高校の大学合格実績の話③

『週刊朝日』は、毎年7月に、有名大学への現役の進学者数を掲載しています。

今年はまだ、掲載時期になっていません。昨年のデータを見てみたいと思います。

2014年7月4日号の『週刊朝日』に掲載された「全国1954高校の有名大学現役進学者数総覧」という記事です。

 

国公立大学進学者を比べてみましょう。

(現役進学者/現役合格者)

 

国立高校    136/136

日比谷高校   80/97

西高校     85/89

戸山高校  73/87

八王子東    113/116

立川高校    63/67

 

 

特筆すべきは、国立高校です。136人が現役で国公立大学に合格し、全員が合格した国公立大学に進学したということになっています。

136人合格、という「人数」も群を抜いていますが、驚くべきなのは、100パーセントの進学率です。

 

この数字が正しいものであるならば、国高の生徒で、合格を辞退する者はいなかったのだということになります。

つまり、進学する意志のない大学受験を行う者はいなかったということです。

現役での進学にこだわりが感じられます。

 

国立高校は、「現役・国公立大学」志向が強いといえるでしょう。

 

ちなみに、この年の国立高校の「既卒」(浪人生、過年度生)の国公立大学の合格者数は95人です。

 

 

国高を、西、日比谷と比べて一段低く見る向きもありますが、大学受験トータルでみると、決して、2校に遜色のないことがわかります。

大学受験実績が語られる際には、象徴的な数字である東大・京大の合格者数が、どうしても中心になってしまいます。

しかし、実は、国立高校が最も強さを発揮するのは、これらの最難関の次のボリュームゾーンでの勝負なのです。地方旧帝大や、おひざ元である一橋大などの合格者数では、国高が他の2校を上回ります。

 

国高の大学受験指導には、堅実に合格を勝ち取ろうとする傾向があると思います。

 

 

今年2015年度、国立高校は国公立大学合格者の合計は、197人と発表しています。しかし、現役と既卒の合計の合格者数しか発表していません。

 

 

 

日比谷高校は、97人の現役の国公立大学合格者のうち、80人が国公立大学へ進学しました。しかし、日比谷高校が公表している資料では、2014年度の現役の国公立大学合格者数は103人となっています。

 

つまり、『週刊朝日』のデータによれば17人、日比谷高校の資料によれば23人もの入学辞退者がいたことになります。

中には、東京外語大、筑波大、千葉大、横浜国立大などの合格者で、入学を辞退している者もいます。

そのうちの何人かは、もしかしたら、さらに上の大学を狙っていたけれども、センターテストの得点の影響で、2次試験を受ける大学のランクを下げざるをえなかったのかもしれません。あるいは、前期のみの受験に敗れたのかもしれません。

そのために、合格しても、入学しないという選択をした可能性があります。

 

その仮定の上に立つならば、日比谷は、妥協せず、何としてでも最上位の大学に進学するのだという、強い意志のもとに大学受験を戦う生徒が多いのだとみることができます。

 

今年2015年度は、日比谷高校が公表している国公立大学の合格者数は、現役107人、既卒75人で、合計182人となっています。

 

 

 

 

私立大学を見てみましょう。やはり、昨年度の2014年度のデータです。

(現役進学者/現役合格者)

 

国立高校  ・早稲田大学 16/56 ・慶應大学 8/26

西高校   ・早稲田大学 11/54 ・慶應大学 18/41

日比谷高校 ・早稲田大学 23/108 ・慶應大学 23/69

戸山高校  ・早稲田大学 37/69 ・慶應大学 12/25

八王子東高校・早稲田大学 10/31 ・慶應大学 4/15

立川高校  ・早稲田大学 16/40 ・慶應大学 8/17

 

 

これは、各高校が公表している早稲田大学と慶応大学の現役合格者数と、『週刊朝日』に掲載された現役進学者数を並べたものです。浪人生を含めた合格者数はこれよりも多くなります。

 

早稲田大学や慶応大学に合格しても、進学するのは、多くても半数程程度です。もちろん、複数の学部・学科に合格した受験生もいるでしょうが、国公立大学と比べて、入学率が低いと一目瞭然にしてわかります。

 

 

 

早稲田大学の合格者数が慶應大学よりも多くなっています。

これは、早稲田大学の方が、規模が大きく募集人数が多いために合格者の絶対数が多くなるためです。さらに、早稲田大学は、「センター試験利用入試」で受験者を集め、より多くの合格者を出しているという背景もあります。

 

一方、慶應大学は、「センター試験利用入試」を行っておらず、一般入試でも試験科目に小論文を課す学部が多くあります。

したがって、センター試験のための勉強がそのまま入試対策となる早稲田大学の「センター試験利用入試」に比べて、慶應大学の受験のハードルは高くなります。

 

国公立志向の強い国立高校からの慶應大学への合格者数は、西や日比谷よりもずいぶん少なくなっています。それは、上記のような理由で受験者が少ないためかもしれません。

 

 

 

話はそれますが、近年、慶應大学の「ブランド力」が早稲田大学のそれを突き放しつつあります。「早慶」と並び称されている両大学ですが、慶應の「一強」時代になっていくのかもしれません。

 

90年代頃までは、早稲田大学の方が優勢でした。

文学者や文化人、芸能人を数多く輩出した文化的伝統を持ち、自由で独創的な校風を持つ早稲田大学は多くの人をひきつけました。

 

2000年代に入ってから、じわじわと差がついてきたように思います。慶應は、SFCの設置、AO入試の導入など、世間の耳目を集める改革や実験的な試みを意欲的に行ってきました。

小泉さんが首相になり、そのときに新札が発行されたのもいいタイミングでした。

 

それに対して、早稲田大学は、人気芸能人の入学、野球人気などでは、一時話題になることはありましたが、大学の「価値」を引き上げることにはつながっていなかった印象です。むしろ、学生が事件を起こして大きく報道されたり、大学運営や新しい学部の設置に疑問の声が多く上がったりと、逆風が強くなっていきました。

さらに、博士論文の審査に重大な問題があったと思わせる一連の事件によって、研究機関としての権威も傷つけられてしまいました。

 

 

慶應大学の強みは、「就職に強い」ということです。

慶應大学はネームバリューも社会的信用も非常に高く、その「威信」は、もちろん就職に有利です。

しかし、それだけではなく、慶應大学生というつながり、ネットワークが、人生を通して貴重な財産となるのです。

 

慶應大学の「魅力」は、連帯感、仲間意識だといわれています。

就職活動も、サークル、ゼミなどのメンバーが一丸となって協力し合って、行うことが多いのだそうです。OBやOGも積極的にバックアップしてくれるそうです。

そして、社会に出てからも、同じ大学を出たというつながりに、非常に助けられることが多いのだそうです。

 

慶應大学の同窓会組織である「三田会」のことが、メディアでとりあげられることが多くなりました。

 

 

早稲田大と慶応大の同系の学部・学科に「ダブル合格」を果たした学生がどちらの大学を選ぶのか、をみても、やはり慶應の方が総合的に優位になっています。

 

 

今の時代と、早稲田の、個性を重んじ、自由と冒険を求め、雑多と熱気を愛する気風には少しギャップがあるのかもしれません。

 

今の時代には、慶應大学のカラーが合っているのだと思います。

 

 

 

(こういうことを書いてしまうと、早稲田大学出身の人はあまり気分がよくないとは思いますが、実は、私の母の母校は早稲田大学なので、誠に勝手ながら早稲田大学にはいくばくかのシンパシーを感じているのです。

それで、ぜひ、がんばってほしいと思いながら。)

 

(ivy 松村)

 

高校の大学合格実績の話②

前回のブログに間違いがありました。

当該箇所を訂正しました。

国公立大学の入試の仕組みについて述べた部分です。

 

その部分を補足しつつあらためて説明します。

 

国公立大学の2次試験は、通常、前期日程と後期日程に分けられています。

前期日程に合格し、入学手続きをした受験生は、後期日程試験に合格することができません。

 

入学手続きの締め切りは、後期日程の試験日の後に設定されているので、手続き前に後期の試験を受けることはできます。

しかし、後期日程の結果が判明する前に、入学手続きをするかどうか判断しなければなりません。

 

入学の手続きを取った場合には、その情報が集められて、後期日程の試験の合否判定の際にチェックされることになっています。

ですから、前期日程で合格した場合、その大学に入学するか、その権利を放棄して後期日程の結果を待つのか、の選択を迫られることになります。

 

ただ、後期日程の試験の後に手続きの締め切りが設定されているので、一応後期日程試験を受けた上で、手ごたえがあれば、前期日程の合格を捨て、後期の結果に望みを託す、というような「戦略」を取ることもできます。

 

後期日程も合格したときには、前期日程、後期日程ともに合格となり、一人で国公立大学を2大学合格したということになります。

 

また、わずかですが、公立大学の中には中期日程(や独自日程)を設けているところがあります。

中期日程は、後期試験の前に設定されていますので、国公立大学の入試は、最大で3回受けることができます。

中期日程の合格発表は、後期日程と同じタイミングで行われます。ですから、中期日程で受けた大学と後期日程で受けた大学のどちらにも受かっていた場合には、どちらかを選ぶことができます。

 

 

普通は、前期日程で第一志望を受験し、合格を果たすことができたなら、そのまま入学手続きを行います。

 

ある資料によれば、国公立大学入試の定員配分は、前期78.9パーセント、後期19.2パーセント、中期1.9パーセントとなっています。

圧倒的に前期日程の比重が大きいことがわかります。

 

ですから、多くの受験生にとっては、勝負をかけるのは前期日程、後期日程は「がけっぷち」という感覚が強いと思います。

 

どうしても志望大学に入りたい受験生は、前期と同じ大学に出願するはずです。

あるいは、どうしても国公立に入りたいという希望を持っている受験生であれば、後期日程でランクを下げるというパターンが一般的だと思います。

 

 

普通の感覚では、前期日程で合格し、その合格を放棄する、ということは考えにくいものです。しかし、世の中には、常識はずれのスリルを楽しむような稀有な人間がいるのかもしれません。

 

 

 

さて、国公立大学は、上記のような入試の制度の元でとり行われているので、合格者の「水増し」や「かさまし」を行うことが、非常に難しくなっています。

 

「合格」を放棄しなければ、2つ目の「合格」を得ることができないのです。

これが、私立大学入試と決定的に違うところです。

 

 

それゆえにこそ、高校や塾・予備校といった「受験産業」において、最も信頼のおけるデータとなり得ます。

そして、だからこそ、何とかその数字を上昇させようと、多くの人が血眼になるのです。

 

 

しかし、それでも、合格者数を「増やす」方法はいくらかありそうです。

高校や、予備校・塾などが、「お願い」をしたときに、引き受けてくれる受験生も、もしかしたら、いるのかもしれません。

 

国公立大学に合格した受験生が入学しない、という場合について、どのようなものがあり得るか、ちょっと、考えてみました。

 

 

①前期に合格し、後期を受け、後期の合格に自信があったので、前期の手続きをしなかった。

②中期と後期で合格した。

③私立大学や海外の大学が第一志望で、併願で国公立大学を受験した。

④合格したが、浪人することにした。(あるいは、浪人をするつもりだが、受験した。)

⑤前期は最初から行くつもりのない大学を受け、後期に第一志望の大学に出願した。

⑥大学に行く気はないが、「合格」が欲しかった。

 

 

①②⑤⑥は比較的稀なケースだと思いますが、④は意外とあるのかもしれません。センター試験で失敗してしまったというケースです。あるいは、前期試験しか行わない大学の合格が得られなかったというケースです。

 

③もわりとよくあるケースかもしれません。

 

 

現実に、東京大学にも入学辞退者は存在しますので、難関の国公立大学への進学以外の選択をする人が必ずいるのでしょう。

さらに、進学するつもりはないが2次入試を受ける、という受験生であれば、リスクなしに前期の合格を捨てて後期を受験し、両方に合格することもできます。

 

「誰か」に「受験料は出してあげるから腕試しをしてみないか」と声をかけられた人が合格を「コレクション」することがあっても、驚きに値しません。

 

 

 

ところで、今、この文章で、トピックとして焦点化しようとしていたのは、国公立大学の合格者数は簡単に増やすことができない、ということでした。

 

しかし、その「抜け道」に考えがおよんでしまいますね。

 

 

入学することを目的とはせず、どこかの国公立大学の2次試験を受けるという行動があり得ます。

あるいは、結果として「余分な合格」が生じてしまうということもあり得ます。

 

一般的には「中堅」の国公立大学よりも、早慶の方が格上であると考えられています。

ですから、志望校に合格したうえで、「余興」のような感覚で入試に行く受験生もいるのかもしれません。

または、入試が終わった後で、国公立大学と私立大学のどちらに進学するか 熟考したうえで、私立大学を選ぶということもあるでしょう。

いずれにしても、難関の私立大学と競合するレベルの国公立大学では、多くの入学辞退者がでます。

 

また、来年に捲土重来を期して、合格を破棄する受験生がいます。

 

より優先順位の高い選択肢があれば、もう一方の選択肢は破棄されるのです。

 

ですから、国公立大学に合格しても入学しないということは、あるレベル以上の受験生にとっては、それほど奇異なものではないのです。

 

国公立大学の合格を増やすのは簡単ではない、ということと、国公立大学に合格しても入学しないということは、矛盾するものではありません。

 

 

ここからは、「国公立大学に合格しても、入学しない」というデータを見てみることにしましょう。

 

 

『週刊朝日』は、毎年「有名大学現役進学者数総覧」という記事を掲載しています。

今年のものは、おそらくあと2ヶ月ほどすれば、載るのではないかと思います。

 

去年のデータを見ることができます。(今年のものではありません。)

 

 

日比谷高校が公表している2014年度の進学実績を見ると、この年度の現役合格者数は、東大20、京大4、北大4、阪大3、東工大5、一橋大5となっています。

『週刊朝日』2014年7月4日号によれば、これらの大学の合格者で入学をしなかったものはいません。

 

一方、日比谷高校から、筑波大に7人が現役で合格していますが、そのうち筑波大に進学したのは5人です。同様に、千葉大は7人が合格し、そのうち進学したものは6人です。

お茶の水大は5人合格3人進学、東京外大は7人合格4人進学、横国大は7人合格4人進学、首都大は7人合格4人進学です。

 

日比谷高校が公表している合格者数と、『週刊朝日』が掲載している進学者数が「正確なデータ」であるとすれば、判明しているだけで、「13人分」、多く合格していることになります。

 

『週刊朝日』が集計した日比谷の2014年度の国公立大学の現役合格者数は97人で、進学者は80人です。ですから、入学辞退者は、17人となり、上記の13人に以外にさらに4人いることになります。(しかし、上記以上の辞退者がいれば、このデータは破たんします。)

 

 

西高校の場合は、首都大6人合格5人進学、横国大6人合格4人進学のみです。

西高は、日比谷に比べて、進学の意思のある大学を受験する傾向があるといえるのかもしれません。

西の2014年度の国公立大学の現役合格者数は89人で、進学者は85人となっています。ですから、入学辞退者は合計4人になります。

 

 

八王子東高校を見てみましょう。

東京外大9人合格8人進学、首都大22人合格15人進学、横国大9人合格7人進学です。

首都大の辞退者が7人と多いですね。この辺りが、ちょうど難関私立大学が優位になるところなのかもしれません。

 

八王子東の2014年度の国公立大学の現役合格者数は、116人で、進学者は103人となっています。ですから、入学辞退者は合計13人になります。

 

八王子東は国公立大学志向が強い高校の印象があるので、116人という数字は説得力がありますが、入学辞退者が13人いるのが気になります。

 

立川高校は、東京外大5人合格4人進学、横国大4人合格3人進学のみです。

立川の上位国公立大学受験者は、受験校を第一志望とする傾向があるのかもしれません。一方で、中期日程の合格者がちらほら見られますので、学力中位層では、「戦略的」な受験パターンを組む受験生が少なからずいたのでしょう。

 

立川の2014年度の国公立大学の現役合格者数は67人で、進学者は63人です。ですから、入学辞退者の合計は4人になります。

 

 

国分寺高校のデータは、非常に気になる部分もあったのですが、明らかな齟齬があり、さらにちょっと信じがたい数値が出ていた部分もあったので、割愛します。

 

一点、興味深いのは、国分寺になると、地方の国立大受験が増え、さらに、中期日程の公立校受験がより多くなることです。

 

 

 

今年の「現役進学者」がわかったときに、またチェックしてみようと思っています。

 

(一応、週刊誌などから集めたデータはエクセルに入力してあるのですが、今回は、ちょっと『週刊朝日』に気を使って、表にはしませんでした。)

 

 

(ivy 松村)