公私連絡協議会の話③

以前、このブログに、石原慎太郎氏が都知事を辞められてから、東京都教育委員会の「方向性」に変化が生じているのではないか、と書きました。

 

私立高校に対する「配慮」が強くなってきているように感じられるのです。

 

石原氏が都知事を辞任されたのは、平成24年(2012年)の10月です。

この後、矢継ぎ早に都立高校の「入試改革」が押し進められたという「事実」について、以前このブログに書きました。

 

「入試制度」「選抜方法」「入試問題」「採点方法」など、さまざまな「変更」が強いられました。

 

さらに、「募集」の面でも後退が起こっています。

 

 

さて、石原氏が都を去った後の平成26年に、公私連絡協議会で平成27年度からスタートする「第四次中期計画」が「合意」されました。

 

そこに、ひっそりと都立高校の「受入分担人数」が減らされるような「仕掛け」が練り込まれました。

「表面上」はこれまでと同じ内容であるという体裁を示しながら、内実が変えられています。

 

 

都立高校と私立高校の「受入分担人数」の算出「ルール」が変更されたのです。

 

それは、平成27年度の都立高校の生徒募集に影響を与えています。

 

平成27年度は、平成26年度と比べて、公立中学を卒業する生徒数はほとんど変わらないという試算がなされていました。

 

しかし、突然持ち込まれた「ルール変更」の効果によって、都立高校に進学する生徒が減り、私立高校に進学する生徒が増えたのです。

 

もちろん、その「変更」は、教育委員会の会議に諮られて承認されたものではありません。

 

 

 

「本来」であれば、平成27年度は、平成26年度と公立中学を卒業する生徒数がほとんど変わらないので、同じ数値の「就学計画」になるはずなのです。

 

ところが、平成27年度は、都立高校の「受入分担人数」が減らされ、都立高校の「募集人数」も縮小させられてしまったのです。

 

 

平成27年度の「卒業予定者」は、前年とほぼ同数です。

また、「全日制高校進学希望者」も、ほぼ同数です。

そして、「都立高校進学希望者」も、ほぼ同数だったのです。

にもかかわらず、都立高校の募集人数が減らされたわけです。

 

 

 

その「ルール変更」というのは、これまで、公立中学を卒業する予定の生徒数に加えていた「都立中学の生徒数」を省いて「受入分担人数」を算出する、というものです。

 

また、東京高専に進学する生徒の人数も省かれることになりました。

 

 

 

もちろん、そのほうが「正確」な数値に近づくでしょう。

 

しかし、それは、これまでの「就学計画」の枠組みを変えてしまうものです。

 

また、教育委員会の会議でも再三にわたって委員が指摘していますが、「正確」な試算を行うことが重要なのであれば、私立中学から都立高校に進学する生徒の人数も組み込んで算出しなければならないわけです。

 

疑問点は、以下に集約されるでしょう。

 

・なぜ、都立高校を管轄する東京都教育委員会(の事務局)が、東京都立高校に進学を希望する生徒の不利になるような変更を受け入れるのか?

 

 

 

「公私連絡協議会」が策定している「就学計画」における都立高校の「受入分担人数」の算出方法を再度確認してみましょう。

 

 

・「卒業予定者数」(A)×「計画進学率0.96」(B)=「高校進学(予定)者数」(C)

・「高校進学(予定)者数」(C)-「他県・国立・高専進学予想人数」(D)=「受入(予定)人数」(E)

・「受入(予定)人数」(E)×「私立高校受入分担比率0.404」=「私立高校受入分担人数」(F)

・「受入(予定)人数」(E)×「都立高校受入分担比率0.596」=「都立高校受入分担人数」(G)

 

 

 

 

「ルール変更」がなされた後の平成27年度の「受入分担人数」を確認しましょう。

 

平成27年度の「私立高校受入分担人数」(F)は、2万8,600人になります。

一方、「都立高校受入分担人数」(G)は、4万2,000人となります。

 

 

次に、「ルール変更」が行われなかった場合の数値を算出しなければなりません。

 

平成27年度の「都立中の生徒」を含めない「卒業予定者数」(A)は7万7,421人です。これに「都立中の生徒」を加えた数字は、7万9,010人になります。

この人数は、事務方の担当者が、東京都教育委員会の定例会議で明らかにしたものです。

 

この数字は、平成26年度の「卒業予定者数」(A)である7万9,140人と比べて「-130」となっています。

「就学計画」は「概算」で算出するので、「-130」の差異は計算に反映されません。

 

「ルール変更」が行われなかった場合の平成27年度の「受入分人数」は、平成26年度のものと全く同じになります。

 

つまり、「ルール変更前」の平成27年度の「受入分担人数」は、平成26年の「受入分担人数」と同数である4万3,100人となるわけです。

 

 

したがって、平成27年度の「受入分担人数」は、「ルール変更」によって4万3,100人から4万2,000人に減らされたのだということになります。

 

その差異は「-1,100」です。

 

 

 

 

ルール変更前 ルール変更後 増減
「私立高校受入分担人数」 29,300 28,600   -700
「都立高校受入分担人数」 43,100 42,000 -1,100

 

 

 

平成27年度は、「本来」の「受入分担人数」よりも1,100人少ない「就学計画」になっているということになります。

 

それにともなって、実際に、平成27年度の都立高校の募集人数は、前年に比べて減らされたわけです。

 

 

 

もちろん、私立高校の「受入分担人数」も減っています。しかし、実は、「受入分担人数」を少しばかり減らされることは、私立高校にとってはむしろ「プラス」の要因になります。

 

 

 

「受入分担人数」は、「就学計画」として算出されるものなので、「実際に進学する人数」とは必ずしも一致しません。

 

 

まず、実際の進学率ですが、「計画進学率」の96パーセントが達成されたことはありません。例年、ほぼ92パーセント程度の「受入実績」となっています。

 

「計画進学率」を達成することが困難になっているのは、「計画進学率」を全日制の高校だけを対象として設定しているからです。実は、定時制に進学した生徒はこの数値に含まれないのです。

 

全日制の都立高校に不合格だった生徒のうち一定の人数は、最終的に全日制の私立高校へ進学せずに、都立の定時制などに進学します。

そのために、全日制の高校だけを対象に設定されている「就学計画」に、なかなか「実績」が届かないわけです。

 

また、他県の高校への進学者が漸次増加しています。

そのために、「都立高校」と「都内の私立高校」を対象としている「進学率」が伸び悩んでいます。

 

 

以上のような状況は、同時に、私立高校の「受入実績」を低迷させる原因ともなっています。

 

 

都立高校と私立高校のそれぞれの「受入分担人数」の「達成率」は、都立が例年「計画」を上回るのに対し、私立は例年下回っています。

 

たとえば、平成26年度では、都立高校は、「受入分担人数」4万3,100人に対して「受入実績」は4万4,492人です。したがって「受入達成率」は103.2パーセントです。

 

一方、私立高校は、「受入分担人数」2万9,300人に対して「受入実績」は2万5,377人です。したがって、「受入達成率」は86.6パーセントです。

 

私立高校の「受入達成率」が、都立高校に比べて、低調であることがわかります。

 

 

この「不均衡」は、都立高校の人気が、私立高校に比べて高いために生じているものです。

 

「東京都中学校長会進路対策委員会」が行っている「志望予定調査」によれば、公立中学を卒業する生徒のうち、例年およそ77パーセントが都立高校を志望しています。

平成26年度では、都立高校の志望者は76.99パーセントでした。

 

都立高校は、私立高校に比べて「定員割れ」や「入学辞退」が少ないために、「募集」が堅調に行われています。

一方、一部の私立高校は、「募集」に苦戦しているわけです。

 

 

 

ようするに、私立高校は、「受入分担人数」が700ほど減ったとしても、生徒が「流出」することはなく、むしろ「受入達成率」が上昇する要素になるのです。

さらに、都立高校の募集人数が減らされ、その分、都立高校に進学できない生徒が増加するわけです。当然、私立高校に流れる生徒の数が増えることになります。

 

 

当然の帰結ですが、平成27年度は都立高校の「実績」が下降し、私立高校の「実績」が上昇しました。

 

 

 

 

 

26年度「受入達成率」 27年度「受入達成率」
私立高校 86.6 89.4
都立高校 103.2 102.3

 

 

26年度「実績」 27年度「実績」 増減
私立高校 25,377 25,569  +192
都立高校 44,492 42,975 -1517

 

 

 

 

繰り返しになりますが、平成26年度と平成27年度では、公立中学を卒業する生徒の数はほとんど同じだったわけです。

 

また、都立高校を志望する生徒の割合もほとんど同じだったのです。

 

であるにもかかわらず、都立高校に進学する生徒が1,517人も減ってしまったわけです。

 

それは、都立高校の募集人数(と合格者数)が減らされたからです。

 

そして、なぜ、都立高校の募集人数が減らされたのかといえば、「就学計画」における「受入分担人数」の算出方法が変更されたからです。

 

 

そして、ここがポイントなのですが、その「ルール変更」は、東京都教育委員会で「議事」として諮ったうえで決定されたものではないのです。

 

東京都教育委員会の委員は、この「変更」を事後的に報告されただけなのです。

 

これは、公私連絡協議会で決定されたものなのです。

 

 

 

参考:

平成26年 第14回 東京都教育委員会定例会会議録

平成26年度公私連絡協議会の合意事項について

 

 

 

(ivy 松村)

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