平成29年度都立高校入試の社会②

昨年に引き続き、都立高校入試の社会の解説をしようと思います。

 

 

その前に、感じたことなど。

 

「作問の方向性」が変わっています。

世界地理分野で「マイナー」な国が積極的に取りあげられています。

また、ちょっとマニアックな構成の設問が見られました。

 

これまでの「流れ」をあえて分断するような構成になっています。

20年分の過去問と対照させてみましたが、その感が強くなりました。

 

おそらく、意図的に、過去に出題されていないトピックを増やしているのだと思います。

 

これは、ちまたにあふれる「マニュアル的な対策」への対抗なのでしょう。

(すごくいいことですね。)

 

 

 

では、各問を見ていきましょう。

 

 

 

○大問1 融合問題(小問集合)

 

 

〔問1〕

 

平成24年度の大問1〔問1〕の類題でした。

 

今年は、「Ⅰ」の地図に経路を書き、そのルートを「Ⅱ」に記入する問題となっています。

解答を記入するまでの「手順」が増えたので、24年度よりも問題が複雑になりました。

 

 

 

〔問2〕

 

 

・奥州藤原氏

・前九年の役、後三年の役

・世界遺産、内部が金で装飾された阿弥陀堂→中尊寺金色堂

 

以上のヒントから、東北・岩手を示す「ア」が正答であると特定できます。

 

中尊寺金色堂に関しては、世界遺産登録される前の平成8年度の大問1〔問2〕で出題されました。

 

 

その他の選択肢:

 

「イ」は富岡製糸場

「ウ」は姫路城

「エ」は石見銀山

 

 

ちなみに、選択肢「ア」が示す「平泉の位置」は、過去に頻出しています。

平成27年度、平成25年度、そして平成24年度の大問1〔問2〕のいずれの選択肢「ア」も、全く同じ平泉を示す地点を指しています。

 

 

 

〔問3〕

 

「時事問題」です。

昨年実施された「18歳選挙」が題材となっています。

 

都立高校の入試では、設問の「周辺」に「時事ネタ」がちりばめられることがたまにありますが、「時事問題」であると言い切れるような設問は、これまで記憶にありません。

 

内容自体は、「選挙の原則」ですから、社会科の知識としては一般的なものですが、質的には、「新傾向」であるといっていいと思います。

 

 

ちなみに、私は昨年、このブログに以下のような記事を書きました。

 

2016年の時事問題

 

記事の中で、「選挙権の拡大」や「選挙の原則」について説明しています。

これを読んでいた受験生は、かなり有利だったでしょう。

 

 

ところで、入試に出る「時事問題」の対策としては、当たり前ですが、入試に出る可能性のある出来事を抽出し、絞り込んでチェックしなければなりません。

あちらこちらで「時事ニュース」を紹介するようなサイトなどを見かけますが、話題となったニュースを羅列しただけのものもありますね。

 

 

 

○大問2 世界地理

 

 

〔問1〕

 

世界地理の問題は、正答を導くのに国名と場所を特定する必要はありませんが、説明のために記号と国名を記します。

 

 

A ナミビア、アフリカ州・南半球

B アイスランド、ヨーロッパ州・北半球

C アルゼンチン、南アメリカ州・南半球

D ドミニカ共和国、北アメリカ州・北半球

 

 

Bに当てはまる記号を選ぶ問題なので、アイスランドについて書かれてある選択肢を選び出すわけですが、当然、「アイスランドに関する知識」の有無をもとめられているわけではありません。

 

 

設問の「テーマ」は、「海流」です。

海流について書かれた部分から「ヒント」をつかんで、それをもとに正答にせまります。

 

また、気候や地形、産物などの記述もまた、「ヒント」となっています。

 

 

「ア」のヒント

・東から西へ暖流

・熱帯低気圧→ハリケーン

・年間を通して高温、雨季と乾季→熱帯気候

・コーヒー

→D、ドミニカ共和国

 

「イ」のヒント

・北上する暖流→北半球

・暖流と偏西風の影響で緯度の割に(高緯度なのに)温暖→ヨーロッパ

→B、アイスランド

 

「ウ」のヒント

・北上する寒流→南半球

・西側にある山脈→アンデス山脈

・大草原→パンパ

・小麦、牧畜

→C、アルゼンチン

 

「エ」のヒント

・北上する寒流→南半球

・砂漠

→A、ナミビア

 

 

アンデス山脈を越えたアルゼンチン西部には砂漠が広がっています。

そのことを知っている受験生はAとCを混同したかもしれませんが、ともに「南半球」に位置することを読み取ることができれば、両者を解答の候補から外すことができます。

 

Bの位置は、かなりの高緯度であり、「年間を通して高温」ではないと判断できれば、答えを「イ」と特定できます。

 

 

海流に関する知識として、赤道付近から流れてくるものを「暖流」といい、極地(北極・南極)から流れてくるものを「寒流」いうことを知っておかなければなりません。

 

しかし、「常識的な発想」のもとに考えれば、一年中気温の高い赤道付近から「あたたかい海の流れ」が発生するはずであると思い当るはずです。

 

 

暖流は、地球上の「熱」を循環させる働きをします。

 

暖流の「通り道」は気温が高くなり、温暖な気候になるということも「社会」では必要とされる知識です。

 

世界地図を見るとよくわかりますが、ヨーロッパはかなり高緯度にある地域です。

たとえば、イタリアの緯度は、北海道と同じくらいです。ですから、イタリアよりも北にあるフランスやドイツなどの国は、冷帯に属する北海道よりもさらに北に位置していることになります。

それほど高緯度にあるヨーロッパの国は、大部分が温帯の気候です。

それは、暖流のおかげなのです。北大西洋海流という暖流によって、「熱」がヨーロッパ近海まで運ばれます。その「熱」を偏西風が陸地に運ぶため、ヨーロッパは高緯度地域であるにも関わらず、比較的過ごしやすい気候となっているのです。

 

実は、ヨーロッパの気候を特徴づける「暖流」と「偏西風」というワードは、社会の入試問題では頻出です。

 

特に有名なのが平成21年度の大問1の〔問1〕です。

それから、平成10年度の大問2の〔問1〕の「ウ」のように、ヨーロッパ西岸の気候を説明するのに、必ず用いられるものです。

 

今年の都立の問題は、「定型を外す」という企画意図を感じます。

あえて、西ヨーロッパの国ではなく、北欧のアイスランドを指定しているわけです。

 

アイスランドが火山国で、魚介類をよく食べる国だと知っている中学生は、ほとんどいないでしょう。もちろん、ポイントはそこではありません。

 

この設問の「テーマ」は「海流」なのです。

 

 

ちなみにCのアルゼンチンですが、都立入試ではよく取り上げられる国なので、基本的な知識をおさえておかなければなりません。

平成27年度の大問2の〔問2〕、平成23年度の大問2の〔問2〕、平成13年度の大問2の〔問2〕などで出題されています。

 

 

 

〔問2〕

 

W モーリタニア、北アフリカ

X ブラジジル、南アメリカ

Y キューバ、カリブ海の島国

Z アメリカ合衆国、北アメリカ

 

 

モーリタニアを知っている必要はありません。

受験生のほとんどは、アメリカ合衆国とブラジルを知っているので、それを足掛かりに考えます。

 

まず、「ウ」がアメリカ合衆国であることがわかります。

ブラジルがポルトガルの植民地だったと知っていれば、「エ」がブラジルであると判断できます。

 

 

そして、西アジア、北アフリカにイスラム教徒が多いこと、また、アフリカの多くの国がかつてフランスの植民地であったことを知っていれば、「イ」をWであると特定できます。

 

鋭い洞察力を持った受験生は、独立した「1960年」に反応するでしょう。

「1960年」は、いわゆる「アフリカの年」です。この年に多くのアフリカ諸国が独立したために、そう呼ばれています。

 

あるいは、なじみの薄い「モーリタニア」という国は、「新しい国」であり、そのために、独立前に使われていたフランス語がまだ使用されていると思いつくことができれば、「イ」を消去できます。

 

 

以上のような解答作業にしたがって、「ア」がYのキューバであると特定できます。

 

しかし、キューバがスペインの植民地であったこと、また、キューバ革命によって社会主義国となったことを知っていれば、よりシンプルにキューバを特定できるでしょう。

 

「キューバ危機」という言葉を、何となく覚えている人もいると思いますが、その内容を簡単に確認しておきましょう。

冷戦のさなか、アメリカのすぐ近くに位置するキューバに革命が起き、新たな社会主義国が誕生しました。キューバは、隣国のアメリカと仲たがいし、社会主義国の「親分」であるソ連と親しくなりました。それで、ソ連は、キューバに核ミサイルを配備しようとしました。それにアメリリカが猛反発し、一触即発で核戦争が起きそうになったのが、キューバ危機です。

地図を見ると、キューバがいかにアメリカに近いか、わかりますね。

 

 

 

ちなみに、キューバについて、「近年、世界各地から観光客を受け入れ、経済を活性化させている」と書かれていますが、私もキューバに行ったことがあります。

 

下の写真は私が、キューバに入国したときのものです。

タラップで、右手を上げているのが私です。

飛行機に乗るとき、「飛行機、ちっさ!」と思ってびびりました。

 

cuba-1

 

 

実は、この飛行機、エアコンがきかないので「ドライアイス」をイスの下に置いて機内を冷やすという素敵なシステムでした。離陸してしばらくして、モクモクと煙が出てくるので、最初、事故かと思って、死ぬほどあせりました。

乗っていた乗客はほとんどメキシコ人とアメリカ人だったのですが、しまいには煙でまわりが真っ白になって、これ、国際線かよ!って、つっこみながら、みんなで爆笑していました。

で、まあ、無事に到着したのですが、空港の、よくわからないへんてこりんなところに降ろされて、困惑しました。

それで、入国手続きをするターミナルまで、テクテク歩かされました。

 

でも、キューバは、いろいろと愉快な国でした。

また行きたいですね。

 

 

 

〔問3〕

 

P 南アフリカ共和国

Q ポルトガル

R ウルグアイ

S カナダ

 

 

ウルグアイは、南米の小国ですが、サッカーの強豪国として知られています。

サッカーファンにはおなじみの国なので、サッカーが好きな人には少しだけ有利だったかもしれません。

 

Ⅲの文章に「大西洋とインド洋を分ける東経約20度の子午線が通っており」とあります。

大西洋はアフリカ大陸の西側、インド洋はアフリカ大陸の東側に広がっています。

また、東経・西経0度の本初子午線がイギリスを通っていますので、Ⅲで述べられているのはイギリスの東側に位置する国であるとわかります。

 

以上のことから、Ⅲの文章で述べられている国はPの南アフリカ共和国であることがわかります。

 

そして、「2013年の日本の輸入額の上位3位の品目の中に…乗用車が入るようになった」という記述をもとに、Ⅰの表の選択肢「イ」と「ウ」を解答の候補にしぼることができます。

 

そして、2013年の貿易相手国に中国が入っていない「イ」が消去されて、「ウ」を選びます。

 

 

余談ですが、世界地理の「貿易」に関する設問に対処するときに、「貿易は、近い国と活発に行われる」という「傾向」を念頭に考察すると正答に近づけることがあります。

 

「貿易相手国」というのは、その国の「立地」を探る手掛かりになるのです。

 

アメリカ、と中国を外して考えてみましょう。

 

日本、イギリス、メキシコと活発に貿易している「ア」はカナダになります。

スペイン、ドイツ、フランスなどと活発に貿易している「イ」はポルトガルになります。

ブラジル、アルゼンチンなどと活発に貿易している「エ」はウルグアイになるわけです。

 

南アフリカ共和国は、ちょっと特殊な国で、アフリカ諸国ではなく他地域の国との貿易が活発です。

 

 

ちなみに、南アフリカ共和国との貿易に関する問題は、平成25年の大問2〔問2〕、平成7年の大問2〔問3〕などで出題されています。

 

また、カナダとの貿易に関する問題は、平成22年度の大問2の〔問2〕、平成9年度の大問2の〔問2〕などで出題されています。

 

 

 

 (ivy 松村)

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。