外来語の役割

日本語には主に三種類の言葉があります。

 

「和語」「漢語」「外来語」です。

 

和語は、「やまとことば」とも呼ばれ、ひらがなや訓読みの漢字で書き表します。

もともと日本にあった言葉で、日常的な物事を言い表すことが多く、親しみやすく、柔らかい感じがします。和語は、意味の範囲が広いのが特徴です。

 

例:「暮らし」「集まり」「わざ」など

 

 

漢語は、中国から伝わった言葉のことで、音読みの漢字で書き表します。古代の中国の書物に使われていた言葉を輸入したものが、基本的な語彙となります。また、日本人自身が、漢字を組み合わせて作った熟語もたくさんあります(和製漢語)。

漢語は、歯切れがよく、厳格なイメージの言葉です。和語に比べて、言葉が示す意味の範囲が狭いのが特徴です。そのため、公的な報告書を作成したり、学問的な研究をしたりするときには漢語が多く使われます。

 

例:「生活」「集団」「技術」など

 

 

外来語は中国以外の外国の言葉が取り入れられ、日本語として定着したものをいいます。基本的にカタカナで書き表しますが、「煙草(タバコ)」のように、漢字が当てられているものもあります。

外来語は、これまでにない新しい意義やイメージ、質感を感じさせます。広告などで、新鮮でおしゃれな雰囲気を作りだすために外来語が使われることもよくみられます。

反面、カタカナで書くので、語の意味を類推しにくく、意味が伝達しにくいというマイナス面があります。

 

例:「ライフ」「グループ」「スキル」など

 

 

 

よく誤解されることがあるのですが、「外来語」は「外国語」ではなく、日本語の語彙です。ですから、もともとの発音と違っていたり、もともとの意味とは違う意味で使われたりしていても、基本的には問題はありません。日本語の話し手同士の間で、意思疎通の材料=言葉として機能しているかどうかが大事なのです。

 

 

日本語の中で外来語は大きな役割を担っています。その役割とは、日本社会に新しいものごと、考え方を示し、定着させるという働きです。

 

例えば、近年、注目されている言葉に「インフォームドコンセント」というものがあります。「インフォームドコンセント」とは、医師が患者に病状を説明し、医療内容を話し合いで決めていくことです。

これは、これまでの日本にはなかった概念で、ほかに言い表す言葉がないため、英語の発音をそのまま写した「インフォームドコンセント」という外来語として取り入れられました。

 

もちろん、既存の語彙を組み合わせて新しい言葉を作ることもできます。しかし、和語や漢語ではなく外来語であらわすことで、この言葉が示す意味内容が、これまでにない新しい概念であることを、世間に意識づけることができるのです。

 

同じような経緯で導入された「ストレス」や「リサイクル」といった外来語は、すでに広く一般に定着しています。

 

 

 

ところで、現代は、あまりにも「外来語」があふれているとして、危惧を感じている人も多くいらっしゃいます。

 

それは、非常にまっとうな感覚だと思います。日々世の中で、たくさんの言葉が創作されたり、取り入れられたりしていますが、言葉は、その受け取り手に意味が伝わらなければ、言葉としての機能を果たしているとはいえません。

 

もともとある日本語で言い換えることができる概念であっても、カタカナで言い表すこともよくあります。

 

「アカウンタビリティ」(説明責任)、「イノベーション」(革新)、「スキーム」(計画、図式)といった言葉は、研究機関や企業の報告書などで頻繁に用いられるようになってきました。

これらの概念を外来語として取り扱うことの意図はよくわかります。外来語で表されたときには、インパクトや斬新さ、知的な雰囲気を感じさせます。

 

しかし一方で、まだまだ一般的に浸透しているとはいいがたい言葉を使えば、言い換えや、説明などが必要になってきます。つまり、説明や認知にコストがかかってしまうことになります。(おっと、「コスト」は「労力」というべきでしょうか。)

 

外来語を使用するときに気を付けなければならないのは、本当にその言葉を使って表したほうが、自分の意図や思いが相手に伝わりやすいかどうか、という視点で言葉を選択するということではないかと思います。

 

今までにない新しい提案をしたいときには、新しい言葉が必要ですし、既成の言葉を使っても主旨を損なわないのであれば、よく知られた言葉を使ったほうがよいかもしれません。

 

言葉は、本来おしゃれのアイテム(うん、「資材」よりわかりやすいな…)ではなく、コミュニケーション(「意思伝達」はかえってわかりづらいな…)の道具ですので、伝わりやすいかどうか、ということを第一に判断するべきなのです。

 

 

 

(ivy 松村)