中高一貫校増加の影響(高校受験考察①)

最近の高校入試の傾向を、中学受験との関連で考えてみたいと思います。

 

中学受験には、二つの方向性があります。

 

ひとつは、私立の大学附属校に進み、大学までのルートを確保しようというものです。

もうひとつは、一貫校に進み、大学受験に備えようというものです。

 

前者は、私立の名門大学への「入学の権利」を早期に獲得することで、受験に煩わされることのない中学・高校生活を送ることができます。

後者は、主に国立の名門大学の入試を突破するための学力を醸成するのに、理想的な環境を手に入れることができます。

 

中学受験は、ある意味で、大学入学を見据えての、教育投資であると捉えることもできます。

また、あえて補足すれば、階層文化を再生産する装置として機能しています。

 

 

いずれにしても、「公立の中学を避けよう」とする思惑が根底にあります。

 

 

 

最近の10年間の受験業界の最も大きな変化は、都立高校の復権であるといえますが、それと並行するかのように、私立高校の「一貫校化」が起こっています。

 

早大学院、中附など、中学部や中学校を新設する大学附属高が増えました。

また、八王子高校のような大学附属ではない高校で、中学校を設置する動きがみられるようになりました。

 

一方、穎明館、吉祥女子、海城などの進学校で、高校の募集が停止になりました。

 

最近では、高校の募集を再開し始めた私立もありますが、トレンドとしては、6年制の中高一貫校志向が広がっていると捉えることができるでしょう。

 

 

私立高校は、一貫校化することで、経済力、学力に恵まれた生徒を安定的に確保しようという戦略を持っています。

また、進学校では、6年という中等教育課程を効率的に指導し、大学合格実績を上げることで、少子化時代の生き残りを図ろうとしています。

 

 

こうした近年の「一貫校」の広がりは、裏を返せば、高校受験の「枠」を縮小させていることになります。

 

中学校を併設した学校では高校の募集人数を減らさなければなりません。各学校で収容人数が決められてあるので、単純計算では、中学から入学した生徒の数だけ、高校の募集「枠」が減らされることになります。

そして、当然、高校の募集を停止した学校は「高校入試」を行いません。募集人数はゼロになります。

 

 

私立高校は都立高校と競合する立場です。優秀な生徒の「取り合い」をしなければならないという宿命があります。

しかし、「高校受験」というフィールドで争うのは分が悪いという判断があったのでしょう。

あるいは、「青田買い」のほうが有利で効果が高い、という考えがあったのかもしれません。

 

そのために、「中学受験」という舞台に「進出」あるいは「高校受験」から「撤退」したのだとみることができます。

 

 

さらに、都立中高一貫校が開校しました。

多摩地区では、南多摩、立川国際、三鷹、都立武蔵など、伝統校や人気校が「中学受験」に参入することになりました。

 

そのことが意味するのは、都立中の誕生によって、高校受験で入学する「枠」が減らされたということです。

 

 

このように、近年、私立、都立の、進学実績が堅調な高校が「一貫校化」するという現象が増加しました。それによって、受験生の進学ルートが途絶えたり、せばめられたりすることが起きてしまったのです。

そのため、上位高への志望者が飽和しています。

 

また、近年では、国公立大学志願者が増えていますし、中受からのルートが「開拓」されたので、私立附属高受験もかつてほど過熱した状況ではなくなりました。

 

ですので、競争は、「高校から入学できる進学校」に集中します。

 

 

 

端的に、都立の上位進学校――進学指導重点校――は高校から入学する進学先として理想的です。そのために、人気が高まっています。

 

 

都立高校の復権に同調するかのように、一部の私立高校が「高校受験」から後退する動きを示しました。それによって、難関大学への進学を希望する公立中学生を収容する私立高校が減少してしまったのです。

 

そして、その受け皿となった都立高校の存在感がさらに強まり、都立高校の求心力がいっそう高まることになったのです。

 

したがって、近年の高校受験は「都立志望」の色彩が、きわめて色濃くなっているのです。

 

(ivy 松村)