脳内DIALOGUE

※塾教師:興奮したときや饒舌に喋るときに変な関西弁がでる

※生徒:字が雑な中学2年生男子

 

 

「お前、何で学校の提出物を丁寧にやらないの?」

 

「いや~、やってるつもりなんですけど。」

 

「これ見ろよ。この字。これ何よ。」

 

nです。」

 

「どう見てもhだろ。」

 

「そうっすか?nですけど。」

 

「じゃあ、この字は何よ。」

 

hです。」

 

「両方比べてみろよ。同じだよ。」

 

「え?あ、はい。そうっすね。同じっすね(笑)。」

 

「同じっすね、じゃないよ。お前、nhを書き分けられていないってことでしょ。」

 

「あ、はい。」

 

auも書き分けられていないし。」

 

「いや~、急いで書いちゃうと、雑になっちゃいますね。」

 

「何で急いで書くのよ。いつも丁寧にやれって言っているでしょ。」

 

「ぼく、不器用なんですかね。」

 

「アホか。不器用なのと丁寧にやらないことは関係ねーよ。不器用でも丁寧にやることはできるやろ。いや、不器用なんやったら、より丁寧にやらんとあかんやろ。」

 

「でも、時間かかっちゃうんですよ。」

 

「何ゆうてんねん。時間をかけてやれ、ゆうてるんや。」

 

「そしたら、他の勉強ができなくなっちゃいます。」

 

「はあ~?何で勝手に勉強を『持ち時間制』にするんだよ。勉強時間を増やせばいいだろう。」

 

「いや~、きついっす。」

 

「何だよ、きついって。」

 

「部活とかあるし。」

 

「お前さあ、そのワーク全部終わらせるのに、どれくらい時間がかかるの?」

 

「さあ、2時間くらいじゃないっすか。」

 

「じゃあ、丁寧にやったら3時間くらいか。」

 

「そうっすね。」

 

「それだけの勉強時間も取れないの?」

 

「まあ。」

 

「お前、どんだけ御多忙の御生活を営んでんねん。」

 

「いや、けっこう忙しいんすよ。」

 

「・・・それで、その雑な提出物を出したらどうなるのよ。」

 

「どうなるんすかね。まあ、成績下がるかもしれないっす。」

 

「わかってるのに、なんでいいかげんなことするんだよ。」

 

「はあ。」

 

「お前さ、『丁寧さ』がどうして成績に関係するのか、わかる?」

 

「え?どういうことっすか。」

 

「丁寧にやらないと成績が下がるんでしょ。何でだと思う?」

 

「そういえば、そうっすね。何でなんですか?頭の良さと関係ないじゃないっすか。」

 

「『頭の良さ』っていうのは、『学力』の一部でしかないってことだよ。」

 

「どういうことっすか?」

 

「『学力』っていうのは、指示されたことに対応できる能力のことを言うんだよ。」

 

「言われたことができるかどうか、ってことですか?」

 

「そうだよ。」

 

「じゃあ、先生の言うことをきいていれば、いい成績が取れるってことですか?」

 

「そうだよ。っていうか、そうだろ?」

 

「そうっすね。・・・でも、なんか、それ、変じゃないですか?」

 

「何が変なんだよ。」

 

「ぼくら、頭良くなるために勉強しているんじゃないんですか?」

 

「本当に頭が良いっていうのは、人の言うことを聞ける奴のことを言うんだよ。」

 

「でも、学校の先生の言うこと全然聞かない奴で、頭が良い奴もいますよ。」

 

「・・・お前が言う『頭が良い』って、どういうことを言っているのよ?」

 

「え?テストで良い点を取ったり・・・。」

 

「あのな、さっきから言ってることだけど、テストの点数は、『学力』の一部でしかないんだよ。」

 

「はあ。」

 

「だから、テストで良い点取っただけでは成績が上がらないだろう?」

 

「提出物とか、授業態度とかが見られてるってことですか。」

 

「そうだよ、それが分かっているのに、提出物をいいかげんにする奴はやっぱり『頭が悪い』ってことになるだろう。」

 

「・・・。」

 

「ちょっと難しいことを言うとな、『学力』っていうのは主観的なものなのよ。」

 

「どういうことですか?」

 

「純粋な頭脳の性能を評価しているわけではないってことだよ。」

 

「ちょっと、よくわかりません。」

 

「学校の先生が自分の判断で、生徒の『学力』を評価してるってことだよ。」

 

「先生が勝手に生徒の成績をつけてるってことですよね。」

 

「『勝手』じゃねえよ。」

 

「でも、学校の先生が、えこひいきとかして、自分が気に入っている生徒だけに良い成績をつけたりしたら、やっぱりズルくないですか?」

 

「あからさまな『えこひいき』をする教師はどうしようもないと思うけどな。でも、言われたことをきちんとやらない生徒の評価を下げるのはしかたないだろう。」

 

「でも、それ、なんか違う気がするんですよ。」

 

「何が?」

 

「やっぱり、テストで良い点取った人に、良い成績がもらえないと。」

 

「・・・お前さ、テストで良い点取れる奴の何がすごいの?」

 

「え?やっぱり、『頭が良い』から・・・。」

 

「そいつはさ、『テストの能力』は優れているよ。でも、そいつが優秀な人物であるかどうかはまた別なわけ。」

 

「テストができるだけではダメってことですか?」

 

「さっきっからそう言ってるわけよ。」

 

「・・・。」

 

「・・・お前、将来なりたいもの、何かあるの?」

 

「いや、今は、そんな・・・。」

 

「ないの?」

 

「昔は、漫画家になりたかったんですけど、今は特に・・・。」

 

「まあ、これからやりたいことが見つかるかもしれないな。でも、生きていくためには何か仕事をしないといけないだろ?」

 

「そうですね。」

 

「そうすると、就職活動をして、採用してもらって、会社で働くようになるかもしれんね。」

 

「はい。」

 

「でな、よく聞くことやと思うんだけど、就職活動のとき、学歴が重要になるわけよ。」

 

「いい大学出たほうが、いい会社に入りやすいってことですか?」

 

「そう。何でだと思う?」

 

「そりゃ、いい大学出てる人の方が、使えるから・・・。」

 

「何だよ、『使える』って。お前、何様やねん。」

 

「いやー(笑)。つまり、仕事ができるってことですね。」

 

「まあ、そういうことや。お前が言うとおりにな、企業は『仕事ができる人』を採りたいと思てんねん。」

 

「はい。」

 

「学歴を持っている人は、『仕事ができる人』である可能性が高いわけや。何でだと思う?」

 

「それは・・・。」

 

「学歴を持っているということは、『学力』が高いという証でもあるよな。じゃあ、『学力』が高いということは、どういうことやった?」

 

「先生の言うことを聞く?」

 

「そうや。企業は、指示をきちんと守る人間を求めているわけや。」

 

「あー。」

 

「企業や、役所もそうやけどな、組織ってもんは、人が協力し合って仕事をしていく場なんや。そして、その中で一人ひとりに役割が与えられる。組織のメンバーは、それを忠実にこなせる人間でなければならないわけや。」

 

「いいかげんな奴が来たら困るわけですね。」

 

「その通りや。たとえばの話、食品会社や建築会社に『いいかげんな奴』がいたら、市民の生活が脅かされることになるやろ。もちろん、何かあったら会社も大損害や。」

 

「めっちゃ怖いですね。」

 

「せやからな、ある意味でな、学校は、社会の要請にしたがって、学校教育を行っているわけよ。」

 

「どういうことですか。」

 

「学校で、指示を守る生徒が評価されるような教育を行なっているのは、社会で、そういう人間が求められているからやってことや。」

 

「学校できちんと指示を守れるようにならないと、社会に出てから困るわけですね。」

 

「なんや、その気色悪い『答弁』は。」

 

「へへへ。」

 

「で、まあ、それもあるんやけど、それより、お前に言いたいのは、いいかげんな奴は『上に行く道』が閉ざされてしまうってことよ。」

 

「『上に行く道』・・・ですか?」

 

「要するにな、この世の中は、どんなにテストの点が良くても、いいかげんな奴は『いい仕事』に就けないような仕組みになっているってことだよ。」

 

「あー。」

 

お前が、そのワークをいいかげんにやるってことは、お前の将来をせばめているってことになるわけよ。わかる?」

 

「わかります。」

 

「だから、まずば、そのnを全部書き換えなさい。」

 

「え、マジっすか?」

 

「何、お前、嫌なの?」

 

「いや~、きついっす。」

 

 

(ivy 松村)

 

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