公私連絡協議会の話①

都立高校と私立高校は、生徒募集において「競合関係」にあります。

毎年、入学する生徒を「取り合う」運命にあります。

 

ところが、「両陣営」が、全くの自由競争でしのぎを削っているのかといえば、そうではありません。実は、都立高校と私立高校は「協調し合う関係」を築き、維持しています。

 

公立高校と私立高校の間で、「協調」を行わない県も多くありますが、「東京都」は「協調路線」を堅持しています。

 

 

もちろん、それには「いい部分」と「悪い部分」があり、その事実のみを切り取って断罪するような性質のものではありません。東京都は、あらゆる意味で特殊な地域です。

 

 

しかし、現実に、そのような「協議」は、私立学校の権益を守るための「盾」として機能します。

 

当然、私立学校は「配慮」を期待するわけです。

そして、なぜか、その期待に沿って行動する人間が「都立の側」にいるわけです。

 

 

 

毎年、「公私連絡協議会」という会合が開かれています。

 

ここで、東京都教育委員会事務局や東京私立中学高等学校協会などが、高校に進学する生徒の「割合」と「数」とについて話し合います。

 

公立中学を卒業する生徒の「就学計画」を立て、都立高校と私立高校で、お互いがどれくらいの人数の受け入れるのか、その分担を協議するのです。

ようするに、高校に進学する生徒のうち、何人ぐらいを都立高校に進学させ、何人ぐらいを私立高校に進学させるのか、話し合うわけです。

 

ここで「合意」された内容に沿って、都立高校の募集人数が決められるわけです。

 

 

こうした「都立」と「私立」の「協議」は、ずいぶん前から行われてきました。

 

数十年前から、都立高校側と私立高校側が、中学卒業者のそれぞれの「受入分担」について協議してきた「歴史」があるのです。

 

 

昭和60年になされた「合意」では、双方の「受入分担比率」は、都立と私立で56:44となっています。

 

昭和60年(1985年)は、第二次ベビーブーム世代が高校受験を迎え、バブル景気がまさに本格化しようという時期です。当時は、いじめなどの社会問題がクローズアップされたこともあり、東京都は私立志向が強い時代でした。

 

しかし、「私立」には、懸念材料がありました。

 

その3年前に学校群制度が廃止され、「グループ合同選抜制度」が実施されるようになっていました。「グループ合同選抜制度」は、一言でいえば、都立を第一志望とする生徒が、別の都立高校を「滑り止め」にすることができる制度です。したがって、「私立に流れる生徒」に歯止めがかかる要因となります。そして、このころ、下の世代の少子化傾向が明確にあらわれました。「教育事業」全体が、将来の「対応」を迫られていたのです。

 

 

さて、その後も「都立」と「私立」の「協議」は恒常的に行われてきました。

 

そして、平成12年に、「新しい枠組み」が提唱されたのです。

 

「公私連絡協議会」をとおして「中期5か年計画」が策定され、これを5年ごとに「更新」するという「慣例」が形作られたのです。

 

 

つまり、都立高校と私立高校が、お互いどれくらいの生徒を入学させるかを定める「受入分担」のフレームを、5年間「固定する」ということが制度化されたのです。

 

「中期計画」を立てることによって、「長期」では、「都立」と「私立」が協議し続けるという方針を既定化させることができます。その意味でも、「優れた戦略」だといえます。

 

 

 

それにしても、「平成12年」というタイミングは、何やら「意味深げ」に思えます。平成12年度からの計画なので、この計画についての協議は、前年の平成11年に行われていたことになります。実は、石原慎太郎氏が初めて都知事に当選したのが平成11年なのです。

 

 

 

この「中期5か年計画」は随時「更新」され、現在は、平成27年から平成31年までを対象とした「第四次中期計画」が継続されています。

 

 

・第一次中期計画 平成12年度~16年度

・第二次中期計画 平成17年度~21年度

・第三次中期計画 平成22年度~26年度

・第四次中期計画 平成27年度~31年度

 

 

「第一次中期計画」が策定された平成12年度から現在まで、都立高校の「受入分担」の比率は「59.6」に固定されています。

この比率は、昭和60年に比べてやや増加していますが、それでも「都立高校のニーズ」に見合ったものなのかどうか、微妙なところです。

 

参考までに述べると、私立の中高一貫校に通う生徒を含めると、「私立学校」に在籍する生徒と都立高校に在籍する生徒は、ほぼ半数ずつになります。

 

また、「東京都立中学校長会進路対策委員会」の調査によれば、公立中学を卒業する生徒のうち、都立高校への進学を希望する生徒は、例年全体の約77パーセントにのぼります。

 

そして、実際には、都立高校に進学する生徒の比率は、「59.6」よりも若干多くなります。一方、私立に進学する人数は、「40.4」よりも少なくなります。都立高校を志望する生徒が多いためです。

私立高校は、何年もの間、公私連絡協議会で策定された「就学計画」を達成できていません。

 

常識的に判断するならば、都立高校の「枠」を広げるべきなのですが、一連の「取り決め」は、それを封じているわけです。

 

この「取り決め」のために、都立高校には、より多くの生徒を収容する「キャパシティー」があるにもかかわらず、「59.6パーセント」を受け入れる「枠」しか用意されないわけです。

 

都立高校の募集人数は、高校の「キャパシティー」によってではなく、私立高校との「協議」によって定められていということになります。

 

例年、都立高校への進学を志望する生徒は約77パーセントいます。

そのうち、都立高校が受け入れる生徒は「59.6パーセント」なので、「残り」は「私立高校」に進学することになります。あるいは、全日制高校への進学をあきらめることになります。

 

 

 

参考:

 

平成27年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成26年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成25年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成24年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成23年度 公私連絡協議会の合意事項について

都立高校及び私立高校の受入れに係る「第三次中期計画」並びに平成22年度の高等学校就学計画について

東京都立高等学校教頭研究協議会 研究協議会報告:(15),p11

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

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