代ゼミに、荻野暢也先生という「超人気有名講師」がいます。
荻野先生がインタビューの中で、受験に必要なものは「知能」と「性格」であるとおっしっていました。
「両方ない人は無理。(受験に)向かない。どっちかがないと、だめ。」
「真理」だと思いました。
ある塾の先生は、受験生には「素直さ」が大切であるとおっしゃっていました。また、別の先生は「共感力」の重要性を解いておられました。
結局「同じこと」について話されているのだろうと思います。
受験向きの「性格」について考えてみると、それは、2つの「品性」に集約されると思います。
ひとつは、真面目に、愚直に、決め事を守り、コツコツと取り組む意志や心構え。地道な努力が「学力」を育みます。
もうひとつは、人を信じる、自分を信じる、嫉妬しない、愚痴を言わない、ズルをしない、言い訳をしない、というような「性根」や「気立て」の部分になるのだろうと思います。
私は、後者は結構重要な「要素」だと思っています。
大局的にみると、何事であっても、「力」の源泉となるのは「成熟した魂」ではないかという気がします。
数年前に、ある小6の生徒を教えました。
その生徒は、「自慢したがり」でした。何をしゃべるときにも、自慢を織り込まなければ気が済まない性格でした。
いつも不満そうな、つまらなそうな顔をしていて、褒められたときと自慢するときだけ嬉しそうにする子でした。
クラスの中で「孤立」していました。
そして、ひどい成績でした。
偏差値は30点台。志望校判定はいつも「D」でした。
あるときに、その生徒を呼んで話をしました。そして、落ち着いて勉強できるような家庭の状況ではないということを知りました。
したければ受験してもいい、でも、家族がバックアップしてあげられるような余裕はない・・・。
どうしたい?ときくと、受験したい、と彼女は答えました。
「私には、もう、受験しかないから。」
それから、彼女の受験がはじまりました。
毎日、夕方4時半から10時までずっと1人で勉強していました。
最初に塾に来て、最後に帰る生徒になりました。
誰とも話さず、ずっと1人で問題を解いていました。
そのころになって、私は、彼女のある「長所」が際立つようになっていることに気づきました。
マス目いっぱいにゆっくり、大きく、力強くバランスよく「描かれる」そのおおらかな字。「お」や「わ」という字にあらわれる大きな「カーブ」は、「芸術的」だとさえ思いました。
入試の日、私は、彼女が受験する中学の校門の前にいました。
他の受験生たちは、家族に連れられて緊張した面持ちで校門に吸い込まれていきました。
彼女は、やはりただ1人でやってきました。そして、私と握手をした後に、笑顔で「行ってきます!」といって、颯爽と校内に入って行きました。
合格発表の日、電話の向こうで、彼女は泣いていました。
彼女は、ただ1人で黙々と勉強をつづけました。
そして、入試の日にほほ笑み、合格した日に、心から泣くことができたのでした。
(ivy 松村)