都立中学の志願傾向分析②

「受験欠席」のデータについて、もう少し考えてみましょう。

 

前回の記事で示した3校のデータを比較してみると、南多摩の「受験欠席者数」が少ないことがわかります。

南多摩中は、自校を「本命」とする応募者が多く集まっているといえるでしょう。

 

八王子周辺で、適性検査型の入試を行う中学が増え、また、その受験者が増えているので、単純に、南多摩中と私立中を併願する受験生は増加しているのでしょう。

しかし、南多摩中と私立中を、「進学先」として「天秤」にかけている受験生が少ないことがわかります。

 

 

 

本年度の南多摩中の「受験欠席者数」は男女計15人です。武蔵はその倍以上となる36人、小石川はさらに倍以上の78人です。

 

南多摩より武蔵のほうが「私立中との併願」をしている受験生が多く、さらに小石川のほうが多いことがわかります。

 

 

 

注目したいのは、武蔵の「受験欠席者数」の推移です。

 

28年度は、男子、女子ともに「受験欠席者」が一時的に減少しています。

 

男子は27年度21人だった「受験欠席者」が28年度10人に減りました。

女子は15人から9人に減っています。

 

29年度の「受験欠席者」は再び増加し、27年度と同数になりました。

男子21人、女子15人です。

 

男子は、28年度、例年の半数以下にまで「受験欠席者」が減ったわけです。

これは、武蔵を「本命」とする受験生の割合が、この年、にわかに高まったことを意味しています。

 

 

進学校の募集は、大学合格実績に大きく影響されます。

特に男子は、「連動している」といってもいいでしょう。

「志願傾向」は、大学合格実績と対照させて分析、考察する必要があります。

 

 

武蔵は、年々順調に大学合格実績を伸ばして来ましたが、27年度は、いわゆる「踊り場」を抜ける、さらなる「ブレイク・スルー」がありました。

そのため、翌年の28年度に、難関大学を志す受験層の進学先として、武蔵の「評価」が高まったわけです。

 

つまり、武蔵への進学を優先に考える受験生の割合が増えたために、「受験欠席」が減少したわけです。

 

本年度は、さらに上位の私立(国立)を志望する受験生にとって、武蔵の併願受験が戦略的に「視野」に入ってきたために、再度「受験欠席」が増加したのだろうと思います。

 

 

 

しかし、武蔵の応募倍率は減少傾向にあります。

 

確認してみましょう。

 

 

    応募人数      応募倍率
年度 男子 女子 合計 男子 女子 合計
29 261 237 498 4.70 4.20 4.45
28 306 258 564 5.27 4.45 4.86
27 318 239 557 5.65 4.23 4.94
26 302 236 538 5.28 4.18 4.73
25 355 340 695 6.32 5.95 6.13
24 362 337 699 6.42 5.98 6.20
23 408 395 803 7.25 6.93 7.09
22 454 416 870 8.10 7.30 7.70
21 690 618 1308 12.05 10.97 11.51
20 864 913 1777 15.27 15.95 15.61

 

 

 

武蔵は、本年度、都立中のなかで、もっとも倍率が低い中学でした。

開校初年度の入試が15倍もの倍率だったことを考えれば、その下落幅の大きさに驚かずにはいられません。

男女合わせて、1200人以上も応募者を減らしています。

 

 

武蔵中は、問題の質、応募者の学力 、ともにハイレベルで、過酷な選抜になることが広く知られるようになり、都立中専願受験者の「敬遠」傾向が強まっています。

 

同時に、大学進学実績の伸長が著しく、難関私立中との併願受験をする受験生増えつつあります。

しかし、データからみれば、まだ、小石川との「差」がかなりあります。

 

小石川の応募者数は例年男女合わせて1000人程度で推移し、かつ、「受験欠席者」は武蔵の倍にのぼります。

 

 

武蔵中は、小石川中とともに、都立中の、双璧をなす最難関校に位置づけられるべき中学だと思いますが、立地や地域性が影響して、小石川ほど多くの難関私立中との併願受験者を集めていません。

 

さらに、都立を「本命」とする受験生が、受験を回避する傾向が強まっている(おそらく立川国際、三鷹に流れているのでしょう)ので、受験者数が減少しているのです。

 

 

 

ところで、前回の記事に示した南多摩、武蔵、小石川のデータには「欠席率」を掲載しましたが、これには注意すべき点があります。

 

まず、「欠席率」は、「応募者数」で「受験欠席者数」を割って算出します。これは当たり前ですね。

 

それから、「率」=「割合」の概念というか、その「数値」が意味するもの、その「本質」を理解したうえで取り扱わなければなりません。

 

両校のデータを確認してみましょう。

 

本年度の武蔵の男子の「欠席率」は7.4パーセントです。

一方、小石川の男子の「欠席率」は7.8パーセントです。

 

「率」だけを見れば、両校の「欠席の状況」は大差ないもののように思えます。

 

しかし、「人数」を見ると、武蔵の男子の「欠席者数」は21人、小石川の男子の「欠席者数」は41人となっています。

小石川は、武蔵の倍近くの数の「欠席者」を出しているわけです。

 

 

自明のことですが、「欠席率」だけでは正しい分析はできません。

 

 

単純に、小石川の「応募者数」が武蔵の倍近い人数になっているために、「欠席率」が近似しているわけです。

 

 

 

受験にまつわる「数値」を扱う際に、――「倍率」などもそうですが――「率」=「割合」に過度にコミットするのは危険です。「率」だけでは情報を正確に読み取ることができないからです。

 

 

「率」=「割合」は、「抽象的な数値」です。

「人数」は、「具体的な数値」です。

 

 

「人数」を把握しなければ、「受験の実像」はつかめないのです。

ですから、「志願傾向分析」は、必ず「人数」のチェックを行います。

 

特に、都立中受験のような「高倍率」の受験では、算出された「率」による「数値」が、「観念的なラベル」になってしまいやすいので、注意しなければなりません。

 

 

 

ところで、南多摩、武蔵、小石川の「私立中との併願」の状況を探る「資料」は他にもあります。

 

国私立中受験指導に定評のある大手進学塾の合格実績です。

 

SAPIX、日能研、早稲アカの本年度の南多摩、武蔵、小石川の合格実績を見てみましょう。

 

 

南多摩 武蔵 小石川
 SAPIX 1 4 30
 日能研 2 16 26
 早稲アカ ? 13 17

 

 

 

もちろん、南多摩中のある八王子市周辺は、上掲の進学塾が注力して展開している地域ではありません。

やはり、南多摩の合格実績は低調になるわけですが、そういった「立地」や「業界の情勢」をもすべて包含して、それぞれの学校の特徴やコンテクストが形成されるわけです。

 

つまり、南多摩中には「都立専願」の生徒が集まる傾向があり、小石川中には私立中受験のための勉強をしてきた生徒が集まっているわけですが、それが、その学校の「カラー」となっていくということです。

 

 

そして武蔵中は、ちょっと「予断をゆるさない時期」なのだろう、と思います。

 

 

(ivy 松村)

 

 

 

 

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