「代ゼミショック」・・・誰がショックを受けるの?

代々木ゼミナールの事業縮小が大きな話題となっています。誰もが知っている教育受験業界の有名ブランドが、あからさまに本業から撤退することは世間に大きなインパクトをもたらしました。このニュースは「代ゼミショック」などと呼ばれているそうです。

 

かつて、代ゼミは駿台予備校や河合塾とともに「三大予備校」などと称されていました。現在、小学生や中学生の親の世代の人たちにとっては、代ゼミは受験業界のビッグネームのひとつという印象をお持ちだと思います。

 

しかし、近年では、駿台や河合に合格実績で大きく引き離されているだけでなく、新興の東進にも逆転されている状態でした。生徒数も激減し、大手予備校のなかで「一人負け」を喫していました。つまり、受験業界関係者や受験生の間では、代ゼミが「ヤバい」という話はよく聞かれるものになっていたのです。

 

そして、とうとう、8月23日、代ゼミが既存の27校舎のうち20校舎を閉鎖することを発表しました。続いて翌日、全国模試やセンターテストの集計や分析を廃止することも明らかにされました。さらに、大幅なリストラや不動産業への転身などの話題が耳目を集めています。

 

当初、私は、代ゼミは、グループ傘下にあるサピックスによる、現役生対象の指導体制にシフトチェンジしようとしているのかもしれないと思いました。代ゼミという名が失墜したとしても、中学受験におけるサピックスのブランド力は非常に強力です。サピックスの洗練された受験指導のノウハウを、代ゼミは取り入れるべきだと考えていました。しかし、模試やセンターリサーチまでも取りやめると聞き、これはやはり、企業本体が本格的に教育受験産業から脱退するのだなと思い直しました。

 

模試やセンタ―リサーチを廃止し、独自の情報収集を放棄してしまえば、ライバルの駿台や河合から情報提供を受けることになります。受験生は当然、信頼できる「一次情報」を持つ予備校に集まると思います。そうなると、勢力の挽回は非常に厳しくなるでしょう。

 

難関大学を指導する部門は残すそうですが、やがてこれらの運営も厳しくなることは目に見えています。難関大学の合格をリアルに考えている受験生は、もはや代ゼミを選択しないからです。合格実績を回復することはかなり難しいといわざるを得ません。受験生たちの目には、代ゼミは「どろ船」に映っていることでしょう。この度の「代ゼミショック」で代ゼミの格付けは明確に崩落しました。

 

 

講師や従業員の士気の低下も案じられます。多くの人が、来年には新しい仕事を見つけなければならないでしょう。講師や従業員の心理的な負荷が、授業や業務に影響しなければいいと思います。

 

いずれにしても、報道に接した受験生たちは不安に思うでしょうから、影響が皆無ということはないでしょう。

 

話は少しそれますが、この度の代ゼミの報道の後、さまざまな人の発言やコメントを見聞きしたのですが、受験生の立場で考えている人が少ないことに少し驚いています。経済誌や週刊誌からの発信では、代ゼミが校舎を建てる段階からホテルやオフィスなどに転用できるように設計していたことを評価するものもありました。同業の人などのブログなどには、代ゼミ講師の今後を心配していたり、誰かが新しい予備校や塾を立ち上げるのではないかという噂だったりという内容が書かれていました。あるいは、「文化人」的な方々は、自分の受験時代の追憶を書き連ねていました。最も多かったのは、少子化や大学定員の増加によって、予備校の経営が苦しくなってきたというありふれた分析でした。

 

このタイミングで代ゼミの行く末を知らされることが、受験生や通っている生徒にとって本当によかったのだろうか、と思います。しかし、それももちろん熟慮した上での発表なのだろうと思います。賢い「経営的な判断」によれば、夏期講習の終わりがよかったのでしょう。

 

きっと、ボロボロになりながら、さまざまなものを守ろうと戦った人がいるのだろうと思います。実は、私も以前同じようなシチュエーションに巻き込まれたことがあります。私にとっては、身につまされる話なのです。そのとき、この状況で、どうすることが生徒たちにとってい一番いいことなのか、ということだけを考え続けていたような気がします。

 

(ivy 松村)

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