塾の合格実績の話①

新聞の折り込み広告などをみると、大手塾の華々しい合格実績の数字が目に入ってきます。

塾の教師として、感嘆、対抗心、羨望、嫉妬、興ざめと訝り…さまざまな感情が喚起されます。

 

 

よく知られているように、そのうちの何割かは虚偽です。

塾が、虚栄心と、営利的な理由で、合格実績を水増しすることが、これまでにも何度も社会問題になっています。

 

 

昨年度は、大阪の名門、北野高校の合格実績をめぐって、2つの塾が「バトル」を行うという出来事がありました。

 

橋下氏母校の合格実績めぐり大手塾2社、仁義なき「にらみ合い」

 

360人の定員の北野高校に、馬渕教室は182人、類塾は175人、正規の塾生が合格したと発表していました。合計は357人となります。その他の塾から合格した生徒が3名以上確認できているため、一方の塾が、嘘をついているとしてもう一方の塾を告発したのです。

 

 

少し前になりますが、「市進学院」などを展開する「市進教育グループ」の2010年度の大学合格実績に対して、消費者庁が、景品表示法に基づき、再発防止を求める措置命令を出したこともありました。

 

学習塾等を経営する事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について

 

パンフレットやチラシなどに記載されていた、「市進グループ」の合格者数、東大43人、京大33人という数字は、実際には東大15人、京大1人だったのだそうです。

 

 

 

最近は、こうした誇大な宣伝は、表面上は沈静化しているようにも見えます。

そのぶん、巧妙化しているのかもしれません。

 

80年代、90年代は、学習塾が「教育」にとって「悪者」扱いされていた時代ですが、そのころの文献にあたってみると、さらに多くの例が紹介されています。

 

 

偽りの数字が集積されるに至るには、いくつかの道筋があります。

 

過失の可能性は極めて低いといえます。

なぜなら、学習塾という組織が、最も強く関心を寄せる数値の取り扱いを誤ることは考えにくいからです。

ですから、現実を反映しない嘘の、過剰な合格者数の見積もりは、故意に行われていると思われます。

 

それには、いくつかのテクニックと確立された方法論があります。

 

ひとつは、意図的にミスリードを誘うような「見せ方」を用いる方法です。

「合格率」「占有率」「過去○年の合計」などはその典型ですが、これはまだ紳士的であるといえます。

 

 

さらに、「グループ」全体の実績を「合算」する方法もあります。

この場合、不注意を装って、「二重カウント」を行うことも珍しくないのでしょう。

例えば、グループ内の個別指導と集団指導の両方を受講していた生徒がいた場合、その「グループ」の合格者数は、それぞれが「うっかり」カウントしてしまい、+2となっているかもしれません。

 

 

また、最近はM&Aなど、塾企業の買収や合併によるグループ化が進んでいますが、A塾のグループ内にB塾が吸収された場合、A塾の実績の数値が「A塾+B塾」となることがあります。これは「グレー」ではなく「アウト」なのですが、一般的な手法です。

 

 

最もポピュラーな手口は、塾生としてカウントされない「テスト生」や「講習生」などを、自塾の合格者に含めるやり方です。

 

大手の塾などで、判定模試や「冠模試」を、「テスト生」を集めることを目的として行うところもあるそうです。

模試と解説授業をセットにして売り出し、「指導」のアリバイを作り出して、自塾の合格実績にカウントするのです。

夏期講習、春期講習のみの生徒は「当然」カウントしますし、場合によっては「体験授業」を行った生徒もカウントします。

 

近年は、通信教育や教材会社が学習塾経営に参入しはじめていますが、これらのグループが合格実績をどう扱うのか、注目されています。

 

 

(ivy 松村)