公私連絡協議会の話②

公私連絡協議会では、5年ごとに策定される「中期5か年計画」にもとづいて、都立高校と私立高校の「受入分担比率」等を決めています。

現在は、平成27年から平成31年までを対象とした「第四次中期計画」が継続されています。

 

・第一次中期計画 平成12年度~16年度

・第二次中期計画 平成17年度~21年度

・第三次中期計画 平成22年度~26年度

・第四次中期計画 平成27年度~31年度

 

 

 

実は、この四次に渡る「中期5か年計画」は、その内容のほとんどが固定されたままになっています。

変わったところといえば、私立高校進学者に対する「就学支援金制度」や「授業料軽減助成金制度」について、「都立の側」が周知を行うという約束がなされたことくらいです。

 

 

平成12年からスタートした「中期5か年計画」では、「受入分担比率」は都立と私立で59.6対40.4となっています。この比率は、17年間、全く変更されていません。

 

(後で詳述しますが、「第四次中期計画」からは、「表面上の数字」をいじらないで「私立に有利な計画」を策定する「マジック」が使われます。)

 

 

また、公立中学を卒業する生徒のうち、全日制の高校に進学する生徒の数を推計するために用いられる「計画進学率」も17年間96パーセントに固定されています。

 

これまで、私立高校側は、「計画進学率」を「実績」に近い92パーセントに引き下げることを求めてきましたが、東京都教育委員会はそれを受け入れていません。

 

それを行うことは、東京都教育委員会の「存在意義」を揺るがす根源的な問題となりかねません。そもそも、教育環境を充足させることを目的とする行政機構が、「計画進学率」を「下方修正」することは原理的にあり得ないわけです。

 

しかし、それ以外の理由も考えられそうです。

 

 

「東京都教育委員会」は、知事が任命する教育長と教育委員によって構成されます。

そして、東京都教育委員会の事務を執行するための事務局を「教育庁」といいます。

 

実は、「東京都教育委員会」という名前で、高校入試を含めた教育や文化事業に関する実務を執り行っているのは「教育庁」なのです。

 

教育委員会の委員が出席する「会議」で決定されることは、実際にはそれほど多くないのです。

 

たとえば、上記の「中期5か年計画」についても、常に事後的な「報告」が定例会議で行われるだけです。「報告」を行うのは、事務局=「教育庁」の職員です。

 

もし、「中期5か年計画」の内容を変更しようとすれば、東京都教育委員による「会議」に諮らなければならなくなります。

 

そうなると、事務方が主導して行っている「公私強調」の枠踏み自体に「メス」が入るかもしれません。

 

もし、私が「教育庁」の職員であれば、公私連絡協議会における「合意」をルーティン化し、その内容を「決定事項」として「報告」することを繰り返し、「会議」で審議されることがないようにするでしょう。極力「波風」を立てないように努めます。それが、「官僚の正統的な手腕」というものにちがいありません。

 

 

実際に、東京都教育委員会の「会議録」を見てみると、実に「面白い」やり取りがなされています。

 

 

 

平成19年 第16回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【学務部長】 平成19年度公私連絡協議会が9月18日に開催され、平成20年度高等学校就学計画について合意をいたしました・・・。(p4)

 

 

【委員】 これはまだプレス発表していないわけですね。(p5)

 

 

【学務部長】 18日にプレス発表させていただいております。(p5)

 

 

【委員長】 この件は、報告事項ですから発表済みということですね。(p5)

 

 

【委員】 公私連絡協議会で都立高等学校と私立高等学校とが協調して生徒の幸せを考えていくことは非常にいいことだと思うのです。談合という言葉を使っては語弊がありますがこの協議会で出した割合というのは、生徒の幸せを考えているのか、それとも経営者の幸せを考えているのか分かりませんが、この数字が5年間大体決まっているという御説明でした。(p5)

 

・・・果たして協議会でこういう数字を決めることがいいのか、自由競争にしてしまった方がいいのかという議論は当然あるべきだろうと思うのです。(p5)

 

・・・こうした数字を決めたのですが、これでどうでしょうかという話がまず教育委員会に出てくるべきで、このように教育委員の意見が全く反映されていないということは問題だろうと思います。ですから、こうした数字を教育委員会に諮って、今までどおりだからその数字でいいではないか、あるいは、協議会でこの数字は撤廃しようではないかとか、このまま続けていこうではないかとか、そういう議論をするのが教育委員会の仕事ですから、教育委員会に全く諮らないで決めてしまって、以上終わりでございますということは、いささか手続上問題があるのではないかと思うのです。 (p5-6)

 

 

【学務部長】 原則として5年間の中期計画において基本的事項について公私で合意を行い、その間については公私で調整をした上で、中学生の進路を保証し、受入れを確保していくという趣旨で行ってきております。今後、平成21年度までに、平成22年度からの新たな5年間の合意に向けての作業を行いますので、その中で適宜、今後の進め方を含めて御議論していただきながら、進めさせていただければと思っております。(p6)

 

 

【委員】 定数をどのように決めるか、公私で協議をすることが本当にいいことかどうかも含めて、教育委員会で議論して、その次からどうしようかということが教育委員会に出てきて、今年度はこれでいいではないか、ではプレス発表してくれという手順だといいのですが、逆に事務局で決めてしまって、教育委員が一切口を差し挟む余地がないということは問題があると私は考えております。(p6)

 

 

【教育長】 公立と私立の関係は、昔から各都道府県が悩んでいるところでございまして、東京都の場合は5年ごとに基本協定を結んで、各年度は端数の関係で協議するという状況であります。基本協定を結ぶに当たっては、元々協定を結ぶべきかどうなのか、進学率を今96パーセントとしてありますが、これをどうすべきなのか、公立と私立の役割分担をどうすべきなのか。これは事務的な問題ではないですから、当然、教育委員会に、次の5か年間の基本協定を結ぶに当たって基本的な考え方をお決めいただかないとならないと考えております。(p6)

 

 

【委員】 1年後の教育委員会で考え方を決めるとしても、今回これでいいと決定するに至るまでに、やはり教育委員会の中で議論があって、この次からこのように変えようではないかとか、今のままでいいだろうとか、そういう議論が当然あった方がいいのではないかと私は考えます。5年間決まっているのだから、このまま決まりましたので報告しますという手続には、いささか不満であります。(p6)

 

 

【委員長】 今回は報告事項ですから、お認めいただくとして、次回からは今の御意見を踏まえて考えていただくということでよろしいですね。(p6)

 

 

 

平成19年 第17回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【学務部長】・・・公私連絡協議会で協議をして都立高等学校の受入数を決めているということについては、今後、どういう形で進めていくかも含め、論点になろうかと思います。(p7)

 

 

【教育長】 ただ、前回の教育委員会において、公私連絡協議会で本当に公私の割合を決めてしまって良いものなのかどうかという意見が出たことから、改めて議論をしましょうということにはなっています。(p7-8)

 

 

【委員】・・・私学の経営に合わせるのではなくて、生徒に合わせることが非常に大事なことであるから、公私連絡協議会で決める前に、東京都教育委員会の委員の中でいろいろな議論をして、それで良いだろうとなったら、教育長にお任せする形が良いというのが前回の発言にありました。(p8)

 

 

 

平成21年 第15回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【都立学校教育部長】

本年8月31日に開催した平成21年度公私連絡協議会において、東京都と東京私立中学高等学校協会は、都立高校及び私立高校の受入れに係る第三次中期計画並びに平成22年度高等学校就学計画について合意いたしました。(p4)

 

・・・平成22年度から平成26年度までの各年度就学計画では、一層の公私協調により、進学実績率の向上を図るよう、公私分担も必要に応じ協議をすることとしております。(p4)

 

 

【髙坂委員】 今度は第三次の計画になります。以前からこのように数を固定していることがいいのかどうか議論してきましたが、今回の改定で合意する時点で、過去の議論はどういう格好でなされたのでしょうか。当然その議論を基にしてこういう議論がされたのだと思いますが、そこのところを説明していただきたい。(p6)

 

 

【都立学校教育部長】 今までの議論なのですが、私立側とも何回も協議してまいりました。計画進学率96パーセントに対して、私立の受入れが40.4パーセントということで、実際には都立が2パーセント程度上回っているのですが、私共はこの差を埋めてほしいと主張しています。この計画進学率を、実績の92パーセントに下げてほしいという主張が一方私立側にはございます。(p6)

 

・・・私立側からは、数を固定してほしいといった主張もございますが、分担割合における現行と実績の比率をみた場合に、私立学校が全部受け入れられるのであれば、可能な数字と言えるかと思うのですが、必ずしも見込みとしては期待できない数字なのではないかと思っております。(p6)

 

 

【竹花委員】 そのことの是非について議論するつもりはないのですけれども、これは相手のあることですし、都庁の中でも広く検討している分野もあって、既に合意をしたということで、この教育委員会でこれをひっくり返すことはできませんよね。(p8)

 

 

【都立学校教育部長】合意につきましては、公私と昨年来からそれぞれの主張があり、それから協議し、合意したものでございまして、これを覆すということはできない状況にございます。(p8)

 

 

【竹花委員】 私は東京都教育委員会に休まず出席しているわけではないですが、ここに至る前に、このような方向でという御相談がありましたか。(p8)

 

 

【竹花委員】 当教育委員会でも、私自身も何度か発言したことがございますし、髙坂先生がおっしゃったような趣旨もお話し申し上げたので、もっと事前に相談があってもいいはずだというのが私の心証です。(p8)

 

 

【都立学校教育部長】 本年5月28日の懇談で経過については御相談をしております。それ以前も、やはり方針については御相談をしております。(p8)

 

 

【竹花委員】 私は、結論をこういう形でするという相談を受けた覚えはないです。(p8)

 

 

【竹花委員】・・・私としては第三次中期計画について、様々なものがある中での個別の御説明以外に、この5年間にわたって東京都教育委員会に影響を与えるこのような協議については、しっかりとした御説明が事前に欲しかったということを申し上げておきたいと思います。(p11)

 

 

・・・私立学校にとってどうかではなくて、東京都の公立中学校の生徒にとってどうかという視点でこれからしっかり考えていくということで、お約束いただければそれでよかろうかと思います。 (p11)

 

 

 

平成27年 第14回 東京都教育委員会定例会議事録

 

 

【竹花委員】・・・かねてからこの都立と私立の計画については、その在り方について様々な角度から疑問を呈してきたのですけれども、私が懸念するのは、私学の方の計画との約束で、都立の入学枠を定めて、各高校の受入人数を決めていきます。そのために、本来ならばもっと都立に行きたいはずのところが、枠が狭いためにあふれるということが生じているのではないでしょうか。もっとも、私学もたくさんやってきて、生徒がたくさん来るのにという状況であれば別ですが、現在は授業料についても同様の条件になっているにもかかわらず、27年度は9割程度だということであれば、やはり都立の入学枠を最初から少し多めに取ることが、生徒たちにとって有利なことではないかというふうに普通は考えられるのですけれども・・・。(p20-21)

 

 

【竹花委員】・・・やはり受ける生徒たちの入学の枠を狭める結果に都立と私立の約束が機能しているとすれば、それは本末転倒だと思います。(p21)

 

 

 

(ivy 松村)

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