平成29年度都立高校入試の社会③

○大問3 日本地理

 

 

〔問1〕

 

 

A 山形県、酒田市・最上川

B 千葉県、銚子市・利根川

C 広島県、広島市・太田川

D 宮崎県、宮崎市・大淀川

 

 

 

「ア」のヒント

・三角州

・城下町

→A 広島市

 

「イ」のヒント

・流域面積16840㎢→最大の流域面積

・潮目、漁港

→B 銚子市

 

「ウ」のヒント

・冬期でも温暖な気候

→D 宮崎市

 

「エ」のヒント

・雪解けの時期の水の水量が最も多い→日本海側の豪雪地帯

・銘柄米、穀倉地帯

→A 酒田市

 

 

 

「三角州」といえば、広島市です。

これは「鉄板」なので、覚えておかなければなりません。

 

ちなみに、前回の記事でも触れましたが、以前に時事問題について書きました。

その中で、広島が出題されやすいと述べていました。

 

2016年の時事問題

 

この記事では、他にも「ブラジル」が「ポルトガルの植民地」だったことについて指摘していました。

「選挙」「ブラジル」「広島」について、「ドンピシャ」でした。けっこうな「打率」です。

 

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試では、圧倒的に有利でした。

 

 

 

太田川については、22年度の大問3の〔問1〕、平成13年の大問3の〔3〕、平成6年の大問3〔問1〕でも出題されました。

 

また、最上川については、平成15年度の大問3の〔1〕の「ウ」、平成9年大問3の〔2〕で出題されています。

 

 

 

〔問2〕

 

 

P 室蘭港

Q 新潟港

R 名古屋港

S 大阪港

 

 

Ⅱの文章に「南西から北東へ入り込む湾の奥に位置し」とあるので、PとQが消去されます。

 

さらに、「製鉄所」、「家庭用電気製品の工場」というヒントにより、Rの名古屋港が消去されます。名古屋港は、トヨタ自動車で有名な豊田市で生産された自動車の積出港です。

もし、正解がRならば、そのことに触れないはずはありません。

 

よって、答えはSの大阪港になります。

 

ちなみに、「家庭用電気製品の工場」とは、枚方市や門真市にあるパナソニックの工場のことです。また、工場跡地に建設されたテーマパークとは、「ユニバーサルスタジオジャパン」のことです。

 

 

Ⅰを検討します。

輸出額と、輸出品目に占める自動車および関連部品の割合の大きさから、「ウ」がRの名古屋港であることがわかります。

 

「エ」の輸出品目に「鉄鋼」があるので、「エ」を選びたくなりますが、輸出額が少なすぎることと、「鉄鋼」の割合が大きすぎることに気づけば、この選択肢を回避できます。「エ」は、「製鉄所」がある室蘭です。

 

「ア」が新潟で、大阪は「イ」になります。

 

1970年は、日本の高度成長期にあたりますが、この時期の日本は、「鉄鋼」が「花形産業」でした。この年、大阪港や名古屋港からも、盛んに「鉄鋼」が輸出されています。

 

現代の日本は、高度な技術力を活かした高品質の機械工業製品や「ハイテク製品」が輸出の主力になっていますので、「鉄鋼」の割合は大きくありません。

 

ですから、「エ」の室蘭のように、近年も「鉄鋼」の割合が大きいのは、かなり特殊です。

(今も「鉄鉱」が主力であるということは、ある意味で、室蘭は、産業構造が転換されていないということでもあります。)

 

 

この設問では、Ⅱの文章の「製鉄所」にひきつけられて、「エ」を選んで不正解となった受験生が多くいたはずです。

 

大阪という日本有数の港湾のデータとして、「エ」は釣り合わないということに気づくことができるかどうかが、本問の「ポイント」でした。

 

別の考え方としては、「高度経済成長期をけん引する役割を果たしてきた」港であるということなので、1970年に441億円という輸出額は少なすぎるということ、また、「もみ及び玄米」という輸出品目が上位3位に入るのはおかしいということ、それが、「エ」を消去する「決め手」になります。

 

 

「輸出港」という題材を使った出題は、平成12年の大問3の〔問2〕でも見られました。

この設問でも、名古屋港、大阪港がとり上げられています。

 

 

 

〔問3〕

 

Ⅱから、A村では、高齢化が進んでいることを読み取ります。

Ⅲから、唯一のガソリンスタンドが廃業した場合、A村の住人は村外にガソリンを買いに行かなければならなくなるということを読み取ります。

 

 

今年の「記述」は2題でしたが、どちらもそれほど難しい問題ではありません。

「採点」のことを考慮して作られていると思います。

 

 

 

○大問4 歴史

 

 

〔問1〕

 

「ア」は飛鳥時代、「聖徳太子」「推古天皇」「冠位十二階」「隋」

「イ」は平安時代、「平清盛」「平治の乱」「大輪田の泊」「宋」

「ウ」は弥生時代、「卑弥呼」「邪馬台国」「魏」

「エ」は奈良時代、「大宝律令」「唐」

 

 

それぞれの選択肢のトピックが、過去に取り上げられているかどうか調べてみました。

 

「ウ」の「卑弥呼」は、意外にも初出です。

 

「ア」は、平成24年度大問4の〔問1〕。

 

「イ」は、平成23年度大問4の〔問3〕、平成12年度大問4〔問3〕。

ちなみに、平成12年度の問題では、「大和田の泊」という表記でした。

 

「エ」は、平成25年度大問4〔問1〕、平成24年度大問4〔問1〕、平成22年度大問4〔問1〕、平成17年度大問4〔問1〕、平成年度9大問4〔問1〕。

 

 

 

〔問2〕

 

「元禄文化」は、17世紀後半から18世紀前半に栄えた文化です。

そのことを知っていれば、即座に「ウ」を選ぶことができます。

 

ちなみに、私は、過去に以下のような記事を書きました。

 

都立高校入試の社会対策

 

この中で、「絵画の歴史」を取り上げて、歴史の入試対策をレクチャーしています。

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試で、圧倒的に有利でした。

 

 

 

「見返り美人図」の作者である菱川師宣は、浮世絵の創始者とされる「画家」です。

 

 

過去に、「画家」や「絵画」が題材となった問題を調べてみました。

 

以下の年度で、「画家」や「絵画」の問題が出ました、

 

 

・平成24年度の大問4〔問2〕(A)

・平成20年度の大問4〔問2〕(B)

・平成13年度の大問4〔問1〕(C)

・平成10年度の大問4〔問2〕(D)

・平成9年度の大問4〔問2〕(E)

・平成9年度の大問6〔問1〕(F)

 

 

その「内容」を「時代順」に並べました。確認してみましょう。

 

 

※「高松塚古墳壁画」(E)

※…踊り念仏などによって修業や布教をする一遍の様子が絵巻物に描かれた。(B)

※一遍が…踊り念仏などによって布教活動を行い、時宗を開いていく「一遍上人絵伝」(C)

※「一遍上人絵伝」(E)

※雪舟は宋や元、明の画風を取り入れ、「破墨山水図」を描いた。(A)

※雪舟は、中国から帰国後、…水墨画を大成した(D)

※雪舟は、自然の風景を墨の濃淡で巧みに表現し「秋冬山水図」を描いた(F)

※狩野永徳は、…城や寺院の襖や屏風に絢爛豪華な絵を多数描いた。(A)

※俵屋宗達は宋の画法を取り入れ、「源氏物語関屋澪標図屏風」を描いた。(A)

※尾形光琳は、はなやかな色彩で「紅白梅図屏風」を描いた。(F)

※葛飾北斎は西洋の画法を取り入れ、「富嶽三十六景」を描いた。(A)

※葛飾北斎は、はっきりした線や強烈な色彩で「富嶽三十六景」を描いた。(F)

※黒田清輝は、明るいのびやかな画調で「湖畔」を描いた。(F)

 

 

 

こうしてみると、「菱川師宣」の「見返り美人」は、「意表を突く」出題だったことがわかります。

 

かねてより、私は、都立高校の社会の入試問題には、出題に「偏り」があることを指摘してきました。

たとえば、上の表を見ると、「一遍」や「雪舟」は3度も出題されていることがわかります。

 

こうした「偏り」をつかむことは、「受験指導」のひとつの「要素」ではあったわけです。

 

ところが、今年から、「傾向」が変わりました。

「歴史」だけでなく、「地理」や「公民」でも「初出」の単元や事項が多く盛り込まれました。

 

もちろん、「これまで出題されなかったものが、ある年に初めて出題された」というようなことはいくらでもあり得るわけですが、今年は、かなりの「量」が「投入」されています。

 

 

これは、意図的なものなのだろうと思います。

 

これまでも、都立高校の入試では、「受験者側の研究」が進むと、出題傾向が変更されるということが何度かありました。

これまでのものは、いってみれば、ちょっとした「マイナーチェンジ」程度のものだったのですが、今回は、かなり「作り込んできた」印象です。「意志」が感じられます。

 

 

今年の入試問題を「基準」にすると、「受験者側」は、今後、「何が狙われやすいか」という観点とは「別の視角」を持つ必要があるわけです。

すなわち、「これまで出題されていないものが狙われる」というものです。

 

 

「これまで出題されていたものが狙われる」+「これまで出題されていないものが狙われる」…。

 

それは、結局、「どれもが狙われる可能性がある」ということです。

 

「出題者側」は、「偏った出題」を修正することで、「受験生側」の「偏った受験勉強」を是正しようとしているわけです。

 

 

昨年までの都立高校入試の社会は、「過去の出題傾向」をおさえる勉強方法が「効果的」でした。

 

しかし、今年の入試の「変化」にともなって、指導方法を変えなければならない塾が出てきそうです。

 

 

ちなみに、当塾は、次年度も、今までどおりの指導を行います。

 

今年都立高校を受験した生徒の得点は、過去問演習時と比べてまったく落ちることはなかったので、一切変える必要がありません。

 

 

 

ついでながら書き添えると、「絵画の歴史」では、過去に出題された「内容」の他に、

 

・国風文化 「絵巻物」「源氏物語絵巻」

・鎌倉文化 「似絵」

・化政文化 「歌川広重」「東海道五十三次」

 

 

などもおさえておく必要が出てきたわけです。

 

 

 

〔問3〕

 

 

グラフから、当時の日本は、「綿花」の輸入が多く、「繭」の輸入が少ないことがわかります。

 

以下の知識を知っておかなければなりません。

 

・「綿花」→「綿糸」→「綿織物」

・「繭」→「生糸」→「絹織物」

 

 

ちなみに、「綿糸」(や「毛糸」)を作ることを「紡績」、「生糸」を作ることを「製糸」といいます。

 

「綿糸」や「生糸」の段階で輸出することもあれば、「綿織物」「絹織物」に仕上げて輸出する場合もあるわけです。

 

 

輸出額(外国に売る額)が輸入額(外国から買う額)を下回ることを「赤字」(損益が出る)といいます。

逆に、輸出額(外国に売る額)が輸入額(外国から買う額)を上回ることを「黒字」(利益が出る)といいます。

 

 

当時の日本は、一般に「綿織物」が普及していました。

国内の需要に対して、原料となる「綿花」の国内生産が追いつかなかったので、「綿花」を輸入していたわけです。

「綿糸」や「綿織物」の輸出も行われていましたが、原料の輸入額が製品の輸出額を上回っていたので、これは「赤字」の状態だったわけです。

 

一方、当時の日本は、国内で「繭」の生産を行っていたので、生産された「生糸」や「絹織物」を輸出すれば、「黒字」となりました。

 

 

 

〔問4〕

 

 

大正時代の出来事を選ぶ問題です。

大正時代は1912年から1926年までの期間ですが、この「期間」を覚えるのではなく、大正時代のトピックと照合させて、Aの期間が大正時代であると特定するわけです。

 

 

大正時代のトピック:

 

・1914年 第一次世界大戦

・1915年 21か条の要求

・1916年 吉野作造が「民本主義」を提唱

・1917年 ロシア革命

・1918年 米騒動、シベリア出兵、原敬内閣成立

・1919年 ベルサイユ条約、三・一独立運動、五・四運動

・1920年 国際連盟

・1922年 ワシントン会議

・1923年 関東大震災

・1925年 普通選挙法

 

 

以上の「年号」のうち、1914年と1919年、1925年を覚えておけば、後は「何とかなる」でしょう。

 

この問題でも、この3つの「年号」を知っておくことで、Aが大正時代であることが特定できました。

 

 

正答となる「ウ」の選択肢のうち、「ラジオ放送」はおさえておく必要があります。

 

平成21年度の大問4〔問4〕の「エ」、平成16年度の大問6〔問1〕の「イ」などの選択肢に、「ラジオ放送」が組み込まれています。

 

 

ところで、私は過去に以下のような記事をかいています。

 

都立高校入試の社会の取り組み方

 

 

都立の「歴史」は、大正時代をおさえることが重要であると説明しています。

その中で、大正時代を特定する「ワード」として、「ラジオ放送」などを覚えるとよいと、述べています。

 

この記事を読んでいた受験生は、今年の入試では、圧倒的に有利でした。

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

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