平成28年度の都立高校入試の平均点

東京都教育委員会が今年の入試結果のデータを公表しました。

 

各教科の平均点を見てみると、国語が著しく「易化」していることがわかります。

国語の平均点は、過去に例がないほどに上昇し、73.9点となっています。

 

今年の国語の入試問題は、記述問題が廃されました。

 

それは、受験生に以下のような効果をもたらしたはずです。

 

 

①ほとんどの中学生が苦手としている記述問題がなくなったために、失点が減少した

②記述問題の替わりに平易な選択問題が置かれたために、得点が増加した

③解答に時間を取られる記述問題がなくなったことで、他の問題を解く時間的な余裕を確保できた

 

 

 

さらに具体的に、今年の都立高校入試で国語の平均点が高まった要因を特定してみましょう。

 

まず、〔大問1〕「漢字の読み」の問題です。このセクションの正答率が90.9パーセントとなっています。〔大問2〕「漢字の書き」の問題の正答率も72.9パーセントですから、およそ受験生は、漢字の問題の計20点のうち、16点以上を獲得したことになります。

 

 

それ以上に大きな要因として、〔大問3〕に注目しなければなりません。

小説や随筆などの「文学的文章」をあつかう〔大問3〕の正答率が88.7パーセントとなっています。

 

〔大問3〕は5問の選択問題が用意され、計25点の配点です。

つまり、およそ受験生は、このセクションで22点以上を獲得したことになります。

 

都立高校入試は「幅広い学力」の受験生が挑むわけですが、その試験で、異常に高い平均点となっているわけです。〔大問3〕は「難易度」の調整に失敗しています。

 

 

しかし、実は、都立入試の国語の平均点が高いのは、今年だけに限った話ではないのです。

 

最近の都立高校入試の平均点を確認してみましょう。

 

 

 

国語 数学 英語 社会 理科
28年度 73.9 60.9 57.4 59.3 50.6
27年度 65.6 62.0 63.4 59.1 59.4
26年度 61.6 57.6 53.7 57.4 57.3
25年度 60.5 55.4 62.3 51.5 60.3
24年度 69.5 57.2 58.1 57.7 51.4
23年度 65.9 59.8 58.9 58.6 55.2
22年度 60.9 55.6 49.9 53.2 66.9
21年度 69.0 47.3 54.2 62.3 59.5
20年度 63.8 58.8 50.8 60.6 61.8
19年度 65.2 56.4 56.0 62.3 55.8
18年度 55.7 52.6 59.9 72.6 60.5
17年度 62.9 60.7 51.3 58.4 69.7
16年度 69.7 52.4 55.4 58.1 59.8

 

 

 

 

過去にさかのぼって都立高校入試の平均点を調べてみると、国語は例年、他教科に比べて平均点が高くなる傾向にあることがわかります。

過去13年間で、国語の平均点が60点を割ったのは、18年(55.7点)のみです。

 

また、数年ごとに平均点が高騰していることがわかります。

平成24年度(69.5点))、21年度(69.0点)、16年度(69.7点)も、非常に高い数値になっています。

 

 

作問の「目安」が平均60点にあると考えると、国語は、明らかにバランスを欠いています。

 

国語の「難易度」は他教科に対して均衡していません。

データ上で判断すれば、国語は、「点数が取りやすい教科」であるということになります。

 

 

過去13年間で、国語の平均点が他教科を下回った年度は、平成25年度、平成22年度、平成18年度、平成17年度の4回のみです。それ以外の年度は、国語が5教科の中で最も高い平均点となっています。

 

 

 

今年は、他教科に比べて「10ポイント」以上も高い平均点となってしまったわけですが、そもそも、都立高校入試の国語の試験は「点数を取りやすい教科」だったわけです。その点をもう少し考えてみたいと思います。

 

 

国語という教科は、その特性上、作問をする際に過去の「情報」をもとに「難易度」を調整することが難しく、常に手探りで作問をしなければならなりません。

それが、平均点が高くなる理由のひとつなのかもしれません。

 

たとえば、社会などは、一般的な中学生は公民の「経済」の分野が苦手で、問題を作りこんでしまうと得点率が低くなる、というような「情報」を収集し、それを作問に反映させることができます。

 

しかし、国語の問題は、個別性、具体性が強すぎて、解答のデータから「傾向」や「普遍性」を抽出して、次回以降の作問に活かすことが難しいわけです。

 

 

私立の入試問題であれば、意図的に「難度」を高める問題作りも可能です。

しかし、都立高校入試の場合は、「一般性」を担保した問題作りが求められるので、どうしても保守的な作問に流れてしまいやすいのだろうと思います。

 

 

 

また、国語の試験は、ある題材に対して、多元的に問題を設定することが難しいという側面もあります。

 

たとえば、社会の問題で、「三審制」について問題を作成しようとすれば、

 

①「3回裁判を求めることができる制度は?」

②「Aさんが行ったような告訴、上告を認める制度を何というか?」

③「慎重な裁判を行い、人権を守るために取り入れられている制度は何か?」

④「三審制とはどのような制度か?」

⑤「なぜ、三審制のような仕組みが取り入れられているのか?」

⑥「三審制の問題点は何か?」

 

というように、多様な作問の可能性を検討することができます。

 

しかし、国語の場合は、内容の面からも、形式の面からも、強力な「しばり」が存在するわけです。

 

まして、都立の国語は、「出題形式」も「出題範囲」も「ガチガチ」に固定されていて、作問の「自由度」が私立の入試問題と比べても極端に少ないわけです。

 

 

 

さらに、問題数と得点配分の「しばり」も大きく作用すると思います。

都立の入試問題は、漢字の読み書きと作文以外の設問は1問につき「5点」の配点です。配点が大きいので、そのうちのたった2題の「難易度の操作」を誤ってしまうだけで、平均点が大きく変動してしまいます。

 

つまり、今年のように、「粘着質」な記述問題がなくなった上に、与し易い選択問題が並べられてしまうと、受験生の得点が「爆上げ」になるわけです。

 

 

 

今年の国語の入試問題の、記述問題が削除されたのが「どの時点」だったのか、が気になります。

 

今年の理科や社会の問題は、特定の設問で「記述問題バージョン」と「選択問題バージョン」が用意されていたことが確認されています。

それらを検討し、試験問題が決定したという「プロセス」を推定する証拠があります。

 

もし、仮に、国語の入試問題も同様に「記述問題」を差換える「プロセス」があったのならば、そのために「難度」が削られたという可能性があります。

 

 

 

英語についても少し触れます。

英語の平均点はもう少し高くなると思っていました。

 

〔大問2〕の正答率が下がったために、全体の平均点が落ちています。

3題の選択問題の正答率が、ここ数年と比較して最も低くなっています。

 

「1」 60.3パーセント(←昨年 76.5パーセント)

「2」 45.5パーセント(←昨年 80.7パーセント)

「3」(1) 46.8パーセント(←昨年 69.4パーセント)

 

 

12点の配点となっている英作文の正答率は69.0パーセントです(←昨年 79.8パーセント)。

しかし、この正答率は「部分正答」も含まれているので、無得点の解答のみが正答率に反映されていないということになります。

つまり、得点が12点であっても、1点であっても「正答」に含まれるということになるわけです。

 

 

本年度の英作文の問題は、「外国から日本を訪れた人に日本で楽しんでほしいこと」について、理由を含めて3文で書く問題です。

 

この「お題」は、昨年の英作文の問題と類似しています。昨年は、「あなたが外国人に伝えたい日本の良いところ」を理由も含めて書く、というものでした。

2年連続で似たような出題がなされたわけですから、今年の受験生にとっては解答しやすい問題だったはずです。

 

にもかかわらず、昨年と比較して、今年の正答率は10ポイント以上下降しています。

 

おそらく、「得点の平均」も下降しているのではないかと推測します。

「採点の厳格化」によって、部分点が「からく」なっていると思われるからです。

 

「誤字」が許されないという「基準」が明確なので、綴りのまちがいは確実に減点となっているはずです。 学校の「レベル」によっては、これまで「○」が与えられていた英文が、現在は「×」になっているのかもしれません。

 

 

〔大問2〕の「2」(2)の英作文の問題の「得点の平均」がどれくらいだったのか、とても気になりますが、それを知るすべはありません。

 

 

 

ところで、最近私は、東京都教育委員会が過去にリリースした資料やデータを読みあさっているのですが、「あること」に気づきました。

 

東京都教育委員会は、情報を開示する義務を負っています。

東京都教育委員会が、教育に関する制度などを変更する場合に、ある種の情報については報告したり公表したりしなければならないわけです。

 

そこで、情報を丹念に読み取れば、「あらかじめ」その「方向性」を知ることができる「かもしれない」わけです。

 

 

たとえば、平成25年7月25日に東京都教育委員会が「東京都立高等学校入学者選抜検討委員会」を設置することを発表したときに、以下のような「方向性」を「あらかじめ」記していたわけです。

 

「これまで各都立高校に委ねていた具体的な選抜方法について、課程や学科等に基づき共通化・簡素化を図り、中学生にとって分かりやすい制度にする。」

 

http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr130725n.htm

 

 

「翻訳」をすると、「独自の基準で入試選抜を行う権利を、各高校から奪い取ります」ということですね。

 

要するに、東京都教育委員会の事務局=教育庁は、「特別選考」をなくすことを「最初から」決めていたわけです。「検討」する前から。

 

 

まあ、こういうものを示しておかなければならないわけです。官僚ですから。

そして、「そのとおり」に動かなければならないわけです。官僚ですから。

 

 

 

本題はここからです。

 

同じように、都立高校の入試問題を今後どのようなものにするのかという「方向性」も読み取れる「かもしれない」わけです。

 

 

実は、今年、記述問題が削減されることは、「あらかじめ」知ることができていたわけです。

 

 

 

都立学校教育部長の発言→「あと、(高校の方から)記述式問題の数を減らすなど採点を考えた出題方法も今後検討していくべきではないかという声も聞かれたところでございます。」(「平成27年 第4回東京都教育委員会定例会会議録」p15より)

 

 

※「記述式問題を残すのであれば、記述式でないと受検者の力をみることができない問題に限定することが必要」(「マークシート方式の導入の成果と課題」より)

→記述問題を失くすことを前提としている

 

 

※「解答形式の改善 記号選択式問題の中で思考力をみることができる出題を一層工夫し、マークシート方式で解答する問題を増加」(「平成27年度に実施する都立高等学校入学者選抜における実施方針」より)注:平成27年度に実施する都立高等学校入学者選抜=「今年の入試」のことです。

 

 

 

私は、来年の入試問題について、いくつかの予想を立てました。

 

同じように、何か気づいた人がいれば、情報交換したいですね。

 

 

 (ivy 松村)

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