浪人生の話

春頃から「大学浪人生」に関するデータや資料を集めています。

暇を見て、その「まとめ」を書こうと思っていたのですが、もう夏期講習が近づいてきて、まとまった記事を書くのが、ちょっと困難になってきました。

それで、ちょっと「簡易版」の記事だけでも書くことにしました。

 

夏期講習が来る前にこれを書いておきたかったのです。

 

 

 

しばらくいろいろ調べていたのですが、ちょっと難航して時間を取られてしまいました。

 

2年前に、文部科学省が発表している「学校基本調査」のデータを使って浪人生についての記事を書きました。

 

その後、「追跡」ができなくなりました。

昨年の「学校基本調査」から、「高校卒業年別入学者数」の項目がなくなってしまったからです。そのために、昨年の大学進学者のうちの浪人生の割合はわからないままです。

 

それから、全国の進学校の進学状況を調べていて、ちょっと気になったので、「東京都の大学進学率」を調べてみようと思ったのですが、これを調べるのがちょっと難しいということがわかってきました。

 

東京都に設置されている高校からの大学進学率を得ることはできそうでしたが、「東京都の大学進学率」を調べることは、ちょっと厳しそうです。

 

 

さらに、「大学浪人生」を正確にカウントできないという問題がありました。

「大学に進学しなかった浪人生」を大学進学率に含むことはできませんが、彼らの多くは将来大学進学します。当然、現役生だけを対象とした「進学率」には意味がないので、「将来大学に進学する浪人生」を加えた大学進学率を出したいわけです。

 

しかし、浪人生が進学するまでは大学進学率に反映させることができないので、現役と浪人の「大学進学者数」を合わせて「現役世代の人数」で割って、とりあえずの大学進学率を出すことしかできないわけです。

将来大学に進学する「見込み」の浪人生の数と、その年の浪人を経て大学に進学する過年度生の数は、ある程度「相殺」されて実際の数値に近づくでしょうが、やはり正確な数値であるとはいえません。

 

それでは、東京に住む同年齢の大学生人口を同年齢の人口で割ったらどうか、と思いましたが、大学進学に合わせて上京してきた学生が多くいるので、これも意味がありません。「東京都の大学進学率」に地方出身者が含まれてしまうからです。

 

 

「東京都の大学進学率」が、他県に比べて高いことは間違いありませんが、正確な数値はわからないままです。およそ6~7割になるように思いますが。

 

 

 

私は、東京の大学進学率を高めている二つの要因に着目しています。

 

ひとつは、東京は、地元に多くの大学を抱えた地域であるということです。

選択肢が多く、かつ、親元から通学できるという経済的なメリットがあります。

 

また、もうひとつは、東京は人口が多く、同時に高校の数が多いので、高校ごとの学力が非常に細分化されるということです。

地方の進学校では、偏差値70オーバーの生徒と偏差値58程度の生徒が混在することは珍しくありませんが、東京都の、特に都立高校は、同じ高校に通う生徒の偏差値は非常に近似します。それは、進学指導や受験対策の「密度」をより高めるはずです。

 

 

こうした要因が、「浪人指向」にどう影響しているのか知りたかったのですが、それは、今後の課題ですね。

 

 

 

さて、私は、全国の進学校と東京都の高校を中心に、各学校の浪人の割合を調べました。

 

そのうち、都立高校の「浪人率」を中心にして見ていくことにしましょう。

 

 

去年の卒業生を対象に、都立高校の浪人の割合を算出しました。今年のものではないので注意してください。

下のデータは、進路の情報を公表している高校を対象に、平成27年度の「浪人率」を出したものです。

 

 

 

現役大学

進学率

 浪人率
西 47.7% 52.0%
日比谷 54.6% 45.1%
国立 54.9% 45.1%
立川 62.8% 36.9%
武蔵 66.7% 33.3%
八王子東 67.1% 32.9%
戸山 72.5% 27.2%
青山 73.8% 25.1%
小山台 73.5% 24.4%
大泉 73.0% 24.0%
国際 73.1% 22.9%
富士 76.8% 22.7%
豊多摩 72.4% 21.7%
国分寺 77.0% 20.8%
新宿 79.4% 20.3%
調布北 76.9% 19.7%
日野台 77.7% 18.5%
町田 78.5% 18.3%
竹早 81.3% 17.5%
白鷗 76.6% 17.4%
駒場 80.0% 16.7%
両国 82.2% 14.7%
城東 83.3% 12.6%
北園 81.5% 12.4%
三田 81.5% 12.2%
小金井北 84.9% 12.1%

 

 

 

高校の「ランク」と浪人の割合は非常に高い相関があるといえます。

偏差値の高い高校ほど、浪人する生徒の割合が多くなる傾向があるわけです。

 

上位の進学校では、大学進学を妥協をしない生徒が多くいます。そのために、浪人という「選択」は極めて「現実的」なものなのです。

 

 

 

上のデータでは、戸山高校の序列と「浪人率」が相応していません。

別のデータでは、戸山高校の「浪人率」は32.9と出ています。こちらの方が正しいのかもしれません。

 

複数のデータを対照させてみると、照合しないものがいくつかありました。

元のデータ(生徒数や進学者数)が間違っている可能性もありますので、あくまでも「参考程度」にお読みいただきたいと思います。

 

 

 

参照として、東京都の国立大附属校も見てみましょう。

 

 

浪人率
学芸 49.3%
筑附 42.3%
筑駒 41.7%
東工大附科技 32.1%
お茶の水 28.6%

 

 

 

やはり、高いですね。

あえて載せませんが、私立も、伝統的な進学校の「浪人率」は非常に高くなっています。

 

ひとついえることは、ある「人生観」を共有する者たちにとっては、浪人は一般的な事象であるということです。

それは、あまりにも身近な人生の1ルートなのです。

 

 

 

女子校の「浪人率」は男子校や共学校に比べて相対的に低くなります。

それは、女子の方が、「進学先」よりも「現役」を優先する傾向があるからなのかもしれません。

 

ただ、ちょっと桜蔭だけは「特殊」に思います。桜蔭の「浪人率」は23.7パーセントです。

やはり、同列の共学や男子校に比べて低くなっているわけですが、桜蔭の場合は「現役」で合格する受験生が多いために、「浪人率」が他校よりも抑えられているようです。

ちなみに、今年の桜蔭の東大合格者数は59人ですが、そのうちの52人が現役生です。

 

 

「医学部指向」の強い高校は「浪人率」が高くなります。

特に顕著なのがラ・サールで、その「浪人率」は65.6パーセントとなっています。

 

 

私立学校は、校風や進路指導による特徴が「浪人率」に強く反映されますね。

(いろいろと紹介したいのですが、またの機会にします。)

 

 

再び都立高校のデータです。

浪人を経て、どれくらいの人が国公立大学に合格するのかを見てみましょう。

 

 

今年国公立大学に合格した浪人生が、昨年度浪人をした人数のうちのどのくらいを占めているのかを調べてみました。

 

もちろん、今年の合格人数には「多浪生」の合格が含まれるので、正確な数値ではありませんが、それでもひとつの目安、参考になると思います。

 

 

 

27年度

卒業生

人数

 

 

27年度

浪人生

人数

 

 

28年度

浪人生

国公立大

合格者数

 

28年度

浪人生

国公立大

合格割合

 

西 327 170 107 62.9%
国立 325 147 94 64.1%
日比谷 315 142 83 58.4%
八王子東 316 104 60 57.7%
戸山 316 86 40 46.5%
立川 320 118 46 39.0%
国分寺 312 65 25 38.5%
駒場 318 53 17 32.0%
青山 275 69 21 30.4%
新宿 310 63 19 30.2%
両国 191 28 8 28.5%
小山台 275 67 18 26.8%
町田 279 51 12 23.5%
武蔵 197 66 15 22.9%
大泉 204 49 10 20.4%
城東 318 40 8 20.0%
武蔵野北 238 21 4 19.1%
白鷗 235 41 7 17.1%
北園 314 39 6 15.4%
南平 322 38 5 13.2%
三田 275 34 3 8.9%
日野台 314 58 5 8.6%
豊多摩 272 59 5 8.5%
昭和 275 24 2 8.4%

 

 

 

 

現代は、大学に行けない人間が浪人をするのではなく、大学を選ぶ人間が浪人をする時代です。

今の時代に「浪人」はひとつの「生き様」です。

 

 

 

正直、わけ知り顔で浪人の大変さを思いやったり、野暮な励ましをしたりするのは、なんというか、よそよししい行為のように思えます。それでも、なにか、ひとつの「エール」のようなものを書きたいと考えました。

 

まったくもって奇特な内容ですみません。

 

 

がんばってください。応援しています。

 

 

 

(ivy 松村)

 

大学浪人生の減少について考える

代ゼミは従来、私立文系の浪人生をおもなターゲットとしていました。90年代半ばごろまでは、私立文系の学生が多くいました。この時期に、代ゼミは多くの受講者を抱え大きく成長しました。

しかし、近年の浪人生の減少によって、代ゼミの経営は苦しくなっていきました。

 

浪人生の減少にはいくつかの大きな流れがあります。ひとつは、少子化が進み大学受験人口の絶対数が減少したことです。

1994年の18歳人口は約205万人でしたが、今年2014年では、約118万人にまで減少しています。受験生の減少は、大学受験指導の需要の低下を意味します。

 

浪人生の減少の要因のもうひとつは、大学の学生収容力が上がったことです。受験者人口は減っているにもかかわらず、大学入学者数は20年前に比べて増えています。

この20年の間、大学の数が増え、さらに既存の各大学も入学者を増やしていきました。特に、首都圏の大学は、郊外へのキャンパスの拡大や建物の増設によって、収容する学生の数を増やしました。

 

受験生の数が減り、合格者が増えたことで競争が緩和されました。浪人をしなくても大学に進学できる時代になったのです。

 

さらに、AO入試や各種の推薦入試など、一般受験ではない現役生対象の選抜方法による入学者の割合が増えました。そのため、予備校を必要としない高校生が多くなったことも一因として挙げられるでしょう。

AO入試が開始された2000年では、一般入試による大学入学者は38万9851人で全体の65.8%でした。推薦入試は31.7%、AO入試は1.4%、その他1.1%でした。

2012年度では、一般入試が56.2%にまで減少しましたが、推薦は34.8%、AO入試は8.5%にまで増加しています。

 

 

 

また、この20年の、社会・経済的な変化によって、現役志向の受験生の割合が増加している点も考える必要があります。

 

 

バブル崩壊後、平成不況を経て、家計の、教育費への支出が厳しくなっています。それが、公立高校、国公立大学に人気が集まる一因となっています。大都市圏から、地方の国公立大学を受験する例も増えています。そして、もはや、浪人を覚悟するような受験のやり方は少なくなっています。浪人には、お金がかかりますから。

 

 

90年代初頭は、バブル経済期と第二次ベビーブーム世代の大学受験期が重なり、浪人がある意味当たり前の状況でした。また、大学の数や、大学が受け入れる学生の数も今ほど多くなかったので、大学受験は激しい争いでした。

 

さらに、世相というか、社会的な雰囲気が「寄り道」や「遠回り」を許していました。当時は、「自分探し」が流行ったり、「夢」を追い求めることがもてはやされたりしました。就職せずにフリーターになることもめずらしいことではありませんでした。つまり、1年、2年浪人したり留年したりすることが人生の大きな遅れになるとは考えられていなかったのです。

 

現在は、堅実で安定した人生を求める傾向が顕著です。若い人は、「ストレート」でライフコースを歩もうとする意識が強くなっています。そのため、現役で確実に大学に入ることを優先し、大学受験に「勝負」をかけることをしないようになっていると思います。

 

 

今の学生の安全志向は、就職に対する考え方にも顕著です。それは、大学生の就職活動の過熱、大企業への就職や公務員を志望する学生の増加などに見て取れます。また、国立大学の、医学部を筆頭とした理系学部の人気の再燃も、その流れの中にある事象だと思います。

 

 

 

浪人生が減少している現状を、検証可能なデータで見てみましょう。

 

文部科学省が公表している「学校基本調査」という統計資料があります。最新の2014年度の速報が8月7日に発表されました。その中の「高校卒業年別入学者数」で、今年大学に入学した学生の高校卒業年別の人口が確認できます。

 

2014年度の大学入学者は、60万8232人です。そのうち、1浪の学生は6万6305人、2浪は9813人、3浪は2707人、4浪以上は4390人です。浪人をして大学に入学した学生の数は、合計8万3215人となります。

大学入学者に占める浪人生の割合は13.7%となっています。

 

最も浪人生が多かった1992年の浪人生の数は18万9136人です。そして、大学入学者に占める浪人生の割合は34.9%でした。約3人に1人が浪人生だったのです。

 

この20年間で、浪人をして大学に入学する学生の数は半分以下に減少しました。またその割合も3分の1にまで減っているのです。

 

今年はいわゆる「最後のゆとり世代」の卒業年でした。浪人をする学生は、来年は新課程で勉強してきた現役生と競争しなければなりません。そのことに心理的な負担を感じ、浪人を選択しなかった受験生が多かったのではないかと思います。そのため、来年度の大学入学者のうちの浪人生の割合はさらに減少するかもしれません。

 

 

現在は、高校進学志望者のほとんどが高校に入学しますが、かつては、「高校浪人」というものが存在しました。同じように、「大学浪人」も、希少になっていくのかもしれません。

 

(ivy 松村)