった。」(p32「高校」の意見)

 

 

まず、「特別選考」を実施してもしなくても、合否結果はほとんど変わらないという「意見」が出されます。「特別選考」を廃止しても、影響はないという空気を作りたいわけです。

 

できればデータを出して欲しいところですが、なんとも、幼稚な「意見」です。

 

「特別選考」の眼目は、「低い内申点の受験生から合格者を出すこと」ではないのです。

「特別選考」という制度が重要なのは、この制度がある種の「保険」として機能している点です。つまり、「ひどい中学校」に属している受験生でも、これを頼って「上位校」を目指すことができるという「残されたルート」だったのです。

「特別選考」は、「劣悪な環境」であっても、努力によって夢を実現できるという切実な「希望」だったのです。

 

 

 

さらに、報告書の中で、入試制度をわかりやすくするために、「わかりにくい制度」である「特別選考」を廃止するべきであるという「意見」が強く主張されています。

 

 

※「今回の入学者選抜の改善の目的は、分かりやすくすることであることから、現行の入学者選抜制度を分かりにくくしている特別選考については、廃止するということでよい。」(p32「中学校」の意見)

 

 

驚くべきことに、この教員は、公平な選抜よりも入試制度の「わかりやすさ」のほうが重要だと述べているのです。

 

「報告書」の31ページからはじまる「特別選考報について」という箇所を読んでみると、ダラダラと「特別選考の歴史」を書き連ねて、面接や調査書を用いたごく少数の稀な「特別選考」を紹介し、情報を錯綜させたうえで「わかりにくい」といっています。

 

多くの都立上位進学校が、1割の合格者を入試得点のみで選抜する「特別選考」を行っています。これはよく知られた内容だと思いますが、そうでなくても、この程度の内容を「わかりにくい」というような「理解力」の生徒に合わせて、有意義な制度を失くす必要があるのだろうか、と疑問に思います。

 

 

 

そして、やはり、中学校の成績が重要なので、これを考慮しなければならないという「意見」も述べられています。

 

 

※「特別選考で、選考資料として学力検査の得点のみで行っている学校があるが、学力検査の得点のみではなく、中学校で付けられた評価・評定についてもきちんとみるべきである。」(p32「高校」の意見)

 

 

日比谷高校をはじめとする都立難関校の受験は「激戦」になります。まさしく、1、2点が合否を分ける戦いとなります。

それなのに、受験生に恣意的に与えられる「内申点」には、痛ましすぎるほどの「差」があります。

 

受験生の側から見れば、「内申点」というのは信頼できる指標ではありません。

多くの中学生・保護者は、中学の教員によって評価の基準が違い過ぎることを不公平であると感じています。それでも、あきらめることなく挑戦することができたのは、「特別選考」があったからです。

 

「特別選考」こそが、「活路」となるのです。

 

ですから、「日比谷つぶし」を仕掛ける不実な人間は、「内申点」という「しばり」を強くしたいわけです。

逆にいえば、「内申点」に左右されない入試選抜は、彼らにとって「都合が悪い」ものになります。

 

 

入試得点と内申点の比重を「7:3」に「固定する」という取り決め(②)は、地味ながら本質をついています。見方を変えていうならば、「内申点」の比重を軽くすることを禁じているわけです。

 

本旨は、「10:0」の受験を消滅させることです。すなわち、「特別選考」を廃することなのです。

 

「報告書」の中で、再三、すべての高校が「7:3」に統一されると念入りに強調しています。これが「原則」であり「既定」であるとして、「配分」に手を加えることを「タブー化」しようという目論見が垣間見えます。

 

 

実際、こうした「工作」は、非常に滑らかに「原則」の堅持を訴える「意見」と結びついて、「特別選考」廃止の「圧力」を作り出すことに成功しています。

 

 

※「 学力検査の得点のみで選抜する特別選考を残すとした場合、中学校で評価をした調査書と学力検査の得点の両方を用いて選抜を行うという、学力検査に基づく選抜の基本的な考え方と矛盾する。」(p32「高校」の意見)

 

 

上の「意見」内に示された「基本的な考え方」というのは「内申点」を合算して合否判定を行うというものです。

その考え方に則って、「内申点」を合算しない「特別選考」を行うべきではない、と言っているわけです。

これは一種の「トートロジー」(同義反復)です。つまり、「同じ内容」を繰り返して述べているにすぎません。正確には、「裏返し」の内容を並べて「矛盾だ」と言っているわけですが。

 

あるタイプの人は、中身のない「言葉の羅列」を押しつけようとします。

都合の悪いものを「否定すること」が重要なのであって、「論理」などどうでもいいと思っているからです。

 

 

 

「報告書」には、「特別選考」について以下のような「まとめ」が添えられています。

 

 

※「選抜資料を学力検査の得点や調査書点のみとしたり、学力検査の得点と調査書点の比率を各学校が決定したりするなど選抜尺度を変えることができる特別選考は、中学校で身に付けるべき力を、学力検査を実施する教科を原則5教科、学力検査の得点と調査書点の比率を7:3としてみることとする今回の学力検査に基づく選抜の改善の趣旨とは異なるため、廃止することが望ましい。」(「東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書」p32)

 

 

 

ちなみに、この箇所は、1月23日に発表された当初のものです。

 

現在、東京都教育委員会のホームページで閲覧できる「報告書」は、2月28日に差換えられています。

 

太字が差し替えられた箇所です。

 

 

※「選抜資料を学力検査の得点や調査書点のみとしたり、学力検査の得点と調査書点の比率を各学校が決定したりするなど選抜尺度を変えることができる特別選考は、中学校で身に付けるべき力を、学力検査の得点と調査書点によりみることとする今回の学力検査に基づく選抜の改善の趣旨とは異なるため、廃止することが望ましい。」(「東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書〔2月28日差換〕」p32)

 

 

 

やはり、注意深く、過敏になっているのでしょうね。言葉に対して「神経質」になっています。

 

 

 

(ivy 松村)

 

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