公私連絡協議会の話③

以前、このブログに、石原慎太郎氏が都知事を辞められてから、東京都教育委員会の「方向性」に変化が生じているのではないか、と書きました。

 

私立高校に対する「配慮」が強くなってきているように感じられるのです。

 

石原氏が都知事を辞任されたのは、平成24年(2012年)の10月です。

この後、矢継ぎ早に都立高校の「入試改革」が押し進められたという「事実」について、以前このブログに書きました。

 

「入試制度」「選抜方法」「入試問題」「採点方法」など、さまざまな「変更」が強いられました。

 

さらに、「募集」の面でも後退が起こっています。

 

 

さて、石原氏が都を去った後の平成26年に、公私連絡協議会で平成27年度からスタートする「第四次中期計画」が「合意」されました。

 

そこに、ひっそりと都立高校の「受入分担人数」が減らされるような「仕掛け」が練り込まれました。

「表面上」はこれまでと同じ内容であるという体裁を示しながら、内実が変えられています。

 

 

都立高校と私立高校の「受入分担人数」の算出「ルール」が変更されたのです。

 

それは、平成27年度の都立高校の生徒募集に影響を与えています。

 

平成27年度は、平成26年度と比べて、公立中学を卒業する生徒数はほとんど変わらないという試算がなされていました。

 

しかし、突然持ち込まれた「ルール変更」の効果によって、都立高校に進学する生徒が減り、私立高校に進学する生徒が増えたのです。

 

もちろん、その「変更」は、教育委員会の会議に諮られて承認されたものではありません。

 

 

 

「本来」であれば、平成27年度は、平成26年度と公立中学を卒業する生徒数がほとんど変わらないので、同じ数値の「就学計画」になるはずなのです。

 

ところが、平成27年度は、都立高校の「受入分担人数」が減らされ、都立高校の「募集人数」も縮小させられてしまったのです。

 

 

平成27年度の「卒業予定者」は、前年とほぼ同数です。

また、「全日制高校進学希望者」も、ほぼ同数です。

そして、「都立高校進学希望者」も、ほぼ同数だったのです。

にもかかわらず、都立高校の募集人数が減らされたわけです。

 

 

 

その「ルール変更」というのは、これまで、公立中学を卒業する予定の生徒数に加えていた「都立中学の生徒数」を省いて「受入分担人数」を算出する、というものです。

 

また、東京高専に進学する生徒の人数も省かれることになりました。

 

 

 

もちろん、そのほうが「正確」な数値に近づくでしょう。

 

しかし、それは、これまでの「就学計画」の枠組みを変えてしまうものです。

 

また、教育委員会の会議でも再三にわたって委員が指摘していますが、「正確」な試算を行うことが重要なのであれば、私立中学から都立高校に進学する生徒の人数も組み込んで算出しなければならないわけです。

 

疑問点は、以下に集約されるでしょう。

 

・なぜ、都立高校を管轄する東京都教育委員会(の事務局)が、東京都立高校に進学を希望する生徒の不利になるような変更を受け入れるのか?

 

 

 

「公私連絡協議会」が策定している「就学計画」における都立高校の「受入分担人数」の算出方法を再度確認してみましょう。

 

 

・「卒業予定者数」(A)×「計画進学率0.96」(B)=「高校進学(予定)者数」(C)

・「高校進学(予定)者数」(C)-「他県・国立・高専進学予想人数」(D)=「受入(予定)人数」(E)

・「受入(予定)人数」(E)×「私立高校受入分担比率0.404」=「私立高校受入分担人数」(F)

・「受入(予定)人数」(E)×「都立高校受入分担比率0.596」=「都立高校受入分担人数」(G)

 

 

 

 

「ルール変更」がなされた後の平成27年度の「受入分担人数」を確認しましょう。

 

平成27年度の「私立高校受入分担人数」(F)は、2万8,600人になります。

一方、「都立高校受入分担人数」(G)は、4万2,000人となります。

 

 

次に、「ルール変更」が行われなかった場合の数値を算出しなければなりません。

 

平成27年度の「都立中の生徒」を含めない「卒業予定者数」(A)は7万7,421人です。これに「都立中の生徒」を加えた数字は、7万9,010人になります。

この人数は、事務方の担当者が、東京都教育委員会の定例会議で明らかにしたものです。

 

この数字は、平成26年度の「卒業予定者数」(A)である7万9,140人と比べて「-130」となっています。

「就学計画」は「概算」で算出するので、「-130」の差異は計算に反映されません。

 

「ルール変更」が行われなかった場合の平成27年度の「受入分人数」は、平成26年度のものと全く同じになります。

 

つまり、「ルール変更前」の平成27年度の「受入分担人数」は、平成26年の「受入分担人数」と同数である4万3,100人となるわけです。

 

 

したがって、平成27年度の「受入分担人数」は、「ルール変更」によって4万3,100人から4万2,000人に減らされたのだということになります。

 

その差異は「-1,100」です。

 

 

 

 

ルール変更前 ルール変更後 増減
「私立高校受入分担人数」 29,300 28,600   -700
「都立高校受入分担人数」 43,100 42,000 -1,100

 

 

 

平成27年度は、「本来」の「受入分担人数」よりも1,100人少ない「就学計画」になっているということになります。

 

それにともなって、実際に、平成27年度の都立高校の募集人数は、前年に比べて減らされたわけです。

 

 

 

もちろん、私立高校の「受入分担人数」も減っています。しかし、実は、「受入分担人数」を少しばかり減らされることは、私立高校にとってはむしろ「プラス」の要因になります。

 

 

 

「受入分担人数」は、「就学計画」として算出されるものなので、「実際に進学する人数」とは必ずしも一致しません。

 

 

まず、実際の進学率ですが、「計画進学率」の96パーセントが達成されたことはありません。例年、ほぼ92パーセント程度の「受入実績」となっています。

 

「計画進学率」を達成することが困難になっているのは、「計画進学率」を全日制の高校だけを対象として設定しているからです。実は、定時制に進学した生徒はこの数値に含まれないのです。

 

全日制の都立高校に不合格だった生徒のうち一定の人数は、最終的に全日制の私立高校へ進学せずに、都立の定時制などに進学します。

そのために、全日制の高校だけを対象に設定されている「就学計画」に、なかなか「実績」が届かないわけです。

 

また、他県の高校への進学者が漸次増加しています。

そのために、「都立高校」と「都内の私立高校」を対象としている「進学率」が伸び悩んでいます。

 

 

以上のような状況は、同時に、私立高校の「受入実績」を低迷させる原因ともなっています。

 

 

都立高校と私立高校のそれぞれの「受入分担人数」の「達成率」は、都立が例年「計画」を上回るのに対し、私立は例年下回っています。

 

たとえば、平成26年度では、都立高校は、「受入分担人数」4万3,100人に対して「受入実績」は4万4,492人です。したがって「受入達成率」は103.2パーセントです。

 

一方、私立高校は、「受入分担人数」2万9,300人に対して「受入実績」は2万5,377人です。したがって、「受入達成率」は86.6パーセントです。

 

私立高校の「受入達成率」が、都立高校に比べて、低調であることがわかります。

 

 

この「不均衡」は、都立高校の人気が、私立高校に比べて高いために生じているものです。

 

「東京都中学校長会進路対策委員会」が行っている「志望予定調査」によれば、公立中学を卒業する生徒のうち、例年およそ77パーセントが都立高校を志望しています。

平成26年度では、都立高校の志望者は76.99パーセントでした。

 

都立高校は、私立高校に比べて「定員割れ」や「入学辞退」が少ないために、「募集」が堅調に行われています。

一方、一部の私立高校は、「募集」に苦戦しているわけです。

 

 

 

ようするに、私立高校は、「受入分担人数」が700ほど減ったとしても、生徒が「流出」することはなく、むしろ「受入達成率」が上昇する要素になるのです。

さらに、都立高校の募集人数が減らされ、その分、都立高校に進学できない生徒が増加するわけです。当然、私立高校に流れる生徒の数が増えることになります。

 

 

当然の帰結ですが、平成27年度は都立高校の「実績」が下降し、私立高校の「実績」が上昇しました。

 

 

 

 

 

26年度「受入達成率」 27年度「受入達成率」
私立高校 86.6 89.4
都立高校 103.2 102.3

 

 

26年度「実績」 27年度「実績」 増減
私立高校 25,377 25,569  +192
都立高校 44,492 42,975 -1517

 

 

 

 

繰り返しになりますが、平成26年度と平成27年度では、公立中学を卒業する生徒の数はほとんど同じだったわけです。

 

また、都立高校を志望する生徒の割合もほとんど同じだったのです。

 

であるにもかかわらず、都立高校に進学する生徒が1,517人も減ってしまったわけです。

 

それは、都立高校の募集人数(と合格者数)が減らされたからです。

 

そして、なぜ、都立高校の募集人数が減らされたのかといえば、「就学計画」における「受入分担人数」の算出方法が変更されたからです。

 

 

そして、ここがポイントなのですが、その「ルール変更」は、東京都教育委員会で「議事」として諮ったうえで決定されたものではないのです。

 

東京都教育委員会の委員は、この「変更」を事後的に報告されただけなのです。

 

これは、公私連絡協議会で決定されたものなのです。

 

 

 

参考:

平成26年 第14回 東京都教育委員会定例会会議録

平成26年度公私連絡協議会の合意事項について

 

 

 

(ivy 松村)

公私連絡協議会の話②

公私連絡協議会では、5年ごとに策定される「中期5か年計画」にもとづいて、都立高校と私立高校の「受入分担比率」等を決めています。

現在は、平成27年から平成31年までを対象とした「第四次中期計画」が継続されています。

 

・第一次中期計画 平成12年度~16年度

・第二次中期計画 平成17年度~21年度

・第三次中期計画 平成22年度~26年度

・第四次中期計画 平成27年度~31年度

 

 

 

実は、この四次に渡る「中期5か年計画」は、その内容のほとんどが固定されたままになっています。

変わったところといえば、私立高校進学者に対する「就学支援金制度」や「授業料軽減助成金制度」について、「都立の側」が周知を行うという約束がなされたことくらいです。

 

 

平成12年からスタートした「中期5か年計画」では、「受入分担比率」は都立と私立で59.6対40.4となっています。この比率は、17年間、全く変更されていません。

 

(後で詳述しますが、「第四次中期計画」からは、「表面上の数字」をいじらないで「私立に有利な計画」を策定する「マジック」が使われます。)

 

 

また、公立中学を卒業する生徒のうち、全日制の高校に進学する生徒の数を推計するために用いられる「計画進学率」も17年間96パーセントに固定されています。

 

これまで、私立高校側は、「計画進学率」を「実績」に近い92パーセントに引き下げることを求めてきましたが、東京都教育委員会はそれを受け入れていません。

 

それを行うことは、東京都教育委員会の「存在意義」を揺るがす根源的な問題となりかねません。そもそも、教育環境を充足させることを目的とする行政機構が、「計画進学率」を「下方修正」することは原理的にあり得ないわけです。

 

しかし、それ以外の理由も考えられそうです。

 

 

「東京都教育委員会」は、知事が任命する教育長と教育委員によって構成されます。

そして、東京都教育委員会の事務を執行するための事務局を「教育庁」といいます。

 

実は、「東京都教育委員会」という名前で、高校入試を含めた教育や文化事業に関する実務を執り行っているのは「教育庁」なのです。

 

教育委員会の委員が出席する「会議」で決定されることは、実際にはそれほど多くないのです。

 

たとえば、上記の「中期5か年計画」についても、常に事後的な「報告」が定例会議で行われるだけです。「報告」を行うのは、事務局=「教育庁」の職員です。

 

もし、「中期5か年計画」の内容を変更しようとすれば、東京都教育委員による「会議」に諮らなければならなくなります。

 

そうなると、事務方が主導して行っている「公私強調」の枠踏み自体に「メス」が入るかもしれません。

 

もし、私が「教育庁」の職員であれば、公私連絡協議会における「合意」をルーティン化し、その内容を「決定事項」として「報告」することを繰り返し、「会議」で審議されることがないようにするでしょう。極力「波風」を立てないように努めます。それが、「官僚の正統的な手腕」というものにちがいありません。

 

 

実際に、東京都教育委員会の「会議録」を見てみると、実に「面白い」やり取りがなされています。

 

 

 

平成19年 第16回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【学務部長】 平成19年度公私連絡協議会が9月18日に開催され、平成20年度高等学校就学計画について合意をいたしました・・・。(p4)

 

 

【委員】 これはまだプレス発表していないわけですね。(p5)

 

 

【学務部長】 18日にプレス発表させていただいております。(p5)

 

 

【委員長】 この件は、報告事項ですから発表済みということですね。(p5)

 

 

【委員】 公私連絡協議会で都立高等学校と私立高等学校とが協調して生徒の幸せを考えていくことは非常にいいことだと思うのです。談合という言葉を使っては語弊がありますがこの協議会で出した割合というのは、生徒の幸せを考えているのか、それとも経営者の幸せを考えているのか分かりませんが、この数字が5年間大体決まっているという御説明でした。(p5)

 

・・・果たして協議会でこういう数字を決めることがいいのか、自由競争にしてしまった方がいいのかという議論は当然あるべきだろうと思うのです。(p5)

 

・・・こうした数字を決めたのですが、これでどうでしょうかという話がまず教育委員会に出てくるべきで、このように教育委員の意見が全く反映されていないということは問題だろうと思います。ですから、こうした数字を教育委員会に諮って、今までどおりだからその数字でいいではないか、あるいは、協議会でこの数字は撤廃しようではないかとか、このまま続けていこうではないかとか、そういう議論をするのが教育委員会の仕事ですから、教育委員会に全く諮らないで決めてしまって、以上終わりでございますということは、いささか手続上問題があるのではないかと思うのです。 (p5-6)

 

 

【学務部長】 原則として5年間の中期計画において基本的事項について公私で合意を行い、その間については公私で調整をした上で、中学生の進路を保証し、受入れを確保していくという趣旨で行ってきております。今後、平成21年度までに、平成22年度からの新たな5年間の合意に向けての作業を行いますので、その中で適宜、今後の進め方を含めて御議論していただきながら、進めさせていただければと思っております。(p6)

 

 

【委員】 定数をどのように決めるか、公私で協議をすることが本当にいいことかどうかも含めて、教育委員会で議論して、その次からどうしようかということが教育委員会に出てきて、今年度はこれでいいではないか、ではプレス発表してくれという手順だといいのですが、逆に事務局で決めてしまって、教育委員が一切口を差し挟む余地がないということは問題があると私は考えております。(p6)

 

 

【教育長】 公立と私立の関係は、昔から各都道府県が悩んでいるところでございまして、東京都の場合は5年ごとに基本協定を結んで、各年度は端数の関係で協議するという状況であります。基本協定を結ぶに当たっては、元々協定を結ぶべきかどうなのか、進学率を今96パーセントとしてありますが、これをどうすべきなのか、公立と私立の役割分担をどうすべきなのか。これは事務的な問題ではないですから、当然、教育委員会に、次の5か年間の基本協定を結ぶに当たって基本的な考え方をお決めいただかないとならないと考えております。(p6)

 

 

【委員】 1年後の教育委員会で考え方を決めるとしても、今回これでいいと決定するに至るまでに、やはり教育委員会の中で議論があって、この次からこのように変えようではないかとか、今のままでいいだろうとか、そういう議論が当然あった方がいいのではないかと私は考えます。5年間決まっているのだから、このまま決まりましたので報告しますという手続には、いささか不満であります。(p6)

 

 

【委員長】 今回は報告事項ですから、お認めいただくとして、次回からは今の御意見を踏まえて考えていただくということでよろしいですね。(p6)

 

 

 

平成19年 第17回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【学務部長】・・・公私連絡協議会で協議をして都立高等学校の受入数を決めているということについては、今後、どういう形で進めていくかも含め、論点になろうかと思います。(p7)

 

 

【教育長】 ただ、前回の教育委員会において、公私連絡協議会で本当に公私の割合を決めてしまって良いものなのかどうかという意見が出たことから、改めて議論をしましょうということにはなっています。(p7-8)

 

 

【委員】・・・私学の経営に合わせるのではなくて、生徒に合わせることが非常に大事なことであるから、公私連絡協議会で決める前に、東京都教育委員会の委員の中でいろいろな議論をして、それで良いだろうとなったら、教育長にお任せする形が良いというのが前回の発言にありました。(p8)

 

 

 

平成21年 第15回 東京都教育委員会定例会会議録

 

 

【都立学校教育部長】

本年8月31日に開催した平成21年度公私連絡協議会において、東京都と東京私立中学高等学校協会は、都立高校及び私立高校の受入れに係る第三次中期計画並びに平成22年度高等学校就学計画について合意いたしました。(p4)

 

・・・平成22年度から平成26年度までの各年度就学計画では、一層の公私協調により、進学実績率の向上を図るよう、公私分担も必要に応じ協議をすることとしております。(p4)

 

 

【髙坂委員】 今度は第三次の計画になります。以前からこのように数を固定していることがいいのかどうか議論してきましたが、今回の改定で合意する時点で、過去の議論はどういう格好でなされたのでしょうか。当然その議論を基にしてこういう議論がされたのだと思いますが、そこのところを説明していただきたい。(p6)

 

 

【都立学校教育部長】 今までの議論なのですが、私立側とも何回も協議してまいりました。計画進学率96パーセントに対して、私立の受入れが40.4パーセントということで、実際には都立が2パーセント程度上回っているのですが、私共はこの差を埋めてほしいと主張しています。この計画進学率を、実績の92パーセントに下げてほしいという主張が一方私立側にはございます。(p6)

 

・・・私立側からは、数を固定してほしいといった主張もございますが、分担割合における現行と実績の比率をみた場合に、私立学校が全部受け入れられるのであれば、可能な数字と言えるかと思うのですが、必ずしも見込みとしては期待できない数字なのではないかと思っております。(p6)

 

 

【竹花委員】 そのことの是非について議論するつもりはないのですけれども、これは相手のあることですし、都庁の中でも広く検討している分野もあって、既に合意をしたということで、この教育委員会でこれをひっくり返すことはできませんよね。(p8)

 

 

【都立学校教育部長】合意につきましては、公私と昨年来からそれぞれの主張があり、それから協議し、合意したものでございまして、これを覆すということはできない状況にございます。(p8)

 

 

【竹花委員】 私は東京都教育委員会に休まず出席しているわけではないですが、ここに至る前に、このような方向でという御相談がありましたか。(p8)

 

 

【竹花委員】 当教育委員会でも、私自身も何度か発言したことがございますし、髙坂先生がおっしゃったような趣旨もお話し申し上げたので、もっと事前に相談があってもいいはずだというのが私の心証です。(p8)

 

 

【都立学校教育部長】 本年5月28日の懇談で経過については御相談をしております。それ以前も、やはり方針については御相談をしております。(p8)

 

 

【竹花委員】 私は、結論をこういう形でするという相談を受けた覚えはないです。(p8)

 

 

【竹花委員】・・・私としては第三次中期計画について、様々なものがある中での個別の御説明以外に、この5年間にわたって東京都教育委員会に影響を与えるこのような協議については、しっかりとした御説明が事前に欲しかったということを申し上げておきたいと思います。(p11)

 

 

・・・私立学校にとってどうかではなくて、東京都の公立中学校の生徒にとってどうかという視点でこれからしっかり考えていくということで、お約束いただければそれでよかろうかと思います。 (p11)

 

 

 

平成27年 第14回 東京都教育委員会定例会議事録

 

 

【竹花委員】・・・かねてからこの都立と私立の計画については、その在り方について様々な角度から疑問を呈してきたのですけれども、私が懸念するのは、私学の方の計画との約束で、都立の入学枠を定めて、各高校の受入人数を決めていきます。そのために、本来ならばもっと都立に行きたいはずのところが、枠が狭いためにあふれるということが生じているのではないでしょうか。もっとも、私学もたくさんやってきて、生徒がたくさん来るのにという状況であれば別ですが、現在は授業料についても同様の条件になっているにもかかわらず、27年度は9割程度だということであれば、やはり都立の入学枠を最初から少し多めに取ることが、生徒たちにとって有利なことではないかというふうに普通は考えられるのですけれども・・・。(p20-21)

 

 

【竹花委員】・・・やはり受ける生徒たちの入学の枠を狭める結果に都立と私立の約束が機能しているとすれば、それは本末転倒だと思います。(p21)

 

 

 

(ivy 松村)

公私連絡協議会の話①

都立高校と私立高校は、生徒募集において「競合関係」にあります。

毎年、入学する生徒を「取り合う」運命にあります。

 

ところが、「両陣営」が、全くの自由競争でしのぎを削っているのかといえば、そうではありません。実は、都立高校と私立高校は「協調し合う関係」を築き、維持しています。

 

公立高校と私立高校の間で、「協調」を行わない県も多くありますが、「東京都」は「協調路線」を堅持しています。

 

 

もちろん、それには「いい部分」と「悪い部分」があり、その事実のみを切り取って断罪するような性質のものではありません。東京都は、あらゆる意味で特殊な地域です。

 

 

しかし、現実に、そのような「協議」は、私立学校の権益を守るための「盾」として機能します。

 

当然、私立学校は「配慮」を期待するわけです。

そして、なぜか、その期待に沿って行動する人間が「都立の側」にいるわけです。

 

 

 

毎年、「公私連絡協議会」という会合が開かれています。

 

ここで、東京都教育委員会事務局や東京私立中学高等学校協会などが、高校に進学する生徒の「割合」と「数」とについて話し合います。

 

公立中学を卒業する生徒の「就学計画」を立て、都立高校と私立高校で、お互いがどれくらいの人数の受け入れるのか、その分担を協議するのです。

ようするに、高校に進学する生徒のうち、何人ぐらいを都立高校に進学させ、何人ぐらいを私立高校に進学させるのか、話し合うわけです。

 

ここで「合意」された内容に沿って、都立高校の募集人数が決められるわけです。

 

 

こうした「都立」と「私立」の「協議」は、ずいぶん前から行われてきました。

 

数十年前から、都立高校側と私立高校側が、中学卒業者のそれぞれの「受入分担」について協議してきた「歴史」があるのです。

 

 

昭和60年になされた「合意」では、双方の「受入分担比率」は、都立と私立で56:44となっています。

 

昭和60年(1985年)は、第二次ベビーブーム世代が高校受験を迎え、バブル景気がまさに本格化しようという時期です。当時は、いじめなどの社会問題がクローズアップされたこともあり、東京都は私立志向が強い時代でした。

 

しかし、「私立」には、懸念材料がありました。

 

その3年前に学校群制度が廃止され、「グループ合同選抜制度」が実施されるようになっていました。「グループ合同選抜制度」は、一言でいえば、都立を第一志望とする生徒が、別の都立高校を「滑り止め」にすることができる制度です。したがって、「私立に流れる生徒」に歯止めがかかる要因となります。そして、このころ、下の世代の少子化傾向が明確にあらわれました。「教育事業」全体が、将来の「対応」を迫られていたのです。

 

 

さて、その後も「都立」と「私立」の「協議」は恒常的に行われてきました。

 

そして、平成12年に、「新しい枠組み」が提唱されたのです。

 

「公私連絡協議会」をとおして「中期5か年計画」が策定され、これを5年ごとに「更新」するという「慣例」が形作られたのです。

 

 

つまり、都立高校と私立高校が、お互いどれくらいの生徒を入学させるかを定める「受入分担」のフレームを、5年間「固定する」ということが制度化されたのです。

 

「中期計画」を立てることによって、「長期」では、「都立」と「私立」が協議し続けるという方針を既定化させることができます。その意味でも、「優れた戦略」だといえます。

 

 

 

それにしても、「平成12年」というタイミングは、何やら「意味深げ」に思えます。平成12年度からの計画なので、この計画についての協議は、前年の平成11年に行われていたことになります。実は、石原慎太郎氏が初めて都知事に当選したのが平成11年なのです。

 

 

 

この「中期5か年計画」は随時「更新」され、現在は、平成27年から平成31年までを対象とした「第四次中期計画」が継続されています。

 

 

・第一次中期計画 平成12年度~16年度

・第二次中期計画 平成17年度~21年度

・第三次中期計画 平成22年度~26年度

・第四次中期計画 平成27年度~31年度

 

 

「第一次中期計画」が策定された平成12年度から現在まで、都立高校の「受入分担」の比率は「59.6」に固定されています。

この比率は、昭和60年に比べてやや増加していますが、それでも「都立高校のニーズ」に見合ったものなのかどうか、微妙なところです。

 

参考までに述べると、私立の中高一貫校に通う生徒を含めると、「私立学校」に在籍する生徒と都立高校に在籍する生徒は、ほぼ半数ずつになります。

 

また、「東京都立中学校長会進路対策委員会」の調査によれば、公立中学を卒業する生徒のうち、都立高校への進学を希望する生徒は、例年全体の約77パーセントにのぼります。

 

そして、実際には、都立高校に進学する生徒の比率は、「59.6」よりも若干多くなります。一方、私立に進学する人数は、「40.4」よりも少なくなります。都立高校を志望する生徒が多いためです。

私立高校は、何年もの間、公私連絡協議会で策定された「就学計画」を達成できていません。

 

常識的に判断するならば、都立高校の「枠」を広げるべきなのですが、一連の「取り決め」は、それを封じているわけです。

 

この「取り決め」のために、都立高校には、より多くの生徒を収容する「キャパシティー」があるにもかかわらず、「59.6パーセント」を受け入れる「枠」しか用意されないわけです。

 

都立高校の募集人数は、高校の「キャパシティー」によってではなく、私立高校との「協議」によって定められていということになります。

 

例年、都立高校への進学を志望する生徒は約77パーセントいます。

そのうち、都立高校が受け入れる生徒は「59.6パーセント」なので、「残り」は「私立高校」に進学することになります。あるいは、全日制高校への進学をあきらめることになります。

 

 

 

参考:

 

平成27年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成26年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成25年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成24年度 公私連絡協議会の合意事項について

平成23年度 公私連絡協議会の合意事項について

都立高校及び私立高校の受入れに係る「第三次中期計画」並びに平成22年度の高等学校就学計画について

東京都立高等学校教頭研究協議会 研究協議会報告:(15),p11

 

 

 

(ivy 松村)