都立高校入試の「採点の誤り」への対応について

今年の都立高校の入試問題では、出題形式や構成が大きく変更されました。

 

平成26年度の都立高校入試において「採点の誤り」が発覚しました。

その「対策」として、記述問題を、激減させたということなのでしょう。

 

結論として、入試問題の「質」が劣化し、それが「入試選抜」に影響を与えたわけです。

 

 

一連の「採点の誤り問題」の「経緯」を確認してみましょう。

 

 

・平成26年

 

4月10日、荻窪高校で「採点の誤り」が発覚。

(4月11日~15日、「緊急点検」を実施)

4月15日、すべての都立高校で「採点の誤り」を集計。

(4月15~5月9日、「学校再点検」を実施)

4月18日、「採点の誤り」をホームページで公表。

4月24日、「採点の誤り」があった高校名を公表。

(4月30日~5月31日、「都教委点検」を実施)

5月14日、 第一回「都立高校入試 調査・改善委員会」(非公開)

6月3日、点検結果(第一次調査)と今後の方針を発表。

同日   「都立高校入試調査・改善委員会」の設置を公表。

6月4日、「臨時校長連絡会」の開催。

6月9日、 第二回「都立高校入試 調査・改善委員会」(非公開)

(6月10日~8月8日、「第二次調査」)

7月2日、第三回「都立高校入試 調査・改善委員会」

7月14日、第四回「都立高校入試 調査・改善委員会」

7月22日、第五回「都立高校入試 調査・改善委員会」

7月30日、第六回「都立高校入試 調査・改善委員会」

(8月7日~8月14日、「第三次調査」)

8月8日、第七回「都立高校入試 調査・改善委員会」

8月22日、第八回「都立高校入試 調査・改善委員会」

8月28日、「都立高校入試 調査・改善委員会 報告書」を発表。

9月11日、学校職員及び事務局職員の処分を発表。

同日   「都立高校入試の採点誤りに関する再発防止・改善策」の発表。

10月3日、平成27年度入試における「マークシート実施校」発表。

 

 

 

非常に迅速な対応がなされています。「性急」といってもよいほどです。

 

 

平成26年4月10日に、荻窪高校で、新入生の学力を把握するために、平成26年度の入学試験の答案を確認したところ、「採点の誤り」が見つかったのが「発端」であるとされています。

 

荻窪高校は、「昼夜間定時制・普通科」の「単位制」の都立高校です。

 

 

荻窪高校は平成25年度入試でも9件の「採点の誤り」が見つかっています。

平成26年になってに初めて「採点の誤り」が見つかったのですから、「確認」をしたのはこの年が初めてだったのでしょう。赴任したばかりの教員だったのかもしれません。

 

注目されるのは、翌日からすぐに全ての都立高校を対象に「緊急点検」がはじまっていることです。

 

この「流れ」は計画的な「におい」がします。

むしろ、「点検」を行うために「トリガー」が用意されたのだろうと邪推してもよいくらいです。

 

 

最初の「緊急点検」によって4月15日までに、50校(実数は48校)で139 件の「採点の誤り」が見つかりました。

その後、調査を重ねるごとに「採点の誤り」は増加し、6月3日までに1,139件、最終的には1,418件に膨れ上がりました。

 

 

4月の「緊急点検」の段階で「採点の誤り」が判明した高校には、「偏り」が見られました。

調べたところ、当初「採点の誤り」があったとされる50校のうちの6割の高校が「偏差値50以下」の高校でした。そのうち6校が、偏差値が算出されない定時制や通信制の高校です。

 

4月の段階では、「採点の誤り」が生じているのは「学力ランク」の低い高校であり、「採点の誤り」は、教員の、ある種のサボタージュや怠慢などが原因であると考えられていたのかもしれません。もしかすると、当初の「狙い」はそうした不真面目な勤務実態の「あぶり出し」だったという可能性もあります。

 

「採点の誤りの件数」のデータを確認してみると、実際にその疑いがあるケースが散見されます。

 

 

しかし、「点検」が進められるにつれて、「採点の誤り」が高校の「学力ランク」によって偏在するわけではないことが明らかになります。

 

東京都教育委員会は、あまりの「事実」に驚愕し、焦ったのかもしれませんね。

その後の「反応」は過敏を通り越して「過剰」といってもよいほどです。

 

 

前年の平成25年度入試の「採点」の「点検」も行われました。

平成25年度では、117校で1,289件の「採点の誤り」がみつかりました。ちなみに、平成25年度分は、答案を廃棄していた高校もあったため、全ての答案を対象に点検を行っていません。

 

 

 

「採点の誤り」の「内訳」を見てみましょう。

 

 

・平成26年度入試の「採点の誤り」(点検対象:175校 約220,000枚)

 

誤りの内容 国語 数学 英語 社会 理科 総計
誤答を正答として採点した。 114 74 86 150 42 466
正答を誤答として採点した。 63 53 94 50 62 322
部分点を与えていなかった。 10 4 12 7 3 36
誤って部分点を与えた。 26 20 53 0 3 102
部分点の基準等が不統一であった。 16 14 39 32 1 102
合計点の算出に誤りがあった。 95 11 68 185 31 390
総計 324 176 352 424 142 1,418

 

 

・平成25年度入試の「採点の誤り」(点検対象:127校 139,000枚)

 

誤りの内容 国語 数学 英語 社会 理科 総計
誤答を正答として採点した。 134 73 55 34 43 339
正答を誤答として採点した。 65 68 60 25 41 259
部分点を与えていなかった。 3 13 10 0 2 28
誤って部分点を与えた。 48 21 26 1 1 97
部分点の基準等が不統一であった。 82 10 35 1 123 251
合計点の算出に誤りがあった。 51 17 77 153 17 315
総計 383 202 263 214 227 1,289

 

 

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2014/pr140828b.html

(「平成25年度実施分」というのが「平成26年度入試」に当たります。「平成24年度実施分」というのが「平成25年度入試」に当たります。)

 

 

この中で、「部分点」に関する「採点の誤り」は、平成26年度で29.2パーセント、平成25年度で16.9パーセントです。

 

「都立高校入試 調査・改善委員会 報告書」によれば、「採点の誤り」の約7割が「単純ミス」だったということになっています。

そして、残りの3割が「部分点に関する誤り」であるということになっています。

 

実際には、「部分点に関する誤り」は両年度では22.8パーセントの割合でしかありません。

 

つまり「採点の誤り」の約8割が「正答/誤答」の確認、判断ミスや、合計点を算出する際の「計算ミス」だったということになります。

 

こうした「単純ミス」を失くすための取り組みが始まるわけです。

 

 

 

東京都教育委員会は、入試の「改善」に乗り出します。

 

 

「都立高校入試 調査・改善委員会」が招集され、5月14日第一回の会合の後、その存在が公表されます。

「都立高校入試 調査・改善委員会」には「学校代表専門委員」として、以下の高校の校長先生が呼ばれています。

 

・戸山高校

・西高校

・武蔵高校

 

 

興味深いですね。

 

 

「特別選考」を廃止に追いやった「都立高校入学者選抜検討委員会」では、以下の高校の校長先生が呼ばれていましたね。

 

・工芸高校

・墨田川高校

・本所高校

・砂川高校

・第四商業高校

 

 

私は、社会の授業で、欧米列強の植民地支配について講義することがありますが、ふと、そのことを思い出しました。

 

 

ちなみに、戸山高校は26年度、25年度合わせて10件の「採点の誤り」がありました。西高校は6件、武蔵高校は3件でした。

 

 

 

「都立高校入試 調査・改善委員会」での審議の結果、さまざまな「採点の誤り」をなくすための対策が講じられることになりました。

 

 

さて、平成27年度の「採点誤り」の件数はどうなったのでしょう。

 

結論から述べると、「採点の誤り」の件数はほとんど減少していません。

 

平成25年度 1,289件 → 平成26年度 1,418件 → 平成27年度 1,064

 

特筆すべきことに「部分点に関する誤り」が「異常なまでに」増加しました。

 

なんと、1,004です。

 

「部分点に関する誤り」は「採点の誤り」の総計の99.4パーセントに達しています。

 

 

 

・平成27年度入試の「採点の誤り」

 

誤りの内容 国語 数学 英語 社会 理科 総計
誤答を正答として採点した。 3 15 0 2 0 20
正答を誤答として採点した。 11 8 7 4 0 30
部分点を与えていなかった。 11 2 3 12 37 65
誤って部分点を与えた。 194 81 130 420 83 908
部分点の基準等が不統一であった。 1 2 11 8 9 31
合計点の算出に誤りがあった。 7 0 0 2 1 10
総計 227 108 151 448 130 1,064

 

 

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/2015/pr150611f/shiryou3.pdf

(「平成26年度に実施した選抜」というのが「平成27年度入試」に当たります。)

 

 

あれだけ入念に対策を講じて、再度1,000件を超える「採点の誤り」が 発生したわけです。しかも、過去2年の間それほど多く発生していたわけではなかった「部分点に関する誤り」が激増しているわけです。

意図的に「採点の誤り」を加増しているのではないかと思えてきます。

 

 

 

こうなってくると、もう、何が何だかわかりませんね。

 

 

・・・。いえ、明白なことがひとつあります。

 

それは、今度は「部分点に関する誤り」を撲滅しなければならない、という「声」が叫ばれるということです。

 

 

かくして今年、記述問題が放棄され、都立高校入試が「骨抜き」にされたわけですが、それは「成り行き」だったのか、それとも「計画」だったのか。

 

 

 

「政治的な文脈」を読み取る「リテラシー」に長けた人間であれば、一連の「プロセス」は、「目的」達成に向けた「工作」であるという疑いを持つにちがいありません。

 

 

 

(どうしても、社会制度やシステムの設計、管理を担っている組織や機関は知的な計略にもとづいて行動するものであるという前提で考察するのですが、どうも「教育」関係の組織や機関に限っては「マジである」という可能性が捨てきれないので、ちょっと「怖い部分」もあります。)

 

 

 (ivy 松村)

 

 

One thought on “都立高校入試の「採点の誤り」への対応について

  1. そういえば、この年は「部分点の基準」が示された年でしたね。「採点の誤り」を失くしたいから、「採点基準」を厳格にしたということなのでしょうか・・・だとしたらアホですね。
    それで、今度は「部分点」そのものを失くそう!という発想に行き着いたということなのでしょうか・・・真性のアホですか。「採点の誤り」を失くしたいなら、採点者に裁量権を与えればいいだけですが。・・・う〜ん、やはり「マジである」ということなのでしょうか。
     

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