大学入試改革 (塾の機能④)

これまで、「塾の機能」についての考察を重ねてきました。要旨は以下の通りです。

 

・戦後の日本の教育は、「学力競争」を排除しようとした

・しかし、大学受験では、「学力競争」にもとづく選抜方法が維持されてきた

・そのため、保護者・生徒は学力獲得を重視し、学習支援、受験指導の需要が高まった

・公教育の内部ではその需要に応えることができないので、学習塾のような私的な教育機関がその受け皿として発達することになった

 

ところで、「大学入試改革」の議論が本格化してきました。一発勝負ではない「達成度テスト」の導入などが話題になっています。

 

この改革の行く末がとても気になります。学習塾関係者であれば、当然関心を持たざるを得ないわけですが、どことなく、受験業界は楽観視しているようにみえます。これまでに行われてきた「改革」がことごとく業界にとって追い風になってきたという経緯からかも知れません(一方で、学習塾業界は少子化に対しては過敏になっています)。

 

私は、入試制度を含めた大学改革の先行きによっては、発展を続けてきた学習塾産業は衰退へと向かうのではないかと危惧しています。もちろん、多様な教育的ニーズに応える私的教育がすべて消え去ってしまうことはないでしょうが、学習塾の数は減っていくことになるかもしれません。

 

大学に入るために必ずしも学習塾に通わなくてもよくなり、経営に行きづまる塾がたくさんでてくる可能性があると思うのです。思い切った構造的な大学改革が行われるということが前提となりますが。

 

学習塾の発展を促したのは、大学受験における激しい「学歴競争」の存在でした。もしも、それが緩和されてしまえば、学習塾はその存在理由を揺るがされることになるでしょう。

 

教育を行う場所には、時代の流れに揺るがない普遍的な存在理由が必要であると感じています。

(ivy 松村)

学習塾成長の理由(塾の機能③)

雑誌『都市問題』の2007年5月号で、「学習塾の機能と逆機能」という特集が組まれました(「逆機能」というのは、社会への否定的な作用のことです)。その中の記事で、ジャーナリストの前屋毅さんは学習塾の成長の理由について分析しています。

 

前屋さんは、教育行政の矛盾した方針によって、学習塾が成長してきたのだと述べています。

 

受験をめぐる競争を否定し、緩和させようとする施策が行われる一方で、熾烈な学力の競争を行う大学入試制度が維持されてきました。

 

競争を緩和させようと行われた「改革」の例として、かつて東京都立高校入試で実施された「学校群制度」が挙げられます。さらに、記憶に新しいところでは、「失敗だった」という評価が定着しつつある「ゆとり教育」があります。皮肉なことに、これらの試みはかえって競争を過熱させ、学習塾をさらに成長させることになりました。

 

ある意味で、中学受験、高校受験は、大学入試に向けた工程であるといえます。大学入試において「競争力」が必要なのであれば、それ以前の段階で「競争力」を伸ばしておかなければなりません。「良い大学」に入るために、レベルの高い高校、あるいは中学に合格し、大学受験への道筋をできるだけしっかりと整えておくことが望まれているのです。

 

ですから、大学受験よりも前の受験ステージで、熾烈な競争が行われ、そのための準備がすでに必要とされているはずなのです。

 

しかし、教育行政は、公的には競争意識を希薄化しようとしました。そのため、競争を勝ち抜くための対策を指導する、私的な教育機関のニーズが高まったのです。

つまり、公教育の枠組みの中にいては受験を勝ち抜けないので、学校以外で受験対策を行う学習塾が求められることとなったのです。


(ivy 松村)