「自習の授業」

平成30年度の都立高校入試で、「自校作成」が復活することになりました。

 

喜ばしいニュースですね。

 

 

 

さて、夏期講習第Ⅱ期が終わりました。

 

夏期講習から参加している生徒たちも、塾での勉強に慣れてきたみたいです。

 

一部のクラスを除き、国語の授業で漢字検定の対策を行っています。

 

漢字検定というものを塾の指導の中心に据えることに疑問を持たれる方がいるかもしれないので、説明しようと思います。

 

 

 

一番多い勘違いは、「楽をしようとしている」という見方なのだろうと思います。

 

 

「楽かどうか」という考え方をしたことがないので、ちょっとよくわかりませんが、はっきり言ってしまえば、国語の授業をしていた方が「気楽」ですし、気分がいいです。

 

国語の文章題の解説なんて、あんなに楽しいことはないと思っています。

 

 

 

中3は全員が漢検を受けますが、基本的に授業外で自主的に取り組んでもらっています。

国語の授業では、ここ数日「韻文を含む文章」を扱っています。

 

今日の授業の題材は和歌でした。

 

「ある瞬間」を、「言葉」によって完璧な形に切り取ったとき、その「言葉」は1000年後の現代にまで受け継がれるものになる、和歌には、「永遠」を作り出す力があるのだ、ということを柄にもなく、興奮して語ってしまいました。

 

反動なのかもしれませんが、自分でも「いきいき」しているわけです。

私の場合は、普通に授業をしたほうが、疲れません。

 

 

講習の中学1、2年生の国語の授業は、特に「コンパクトさ」が求められるので、普段以上に授業計画が「シビア」になります。ほとんど必ず毎回の「板書案」を作成します。

1回の授業の準備に、30分から1時間くらいかけるでしょうか。多分、塾の人間の中では多い方だと思います。

 

 

しかし、「漢検のための準備」には、文章題のさらに数倍の時間と労力をかけています。

 

今年は、「内容」も昨年から一新しました。昨年もかなり入念に準備しましたが、今年はその倍の時間と労力をかけました。教材の選定には数か月間頭を悩ませましたし、オペレーションやシミュレーションに関しても、何回も修正しました。

 

本当に「楽」をすることが目的なのであれば、去年と全く同じものを用意すればいいわけですが、「実際の漢字検定の問題」に対応する力を、限られた期間で身につけていけるように、教材の組み合わせや構成を変えることにしたのです。

 

ちなみに、3級や準2級は、教材費+コピー代も昨年の倍以上になっています。

 

 

生徒たちに漢検対策に取り組んでもらっている間も、さながら「執事」のように構えて、「オーダー」に、すぐに対応できるように、教室全体の「様子」を注視し続けています。

具体的に私がどんな「役割」を果たしているのかは、生徒たちはよくわかっているはずです。

大きなやりがいと喜びを感じながらやってはいますが、精神的な疲労も大きくなります。

 

 

 

昔の自分がそうだったのでよくわかるのですが、塾の講師の中に、漢字検定を軽んじて考えていたり、冷ややかな目で眺めていたりする人が多くいるはずです。

 

一部の高校の併願優遇や推薦入試で活用できるとはいえ、「受験勉強」という「目的」から考えたときに、「直接的なメリット」は少なく、「効率的な活動ではない」と思えてしまうわけです。

 

その考えはよくわかります。私も昔は「中身を知らずに批判する人間」だったのですから。

漢字検定に力を入れるのには、「別の理由」があるからなのだろうと思われてしまうことも理解しています。おそらく、「効率」を考える人ほど、奇妙に思えるはずです。

 

また、教師が「解説」をするでもなく、ひたすら漢字の問題を解かせて、漢字の練習をさせているわけです。「そんなの、自分でできる」と思う人もいるはずです。

 

 

 

最初に「発想」が思い浮かんだのは、数年前にある個人塾で漢検に携わったことがきっかけでした。

そのときに、これは学習意欲を醸成するのに有効なイベントとして使えると確信しました。

 

そして、「漢検」の学習内容には、実は「かなり高度な知識」が含まれているということを知ったのです。それまでの私は、多くの塾講師と同じく、「漢検」に「無知」でした。

 

 

過去に、私が受け持った中3の受験生のクラスでは、夏期講習で漢字や知識の「確認テスト」を毎日課していました。かなり深い内容の知識を大量に覚えなければならず、生徒たちはそのための準備と、間違い直しや復習に、連日1時間近くの時間をかけていました。

たぶん、同じような指導を行っている塾はたくさんあると思います。

 

3級や準2級の漢検対策の内容は、進学塾で行う「確認テスト」と遜色ないレベルの問題が並べられています。

また、漢検対策の問題集を確認してみればよく分かることですが、単純な知識を問う問題ばかりではなく、思考力や分析力を必要とする問題も随所にちりばめられています。

むしろ、国語の総合的な学力を養成するうえで、漢検対策を取り入れることが非常に有効だと判断しました。

 

受験生が、夏期講習の「確認テスト」の替わりに漢検の教材に取り組むことは、このうえなく効果的な学習になり得るのです。

 

 

 

それから、「授業を行わない塾」があるということを知ったのがもうひとつの契機でした。

それを知ったときには非常に驚きましたが、考えれば考えるほど「妥当」なのです。

 

 

「教育」には、2つの「柱」があるといえます。

 

ひとつは、「知識や方法」を伝授することです。

もうひとつは、相手の「行動や考え方」を陶冶していくということです。

 

 

塾の人間は、どうしても前者に傾斜しがちです。それは、学習塾は、授業の技術、すなわち「話術」こそが、もっとも価値のある「商品」であるという通念の上に成り立っている「産業」だからです。そのために、「私たち」は競って「教務力」の宣伝を行うわけです。

 

 

一方、「授業を行わない塾」は、生徒にひたすら「自習」をさせるわけです。もちろん、教材の手配や学習環境の整備に細心の注意が払われています。

 

そこには非常にシンプルな事実が示されています。つまり、「自分で勉強できるようになれば、塾教師の『話術』など必要ない」ということです。

 

 

一般的な生徒たちがなぜ「塾」に通うのか、といえば、自分で勉強できないからです。

自分ひとりでは勉強できないので、「誰か」に教えてもらうわけです。

 

しかし、ひとりで解説を読み、ひとりで問題を解き、ひとりで答え合わせをして、ひとりで復習して、ひとりで再度確認ができるのであれば、「『塾』はいらない」のです。

 

「授業を行わない塾」は、「ひとりで勉強できる力」を養っているわけですが、塾は「話術」を売るところであるという固定観念にとらわれてしまうと、その営業形態は「パラドクス」を内包しているように思えてしまうでしょう。

 

しかし、「教育のもう一面」に気づくことができれば、「自習」を促すことで学力を向上させる「指導」は、「教育事業の本質」に依拠したものであることが理解できるはずです。

 

 

学習塾の「存在意義」というものについて、根源的に思索を巡らせてみたとき、極めて単純な「答え」に行き着きます。それは、「勉強をさせる」というものです。

 

 

「塾に行って、ひとりで勉強して帰ってくるなんて、ばかばかしい」と思ってしまう人は、大勢いると思います。

 

ちょっと角度を変えてとらえ直してみましょう。

 

 

「ひとりで勉強できるようになったなんて、なんて素晴らしいことなのでしょう。」

 

 

 

現実には、多くの生徒にとっては、塾や予備校の指導は必要です。

良質の塾や予備校には、効率的な指導法や教授法、圧倒的な受験テクニック、徹底的に分析された入試情報、綿密な構成のカリキュラム、洗練された学習マニュアル・・・などが蓄積されています。

 

 

理想の塾のあり方を模索する中で、「教授型」と「自習支援型」の「ハイブリッド」な形を作っていくのがいいのではないかと考えるようになりました。

 

 

 

漢字検定は、その対策をとおして、学力を向上させてくれます。

 

また、「自習文化」を熟成させていくことが、目的の一つとしてあるわけです。

そして、自習の方法を身につけてもらうための「訓練」であると位置づけているものです。

 

 

他にも細々とした理由はありますが、大まかな理由は以上のようなものです。

 

 

 

「解説授業をしないなんて、手抜きだ」とか、「自習なんて、自分でできる」と考える人がたくさんいるのはわかっています。

私が(勝手に)「お手本」にさせてもらった塾も、その部分で苦労をされているようにみうけられました。

 

 

「自習なんて、自分でできる」という考えは、ある意味で「当然」なものですが、ちょっと危うい気がします。「柱」が一本、完全に抜けています。

 

「自習の価値」を貶めながら「教師の話術」を過度に期待するようになるので、依存性の高い不安定な「学習モデル」が形成される危険性があります。

 

 

たまに、「自分の成績が悪いのは、教師の教え方が悪いからだ」と考えている人がいます。

もちろん全てを否定することはできませんが、結局そういう考えが、学力の伸長の妨げになっているのではないか、と思うことが多くあります。

 

確かにその教師の教え方はまずいのかもしれませんが、自分で学力を伸ばす方法はあるのです。「自習」というものを「不当な労働」とみなすような考え方をする人は、もっとも万能で応用性が高く、柔軟な、優れた学習方法を放棄しています。

 

 

 

夏期講習で、生徒たちは「自習の仕方」を身につけています。

 

 

夏期講習第Ⅲ期は7月31日からです。

 

さらに、はりきってまいりましょう。

 

 

 

(ivy 松村)

 

夏期講習第Ⅰ期終了

夏期講習の第Ⅰ期が終了しました。

 

 

中2の英語では、助動詞を勉強しています。

 

 

何点か説明します。

 

 

まず、may notの短縮形の「mayn’t」です。

授業では「mayn’t」は使わないと説明しましたが、一応存在します。どこかで見かけることがあるかもしれません。

 

しかし、英語の文法の問題に使われることはありませんので、答えの可能性から除外してください。

 

 

 

次に、「お手伝いしましょうか」という意味の英語ですが、3つの文が作れます。

 

・Shall I help you?

・Can I help you?

・May I help you?

 

 

この中で、使いたくなるのは「Shall I help you?」です。

 

shallは、自分から相手に「申し出」をするときの表現なので、もっとも自然な表現に思えます。参考書にもこの表現がよく載っています。

 

もちろん間違いではありませんが、実際には「Shall I help you?」はそれほどよく使われる表現ではありません。

 

自分が相手を手伝うことの「許可」をもらうという「構図」が好まれるため、英語話者の間ではmayやcanが使われることが多いのです。

 

このなかで、mayがもっとも丁寧な言い方になるので、実際に使うときには「May I help you?」と言う方がいいでしょう。

 

 

また、お店などで店員がお客に声をかける場合にも「May I help you?」が使われます。

これは、「必要であれば商品などの案内をして、お買い物の手伝いをしましょうか」という意味で使われているわけです。参考書や教科書では、これを「いらっしゃいませ。」と訳しています。

一種の「慣用表現」として覚えておきましょう。

 

 

 

次のような表現には注意してください。

 

・Shall I open the window? →「窓を開けましょうか?」

 

・Can I open the window? →「窓を開けてもいいですか?」

・May I open the window? →「窓を開けてもいいですか?」

 

 

canやmayが持つ本来の意味は「許可」です。

上のような表現の場合には、相手に「許可」を求める内容になるので、気を付けましょう。

 

 

 

また、相手に頼むときの言い方にも注意が必要です。

 

・Can you open the window? →「窓を開けてくれませんか?」

・Will you open the window? →「窓を開けてくれませんか?」

 

 

「依頼」を行うときにはcanとwillが使われます。

mayではありませんので気を付けてください。

 

 

 

それから、本日お渡しした助動詞の「まとめ」が載っているプリントについてですが、授業で触れなかった表現が少し載っています。

それは、いずれ習う内容ですが、今それを説明に組み込んでしまうと、多くの人が混乱してしまう懸念があったので、説明を省いたものです。

 

問題演習に必要な知識は、板書して、ノートに書いてもらったものが中心です。

教えられていない部分は、演習の問題には出てこないので無視してください。

 

(覚えられる人は、覚えておくといいと思います。)

 

本日お休みだった方には、後日お渡しします。

 

 

 

英語の助動詞については、中2が学習する内容としてはかなり高度なものを扱いました。

本科の授業よりも深い内容だったので、塾内生にとっても大変だったと思います。

まして、はじめて塾の授業を受けた人は、びっくりされたでしょう。

 

正確に調べたわけではありませんが、おそらく、助動詞に関して、学校の教科書の2、3倍、一般的な塾の教材の1.3倍くらいの内容を4日間で網羅しています。

現在は「パターン演習」を行っていますが、これから、さらに複雑な問題にチャレンジします。

 

 

 

ちょっと自信を無くしかけている人は、学校の勉強とは異なった学習をしているということに留意してください。

 

学習内容やレベルもそうですが、「アプローチ」も大きく異なります。

 

学校の勉強は、解答を間違えると、成績を下げられてしまいます。

ですから、「常に正解を記入する」取り組みになります。

 

 

一方、塾の方は、「間違えながら身につけていく」というやり方をすることがあるわけです。

まだ、完璧に飲み込めていなくても、とりあえず問題を解き始めます。

 

間違えて、正解を確認して、復習をして、また問題を解いて、というサイクルを循環させて、より早く、より強固に知識や解法を吸収していきます。

 

 

間違いを何度も繰り返してしまうことは問題ですが、「導入」の時点で全てを理解できていないのは、ある意味で織り込み済みなのです。

 

塾が、そういう「アプローチ」を取るのは、学校に比べて、圧倒的に短い授業時間しか確保できないからです。

 

短時間で高い効果を得るために、大きな負荷をかけるやり方が必要なのです。

 

 

 

「塾に慣れる」というのは、「間違うことから始める」ということに慣れることだといえるかもしれません。

「間違いに慣れる」のはよくありませんが、間違いを怖がる必要はないのです。

 

 

 

ちなみに、私は、いろいろ雑談をしたり、時には歌を歌ったりしています。「ブレイク」をコンパクトにしているわけですが、それは、塾の教師は、だらだらと長時間のおしゃべりをすることが許されていないからです。

 

私は、基本的に授業中は瞬間的に盛り上がれる題材だけに反応します。一発ギャグや替え歌を好むのもそのためです。「ボケ」よりも「ツッコミ」志向なのもそのためです。

 

(私は、本来「ボケ」の人間なので、たまに「ツッコミ待ち」をしているときがあります。気づいた人は、「ツッコミ」をいれてください。ただし、「寒いツッコミ」はやめてください。)

 

 

 

次回の中2の授業は26日です。

 

はりきって行きましょう。

 

 

(ivy 松村)

 

 

 

夏期講習2日目

夏期講習の2日目が終了しました。

 

今日が終業式だった八王子市の小中学校は、ようやく夏休みに入りました。

 

中3で、最後まで部活やクラブチームの活動に取り組もうと決めた生徒は、区切りをつけるまで、もう少しです。今が、一番きつい時期かもしれません。分刻みのスケジュールの生活で頑張っています。

一方、朝の10時から21時まで根を詰めて勉強に取り組んでいる生徒もいます。

 

 

 

各学年、夏期講習の第Ⅰ期と第Ⅱ期は課題の量を少なくします。

その間に、夏休みの宿題を終わらせてください。

講習の中盤から、課題が増えていきます。

 

 

夏期講習から来てくれている生徒たちも、2日目は緊張が取れてきた様子です。

これから長い夏休み、一緒に勉強していきます。自分の「居場所」として、落ち着いて勉強に打ち込めるようになってもらえたら、うれしく思います。

 

一緒に頑張ろう。

 

 

 

成績表のコピーを取らせていただきたいので、まだ持ってきていない人は、お持ちくださるようお願いします。

 

 

 

それでは、明日以降も張り切ってまいりましょう。

 

 

(ivy 松村)

 

 

浪人生の話

春頃から「大学浪人生」に関するデータや資料を集めています。

暇を見て、その「まとめ」を書こうと思っていたのですが、もう夏期講習が近づいてきて、まとまった記事を書くのが、ちょっと困難になってきました。

それで、ちょっと「簡易版」の記事だけでも書くことにしました。

 

夏期講習が来る前にこれを書いておきたかったのです。

 

 

 

しばらくいろいろ調べていたのですが、ちょっと難航して時間を取られてしまいました。

 

2年前に、文部科学省が発表している「学校基本調査」のデータを使って浪人生についての記事を書きました。

 

その後、「追跡」ができなくなりました。

昨年の「学校基本調査」から、「高校卒業年別入学者数」の項目がなくなってしまったからです。そのために、昨年の大学進学者のうちの浪人生の割合はわからないままです。

 

それから、全国の進学校の進学状況を調べていて、ちょっと気になったので、「東京都の大学進学率」を調べてみようと思ったのですが、これを調べるのがちょっと難しいということがわかってきました。

 

東京都に設置されている高校からの大学進学率を得ることはできそうでしたが、「東京都の大学進学率」を調べることは、ちょっと厳しそうです。

 

 

さらに、「大学浪人生」を正確にカウントできないという問題がありました。

「大学に進学しなかった浪人生」を大学進学率に含むことはできませんが、彼らの多くは将来大学進学します。当然、現役生だけを対象とした「進学率」には意味がないので、「将来大学に進学する浪人生」を加えた大学進学率を出したいわけです。

 

しかし、浪人生が進学するまでは大学進学率に反映させることができないので、現役と浪人の「大学進学者数」を合わせて「現役世代の人数」で割って、とりあえずの大学進学率を出すことしかできないわけです。

将来大学に進学する「見込み」の浪人生の数と、その年の浪人を経て大学に進学する過年度生の数は、ある程度「相殺」されて実際の数値に近づくでしょうが、やはり正確な数値であるとはいえません。

 

それでは、東京に住む同年齢の大学生人口を同年齢の人口で割ったらどうか、と思いましたが、大学進学に合わせて上京してきた学生が多くいるので、これも意味がありません。「東京都の大学進学率」に地方出身者が含まれてしまうからです。

 

 

「東京都の大学進学率」が、他県に比べて高いことは間違いありませんが、正確な数値はわからないままです。およそ6~7割になるように思いますが。

 

 

 

私は、東京の大学進学率を高めている二つの要因に着目しています。

 

ひとつは、東京は、地元に多くの大学を抱えた地域であるということです。

選択肢が多く、かつ、親元から通学できるという経済的なメリットがあります。

 

また、もうひとつは、東京は人口が多く、同時に高校の数が多いので、高校ごとの学力が非常に細分化されるということです。

地方の進学校では、偏差値70オーバーの生徒と偏差値58程度の生徒が混在することは珍しくありませんが、東京都の、特に都立高校は、同じ高校に通う生徒の偏差値は非常に近似します。それは、進学指導や受験対策の「密度」をより高めるはずです。

 

 

こうした要因が、「浪人指向」にどう影響しているのか知りたかったのですが、それは、今後の課題ですね。

 

 

 

さて、私は、全国の進学校と東京都の高校を中心に、各学校の浪人の割合を調べました。

 

そのうち、都立高校の「浪人率」を中心にして見ていくことにしましょう。

 

 

去年の卒業生を対象に、都立高校の浪人の割合を算出しました。今年のものではないので注意してください。

下のデータは、進路の情報を公表している高校を対象に、平成27年度の「浪人率」を出したものです。

 

 

 

現役大学

進学率

 浪人率
西 47.7% 52.0%
日比谷 54.6% 45.1%
国立 54.9% 45.1%
立川 62.8% 36.9%
武蔵 66.7% 33.3%
八王子東 67.1% 32.9%
戸山 72.5% 27.2%
青山 73.8% 25.1%
小山台 73.5% 24.4%
大泉 73.0% 24.0%
国際 73.1% 22.9%
富士 76.8% 22.7%
豊多摩 72.4% 21.7%
国分寺 77.0% 20.8%
新宿 79.4% 20.3%
調布北 76.9% 19.7%
日野台 77.7% 18.5%
町田 78.5% 18.3%
竹早 81.3% 17.5%
白鷗 76.6% 17.4%
駒場 80.0% 16.7%
両国 82.2% 14.7%
城東 83.3% 12.6%
北園 81.5% 12.4%
三田 81.5% 12.2%
小金井北 84.9% 12.1%

 

 

 

高校の「ランク」と浪人の割合は非常に高い相関があるといえます。

偏差値の高い高校ほど、浪人する生徒の割合が多くなる傾向があるわけです。

 

上位の進学校では、大学進学を妥協をしない生徒が多くいます。そのために、浪人という「選択」は極めて「現実的」なものなのです。

 

 

 

上のデータでは、戸山高校の序列と「浪人率」が相応していません。

別のデータでは、戸山高校の「浪人率」は32.9と出ています。こちらの方が正しいのかもしれません。

 

複数のデータを対照させてみると、照合しないものがいくつかありました。

元のデータ(生徒数や進学者数)が間違っている可能性もありますので、あくまでも「参考程度」にお読みいただきたいと思います。

 

 

 

参照として、東京都の国立大附属校も見てみましょう。

 

 

浪人率
学芸 49.3%
筑附 42.3%
筑駒 41.7%
東工大附科技 32.1%
お茶の水 28.6%

 

 

 

やはり、高いですね。

あえて載せませんが、私立も、伝統的な進学校の「浪人率」は非常に高くなっています。

 

ひとついえることは、ある「人生観」を共有する者たちにとっては、浪人は一般的な事象であるということです。

それは、あまりにも身近な人生の1ルートなのです。

 

 

 

女子校の「浪人率」は男子校や共学校に比べて相対的に低くなります。

それは、女子の方が、「進学先」よりも「現役」を優先する傾向があるからなのかもしれません。

 

ただ、ちょっと桜蔭だけは「特殊」に思います。桜蔭の「浪人率」は23.7パーセントです。

やはり、同列の共学や男子校に比べて低くなっているわけですが、桜蔭の場合は「現役」で合格する受験生が多いために、「浪人率」が他校よりも抑えられているようです。

ちなみに、今年の桜蔭の東大合格者数は59人ですが、そのうちの52人が現役生です。

 

 

「医学部指向」の強い高校は「浪人率」が高くなります。

特に顕著なのがラ・サールで、その「浪人率」は65.6パーセントとなっています。

 

 

私立学校は、校風や進路指導による特徴が「浪人率」に強く反映されますね。

(いろいろと紹介したいのですが、またの機会にします。)

 

 

再び都立高校のデータです。

浪人を経て、どれくらいの人が国公立大学に合格するのかを見てみましょう。

 

 

今年国公立大学に合格した浪人生が、昨年度浪人をした人数のうちのどのくらいを占めているのかを調べてみました。

 

もちろん、今年の合格人数には「多浪生」の合格が含まれるので、正確な数値ではありませんが、それでもひとつの目安、参考になると思います。

 

 

 

27年度

卒業生

人数

 

 

27年度

浪人生

人数

 

 

28年度

浪人生

国公立大

合格者数

 

28年度

浪人生

国公立大

合格割合

 

西 327 170 107 62.9%
国立 325 147 94 64.1%
日比谷 315 142 83 58.4%
八王子東 316 104 60 57.7%
戸山 316 86 40 46.5%
立川 320 118 46 39.0%
国分寺 312 65 25 38.5%
駒場 318 53 17 32.0%
青山 275 69 21 30.4%
新宿 310 63 19 30.2%
両国 191 28 8 28.5%
小山台 275 67 18 26.8%
町田 279 51 12 23.5%
武蔵 197 66 15 22.9%
大泉 204 49 10 20.4%
城東 318 40 8 20.0%
武蔵野北 238 21 4 19.1%
白鷗 235 41 7 17.1%
北園 314 39 6 15.4%
南平 322 38 5 13.2%
三田 275 34 3 8.9%
日野台 314 58 5 8.6%
豊多摩 272 59 5 8.5%
昭和 275 24 2 8.4%

 

 

 

 

現代は、大学に行けない人間が浪人をするのではなく、大学を選ぶ人間が浪人をする時代です。

今の時代に「浪人」はひとつの「生き様」です。

 

 

 

正直、わけ知り顔で浪人の大変さを思いやったり、野暮な励ましをしたりするのは、なんというか、よそよししい行為のように思えます。それでも、なにか、ひとつの「エール」のようなものを書きたいと考えました。

 

まったくもって奇特な内容ですみません。

 

 

がんばってください。応援しています。

 

 

 

(ivy 松村)

 

「五者」と芸人

学校の教師は「五者」という言葉を聞かされる機会があります。

 

それは、教師の「精神」というか、「理想像」のようなものを示す言葉であるとされています。

 

「五者」というのは、異説もありますが「学者」「医者」「役者」「易者」「芸者」を表します。教師という職業は、その五つの職能を求められる仕事であるというわけです。

 

学校の教師だけでなく、塾の講師で口にする人も結構いそうです。年配の教師が、若輩の新米教師にする「イイ話」の定番となっています。

 

私は、実は「これ」が苦手で、ちょっと肌に合いません。

私が、この言葉を苦手に感じるのは、多くの場合、その「ご高説」が「陶酔のための素材」として持ち出されるからなのだろうと思います。まあ、中身のない話を気持ちよく語りたいわけです。

 

 

私が耳を傾けたいと思う話は、空虚な「言葉遊び」ではなく、もっと「リアル」なものです。

「教師」として必要な、具体的な技術や知識です。

 

 

 

それにしても、ふと思いついたのは、日本語には「者」の他にも、人をあらわす接尾語が多いということです。

 

 

一番よく使われるのは、やはり「人」でしょう。

「人」という字には、「ニン」という呉音と「ジン」という漢音があります。

 

「ニン」・・・役人、商人、町人、仙人、遊び人、料理人、鑑定人、交渉人、

「ジン」・・・詩人、軍人、歌人、俳人、名人、茶人、

 

 

「ニン」と読むのは、おもに「~する人」という内容の熟語を造語する場合です。

一方「ジン」と読むのは、おもに「~の(な)人」という内容の熟語を造語する場合です。

 

 

 

・その他、「ニン」と読む熟語

 

管理人、支配人、代理人、見物人、使用人、通行人、貧乏人、保証人、参考人、名義人、

立会人、付添人、勤め人、怪我人、小作人、代理人、苦労人、張本人、犯罪人、

 

 

・その他、「ジン」と読む熟語

 

芸能人、偉人、新人、財界人、自由人、社会人、個人、知識人、文化人、民間人、

野蛮人、有名人、賢人、鉄人、縄文人、現代人、関西人、日本人、外国人、

 

 

また、「狩人」(かりうど)、「海人」(うみんちゅ:沖縄方言)のような熟語もあります。

 

 

 

ところで、塾講師の中に、自らを「塾屋」と呼ぶ人たちもいます。

 

 

「屋」というのは、「個人が営む商店」を表す接尾語です。

 

この語は、職業的な技能や知識を持った人物を想起させます。

また、「個人事業」という連想から、「公的ではない」、あるいは「かたぎではない」というニュアンスが醸し出されます。そのために、ネガティブな「仕事」を指す用語に使われることもあります。(「総会屋」「殺し屋」など。)

その意味で、「塾屋」という表現には、ある種の自虐的な含みがあるわけです。

 

花屋、八百屋、魚屋、菓子屋、鍛冶屋、質屋、床屋、肉屋、

パン屋、問屋、電気屋、魚屋、宿屋、酒屋、本屋、

 

 

 

その他、「人」をあらわす接尾語には、「~員」「~官」「~師」「~士」「~家」「~手」などがあります。

 

 

「員」は、仕事などのために組織された集団の1人であることを示す語です。あるいは、共通の役割を持った働き手の1人であることを示します。

 

教員、駅員、従業員、会社員、職員、公務員、学芸員、乗務員、銀行員、

作業員、配達員、船員、役員、研究員、委員、用務員、警備員、議員、

船員、隊員、事務員、公務員、作業員、乗務員、指導員、部員、

 

 

 

「官」は、国家機関等に努める「役人(官吏、官僚)」であることを示します。

 

警察官、外交官、保安官、行政官、刑務官、裁判官、自衛官、

長官、検疫官、消防官、監督官、検察官、

 

 

 

「師」は、経験や修行を要する技能や、伝授を受けた専門的な知識を有する人を指します。

そこで、「師」は、人を指導する能力を持った存在だとみなされることになるわけです。

さらに、そこから「学芸、技芸を教授する人」という意味で使われるようになったようです。(→「師匠」)

 

教師、講師、牧師、伝道師、宣教師、

技師、漁師、猟師、調理師、相場師、調律師、花火師、ピアノ調律師、

看護師、助産師、薬剤師、鍼灸師、マッサージ師、保健師、整体師、灸師、整復師、

美容師、理容師、占い師、仏師、人形師、殺陣師、庭師、表具師、

手品師、奇術師、軽業師、講談師、漫才師、能楽師、道化師

 

 

 

「士」の由来は「戦う人」です。この字は「戦士階級」→「知識階級」という意味を持つようになります。

現在は、「公的な資格」を必要とする仕事、およびその仕事に従事する人を表します。

 

武士、騎士、力士、兵士、戦士、義士、勇士、烈士、闘士、棋士、弁士、

弁護士、運転士、飛行士、宇宙飛行士、税理士、会計士、栄養士、行政書士、航海士、

司法書士、消防士、潜水士、測量士、速記士、通信士、看護士、整備士、代議士、鑑定士、

通関士、建築士、建築士、機関士、気象予報士、操縦士、保育士、

学士、修士、博士、

 

 

 

 

「家」は、もともと「家系」や「一家」を指し、その家の生業や特徴などをあらわします(→「農家」「資産家」「資本家」など)。

 

その他、特に芸術、文芸の才能や能力を持った人物を示します。そこから、武道や技芸などを修めた人物も示すようになります。

 

専門家、芸術家、画家、建築家、漫画家、陶芸家、演出家、彫刻家、音楽家、声楽家、

作曲家、写真家、舞踏家、作家、小説家、随筆家、脚本家、劇作家、著述家、評論家、翻訳家、

書家、書道家、武道家、柔道家、空手家、落語家、工芸家、

 

 

また、本来職業として成り立たないような「生産的ではない行為」を極めようとする人を「家」で表すこともあります。

 

冒険家、登山家、宗教家、探検家、歴史家、発明家、

 

 

さらに、「~を趣味とする人」という意味や、「~に長けた人」という意味で使われたり、性格などを表したりすることもあります。

 

読書家、美食家、愛煙家、愛犬家、

毒舌家、野心家、戦術家、勉強家、

 

 

そう考えると、「政治家」や「実業家」のような使い方は、特殊な部類に入るのかもしれません。

 

 

 

「手」は、身体を使って役割をこなしたり、身体的な技能を発揮したりする人をあらわします。

 

運転手、歌手、騎手、選手、投手、捕手、野手、名手

 

 

 

最後に、「五者」の「者」ですが、この字は、ある役割や立場を表すものです。

面白いことに、それは、人間だけを対象としているわけではありません。

 

たとえば、「前者」「後者」などは、事物を示す指示語として機能します。

また、「捕食者」「生産者」というような用語の使用は、「ヒト」に限定されるわけではありません。

 

 

「者」は、ある「個人」の社会や集団の中での「立場・役割」、あるいは、ある構図の上での相対的な「立場・役割」を表します。また、その他に、単純に「個人」の性質なども表すこともあります。

 

独裁者、指導者、教育者、識者、作者、記者、著者、運転者、演奏者、覇者、王者、

勝者、優勝者、挑戦者、敗者、患者、経営者、労働者、担当者、候補者、打者、走者、競技者、

目撃者、経験者、欠席者、出席者、主催者、配偶者、初心者、実験者、製造者、設計者、

被災者、障害者、功労者、被疑者、通報者、有権者、責任者、保護者、

加害者、被害者、当事者、部外者、消費者、制作者、視聴者、

指揮者、技術者、編集者、研究者、解説者、

 

 

 

接尾語が変わると、使われ方や概念が変わっってしまうことがありますね。

 

管理者→管理人

役者→役人→役員

医者→医師

教師→教員

作者→作家

弁護士→弁護人

研究員→研究者

消防官→消防士

写真家→写真屋

発明家→発明屋

 

 

芸者→芸人

 

 

 

さて、私は、記事の冒頭で、「五者」というようなものにはちょっとうんざりすると書きましたが、そうはいっても、「教師の機能」というものを「象徴的」に考えてみることには意味がありそうです。

そこで、「思考実験」として、「五者」に対抗する概念を考えてみました。

 

 

私は「~人(ニン)」という接尾語で、塾教師の「ありかた」を模索してみました。

そして、「五者」ではなく、塾教師の「五人」を着想しました。

 

塾教師の「五人」とは、「芸人」「職人」「立会人」「案内人」「請負人」です。

 

 

私が考える塾教師の第一義は、「芸人」です。

 

ある塾の先生が、「塾講師は、ピエロになってなんぼ」というようなことを口癖のようにおっしゃっていて、私は、その考え方に大きく影響されています。

 

「ピエロ」は、もちろん「道化師」と表記できるわけですが、そのイメージは「芸人」に近いと感じます。

 

 

のうのうと「退屈な蘊蓄」をたれるような「先生様」に対する「アンチテーゼ」が、「ピエロ」という言葉に凝集されています。私たちは、「あんなふう」にはなりたくないわけです。

 

あとの4つについては、説明の必要はないでしょう。

 

 

(ivy 松村)

 

中2のクラス編成

夏期講習が近づいてきました。

 

中2のクラスについてお問い合わせをいただくことが増えてきました。

 

 

中2クラスは、通常授業では2クラスで運営しています。

 

「基礎クラス」は、時間をかけてじっくりと基本を固めます。

学校の授業の復習をおこなったり基本的な内容の問題を反復的に取り組んだりしています。

このクラスは、割とのびのびと勉強しています。

ふざけたり冗談をいって笑ったりすることも多い、陽気なクラスです。

 

今日の英語の授業は「助動詞」についてでしたが、いわゆる「三単現のs」についての理解があいまいだったので、そこまでさかのぼって解説をしました。

 

今のところ少人数のクラス編成ができているので、生徒の理解、定着度に合わせて柔軟に授業を運営しています。

 

クラス分けをしてからは、生徒たちの意欲も上がってきて、定期テストや月例テストでも少しずつ結果が出てきました。

 

 

 

「特訓クラス」は、上位難関校を目指すクラスです。

一応、「ご案内」には「国立・八王子東・立川コース」と書いていますが、私立の上位校に対応した内容も扱います。

 

今、ちょっと「あやしくなってきた」人もちらほらいますが、現在通ってもらっている「特訓クラス」の生徒は、全員、国立か八王子東か立川、国分寺あたりの高校を狙えると思っています。

 

そのためには宿題や小テストをおろそかにしないこと、基準となる内申を取ること、指示を守って勉強していくことが前提となります。

きちんとついてきてくれれば、みな、「それだけの学力」にまで到達することができると考えています。

 

 

 

2つのクラスのレベルの「差」が大きく開いています。

 

どちらの「コース」が合っているのか、体験授業に来てもらっったうえで決めていただくことができますが、日野台や町田、昭和、南平、東大和南あたりの都立高校を目指すのであれば、「特訓コース」のほうをご案内しています。

 

高いレベルの環境でもまれ、その中で勉強を続けていくことで、結果として、学力が引き上げられるからです。「ついていけないかもしれない・・・」という心配をお持ちの生徒もいるかもしれませんが、それはきっと「杞憂」となります。

「ついていけないから、じゃあ基礎クラスに」という形は、あまり想像できません。

 

 

中2は、一部の生徒にとっては勉強への意欲が減退する時期です。

「中2をどう乗り越えるのか」というのは、毎年の中2の生徒と塾の、ちょっとした「課題」でもあります。その意味では、夏から「正念場」を迎えます。

 

 

夏期講習に参加する生徒のみなさん、頑張っていきましょう。

 

 

 

ついでに、内申の「目安」について書きます。

 

だいたいの「目安」としては、「オール4」前後の生徒は日野台か町田あたり、より得点力のある生徒は国分寺を受けるかどうか、という「ライン」になると思います。これからの頑張り次第では「八王子東、立川」が見えてくるというところですが、「極一部のタイプ」の受験生は、「オール4」を切っていても、八王子東や立川に「勝算」はあります。

(一応念のため述べておきますが、別の塾に通っている人にはあてはまりません。)

 

 

当塾では、「都立高校の内申の目安」という資料を作成しています。

塾内生やお問合せくださったご家庭と面談をする際には、それをお渡ししてご覧いただくのですが、中堅校を考えているご家庭の方は「そんなに高いの?」とびっくりされ、上位校を目指しているご家庭の方は「そんなに低いの?」と驚かれます。

 

 

都立上位校に関しては、かなり「バブルな基準」が世間に流布しています。

 

たとえば、国立・八王子東・立川高校などは、「『オール5』近い成績でなければ合格は難しい」と考えている方は多いと思いますが、そんなことはありません。

 

どうして、そんな「風説」が広まるのか、詳しいことは書きませんが、それは情報を発信する「受験関係者」や学校の先生が、「適正な情報」を仕入れていないからなのだろうと思います。

 

ちなみに、受験の情報には2つの「核」があって、それは倍率や入試問題などの「客体」に関するものと、偏差値や受験生本人の得意不得意や性格などの「主体」に関するものです。そのうちの「可視的な情報」である倍率と偏差値だけにとらわれ過ぎてしまうと、極度に「慎重すぎる判断」に引きずられます。

 

少ない情報しか持っていない人は、「多くの保険」を求めるからなのでしょう。

内申の「目安」に関しても同じことがいえます。

 

 

その点で、当事者たちにとっては「合理的な判断」であっても、はた目には「不条理」に映るようなことがあります。

 

 

つまり、「全然無理」だと思わされていても、実は「もう少しで手が届く」ということもあるわけです。

 

 

また、忘れてはならないのは、「受験の目安」などというようなものは、個人に付与される固定的な指標などではなく、過ごす「場所」と「時間」によって変動するものだということです。この塾で、学習の質を上げ、学習の量を増やしていけば、「挑戦するべき対象」が変わってくるでしょう。

 

 

 

さて、最後に、再度ついでを申し上げるならば、「思っているよりも内申の基準が低くて安心した」という人は、ちょっと危険です。気を引き締めましょう。

 

それは、失敗する人間のメンタリティーです。

 

 

(ivy 松村)

 

 

私立学校と東京都教育委員会

前回までのブログでは、東京都教育委員会事務局(教育庁)と東京都教育委員会の委員の間で、ある種の「対立」があったことを確認しました。

 

私立高校に対する「配慮」を行おうとする事務局職員と、都立高校の存在価値を高めていきたい教育委員の間に、確執に近い「意見の相違」があったことが、「定例会議録」で確認できます。

 

 

しかし、実は、この「構図」は、いとも簡単に反転し得るものです。

 

平成14年の東京都教育委員会の会議では、逆の「構図」が見受けられます。

すなわち、事務局が「都立の側」に立ち、一部の教育委員は「私立」の側に立っていることがうかがえます。

 

当時、東京都教育委員会は都立中の開校準備を進めていました。

私立学校は、危機感を募らせていたわけです。

それで、東京都教育委員の委員に個別に接触することで何とか「打開策」を探ろうとしていたのかもしれません。

 

象徴的な発言をみてみましょう。

 

 

 

平成14年 第16回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【委員】(※「東京私立中学高等学校協会からの質問」についての発言) 実は私、9月の中旬だったのですが、私立の協会の方と会う機会があったのです。それで私の方は、実はそれほど重い話ではなく、私学の方が会いたいと言っているので顔合わせというレベルのことだと思ったのですが、二人ではなかったかと思いますがお目にかかりましたら、ここに書かれてあるとおりのことをご自分の言葉で向かい合っておっしゃったわけです。私はもちろんその場ではとても回答できることではございませんので、全部伺うだけ伺って、次の教育委員会のときに、おっしゃったことは私の方から皆さんに申し上げますと言ったのですが、ここに書いてあるままなのです。それで、もっと言いますと、一つには、まずパイロット校として、中高一貫教育2校を設置するということであったにもかかわらず、あっと言う間に多くなってしまい、それを発表したということはどういうことかということでした。また、私学に対しては一切、ほとんどのことが相談されずに、報告もなく、勝手に突っ走っているではないかというお怒りがかなりありました。もちろん私はまだこれを読んでいない状態のときであったのですが、私立はどうなってもいいと思っているのかということと、このまま行ったらば私学の半分はつぶれますということを、繰り返しお二人の方がおっしゃっておられました。それで、今、委員がおっしゃったみたいに、私学の立場というのは当然あるわけで、それを考えたときに、従来はもっとお互いがうまくコミュニケーションを取り合って報告もあり、相談もやっていたではないかと思うのですが、なぜ、こんなに勝手に突っ走ってしまうんだということが一つありました。それと、今、ご質問にあったとおり、教育委員との直接的な懇談の場を持ちたいとおっしゃっておりました。すべてはここに書いてあるとおりです。(p13-14)

 

 

【委員】 経営の問題がベースにあるということと、それから公立は今さら中高一貫教育をやらなくてもいいというのが、かなり立腹というか、相当、感情としても逆なでされた状態で話をされました。ですから、教育委員会でオーソライズされたことしか私としても答えることができなかったのですが、確かにそこの部分の思いが、なぜもっと手を携えてともにやらないのかという感じがいたしました。ただ、このまま行くと溝が妙に深くなってしまうのではないかと、私は両方とも一理あると思うわけですが、そこのところはやや懸念いたしました。(p15)

 

 

【委員】 先ほど申し上げた、このままでは私立は半分つぶれますと繰り返しおっしゃっていたことの裏というのが、どうも教育委員会も教育長も信じられないという気持ちが、これは私の思ったことなのですが、私学のベースにあるような気がしています。今は10校ですが、このままでいったら気がついたらもっと増えて、各区に一つずつできてしまうのではないかということです。それもふたを開けたら、今度はどこそこの区に20校できますとか、何校できますとなってしまうのではないか、そうなったら私学は半分つぶれてしまいますということで、どうも信じられないという空気があったと思います。(p16)

 

 

【委員】 先ほど個別的に私学の人と教育委員があってという話が出ましたので、恐らく教育委員全員が個別に、昼間会ったり、夜会ったりしているのだと思うのですね。教育委員として、それが仕事ですから。私学側もそれぞれの立場の私学があって、それぞれあるわけですね。定例会ですので、これはどの人がどんな発言をして、これはこうだなんていうことは言うべきでないので、それはそれとして、教育委員は私学の人たちと個別に会ってここの場に臨んでいて、できるだけ仲よくしようとしているという事実がここにあるわけです。ですから、教育委員が表でもって会うという方がいいなら、そうしてもらってもいいし、しかし、個別に会って情報を集めて、いろいろな事情も聞いているから、恐らく公私の仲が悪くなることはないものと私自身は思っているのです。そういう心配はない。ただ、誤解が今のところありますが、個別にそれぞれの委員が会っているわけですから、そんなにおかしくなることはないはずだと私は思っています。(p17)

 

 

 

 

発言者は、かなりの「覚悟」で私立学校を擁護しています。

 

この一連の発言を行ったのが誰なのかはわかりません。

会議録に、発言した教育委員の氏名が記載されるようになるのは平成20年からなのです。

 

最後の発言は「別の委員」のものだと思われますが、フォローしようとして「傷口」を深くしているような気もします。

多分、一連の発言がなされているときに、会議は「凍りついていた」のではないかと想像します。

 

 

 

一連の発言の中で、「教育長」が非難の対象になっています。

 

当時、教育委員の中から「教育長」が選ばれる制度になっていましたが、「教育長」は、歴代、都職員出身者が務められていました。

(現在の教育委員会の制度では、「委員長」が廃止され、首長が直接任命する「教育長」が、名実ともに教育委員の代表者となる立場です。)

 

 

平成14年時の「教育長」は、横山洋吉氏です。当時都知事だった石原慎太郎氏の信任が厚く、のちに副知事を務められました。

横山氏は、都立高校の「進学校化」に筋道をつけた人物として知られています。

 

「教育長」自らが「陣頭指揮」を取って、都立中学や都立高校の「ブランド化」を推し進めていたわけです。

 

つまり、教育庁は、率先して都の教育制度の改革に「大なた」を振るい、私立学校を「圧迫」していたわけです。

 

私立学校の関係者が、憤り、狼狽し、混乱している様子が伝わってきます。

 

 

 

気になったので、歴代の教育委員を調べてみました。

 

平成14年の教育委員のメンバーの中に、過去に「日本私学振興財団理事長」を務められた方がいらっしゃいます。そういう方が教育委員会の委員になることもあるのですね。(上掲の発言をしたのは、別の委員だと思いますが。)

 

 

 

 

教育長 委員長 委員 委員 委員 委員 委員
28 中井敬三  - 木村猛 山口香 遠藤勝裕 宮崎緑 大杉覚
27 中井敬三  - 木村猛 山口香 遠藤勝裕 竹花豊 乙武洋匡
26 比留間英人 木村孟 山口香 遠藤勝裕 竹花豊 乙武洋匡
25 比留間英人 木村孟 山口香 内館牧子 竹花豊 乙武洋匡
24 比留間英人 木村孟 瀬古利彦 内館牧子 竹花豊 川淵三郎
23 大原正行 木村孟 瀬古利彦 内館牧子 竹花豊 川淵三郎
22 大原正行 木村孟 瀬古利彦 内館牧子 竹花豊 髙坂節三
21 大原正行 木村孟 瀬古利彦 内館牧子 竹花豊 髙坂節三
20 大原正行 木村孟 瀬古利彦 内館牧子 竹花豊 高坂節三
19 中村正彦 木村孟 米長邦雄 内館牧子 鳥海巖 髙坂節三
18 中村正彦 木村孟 米長邦雄 内館牧子 鳥海巖 高坂節三
17 中村正彦 木村孟 米長邦雄 内館牧子 鳥海巖 高坂節三
16 横山洋吉 清水司 米長邦雄 内館牧子 鳥海巖 國分正明
15 横山洋吉 清水司 米長邦雄 内館牧子 鳥海巖 國分正明
14 横山洋吉 清水司 米長邦雄 内館牧子 鳥海巖 國分正明
13 横山洋吉 清水司 米長邦雄 鍛冶千鶴子 鳥海巖 國分正明
12 中島元彦 清水司 古橋廣之進 鍛冶千鶴子 緒方四十郎 國分正明
11 中島元彦 清水司 古橋廣之進 鍛冶千鶴子 緒方四十郎 國分正明

 

 

 

 

教育委員を務められた方の経歴なども調べてみました。ついでに、石原氏の人事考課や人脈なども調べてみました。

 

これは個人的な感想ですが、石原氏は傑出した「人事の才」を持つ政治家だったのだと思います。他の政治家が粗略なのではなく、石原氏が卓越していたのです。

 

 

石原氏は、東京都教育委員会の委員に、事務局の統制と監視の役割を求めていたようです。

そして、石原氏は、その期待に応えられるだけの意志と力量をもった人物を委員に任命しています。

 

(件の発言は、ちょっと「イレギュラー」だったのだと思います。その人物にとって抜き差しならない「義理」が作用しているのかもしれません。)

 

 

おそらく、政治家には2通りのタイプがいます。

官僚を制御しようとするタイプと、官僚と協調するタイプです。

 

石原氏は、典型的な前者のタイプで、しかも、その器量は抜群でした。

 

次に都知事になる方はどんなタイプの政治家なのでしょうか。

 

 

 

さて、もう少し、私立学校について考えてみたいと思います。

 

東京都教育委員会の会議録を読んでみると、以下のような、私立学校に関する発言が目につきました。

 

 

 

平成15年 第16回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【学務部長】・・・私学側の、これは公私協の中でもいろいろ議論するんですが、やはり二極化というような状況、生徒が集まる学校は集まる。しかし、集まらない学校は、なかなか生徒が集まらない、そういう二極化が進行しているということで、特にその二極化の方の集まらない学校については、かなり危機意識が高まっていると、そういう状況でございます。(p9)

 

 

【学務部長】 当然のことながら、私ども都立に対する期待が非常に高まっている状況の中で、今後の枠組みを協議する場合も、そういうような希望が大きい状況の中で枠を小さくすることはできないというような議論になると思いますし、私学側の方では、二極化の中で、生徒が集まらない学校に対しても、都教委としても十分に協力をしてほしいと、そういうような主張がこれから徐々に出てきて、議論になろうかと思います。(p11)

 

 

【委員】二極化のことについては 以前に私が私学の関係者とお会いしたときに割と具体的におっしゃっていまして、そのときは進学校と、いわゆる名門校、伝統校と言われている、親たちが並んで願書をもらっても行かせたいというような学校は全く問題はないけれども、そうではない学校が、都立がこの後のしてくると、半分はつぶれるだろうということを、その関係者はおっしゃっていたわけです。

・・・それで、都立高校がすばらしくなるのはとてもいいんだけれども、私立との連携をもっと密にやってほしいという要望があって、私、具体的に伺ったんですけれども、具体的には言えないというか、わかりにくいことなわけです。

・・・ここにきて、都立がよくなって、それと同時に、私立の半分がつぶれるようではこれは問題であるということを言っていました。2時間ぐらいとくとくと話されましたけど。(p11)

 

 

 

平成20年 第16回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【髙坂委員】

先日、私学の校長・理事長の研修会に呼ばれて行きました。これは東京都教育委員会の委員として行ったわけではなく、経済同友会の教育委員会のメンバーとして行きましたが、印象では、私学はかなり危機感を持っています。今、竹花委員がおっしゃったように、私学はある程度の授業料を取らなければいけない。公立がしっかりすればするほど、それに対する危機感もあるわけです。しかし、ある意味では競争ですから、お互いが切磋琢磨して教育の内容を高めればいいことです。(p7-8)

 

 

 

 

「私立学校の窮状」が伝わってきます。

その根本的な原因は、「少子化」です。

 

上掲の東京都教育委員会の会議での発言にもあるように、私立学校の「二極化」が進行しています。

「苦しい立場」に立たされている学校と、「強度」を維持している学校があるわけです。

 

 

私立学校には、公立の学校にはない「独自性」が求められます。

その特徴や校風などが世の中に認められている学校は、「教育ニーズ」に応えることができ、「人気」を保つことができるでしょう。

 

他方、特に、公立高校と、生徒の募集が競合する私立高校は、「少子化」の影響を強く受けています。子供の絶対数が減り、「パイ」が縮小すれば、生徒の「応募」が低調になります。

 

そのような私立高校は、「経営が大変になる」わけです。

 

 

 

やはり、情緒的にはさまざまな思いを持ちます。私も、「現実」が想像できないほど、鈍感な人間ではありません。

また、いろんな学校が存在し、多様な進路を選べる環境は、子供たちとってよいものだという思いもあります。

 

 

しかし、「少子化」という未曽有の危機に、私たちの社会は立ち向かっていかなければなりません。

 

 

「少子化」の大きな原因のひとつは、「教育費」の増加です。

私たちは、教育にお金がかからない社会を目指さなければならないと考えます。

 

 

現実には、これまで、いくつもの公立学校が統廃合されてきましたが、私立学校はできるかぎり「保護」されています。これから先も、都立高校を優先的に減らしていくべきなのでしょうか。

 

 

(大風呂敷を広げるようで恐縮ですが、私は、「公教育」を学校やスポーツクラブ、学習塾や習い事教室などと統合して、新しく再編することはできないかと考えます。必ずしも部活や校外活動などを「学校単位」で行う必要はないと思うのです。また、均質な「皆教育」と「習熟度別教育」が併存できるような重構造のシステムを作ったらどうか、と考えます。つまり、子供たちが、「義務教育」である小中学校と「選択的な教育機関」の両方で学習することを前提とするような制度です。それは、「現実」の延長上に可能であると考えます。そのような制度の中で、私立学校の役割は非常に大きなものになります。)

 

 

 

それにしても、私は、ずいぶん労力を割いて、都立高校にまつわる懸念や問題点をこのブログに記してきました。

 

私の視点は、一貫しています。

 

「入試選抜は公正でなければならない」という思いが、その動機の根底にあります。

 

すべては、その主題につながっています。

 

 

(ivy 松村)

 

 

公私連絡協議会の話③

以前、このブログに、石原慎太郎氏が都知事を辞められてから、東京都教育委員会の「方向性」に変化が生じているのではないか、と書きました。

 

私立高校に対する「配慮」が強くなってきているように感じられるのです。

 

石原氏が都知事を辞任されたのは、平成24年(2012年)の10月です。

この後、矢継ぎ早に都立高校の「入試改革」が押し進められたという「事実」について、以前このブログに書きました。

 

「入試制度」「選抜方法」「入試問題」「採点方法」など、さまざまな「変更」が強いられました。

 

さらに、「募集」の面でも後退が起こっています。

 

 

さて、石原氏が都を去った後の平成26年に、公私連絡協議会で平成27年度からスタートする「第四次中期計画」が「合意」されました。

 

そこに、ひっそりと都立高校の「受入分担人数」が減らされるような「仕掛け」が練り込まれました。

「表面上」はこれまでと同じ内容であるという体裁を示しながら、内実が変えられています。

 

 

都立高校と私立高校の「受入分担人数」の算出「ルール」が変更されたのです。

 

それは、平成27年度の都立高校の生徒募集に影響を与えています。

 

平成27年度は、平成26年度と比べて、公立中学を卒業する生徒数はほとんど変わらないという試算がなされていました。

 

しかし、突然持ち込まれた「ルール変更」の効果によって、都立高校に進学する生徒が減り、私立高校に進学する生徒が増えたのです。

 

もちろん、その「変更」は、教育委員会の会議に諮られて承認されたものではありません。

 

 

 

「本来」であれば、平成27年度は、平成26年度と公立中学を卒業する生徒数がほとんど変わらないので、同じ数値の「就学計画」になるはずなのです。

 

ところが、平成27年度は、都立高校の「受入分担人数」が減らされ、都立高校の「募集人数」も縮小させられてしまったのです。

 

 

平成27年度の「卒業予定者」は、前年とほぼ同数です。

また、「全日制高校進学希望者」も、ほぼ同数です。

そして、「都立高校進学希望者」も、ほぼ同数だったのです。

にもかかわらず、都立高校の募集人数が減らされたわけです。

 

 

 

その「ルール変更」というのは、これまで、公立中学を卒業する予定の生徒数に加えていた「都立中学の生徒数」を省いて「受入分担人数」を算出する、というものです。

 

また、東京高専に進学する生徒の人数も省かれることになりました。

 

 

 

もちろん、そのほうが「正確」な数値に近づくでしょう。

 

しかし、それは、これまでの「就学計画」の枠組みを変えてしまうものです。

 

また、教育委員会の会議でも再三にわたって委員が指摘していますが、「正確」な試算を行うことが重要なのであれば、私立中学から都立高校に進学する生徒の人数も組み込んで算出しなければならないわけです。

 

疑問点は、以下に集約されるでしょう。

 

・なぜ、都立高校を管轄する東京都教育委員会(の事務局)が、東京都立高校に進学を希望する生徒の不利になるような変更を受け入れるのか?

 

 

 

「公私連絡協議会」が策定している「就学計画」における都立高校の「受入分担人数」の算出方法を再度確認してみましょう。

 

 

・「卒業予定者数」(A)×「計画進学率0.96」(B)=「高校進学(予定)者数」(C)

・「高校進学(予定)者数」(C)-「他県・国立・高専進学予想人数」(D)=「受入(予定)人数」(E)

・「受入(予定)人数」(E)×「私立高校受入分担比率0.404」=「私立高校受入分担人数」(F)

・「受入(予定)人数」(E)×「都立高校受入分担比率0.596」=「都立高校受入分担人数」(G)

 

 

 

 

「ルール変更」がなされた後の平成27年度の「受入分担人数」を確認しましょう。

 

平成27年度の「私立高校受入分担人数」(F)は、2万8,600人になります。

一方、「都立高校受入分担人数」(G)は、4万2,000人となります。

 

 

次に、「ルール変更」が行われなかった場合の数値を算出しなければなりません。

 

平成27年度の「都立中の生徒」を含めない「卒業予定者数」(A)は7万7,421人です。これに「都立中の生徒」を加えた数字は、7万9,010人になります。

この人数は、事務方の担当者が、東京都教育委員会の定例会議で明らかにしたものです。

 

この数字は、平成26年度の「卒業予定者数」(A)である7万9,140人と比べて「-130」となっています。

「就学計画」は「概算」で算出するので、「-130」の差異は計算に反映されません。

 

「ルール変更」が行われなかった場合の平成27年度の「受入分人数」は、平成26年度のものと全く同じになります。

 

つまり、「ルール変更前」の平成27年度の「受入分担人数」は、平成26年の「受入分担人数」と同数である4万3,100人となるわけです。

 

 

したがって、平成27年度の「受入分担人数」は、「ルール変更」によって4万3,100人から4万2,000人に減らされたのだということになります。

 

その差異は「-1,100」です。

 

 

 

 

ルール変更前 ルール変更後 増減
「私立高校受入分担人数」 29,300 28,600   -700
「都立高校受入分担人数」 43,100 42,000 -1,100

 

 

 

平成27年度は、「本来」の「受入分担人数」よりも1,100人少ない「就学計画」になっているということになります。

 

それにともなって、実際に、平成27年度の都立高校の募集人数は、前年に比べて減らされたわけです。

 

 

 

もちろん、私立高校の「受入分担人数」も減っています。しかし、実は、「受入分担人数」を少しばかり減らされることは、私立高校にとってはむしろ「プラス」の要因になります。

 

 

 

「受入分担人数」は、「就学計画」として算出されるものなので、「実際に進学する人数」とは必ずしも一致しません。

 

 

まず、実際の進学率ですが、「計画進学率」の96パーセントが達成されたことはありません。例年、ほぼ92パーセント程度の「受入実績」となっています。

 

「計画進学率」を達成することが困難になっているのは、「計画進学率」を全日制の高校だけを対象として設定しているからです。実は、定時制に進学した生徒はこの数値に含まれないのです。

 

全日制の都立高校に不合格だった生徒のうち一定の人数は、最終的に全日制の私立高校へ進学せずに、都立の定時制などに進学します。

そのために、全日制の高校だけを対象に設定されている「就学計画」に、なかなか「実績」が届かないわけです。

 

また、他県の高校への進学者が漸次増加しています。

そのために、「都立高校」と「都内の私立高校」を対象としている「進学率」が伸び悩んでいます。

 

 

以上のような状況は、同時に、私立高校の「受入実績」を低迷させる原因ともなっています。

 

 

都立高校と私立高校のそれぞれの「受入分担人数」の「達成率」は、都立が例年「計画」を上回るのに対し、私立は例年下回っています。

 

たとえば、平成26年度では、都立高校は、「受入分担人数」4万3,100人に対して「受入実績」は4万4,492人です。したがって「受入達成率」は103.2パーセントです。

 

一方、私立高校は、「受入分担人数」2万9,300人に対して「受入実績」は2万5,377人です。したがって、「受入達成率」は86.6パーセントです。

 

私立高校の「受入達成率」が、都立高校に比べて、低調であることがわかります。

 

 

この「不均衡」は、都立高校の人気が、私立高校に比べて高いために生じているものです。

 

「東京都中学校長会進路対策委員会」が行っている「志望予定調査」によれば、公立中学を卒業する生徒のうち、例年およそ77パーセントが都立高校を志望しています。

平成26年度では、都立高校の志望者は76.99パーセントでした。

 

都立高校は、私立高校に比べて「定員割れ」や「入学辞退」が少ないために、「募集」が堅調に行われています。

一方、一部の私立高校は、「募集」に苦戦しているわけです。

 

 

 

ようするに、私立高校は、「受入分担人数」が700ほど減ったとしても、生徒が「流出」することはなく、むしろ「受入達成率」が上昇する要素になるのです。

さらに、都立高校の募集人数が減らされ、その分、都立高校に進学できない生徒が増加するわけです。当然、私立高校に流れる生徒の数が増えることになります。

 

 

当然の帰結ですが、平成27年度は都立高校の「実績」が下降し、私立高校の「実績」が上昇しました。

 

 

 

 

 

26年度「受入達成率」 27年度「受入達成率」
私立高校 86.6 89.4
都立高校 103.2 102.3

 

 

26年度「実績」 27年度「実績」 増減
私立高校 25,377 25,569  +192
都立高校 44,492 42,975 -1517

 

 

 

 

繰り返しになりますが、平成26年度と平成27年度では、公立中学を卒業する生徒の数はほとんど同じだったわけです。

 

また、都立高校を志望する生徒の割合もほとんど同じだったのです。

 

であるにもかかわらず、都立高校に進学する生徒が1,517人も減ってしまったわけです。

 

それは、都立高校の募集人数(と合格者数)が減らされたからです。

 

そして、なぜ、都立高校の募集人数が減らされたのかといえば、「就学計画」における「受入分担人数」の算出方法が変更されたからです。

 

 

そして、ここがポイントなのですが、その「ルール変更」は、東京都教育委員会で「議事」として諮ったうえで決定されたものではないのです。

 

東京都教育委員会の委員は、この「変更」を事後的に報告されただけなのです。

 

これは、公私連絡協議会で決定されたものなのです。

 

 

 

参考:

平成26年 第14回 東京都教育委員会定例会会議録

平成26年度公私連絡協議会の合意事項について

 

 

 

(ivy 松村)

公私連絡協議会の話②

公私連絡協議会では、5年ごとに策定される「中期5か年計画」にもとづいて、都立高校と私立高校の「受入分担比率」等を決めています。

現在は、平成27年から平成31年までを対象とした「第四次中期計画」が継続されています。

 

・第一次中期計画 平成12年度~16年度

・第二次中期計画 平成17年度~21年度

・第三次中期計画 平成22年度~26年度

・第四次中期計画 平成27年度~31年度

 

 

 

実は、この四次に渡る「中期5か年計画」は、その内容のほとんどが固定されたままになっています。

変わったところといえば、私立高校進学者に対する「就学支援金制度」や「授業料軽減助成金制度」について、「都立の側」が周知を行うという約束がなされたことくらいです。

 

 

平成12年からスタートした「中期5か年計画」では、「受入分担比率」は都立と私立で59.6対40.4となっています。この比率は、17年間、全く変更されていません。

 

(後で詳述しますが、「第四次中期計画」からは、「表面上の数字」をいじらないで「私立に有利な計画」を策定する「マジック」が使われます。)

 

 

また、公立中学を卒業する生徒のうち、全日制の高校に進学する生徒の数を推計するために用いられる「計画進学率」も17年間96パーセントに固定されています。

 

これまで、私立高校側は、「計画進学率」を「実績」に近い92パーセントに引き下げることを求めてきましたが、東京都教育委員会はそれを受け入れていません。

 

それを行うことは、東京都教育委員会の「存在意義」を揺るがす根源的な問題となりかねません。そもそも、教育環境を充足させることを目的とする行政機構が、「計画進学率」を「下方修正」することは原理的にあり得ないわけです。

 

しかし、それ以外の理由も考えられそうです。

 

 

「東京都教育委員会」は、知事が任命する教育長と教育委員によって構成されます。

そして、東京都教育委員会の事務を執行するための事務局を「教育庁」といいます。

 

実は、「東京都教育委員会」という名前で、高校入試を含めた教育や文化事業に関する実務を執り行っているのは「教育庁」なのです。

 

教育委員会の委員が出席する「会議」で決定されることは、実際にはそれほど多くないのです。

 

たとえば、上記の「中期5か年計画」についても、常に事後的な「報告」が定例会議で行われるだけです。「報告」を行うのは、事務局=「教育庁」の職員です。

 

もし、「中期5か年計画」の内容を変更しようとすれば、東京都教育委員による「会議」に諮らなければならなくなります。

 

そうなると、事務方が主導して行っている「公私強調」の枠踏み自体に「メス」が入るかもしれません。

 

もし、私が「教育庁」の職員であれば、公私連絡協議会における「合意」をルーティン化し、その内容を「決定事項」として「報告」することを繰り返し、「会議」で審議されることがないようにするでしょう。極力「波風」を立てないように努めます。それが、「官僚の正統的な手腕」というものにちがいありません。

 

 

実際に、東京都教育委員会の「会議録」を見てみると、実に「面白い」やり取りがなされています。

 

 

 

平成19年 第16回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【学務部長】 平成19年度公私連絡協議会が9月18日に開催され、平成20年度高等学校就学計画について合意をいたしました・・・。(p4)

 

 

【委員】 これはまだプレス発表していないわけですね。(p5)

 

 

【学務部長】 18日にプレス発表させていただいております。(p5)

 

 

【委員長】 この件は、報告事項ですから発表済みということですね。(p5)

 

 

【委員】 公私連絡協議会で都立高等学校と私立高等学校とが協調して生徒の幸せを考えていくことは非常にいいことだと思うのです。談合という言葉を使っては語弊がありますがこの協議会で出した割合というのは、生徒の幸せを考えているのか、それとも経営者の幸せを考えているのか分かりませんが、この数字が5年間大体決まっているという御説明でした。(p5)

 

・・・果たして協議会でこういう数字を決めることがいいのか、自由競争にしてしまった方がいいのかという議論は当然あるべきだろうと思うのです。(p5)

 

・・・こうした数字を決めたのですが、これでどうでしょうかという話がまず教育委員会に出てくるべきで、このように教育委員の意見が全く反映されていないということは問題だろうと思います。ですから、こうした数字を教育委員会に諮って、今までどおりだからその数字でいいではないか、あるいは、協議会でこの数字は撤廃しようではないかとか、このまま続けていこうではないかとか、そういう議論をするのが教育委員会の仕事ですから、教育委員会に全く諮らないで決めてしまって、以上終わりでございますということは、いささか手続上問題があるのではないかと思うのです。 (p5-6)

 

 

【学務部長】 原則として5年間の中期計画において基本的事項について公私で合意を行い、その間については公私で調整をした上で、中学生の進路を保証し、受入れを確保していくという趣旨で行ってきております。今後、平成21年度までに、平成22年度からの新たな5年間の合意に向けての作業を行いますので、その中で適宜、今後の進め方を含めて御議論していただきながら、進めさせていただければと思っております。(p6)

 

 

【委員】 定数をどのように決めるか、公私で協議をすることが本当にいいことかどうかも含めて、教育委員会で議論して、その次からどうしようかということが教育委員会に出てきて、今年度はこれでいいではないか、ではプレス発表してくれという手順だといいのですが、逆に事務局で決めてしまって、教育委員が一切口を差し挟む余地がないということは問題があると私は考えております。(p6)

 

 

【教育長】 公立と私立の関係は、昔から各都道府県が悩んでいるところでございまして、東京都の場合は5年ごとに基本協定を結んで、各年度は端数の関係で協議するという状況であります。基本協定を結ぶに当たっては、元々協定を結ぶべきかどうなのか、進学率を今96パーセントとしてありますが、これをどうすべきなのか、公立と私立の役割分担をどうすべきなのか。これは事務的な問題ではないですから、当然、教育委員会に、次の5か年間の基本協定を結ぶに当たって基本的な考え方をお決めいただかないとならないと考えております。(p6)

 

 

【委員】 1年後の教育委員会で考え方を決めるとしても、今回これでいいと決定するに至るまでに、やはり教育委員会の中で議論があって、この次からこのように変えようではないかとか、今のままでいいだろうとか、そういう議論が当然あった方がいいのではないかと私は考えます。5年間決まっているのだから、このまま決まりましたので報告しますという手続には、いささか不満であります。(p6)

 

 

【委員長】 今回は報告事項ですから、お認めいただくとして、次回からは今の御意見を踏まえて考えていただくということでよろしいですね。(p6)

 

 

 

平成19年 第17回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【学務部長】・・・公私連絡協議会で協議をして都立高等学校の受入数を決めているということについては、今後、どういう形で進めていくかも含め、論点になろうかと思います。(p7)

 

 

【教育長】 ただ、前回の教育委員会において、公私連絡協議会で本当に公私の割合を決めてしまって良いものなのかどうかという意見が出たことから、改めて議論をしましょうということにはなっています。(p7-8)

 

 

【委員】・・・私学の経営に合わせるのではなくて、生徒に合わせることが非常に大事なことであるから、公私連絡協議会で決める前に、東京都教育委員会の委員の中でいろいろな議論をして、それで良いだろうとなったら、教育長にお任せする形が良いというのが前回の発言にありました。(p8)

 

 

 

平成21年 第15回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【都立学校教育部長】

本年8月31日に開催した平成21年度公私連絡協議会において、東京都と東京私立中学高等学校協会は、都立高校及び私立高校の受入れに係る第三次中期計画並びに平成22年度高等学校就学計画について合意いたしました。(p4)

 

・・・平成22年度から平成26年度までの各年度就学計画では、一層の公私協調により、進学実績率の向上を図るよう、公私分担も必要に応じ協議をすることとしております。(p4)

 

 

【髙坂委員】 今度は第三次の計画になります。以前からこのように数を固定していることがいいのかどうか議論してきましたが、今回の改定で合意する時点で、過去の議論はどういう格好でなされたのでしょうか。当然その議論を基にしてこういう議論がされたのだと思いますが、そこのところを説明していただきたい。(p6)

 

 

【都立学校教育部長】 今までの議論なのですが、私立側とも何回も協議してまいりました。計画進学率96パーセントに対して、私立の受入れが40.4パーセントということで、実際には都立が2パーセント程度上回っているのですが、私共はこの差を埋めてほしいと主張しています。この計画進学率を、実績の92パーセントに下げてほしいという主張が一方私立側にはございます。(p6)

 

・・・私立側からは、数を固定してほしいといった主張もございますが、分担割合における現行と実績の比率をみた場合に、私立学校が全部受け入れられるのであれば、可能な数字と言えるかと思うのですが、必ずしも見込みとしては期待できない数字なのではないかと思っております。(p6)

 

 

【竹花委員】 そのことの是非について議論するつもりはないのですけれども、これは相手のあることですし、都庁の中でも広く検討している分野もあって、既に合意をしたということで、この教育委員会でこれをひっくり返すことはできませんよね。(p8)

 

 

【都立学校教育部長】合意につきましては、公私と昨年来からそれぞれの主張があり、それから協議し、合意したものでございまして、これを覆すということはできない状況にございます。(p8)

 

 

【竹花委員】 私は東京都教育委員会に休まず出席しているわけではないですが、ここに至る前に、このような方向でという御相談がありましたか。(p8)

 

 

【竹花委員】 当教育委員会でも、私自身も何度か発言したことがございますし、髙坂先生がおっしゃったような趣旨もお話し申し上げたので、もっと事前に相談があってもいいはずだというのが私の心証です。(p8)

 

 

【都立学校教育部長】 本年5月28日の懇談で経過については御相談をしております。それ以前も、やはり方針については御相談をしております。(p8)

 

 

【竹花委員】 私は、結論をこういう形でするという相談を受けた覚えはないです。(p8)

 

 

【竹花委員】・・・私としては第三次中期計画について、様々なものがある中での個別の御説明以外に、この5年間にわたって東京都教育委員会に影響を与えるこのような協議については、しっかりとした御説明が事前に欲しかったということを申し上げておきたいと思います。(p11)

 

 

・・・私立学校にとってどうかではなくて、東京都の公立中学校の生徒にとってどうかという視点でこれからしっかり考えていくということで、お約束いただければそれでよかろうかと思います。 (p11)

 

 

 

平成27年 第14回 東京都教育委員会定例会議事録

 

 

【竹花委員】・・・かねてからこの都立と私立の計画については、その在り方について様々な角度から疑問を呈してきたのですけれども、私が懸念するのは、私学の方の計画との約束で、都立の入学枠を定めて、各高校の受入人数を決めていきます。そのために、本来ならばもっと都立に行きたいはずのところが、枠が狭いためにあふれるということが生じているのではないでしょうか。もっとも、私学もたくさんやってきて、生徒がたくさん来るのにという状況であれば別ですが、現在は授業料についても同様の条件になっているにもかかわらず、27年度は9割程度だということであれば、やはり都立の入学枠を最初から少し多めに取ることが、生徒たちにとって有利なことではないかというふうに普通は考えられるのですけれども・・・。(p20-21)

 

 

【竹花委員】・・・やはり受ける生徒たちの入学の枠を狭める結果に都立と私立の約束が機能しているとすれば、それは本末転倒だと思います。(p21)

 

 

 

(ivy 松村)

公私連絡協議会の話①

都立高校と私立高校は、生徒募集において「競合関係」にあります。

毎年、入学する生徒を「取り合う」運命にあります。

 

ところが、「両陣営」が、全くの自由競争でしのぎを削っているのかといえば、そうではありません。実は、都立高校と私立高校は「協調し合う関係」を築き、維持しています。

 

公立高校と私立高校の間で、「協調」を行わない県も多くありますが、「東京都」は「協調路線」を堅持しています。

 

 

もちろん、それには「いい部分」と「悪い部分」があり、その事実のみを切り取って断罪するような性質のものではありません。東京都は、あらゆる意味で特殊な地域です。

 

 

しかし、現実に、そのような「協議」は、私立学校の権益を守るための「盾」として機能します。

 

当然、私立学校は「配慮」を期待するわけです。

そして、なぜか、その期待に沿って行動する人間が「都立の側」にいるわけです。

 

 

 

毎年、「公私連絡協議会」という会合が開かれています。

 

ここで、東京都教育委員会事務局や東京私立中学高等学校協会などが、高校に進学する生徒の「割合」と「数」とについて話し合います。

 

公立中学を卒業する生徒の「就学計画」を立て、都立高校と私立高校で、お互いがどれくらいの人数の受け入れるのか、その分担を協議するのです。

ようするに、高校に進学する生徒のうち、何人ぐらいを都立高校に進学させ、何人ぐらいを私立高校に進学させるのか、話し合うわけです。

 

ここで「合意」された内容に沿って、都立高校の募集人数が決められるわけです。

 

 

こうした「都立」と「私立」の「協議」は、ずいぶん前から行われてきました。

 

数十年前から、都立高校側と私立高校側が、中学卒業者のそれぞれの「受入分担」について協議してきた「歴史」があるのです。

 

 

昭和60年になされた「合意」では、双方の「受入分担比率」は、都立と私立で56:44となっています。

 

昭和60年(1985年)は、第二次ベビーブーム世代が高校受験を迎え、バブル景気がまさに本格化しようという時期です。当時は、いじめなどの社会問題がクローズアップされたこともあり、東京都は私立志向が強い時代でした。

 

しかし、「私立」には、懸念材料がありました。

 

その3年前に学校群制度が廃止され、「グループ合同選抜制度」が実施されるようになっていました。「グループ合同選抜制度」は、一言でいえば、都立を第一志望とする生徒が、別の都立高校を「滑り止め」にすることができる制度です。したがって、「私立に流れる生徒」に歯止めがかかる要因となります。そして、このころ、下の世代の少子化傾向が明確にあらわれました。「教育事業」全体が、将来の「対応」を迫られていたのです。

 

 

さて、その後も「都立」と「私立」の「協議」は恒常的に行われてきました。

 

そして、平成12年に、「新しい枠組み」が提唱されたのです。

 

「公私連絡協議会」をとおして「中期5か年計画」が策定され、これを5年ごとに「更新」するという「慣例」が形作られたのです。

 

 

つまり、都立高校と私立高校が、お互いどれくらいの生徒を入学させるかを定める「受入分担」のフレームを、5年間「固定する」ということが制度化されたのです。

 

「中期計画」を立てることによって、「長期」では、「都立」と「私立」が協議し続けるという方針を既定化させることができます。その意味でも、「優れた戦略」だといえます。

 

 

 

それにしても、「平成12年」というタイミングは、何やら「意味深げ」に思えます。平成12年度からの計画なので、この計画についての協議は、前年の平成11年に行われていたことになります。実は、石原慎太郎氏が初めて都知事に当選したのが平成11年なのです。

 

 

 

この「中期5か年計画」は随時「更新」され、現在は、平成27年から平成31年までを対象とした「第四次中期計画」が継続されています。

 

 

・第一次中期計画 平成12年度~16年度

・第二次中期計画 平成17年度~21年度

・第三次中期計画 平成22年度~26年度

・第四次中期計画 平成27年度~31年度

 

 

「第一次中期計画」が策定された平成12年度から現在まで、都立高校の「受入分担」の比率は「59.6」に固定されています。

この比率は、昭和60年に比べてやや増加していますが、それでも「都立高校のニーズ」に見合ったものなのかどうか、微妙なところです。

 

参考までに述べると、私立の中高一貫校に通う生徒を含めると、「私立学校」に在籍する生徒と都立高校に在籍する生徒は、ほぼ半数ずつになります。

 

また、「東京都立中学校長会進路対策委員会」の調査によれば、公立中学を卒業する生徒のうち、都立高校への進学を希望する生徒は、例年全体の約77パーセントにのぼります。

 

そして、実際には、都立高校に進学する生徒の比率は、「59.6」よりも若干多くなります。一方、私立に進学する人数は、「40.4」よりも少なくなります。都立高校を志望する生徒が多いためです。

私立高校は、何年もの間、公私連絡協議会で策定された「就学計画」を達成できていません。

 

常識的に判断するならば、都立高校の「枠」を広げるべきなのですが、一連の「取り決め」は、それを封じているわけです。

 

この「取り決め」のために、都立高校には、より多くの生徒を収容する「キャパシティー」があるにもかかわらず、「59.6パーセント」を受け入れる「枠」しか用意されないわけです。

 

都立高校の募集人数は、高校の「キャパシティー」によってではなく、私立高校との「協議」によって定められていということになります。

 

例年、都立高校への進学を志望する生徒は約77パーセントいます。

そのうち、都立高校が受け入れる生徒は「59.6パーセント」なので、「残り」は「私立高校」に進学することになります。あるいは、全日制高校への進学をあきらめることになります。

 

 

 

参考:

 

平成27年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成26年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成25年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成24年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成23年度 公私連絡協議会の合意事項について

都立高校及び私立高校の受入れに係る「第三次中期計画」並びに平成22年度の高等学校就学計画について

東京都立高等学校教頭研究協議会 研究協議会報告:(15),p11

 

 

 

(ivy 松村)