学習塾業界を健全化するためには

さて、これまでに、塾の合格実績の問題について、このブログで述べてきました。

 

その一部は、少し前に書いた「学習塾」についての論文の内容と重なるものです。

それを書くために、学習塾や受験に関する資料や文献、記事などを収集し、読みあさりました。

たぶん、100本近くの関連の論文や報告書、記事に目を通しています。

 

私が取り組んだ研究テーマは、 学習塾の営利企業としての性格はいかにして助長されてきたのか、というものです。

 

その中で、学習塾の産業としての発展と、学習塾にまつわる社会問題は、ともに行政や学校が、学習塾を「教育システム」の一部として認めなかったことに起因する、という分析をしています。

 

 

そして、「提言」として、行政や学校が、わずかな手間をかけて塾産業に介入することで、塾業界が今よりも「健全」になる可能性について触れています。

 

 

いろいろと事情があって、納得のいく形にすることができませんでした。

いずれ、時間ができたときに書き直そうと思っています。

 

 

論文の元になった文章の一部を掲載したいと思います。(少し加工しました。)

 

 

 

学習塾企業がより多くの利益を得ようとするならば、人件費の削減が最も効率的で効果的な方策となる。競争が激しくなっている近年は、さらなる人件費の圧縮とともに、従業員に対する業務量の増大が起こっている。特に、広域展開を行って校舎数を増やしている学習塾では、深刻な講師不足が生じている。そのために、教務技術の未熟な学生アルバイトを雇ったり、準備時間を確保できないまま正規従業員に授業を担当させたりするような状況が常態化し、学習指導の質が低下しているのである。

 

サービス産業にとって、サービスの質の悪化は、本来ならば衰亡にかかわる懸念材料となる。しかし、学習塾というビジネス構造には、サービスを受容する顧客である生徒と、対価を支払う需要者である親が、それぞれ別個であるという特殊性が備えられている。したがって、親に対してサービスの質の高さを提示することができれば、顧客を獲得することができるのである。

 

 

一般的に、子を持つ親は、自分の子をなるべく偏差値の高い上級学校に入れたいという希望を持っている。そして、各塾の合格実績は、それぞれの学習塾がどれくらいの進学指導力を持つのかを客観的に示す数字であると信じられている。そのため、学習塾は合格実績を何らかの主観的な判断を通してなるべく高く見積もるのである。

 

これまでにも、新聞や雑誌等で、合格者実績の水増し表示が何度も大きく取り上げられてきた。学習塾業界は多くの粗悪な問題を抱えているが、それらのほぼすべてがこの「ごまかし」に象徴されているといってもよい。

 

 

学習塾業界に蔓延しているさまざまな問題が解決されるためには、まず、「健全な淘汰」が必要である。単純に、劣悪な事業者を失くすことは消費者にメリットをもたらす。また、過当な競争が緩和されることで、従業員に余裕が生まれるだろう。

 

そのためには、消費者である親や子供が、良質な事業者とそうでない事業者を見分け、選択することができる仕組みを構築しなければならない。

 

良質な事業者であることを証明する最も説得力のある情報は、やはり合格実績である。したがって、各学習塾の受験者数・合格者数を透明化することが、健全な産業構造を導く第一歩となる。ごまかしのきかない統計的な合格者数と受験者数がわかれば、各塾の指導力を客観的に図る最有力の指標となるだろう。

 

正確な合格者の情報を集めるために、学習塾業界ではなく、学校が生徒の通塾歴を調査する必要がある。学校側が聞き取りを行ったり、受験票に通塾歴を記入する項を設けたりすることで、受験者数・合格者数を明確に把握することができる。さらに、学校側に行政への報告を義務づけ、行政がそれを公表することで、数字の信頼性を担保するのである。

 

そのデータは、ブランドや屋号によって合算されるのではなく、それぞれの校舎・教室ごとにまとめられる。消費者が通塾を検討する上で、その対象となる地域にある学習塾の、それぞれの校舎・教室の指導力を判断する材料の提供を目的とするものだからである。

 

以上のような措置によって、各学習塾の合格者数と合格率を、消費者が認知することができる。

 

やがて、学習塾の企業努力は、講師の受験指導力の養成、指導体制の構築と整備に向けられることになるだろう。生徒を獲得するためには、権謀的な戦略ではなく、生徒の学力を伸ばすことが必要になるからである。

 

 

上記のように、学校・行政が介入し、合格実績を厳密化することで、学習塾の健全な競争が促されるはずである。それは、消費者だけでなく、学校・行政にとっても好ましいものでありうる。さらに、学習塾業界全体にも結局はよい影響をもたらすものとなるのである。

 

(ivy 松村)