「H」の話④

「gh」は、基本的に発音されない「黙字」です。

 

 

weight「ウェイト」(重さ)

eight「エイト」(8)

ought「オート」(~するべきだ)

although「オルゾウ」(~にもかかわらず)

caught「コート」(catchの過去形)

sigh「サイ」(ため息をつく)

sight「サイト」(視界)

straight「ストレイト」(まっすぐな)

through「スルー」(~を通って)

though「ゾウ」(~にもかかわらず)

thought「ソート」(thinkの過去形)

daughter「ドーター」(娘)

delight「デライト」(喜ばせる)

taught「トート」(teachの過去形)

night「ナイト」(夜)

neighbor「ネイバー」(隣人)

high「ハイ」(戦う)

height「ハイト」(高さ)

fight「ファイト」(戦う)

flight「フライト」(飛行)

fright 「フライト」(恐怖)

bright「ブライト」(明るい)

brought「ブロート」(bringの過去形)

bought「ボート」(buyの過去形)

might「マイト」(mayの過去形)

light「ライト」(光)

right「ライト」(正しい、権利、右の)

 

 

 

語末に「gh」が置かれたときに、発音されることもあります。

 

その際の発音は「フ」=[]です。

 

]は、日本語の「ハヒフヘホ」の「フ」ではないので注意しましょう。下唇を軽く噛み、弾くようにして発音します。

 

 

enough「イナ」(十分な)

cough「コ」(咳)

tough「タ」(頑丈な)

laugh「ラ」(笑う)

rough「ラ」(粗い)

 

 

 

昔は、「gh」が発音されていました。

その音は、「強く発音するハヒフヘホ」です。

 

発音記号は[x]です。

慣れないと戸惑うと思いますが、[x]は「ハヒフヘホ」を表す発音記号です。

 

x]の音は消失してしまって、英語からなくなりました。

そのため、この[x]の発音記号は、「現代英語には」みられません。

 

 

古い時代の英語には[x]の発音が存在し、それに「gh」が当てられたのです。

 

英語の「gh」の発音は、

 

x]→[]→「無音」

 

と変化してきたわけです。

 

]の音が残っている単語は、無音化されずに発音が残存したものです。

 

 

 

x]=「強く発音するハヒフヘホ」は、ドイツ語の「ch」の音だったことを覚えているでしょうか。

 

x]の発音を示すのに、ドイツ語は「ch」を用いたわけです。一方、英語は「gh」を代用したわけです。

 

ドイツ語の「ch」と古い英語の「gh」はともに同じ音→[x]を表すということになりますね。

 

(発音体系に少しだけ「ズレ」があって、ドイツ語の「ヒ」の発音は[x]では表さないのですが、まあ、あまり重要ではありません。)

 

両者は、驚くほどに「照応」しています。

英語とドイツ語は、そもそも「親類」の言語だからです。

 

 

 

以下の例を見てみましょう。

 

 

英語 ドイツ語 ドイツ語の発音 意味
eight acht 「アト」 (8)
high hoch 「ホッ (高い)
night Nacht 「ナト」 (夜)
daughter Tochter 「トター」 (娘)
laugh lachen 「ラッン」 (笑う)
light Licht 「リト」 (光)
right recht 「レト」 (正しい)

 

 

 

英語とドイツ語の語彙が非常によく似ていることがわかります。

 

英語は、そもそも「ドイツ語の方言」だからです。

 

5世紀ごろに、ドイツ西部に住んでいた「ゲルマン人」の一派が、ブリテン島(イギリス)に渡り、住み着きました。彼らの話していたドイツ語が、英語の母体となったのです。

 

その後、英語はフランス語などの影響を受け、大きく変化していきますが、日常生活で頻繁に使用される「基本語彙」などを中心に、古い形や発音を残した単語があります。

 

前に、英語をよく知るためにはフランス語を学ぶとよい、と書きましたが、もし、英語の「原風景」を知りたいのなら、ドイツ語を学ぶのもよいと思います。

 

 

 

「gh」の例外も見ておきましょう。

 

Edinburgh 「エディンバラ」(エジンバラ:スコットランドの都市)

 

 

スコットランドは、イギリス=「連合王国」を構成する国(地域)のひとつで、「エジンバラ」はその「首都」です。

 

「Edinburgh」は、語末の「ア」という母音が「gh」で表されているので、ちょっと珍しい単語です。

英語やドイツ語などの「ゲルマン語」には、城や都市を意味する「burg」(バーグ、ブルグ)という語がありますが、それが訛って、「バラ」になっているようです。

 

 

 

前に、「gh」の「h」が無音になって、[g]の発音になる語彙の例として、「ghost」(ゴウスト:幽霊)や「Ghana」(ガーナ)を挙げましたが、それ以外にも、

 

spaghetti「スパゲッティ」(スパゲッティ)

yoghurt 「ヨーグルト」(ヨーグルト)

 

などがあります。

 

「spaghetti」は、もともとイタリア語なので、「h」が発音されません。

 

「yoghurt」は、「h」を書かない表記もありますが、「h」のある表記もよく見られます。

 

 

(ivy 松村)

 

 

「H」の話②

「H」の起源は、古代ギリシアの文字にあります。

 

古代ギリシア語には「ヘータ」という文字がありました。「ヘータ」の大文字の字形は「H」と同じ形です。

これが、「エイチ」のルーツです。

 

この「Η」=「ヘータ」は、やがて「エータ」という名称で呼ばれるようになります。

古代ギリシア語において、[]の音の消失が起こったからです。

 

そのため、「Η」という文字からも[]の音が失われたわけです。

 

 

現代英語では、「H」という文字は「エイチ」と呼ばれます。

実は、これは奇妙なことです。

 

英語において、「H」という文字が担う基本的な「音素」は、[]=「ハヒフヘホ」の音だからです。

 

「エイチ」という呼称に、[]の音が含まれていないのです。

 

たとえば、ドイツ語では、「H」の文字は「ハー」と呼ばれます。

これは、ごく自然な「命名」だといえるでしょう。

「ハヒフヘホ」の音を担う文字の名称には、[]の音が組み込まれているわけです。

 

ラテン語でも「H」は「ハー」と呼ばれました。(ラテン語には当初[]の「音素」がありました。)

 

 

ラテン語から派生したイタリア語、スペイン語、フランス語などのロマンス諸語は、「H」を発音しないということを、前回の記事で紹介しました。

 

では、これらの言語は、「H」をどのように呼んでいるのでしょうか。

 

 

・イタリア語 …「アッカ」

・スペイン語 …「アチェ」

・フランス語 …「アシュ」

 

 

イタリア語は「H」の文字に「カ」→「カキクケコ」の音を代表させています。

スペイン語は「H」の文字に「チェ」→「チャ・チ・チュ・チェ・チョ」の音を代表させています。

そして、フランス語は「H」の文字に「シュ」→「シャ・シ・シュ・シェ・ショ」の音を代表させています。

 

これらは、実は、それぞれの言語の「ch」の発音です。

つまり、これらの言語にとって「H」は、「ch」を形成するための文字であるとみなされているわけです。

 

 

 

ということで、「ch」についてもう少し詳しくみていきましょう。

 

 

]の音を失った「Η」という文字には、新しい役割が与えられるようになります。

それは、「二重字」の一部になることです。

 

「二重字」というのは、「ひとつの文字」と同じような機能を持つ2文字列のことをいいます。

要するに、「セット」になった2つの文字に、「独自の発音」を付与するわけです。

 

「H」という文字の重要な働きのひとつは、「二重字」を構成するということです。

 

 

「ch」は、「c」という文字と「h」という文字が組み合わさった代表的な「二重字」です。

 

イタリア語、スペイン語、フランス語では、「H」という文字の名称に「ch」の音があてられています。

これらの言語にとって、「H」という文字の「第一義」は、「ch」を作り出すことなのです。

 

 

それにしても、それぞれの言語で、「ch」の発音がずいぶん違っていますね。

 

 

イタリア語では、「ch」は「カキクケコ」の音になります。

たとえば、イタリアの有名な童話の登場人物「ピノッオ」の綴りは「Pinocchio」になります。

 

スペイン語では、「ch」は「チャ・チ・チュ・チェ・チョ」の音になります。

たとえば、キューバ革命に参画し、スペイン語圏で人気の高い歴史的人物のひとり、「チェ・ゲバラ」の綴りは「Che Guevara」になります。

 

フランス語では、「ch」は「シャ・シ・シュ・シェ・ショ」の音になります。

たとえば、ピアノ曲で有名な作曲家の「ショパン」の綴りは「Chopin」になります。

 

フランス語では「in」の発音が「アン」になるので、「Chopin」は「ショパン」です。

ちなみに、「ルパン」は「Lupin」と書きますよ。

 

余計な話ですが、“Chopin”は、英語でも「ショパン」ですが、「チョピン」という人もいます。“Lupin”は、「ルピン」ですね。

 

 

…チョピン。…なんか、残念。

 

 

 

ドイツ語においても、「ch」は独自の発音を持っています。

 

ドイツ語には「ハヒフヘホ」が2種類あります。

ひとつは「H」で表される[]です。

もうひとつは、強く発音される「ハヒフヘホ」で、「カ」と「ハ」を強く同時に発音するような音です。

文字で説明するのはなかなか大変ですが、寒いときに、手に息を吹きかけるときに出すような「ハ~」という音で、のどの少し奥まった上のあたりを息でこするようにして出します。

 

ドイツ語には「ハヒフヘホ」が2種類あるので、これらを区別するために「ch」が用いられているわけです。

 

たとえば、ドイツの偉大な音楽家、「バッ」の綴りは「Bach」となります。

また、ドイツ起源の人気のあるお菓子に「バウムクーン」がありますが、その綴りは「Baumkuchen」になります。

 

 

 

そして、英語の「H」ですが、「エイチ」と読みます。

したがって、その名称には、やはり「ch」という二重字が念頭に置かれているわけです。

英語における「ch」の発音は、「チャ・チ・チュ・チェ・チョ」です。

 

 

さて、ここでひとつの疑問に突き当たります。

 

イタリア語やスペイン語、フランス語などとは異なり、英語には、[]の音が存在し、「H」という文字は、その発音の表記を担っているわけです。

そうすると、この文字の名称は、「ハー」とか「ヘー」であるべきです。

 

 

なぜ、「H」は「エイチ」なのでしょうか。

 

 

そのヒントは、フランス語にあります。

 

英語は、フランス語の影響を強く受けています。

「フランス人」がイギリスを支配していた時代があるためです。

「フランス人」によるイギリスの「征服」を、歴史の用語で「ノルマン・コンクエスト」といいます。

 

デンマークやノルウェー、スウェーデンなどの北欧には、かつて「ノルマン人」と呼ばれるゲルマン人の一派が住んでいました。「ノルマン」というのは「北方の人」という意味です。

フランス北西部に、「ノルマンディー」という場所がありますが、その地名は「ノルマン人」にちなんだものです。

 

「ノルマン人」というのは、つまりは「バイキング」のことです。

彼らは、巧みに船を操り、ヨーロッパ各地の沿岸に勢力を伸ばしていき、やがてその一部がフランスに土着します。その地が、「ノルマンディー」と呼ばれるようになったわけです。

 

フランスに根を下ろした「ノルマン人」は、次第に「フランス化」し、フランス語を話すようになります。

 

そうはいっても「バイキング」の末裔です。

11世紀後半、彼らは対岸のイギリスに侵攻し、イギリスを支配下におさめます。

こうして、イギリスは「ノルマン人」に征服されてしまうわけですが、それは、もはや「フランス人」によるイギリス支配だったわけです。

 

「ノルマン・コンクエスト」を契機として、イギリスには大量のフランス語の語彙が流入しました。

 

英語に、フランス語由来の語彙がたくさんあるのも、また、フランス語(風)の発音を持った語彙が存在するのも、「ノルマン・コンクエスト」の影響なのです。

 

 

 

「H」に話を戻しましょう。

 

フランス語では、「H」を「アシュ」と発音します。

その綴りは“ache”です。フランス語では「ch」は「シュ」の発音になります。

 

イギリスにおいても、「フランス人」に支配されていた時代には「H」は「アシュ」と発音されていました。

 

しかし、やがてイギリスでは「ch」は「チ」と発音されるようになります。

 

イギリス人が、国内からフランスの勢力を追い出し、英語が「国民の言語」として形成されていくなかで、いくつかの要因が重なって、英語の発音に変化が起こりました。

 

 

となれば、“ache”の読みは(スペイン語と同じように)「アチェ」になるはずです。

 

ところがまた、中世から近世にかけて、英語の発音に変化が生じました。そのため、「アチェ」のような発音は、維持されなかったのです。

 

英語独特のユニークな「発音体系」が、15世紀から17世紀にかけて形作られました。

そのうちのひとつは、語末が「子音+e」になるときに、「e」を発音せず、その直前の母音を二重母音で発音するというものです。

 

 

たとえば:

 

・「ace」→「エイス」(トランプの1)

・「age」→「エイジ」(年齢)

・「ape」→「エイプ」(猿)

・「ate」→「エイト」(eatの過去形)

 

 

したがって、“ache”は「エイチ」と発音されなければなりません。

 

フランス語において「H」の文字は“ache”という名称です。

フランス語では、その綴りを「アシュ」と発音しますが、英語では「エイチ」と発音されてしかるべきなのです。

 

 

 

…しかしながら、“ache”は「エイチ」とは読みません。

 

よく知られているように、現代の英語では、“ache”を「エイク」と読みます。

 

 

「ache」という綴りの、別の単語が「現れた」のです。

18世紀ごろに、「痛み/痛い」という意味を持つ「エイク」という発音の語彙が、「ake」ではなく、「ache」という綴りに整理されたのです。

 

 

そのため「ache」=「エイク」となってしまったわけですが、「H」の呼称は、依然として「エイチ」です。

 

そこで、「エイチ」という発音を表記する別の綴りが求められたのです。

 

 

それで「エイチ」は「aitch」となったわけです。

 

 

ちなみに、現代の英語で「アシュ」といえば、「ash」(灰)のことですね。(少し発音が違いますが。)

 

 

 (ivy 松村)

 

英語の語順の話③

英語は、「語順」が定められている言語です。

そのために、「語順整序」のような問題形式があり得ます。

 

一方、日本語は、厳密な「語順」が定められていません。

「助詞」の働きによって「文の成分」が表示されるために、文中のどの位置に「語」を配置しても文意を損なうことはありません。

そのために、自由な語順操作が可能となります。

 

ふたつの言語は、非常に対照的です。

 

しかし、実は、古い英語は、日本語のように「語」を並べ替えることができるタイプの言語でした。これは、意外に知られていません。

 

 

日本語と同じように、語順操作が可能な言語のひとつにドイツ語がありますが、英語の元になったのは、ドイツ語の方言なのです。

 

「古英語」(Old English)は、現在のドイツ語と同じように、語順操作が可能な言語でした。

 

 

 

5世紀ごろに、現在のドイツに住んでいた「ゲルマン人」の、大規模なイギリス移住が起こりました。彼らの話していた言語が英語の「母体」となったのです。

 

 

 

ところで、公立中学では、ほぼ例外なく音楽の時間にシューベルトの「魔王」を学習します。

その中で、いくつかのドイツ語に触れる機会があります。

そこに出てくるドイツ語の単語が、英語に非常によく似ていることに気づいた人もいると思います。

 

 

ドイツ語 英語
私の~ mein(マイン) my(マイ)
息子 Sohn(ゾーン) son(サン)
Varter(ファーター) father(ファーザー)
子供 Kind(キント) kid(キッド)

 

 

 

英語とドイツ語は、もともと「祖先」が同じ言語です。

 

しかし、現在の英語とドイツ語には、非常に大きな相違があるわけです。

それは、英語は「語順」が固定されているのに対し、ドイツは「語順」を操作できるという点です。

 

 

 

次のドイツ語の文を見てみましょう。

 

「Mein Vater liest das Buch.」

 

これは、英語の「My father reads the book.」という文に対応しています。

 

「Mein Vater」=「私の父」

「liest」=「(彼は)読む」

「das Buch」=「その本を」

 

 

(ドイツ語で本のことを「Buch」(ブーフ)と言いますが、英語の「book」と対応していることがわかりますね。)

 

 

さて、英語は、当然のことながら「My father reads the book.」以外の「語順」で語を配置することができないわけです。

「主語・動詞・目的語」の「語順」は「絶対」です。

 

ところが、ドイツ語は、以下のような「語順」で「語」を並べ替えることが許されているのです。

 

 

「Das Buch liest mein Vater.」(その本を、父は読む。)

 

 

「目的語」である「das Buch」が、動詞の前に配置されています。

英語の文法では、その位置は「主語」が置かれなければなりませんが、ドイツ語の場合には、「目的語」や副詞などの「修飾要素」を置くこともできます。「語」の自由な配置が許されているわけです。

(ただし、「動詞」は「第二番目」の位置に置くことが定められています。)

 

 

 

上記のドイツ語と「同じ語順」で英語を並べてみると:

 

 

?「The book reads my father.」(?その本は私の父を読む。)

 

 

まったく「意味不明」の文が出来上がります。

 

 

 

では、なぜ、ドイツ語は英語とは違って、語順操作が可能なのでしょうか。

 

その理由は冠詞と代名詞にあります。

 

「Das Buch liest mein Vater.」という文には、「das」という冠詞(英語の「the」に相当する)と「mein」(英語の「my」に相当する)という代名詞が現れています。

 

実は、これらの語が「主語」や「目的語」を示すように「変化」しているのです。

 

(実際には、少しまぎらわしい部分もあるのですが、)「mein Vater」は必ず「主語」であることを表し、そして「das Buch」は、「目的語」であると理解されるのです。

 

ですから、この2つの「要素」を入れかえても、文意を混同することはあり得ないわけです。

 

 

 

ドイツ語は、「主語」や「目的語」を示すのに、「単語を変化させる」タイプの言語なのです。

 

 

 

まとめてみましょう。

 

 

・「英語」…「主語」や「目的語」を示すのは「語順」

・「日本語」…「主語」や「目的語」を示すのは「助詞」

・「ドイツ語」…「主語」や「目的語」を示すのは「単語の変化」

 

 

 

さて、英語はもともとドイツ語と同じように、語順操作が可能な言語だったという話でした。

 

現代の英語は、古い時代の英語とは「全く別物」となっているのです。

 

かつての英語は、ドイツ語によく似た文法を有し、自由に語を配置することができるタイプの言語でした。

しかし、数百年ほどの間に、英語は急激な変化を遂げ、現在の形になります。

おそらく英語は、地球上のあらゆる言語の中で、ほんの数世紀という短期間に、最も大きく変貌した言語です。

 

 

 

ところで、伝統的な言語学では、言語を3つの類型に分類します。

それは、「言語類型論」と呼ばれます。

一般的には、以下のような分類であると理解されています。

 

 

・「屈折語」…単語が「変化」する(ロシア語・ドイツ語など)

・「膠着語」…単語に付属する「機能語」(つまり「助詞」)がある(日本語・トルコ語など)

・「孤立語」…「単語の変化」や「単語に付属する語」がない(中国語・ベトナム語など)

 

 

実は、言語学の専門家のなかにも、「言語類型論」の本質を見誤っている人がいます。

 

「言語類型論」は、実は、「格」の表示方法によって言語を分類するものなのです。

 

「格」とは、簡単にいえば、「文中での名詞の働き」のことをいいます。もう少しわかりやすくいえば、「主語」や「目的語」といった「役割」のことです。

つまり、「主語」や「目的語」の表しかたによって、言語を分類するわけです。

 

 

したがって、それぞれの言語の「類型」は、以下のような「説明」が、より的を射ています。

 

 

・「屈折語」…単語を変化させて「格」を表示する

・「膠着語」…「機能語」を付属させることによって「格」を表示する

・「孤立語」…「語順」によって、「格」を表示する

 

 

この分類に従えば、現代英語は「孤立語」の特性を持った言語であるということがわかります。

英語は、「屈折語」から「孤立語」へと、その性質を根本から変えてしまった言語なのです。

 

 

「屈折語」であるドイツ語や「膠着語」である日本語は、「主語」や「目的語」を顕在的に示すことができるので、語順操作が可能になります。

 

一方、「孤立語」である英語は、「語順」によってのみ、「格」の表示が可能となります。

 

ですから、「The book reads my father.」という文も、理性的に考えて「私の父はその本を読む。」と言いたいのだな、と頭の片隅では理解していても、その解釈は否定されてしまうわけです。

 

 

「語順」だけが、英語の「格」を決定する「ルール」だからです。

 

 

 (ivy 松村)

 

外来語の出身 ②(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語について)

幕末・明治期の開国とともに、これまで日本人が知ることのなかった大量の知識や物品が、欧米から日本にもたらされました。

 

近代化に向けて国づくりを主導した当時の知識人たちは、新しい概念を、言葉を作り出すことで言い表し、日本に定着させていこうと考えました。

 

「経済」「社会」「自然」「科学」「文学」「美術」「物理」「出版」「写真」「図書館」「新聞」「意識」「理論」「空間」「国家」「警察」「工業」…

 

…このような、日本人によってつくられた漢語を「和製漢語」といいます。

 

そういえば、「野球」も「和製漢語」ですね。ということは、「投手」「打者」「盗塁」「三振」なども「和製漢語」ということになります。

 

もともとあった言葉に、日本人が新しい意味を含めた言葉も「和製漢語」に含みます。

 

「革命」「自由」「愛」などです。

 

 

和製漢語は、もちろん江戸時代以前にもつくられていましたが、西洋の文物を早急に吸収しなければならない幕末・明治期に、数多く作り出されました。これらの言葉は、現在の私たちの生活に欠かせない基本的な語彙となっています。

 

 

 

さて、幕末・明治期には欧米の考えや文物が大量に入ってきましたが、当然、すべてに翻訳語を与えることはできません。同時に、多くの「外来語」が日本に定着することになりました。

 

日本が、近代化の過程でお手本と考えていたのは、主にアメリカ、イギリス、ドイツ、そしてフランスでした。そのため、英語、ドイツ語、フランス語から導入された外来語がたくさんあります。

 

注意しなければならないのは、よく使用される、なじみのある外来語で、英語由来のものではない語彙が、意外に多いということです。当然、それらは英語話者には通じません。

 

現在の日本では、圧倒的に英語の影響力が強くなっています。外来語のほとんど、およそ8割以上が英語から導入されたものであると考えられます。

そのため外来語のほとんどは英語由来のものであるという観念が強まり、ドイツ語やフランス語から取り入れられた外来語であるのに、英語由来のものであると誤解されているものが少なくないのです。

 

 

 

ドイツ語由来の外来語…医学、登山、スキーに関するものが多い

 

オブラート、ガーゼ、ギプス、ワクチン、カルテ、ザイル、ピッケル、ゲレンデ、スキー

 

アルバイト、エネルギー、アレルギー、ホルモン、コラーゲン、アクリル、デマ、ディーゼル、エーテル

 

テーマ、ガーゼ、ノイローゼ、セレナーデ、ボンベ、ゼミナール、ナトリウム、カリウム

 

イデオロギー、ヒエラルキー、プロレタリアート、カテゴリ、ワンダーフォーゲル、メタン、

 

カルテル、コンツェルン、タクト、フィルハーモニー、シュラフ、リュックサック、バウムクーヘン

 

グミ、ヨーグルト、ベクトル、メルヘン(Märchen)、ワッペン、ヴィールス(ウイルス)…

 

 

 

フランス語由来の外来語…芸術、料理、服飾に関するものが多い

 

アトリエ、クレヨン、デッサン、レストラン、オムレツ、コロッケ(croquette)、ソース、ズボン、マント

 

デッサン、オブジェ、モルモット、シルエット、バカンス、スイス、リットル、メートル、グラム、コント

 

エチケット、コンクール、デジャヴ、バリカン、ブーケ、レジュメ、ジャンル、カモフラージュ、アベック

 

アンケート、グランプリ、クロワッサン、シュークリーム(chou à la crème )、アンコール、メトロ

 

マヨネーズ、エクレア、カフェ、ピーマン、ピエロ、フォアグラ、ポタージュ、グラタン

 

ブティック、エチュード、アバンギャルド、コラージュ、シュール、ブルジョア、プロレタリア

 

ルサンチマン、ルネサンス、ビバーク、ベージュ、ルポルタージュ…

 

 

ドイツ語、フランス語以外では、イタリア語やロシア語由来のものがいくつかあります。

 

 

 

イタリア語…音楽、食料に関するものが多い

 

オペラ、ソプラノ、アレグロ、フィナーレ、テンポ、マカロニ、スパゲッティ、ピザ

ソナタ、マニフェスト、フレスコ、アカペラ…

 

 

 

ロシア語…やはり革命や労働関係が多いのでしょうか

 

カンパ、コンビナート、ノルマ、インテリ、ツンドラ、ペチカ、トロイカ、ウォッカ

イクラ、アジト

 

 

 

もともと英語だと勘違いしていた言葉もけっこうありますね。

 

 

(ivy 松村)