八王子東高等学校と南多摩中等教育学校

八王子東は、他の都立トップ校と比較して、募集に「かげり」が出てきました。

 

もともと、倍率が高騰しづらい高校でしたが、本年度、特に男子の応募が低調でした。

 

 

八王子東を志望する受験生が減少している理由は、おもに2つあります。

 

ひとつは、南多摩中が、「将来」高校受験で八王子東を目指すはずだった「潜在的な受験生」を吸収しているためです。

もうひとつは、「地元」の学力上位層が、他のトップ校に流れているためです。

 

 

 

南多摩中の受験層は、私立中と併願をしない「都立専願」の志望者が多いことがわかっています。

別のいいかたで述べるなら、「私立志向ではない受験生」が多くを占めているわけです。

 

他の都立中は、私立中と併願する受験生が主流になってきました。つまり、私立中受験を目指す「層」を取り込んでいるわけです。

 

一方、南多摩は、「公立中学→都立高校」というルートを採るはずだった「層」を、豊富に取り込んでいるわけです。

 

初期の南多摩中の入試問題が、適切な選抜ができるような水準のものであったか、疑問の余地はあるわけですが、それでも、地域から、一定人数の学力の高い生徒を「青田買い」できたことはまちがいありません。

 

 

 

八王子東高校と南多摩中等教育学校は、ともに八王子市にあります。

八王子市は、かつて、日野市、町田市とともに旧第7学区を形成していました。

 

旧第7学区の「序列」は、首席が八王子東、次席が南多摩中の前身である「南多摩高校」でした。

 

「南多摩高校」が一貫校となり、中学受験に「進出」したことによって、本来ならば高校受験時に学区のトップ校を受験するはずだった生徒が、南多摩中に引き寄せられることになったわけです。

 

 

興味深いデータがあります。

 

西高は、自校に入学した生徒の出身市区を公表しています。

 

八王子市から西高に進学する生徒は、南多摩中が開校して後、減少しています。

(南多摩中の入試の「初年度」は22年度です。この年の受験生は、25年度の西高の入試を受ける可能性があった学年です。)

 

 

 

         年度 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18
八王子市出身の西高進学者数 7 8 14 16 21 20 14 22 21 20 13

 

 

 

このようなデータを公表しているのは西高だけです。もちろん、他の高校の状況とつき合わせてみなければ、確かなことはいえません。

まったくか細い論拠ではありますが、「高校受験時に、都立トップ校を志望する学力上位層」が、八王子市内で減少している可能性があります。

 

西高を受験するはずだった生徒が一定数、南多摩に入学してるというのであれば、いうまでもなく八王子東は、ということになります。

 

 

 

さて、八王子東の受験応募者数の低迷をもたらしているもうひとつの理由についてです。

 

それは、一言でいえば、「地政学的な要因」です。

 

 

実は、都立の進学指導重点校のなかで、八王子東はちょっと独特なのです。日比谷、西、国立、戸山、青山、立川が旧制中学を前身とする伝統校であるのに対し、八王子東は1976年に新設された高校です。

八王子東が「進学校化」した経緯も異彩を放っています。新設校のため「学校群制度」に組み込まれなかったことが「好条件」となって、恐るべきスピードで進学校としての地位を確立しました。学区内の学力上位層を確実に受容し、80年代中ごろには、学区内のトップに君臨する進学校にのぼりつめました。

 

 

ある意味で、八王子東は、学校群制度や学区制度という「しばり」を背景として、進学校として成長したわけです。

 

 

しかし、学区制が廃止されたことで、都内の受験生は他学区の都立高校への進学が可能になりました。

そのため、旧第7学区からの「流出」が活発になったのです。一方、「流入」は強く刺激されませんでした。

 

 

「立地的」に、旧第7学区は、東京都の「エッジ」に位置します。「エッジ」に流れる「人員」よりも、「中央」へ向かう「人員」が多くなるわけです。

 

 

また、2000年代に入って、他の都立トップ校が「独自入試問題」と「特別選考」を両輪として、都内各地から学力の高い生徒を集めようとしたのに対し、八王子東は「特別選考」を行うことがありませんでした。そのために、他のトップ校が受験者数を増加させていく中で、八王子東の受験者数は抑制されたのです。

 

この時期に、八王子東の「地位」は、相対的に低下しました。

 

 

 

多摩地区内で比較しても、立川や国立が旧第7学区、第8学区、第9学区、第10学区などから広範囲に受験応募者を集めているのに対し、八王子東は旧第7学区内の応募者に大きく依存しているといえます。

 

それは、「地元志向が強い」といういい方もできますが、端的に「エッジ」に人が流入しづらいともいえるわけです。

旧第7学区が、多摩地区という「回廊」の「最果て」に位置するため、学区が廃されても「人の流れ」が双方向に活性化されないのです。

 

また、学区制の廃止にともない、町田市の東部や南部は、小田急線や田園都市線、バス路線を使って東に抜ける「通学路」が活用できるようになりました。この地区では、八王子東を「迂回」する受験が既定になっています。

もちろん、中央線、京王線の沿線では、「中央」へ向かう「流圧」が強まります。

 

首都圏の交通網は、「都心」に人を運ぶ「設計」になっているわけです。

まったく単純に、その「機能」にもとづいて、旧学区内から「人員」が流出するわけです。

 

 

八王子東のほか、旧第7学区の日野台、町田といった高校の倍率が停滞するのも、このような立地条件を理由のひとつとして挙げることができます。

 

 

そしてまた、南多摩中も、「募集面」では、同様の構造をかかえているわけです。

 

 

 

当塾は、日野市西部、豊田駅近くの多摩平にあります。

八王子東高校までは徒歩十数分、南多摩中等までは一駅です。

 

地元の進学校の良い部分は、よくわかっているつもりです。

 

生徒たちには、八王子東や南多摩を目指して頑張ってほしいと思っています。

 

 

しかし、両校には、「変化」の必要な時期が来ているのかもしれないと思ったりもします。

 

 

 

少し「テーマ」からはずれますが、学校の「特徴」について閑話。

 

現代は、学校が受験生を集めるためには、大きな「特徴」が必要とされる時代です。

 

近年、中学や高校が「特徴」を打ち出そうとして、反対に、まったくありきたりなアイデアに飛びついてしまうのが目につきます。

大きく分けて、学校が打ち出す「特徴」のパターンは3つあります。

 

①進学コース

②英語関係

③理系関係

 

 

どれも「月並み」ですね。

 

そこで、私は考えてみたのですが、いっそのこと「文系実学方向」に特化した学校にしてみたら面白いのではないでしょうか。

 

たとえば、中学・高校のうちから専門的に法律を学びはじめ、早期に司法試験を目指す高校とか。

あるいは、報道やジャーナリズム、政治を学べる高校とか。

他にも、起業、経営を学ぶ、とか、金融を学ぶような学校があってもいいと思います。

 

何だかよくわからない高校が「人寄せ」のためにやるのではなくて、都内有数の進学校が本域でやるというのであれば、すごく意義深い挑戦になると思います。

 

「大学入試の先」を見すえた教育です。

 

 

正直いって、「文化祭がさかんだ」とか、「部活がさかんだ」というのも、現代の進学校にとっては「割とありふれた特徴」のひとつとなりつつあります。

 

 

これからの時代、学校の「魅力」を形作っていくのに、「専門性に触れる」ということが意外といいのではないかと、密かに思っています。

 

 

「逆流」を起こすには、「そこを目指す理由」が必要なのです。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

One thought on “八王子東高等学校と南多摩中等教育学校

  1. 八王子東の周辺は企業研究所が多いですよね。
    だから生徒はそこの子供が多くてその結果、国公立理系志向が比較的強いように思います。
    農工大や首都大の理系が多いのもうなずける話かと。
    そこであえて文系で特色を出すというのは、うーん…無理があるかと。

    理系の生徒が多いことは国公立大学への進学者数を増やすには有利です。
    国公立の文系は枠が小さいし、私立文系向けの勉強とはかなり違う対策をやらなければいけないので(理系は国立も私立も基本的には同じような勉強法でいいので)。
    だから国公立を増やしたい学校は理系を増やそうと誘導するのです。

    早期に司法試験とか報道・ジャーナリズムとか、そういった方向性は早稲田実業に勝てなさそうな気がします。

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