平成31年度 高校入試志願傾向分析②

近年の私立大学附属校の「志願傾向」は、慶應義塾高校の入試日の変更に大きな影響を受けました。

 

慶應義塾高校は、もともとは2月13日を試験日としていましたが、神奈川県立高校の試験日変更の余波を受けて、→2月12日に変更され、その後→2月10日となりました。

 

今、とっさにこれを「ケイオウギジュクの大移動」と名付けましたが、この「ケイオウギジュクの大移動」が、近年の他の私立附属校の男子の倍率の乱高下を引き起こしました。

 

 

数年前には、上位の私立附属校を狙う男子の受験生は、以下のような受験パターンを組むことができました。

 

 

2月1日  立教新座

2月7日  慶應志木1次

2月9日  早稲田大学本庄高等学院1次

2月10日 早稲田実業

2月11日 (慶應志木2次)or 早稲田大学高等学院

2月12日 明治大学付属明治 or 青山学院

2月13日 慶應義塾1次

2月14日 (早大本庄2次)

2月16日 (慶應義塾2次)

 

 

「慶應」は、他の高校の「併願校」になるのを嫌うので、慶應志木は早大学院の試験日にあたる2月11日に、2次試験をぶつけます。

 

そして、慶應義塾は国立附属校の試験日である2月13日にぶつけていたわけですが、私立附属志望の受験生にとっては、2月13日はむしろ都合がよかったといえます。

他の私立附属と競合しない日程だったからです。

 

慶應義塾の入試は、附属志望の受験生にとって、入試シリーズ最後の「ラスボス」に挑むという趣向があったわけです。

 

 

ところが、神奈川県の高校受験の事情によって、慶應義塾は2次試験の日程を前倒しする必要に迫られます。結果、慶應義塾の1次試験が2月12日に変更となります。

 

そのインパクトの直撃に見舞われたのが、明大明治、青山学院、そして明大中野といった2月12日を試験日とする私立附属校でした。

 

これらの高校は、一時的に応募者数を減少させます。

が、慶應義塾が平成29年度に再度試験日をスライドさせたことによって、応募者数を回復しました。

 

 

 

○過去4年の慶應義塾、明大中野、明大明治、青山学院の受験応募者数

 

 

31年 30年 29年 28年
慶應義塾 1336 1386 1164 1779
明大中野 1056 1026 1006 861
明大明治 462 463 456 275
青山学院 411 422 343 331

 

 

 

29年度から、明大中野と明大明治の応募者数が大きく増加しています。

ちょうど、明治大学の人気が上昇していることが話題となっていた時期でもあったので、2つの明治大学の付属校の応募者数の増加は、大学人気が高校受験に波及したものであるという分析も見られました。

 

しかし、この2校の応募者数が再び増加した直接の原因は、慶應義塾の入試日の変更であるといえます。慶應義塾との「競合状態」が解除されたために、再び応募者数を増やすことができたわけです。

 

 

 

明治付属の2校に対し、青山学院は応募者数が増加に転じるまで1年の「タイムラグ」があります。青山学院の応募者数が増加するのは、平成30年からです。慶應義塾が入試日をずらして2月12日を退いた翌年です。

 

これは、キリスト教プロテスタントの学校である青山学院の事情が関係しています。

 

平成29年は、青山学院の従来の試験日である2月12日が「日曜日」だったのです。

 

キリスト教の「教義」にもとづき、青山学院はこの年、「安息日」とされる日曜日の入試実施を避け、試験日を2月11日にずらしました。

 

そのため、慶應志木の2次、早大学院、明大八王子、中大高などの試験日と競合することになってしまったのです。

 

平成30年度になって、青山学院の試験日は従来の2月12日にもどります。

これによって、早慶の有力校との「競合状態」が解除され、ようやく応募者数が増加することになったわけです。

 

 

中学入試では、プロテスタント系の学校が日曜日を忌避して試験日をずらす措置をとることがよく知られています。いわゆる「サンデーショック」と呼ばれるものです。

 

高校入試でも、「同様の状況」が起こります。

特定の高校が試験日をずらすために、ある年だけ、特別な併願が可能となったり、逆に、併願が不可能となったりするわけです。

 

高校受験では、青山学院や明治学院の附属校、そして、国際基督教大学高校(ICU)。これらの高校が日曜日を避けて試験日を移動させる年は、「志願傾向」に変化がもたらされます。

 

本年度は、2月10日が日曜日でした。したがって、例年この日を試験日とするICUが日程をずらしました。本年度のICUの入試は2月10日ではなく、2月11日に実施されました。

後述する通り、本年度の高校入試は、ICUの試験日変更に少なくない影響を受けています。

 

 

 

ところで、平成29年度に青山高校が試験日を2月11日に移動させたことは、明治大学のもうひとつの付属校、明治大学中野八王子高校の「志願傾向」を翻弄させることになりました。

 

 

○過去4年の明治大学中野八王子高校(男子)の受験応募者数

 

31年 30年 29年 28年
明八 239 325 228 303

 

 

 

29年度に応募者数が減少し、30年度に増加、そして本年度31年度に減少していることがわかります。

 

まずは、「隔年現象」で説明できるでしょう。

 

そして、29年度の応募者数の減少は、青山学院が明八と同日の試験日である2月11日に移動してきたことも要因のひとつであるといえるでしょう。「お互い」が応募者を奪い合った結果、両校ともに応募者数を減少させたわけです。

 

30年度は、青学が試験日を2月12日に戻したために、明八の応募者は再び増加しました。

 

また同時期に、国立大学の「入試改革」の不透明さなどを要因として、私立附属の人気がにわかに高まったことも、「追い風」となりました。

明八をはじめ、いくつかの私立附属校は推薦入試の応募者を増加させました。

 

 

推薦入試は、「入学のしばり」をともなう受験です。

したがって、推薦入試の応募者の増加は、その高校に必ず入りたい、という「受験熱」の高まりを示しています。つまり、人気の上昇を示唆する「計測機」とみなすことができるわけです。

 

ただし、明八の場合は、少し特殊な事情も作用しています。明八の推薦入試の受験者は、不合格になっても、一般入試での「加点」が得られます。推薦入試の「基準」が比較的ゆるいわりに、一般入試での「メリット」は存外に大きいわけです。

 

推薦入試の応募者が急増したことによって、「加点」を持った一般入試の受験者の割合が高まりました。そのため、明八の昨年度の一般入試は、近年にない激戦となりました。

 

今年31年度は、前年の激戦ゆえに回避傾向が生じて、明八は応募者を減少させました。

 

 

そして、明八の本年度の応募者の減少には、他校の「試験日の移動」も影響していると考えられます。

 

すなわち、本年度は2月10日が日曜日となったことで、2月11日にICUとの競合が生じたわけです。今度は、明八とICUとの間で応募者の奪い合いが起きたのです。

 

 

 

東京と神奈川の入試日は、2月10日、11日、12日の3日間に集中しています。

 

私学の取り決めで、10日より前に試験日を設定することはできないので、10日に入試を行えないときには、試験日を11日に遅らせることになります。

 

また、12日に入試が行えないときには、試験日を11日に前倒しすることになります。13日では、国立附属高校の試験日と重なってしまいます。また、14日の神奈川県立高校の試験日、都立高校の志願変更日などとの兼ね合いから、試験日を「後ろ」にずらしてしまうと、受験者の試験日程を圧迫し、募集に影響が出てしまいます。

 

そのため、ある年の日曜日が、2月10日か12日に重なった場合に、11日に「例年にない競合」が生じてしまい、同日に試験を行う高校の募集が低調になってしまうことがあるわけです。

 

2月11日に試験日を設定している中央大学高校も、やはり明八と同様に、29年度に応募者数を減らし、翌年に増加するという推移をたどっています。

 

 

 

さて、話を戻して、慶應義塾ですが、平成29年度、試験日を2月10日に移動します。

この変遷によって、高校受験の「地図」がさらに塗り替えられることになりました。

 

「ケイオウギジュクの大移動」が、高校受験を激しく揺さぶったのです。

 

 

○過去5年の慶應義塾、早稲田実業、中央大学附属、中央大学杉並の受験応募者数

 

 

31年 30年 29年 28年 27年
慶應義塾高 1336 1386 1164 1779 1732
早稲田実業 691 538 660 996 1115
中央大附属 552 391 331 435 364
中央大杉並 552 465 481 530 536

 

 

 

2月10日は例年、早稲田実業、中央大学附属、中央大学杉並などの試験日となっています。

 

平成29年度、慶應義塾が2月10日に「参戦」してきたために、試験日が競合するこれらの私立附属校は応募者数を減少させました。同時に、慶應義塾自身も、応募者を大幅に失いました。

 

特に大きな打撃を受けたのが早実でした。

27年度を基準として見ると、29年度は、約4割減です。翌30年度もさらに応募者数を減らし、3年で、応募者が半減しました。

 

今年31年度は、早実、中附、中杉が応募者数を伸ばしています。

 

もちろんこれは、直前の2年間の応募者数の低迷、ひいては倍率の低下に触発されたものです。

 

また、同時に、やはり「試験日の移動」という要因も考慮しなくてはなりません。

今年は、ICUが2月10日を回避しています。

 

そのため、2月10日にICUを受けるはずだった受験生は、「別の高校」に応募することになるわけです。

 

ICUと同ランクに位置づけられるMARCH附属校や、倍率の低下した早実への応募者が増加しました。

 

 

 

また、単純に私立附属高の人気が高まりから、これらの高校の応募者が増えました。

特に、推薦入試を受けやすい中附は、推薦入試の応募者を著しく増加させました。

 

 

ただし、注意しなければならないのは、「私立人気」は、現時点では「限定的な範囲」に留まっているという点です。

 

2月10日を試験日とする私立の進学校、つまり、「附属」ではない開成、桐朋などの応募者数に大きな変化は見られません。

また、東京東部の都立難関高校、日比谷、戸山、青山の男子の応募にも変化は見られません。

 

一方、西部の都立難関高校、八王子東、立川、西などは応募者数を減らしています。

 

したがって、東京都西部の、従来都立難関校を第一志望としていた「受験層」が、私立附属校へと流れていると考えられるわけです。

 

 

あとは、日大系の高校の動向も考慮する必要がありそうです。

現時点ではデータが乏しくてわかりませんが、「チャレンジ」をする受験生が増えているのかもしれません。

 

 

それから、近年は2月10日、11日、12日が「とっ散らかってしまった」ので、特に男子は「前受験」から入る王道の受験パターンを組む受験生が増えているように思います。

そのため、立教新座や慶應志木の応募者も増加傾向にあります。

 

 

 

この2、3年、明治大の付属校の応募者数の増加が目立ちました。一昨年は青学。本年は、中附と中杉。そして、去年と今年だけを見ると、早実の応募者数も増加しているわけです。

 

しかし、ここまで見てきたように、試験日の変更など、さまざまな要因が重なって「志願傾向」は変化します。

 

「相対的な分析」をしなければ、入試の実像をより鮮明に見ることはできません。

 

 

 

ところで、本稿で取り上げた私立大附属高校のうちのいくつかの学校は、この15年ほどの間に中等部の設置や共学化などの「改革」を行ってきました。

その度に、応募者数の増減、または倍率の上昇、下降が起こり、年度によって合格難易度に「ギャップ」が生じました。

 

しかし、傾向としては、私立大附属高校の受験は年々緩やかに敷居を下げ続けているといえます。

 

10年、20年のスパンで見ると、応募者数は減少しているからです。それにともない、倍率も低下傾向にあります。

 

 

例えば、慶應義塾の応募者数は平成22年度では2041人です。

したがって、当時と比較して本年度はおよそ700人もの応募者数を減らしています。

 

早大学院は、かなり古くなりますが、中学設置前の平成15年では2697人です。

したがって、当時と比較して本年度はおよそ1000人もの応募者数を減らしています。

 

中附も、中学設置前の平成15年の応募者数は男女合わせて1651人です。

したがって、当時と比較して本年度はおよそ800人もの応募者数を減らしています。

 

明大明治は平成20年度、共学化にともない男女合わせて1206人です。

したがって、当時と比較して本年度はおよそ400人もの応募者数を減らしています。

 

 

 

さらに、この10年ほどの間に都立の上位進学校の「復権」が進んだことで、学力上位層が都立に集まるようになりました。

 

昨年から今年にかけて私立附属校が応募者を増やしつつあるのは、その風向きが少し変わってきた、という部分もあるのだろうと思います。

 

これはセンター試験にかわる「新テスト」の導入など、大学受験に対する「不安要素」への懸念から、私立に「避難」する傾向が強まったためです。その中で、「私立志向」を高める直接の引き金となったのは、私立大学の「定員の厳格化」でした。

 

 

文部科学省から「指導」が入るまで、私立の大学受験において、ある意味で合格が「安売り」されていたわけです。

そのため、近年は、上位の学力層にとって早慶MARCHは「大学受験から入るのが最も容易である」という状況が生まれていたのです。

 

そういうわけで、都立に進学して大学受験を目指すほうが、より多くの可能性を残すことができると考えられたわけです。また、大学受験のほうが、いわゆる「コスパ」がいいという判断があったわけです。

 

 

「今の流れ」が続くようであれば、今後はおそらく、高校受験、なかでも推薦入試が見直されることになるのかもしれません。

 

ただ、「本線」の国立大学の入試制度改革が軟着陸しそうなので、まだちょっと読めない部分があります。

 

 

都立高校の場合は、 むしろ、東京都教育委員会に注視する必要があります。

教育庁は、中長期的には、都立高校を「スポイル」してしまうでしょう。

「都立高校改革」とか、あれ、無茶苦茶になりそうな予感しかしません。リリースなどを読んでみると気づきますが、「彼ら」は、大学進学実績とか、どうでもいいと思っています。

 

 

 

いずれにしろ、自校作を受けることを考えている生徒は、私立の上位附属校の受験を想定した勉強をしていくほうがよいと思います。

これは前々からこのブログでも述べてきたことですが、学力上位の生徒であればあるほど、都立と私立を切り分けて、どちらかだけに絞った受験勉強をしていくのはいろいろな意味で非合理だと思います。

 

ただ、結局「中途半端」になってしまうのも危険です。塾の先生などに相談しながら、より良い準備を進めていくようにしましょう。

 

 

 (ivy 松村)

 

 

 

 

「私立高校の授業料無償化」について

東京都の「私立高校の無償化」が大きな話題になっています。

少しだけ所感を書きたいと思います。

 

私は、小池さんは、「私立学校より」の教育政策を行うのではないかという懸念を持っていました。このままいけば、そうなりそうです。

 

小池さんが、「私立高校の無償化」へ傾斜した経緯や動機については、さまざまな憶測や分析がなされています。

 

 

近代以降、「政治的」という言葉は、「権力闘争における権謀」「利害調整やトラブル処理」「選挙対策」「世論誘導と情報統制」など、さまざまな意味を含有するものとなりました。

 

 

「私立高校の無償化」は、まさに「政治的」な決定なのだろうと思います。

いきづまりの打破、目線そらし、妥協の産物などなど。

 

 

 

これを「バラマキ」の一形態であると指摘する人もいます。

「教育費」の「バラマキ」によって支持率が上がることはあっても、下がることはありません。その意味では、手を出したくなる政策の一つです。問題は「財政」ですが。

 

 

 

さて、この「無償化」によって、私たちの税金は、どのように世をめぐるのでしょうか。

 

私立高校に通う生徒のいる家庭は、経済的な恩恵を受けるのでしょうか。

 

もちろん、少なからず家計の支出は抑えられるでしょう。しかし、その「経済効果」は、その歳出額の規模に比して、極めて限定的なものにとどまるでしょう。

 

 

私たちが注意深く見なければならないのは、無償化の対象が「授業料」であるという点です。

 

「授業料」の負担は、軽くなるのでしょう。

 

 

で、私立高校は?

 

 

想像力を働かせましょう。

 

制服や体操服等の費用、教材費、冷暖房費、図書購入費、修学旅行積立金、施設費、同窓会費…これらはどうなるでしょう。

 

 

言い分は、こうです。

 

今まで、「授業料」、なんとか払えてましたよね。「授業料」を払わなくてもよくなったのですから、余裕ができますよね。だったら、少しくらい「他」が値上がりしても、大丈夫ですよね。

 

 

「無償化」は、家計を助けることよりも、ある種の私立高校を儲けさせる「結果」が見え透いているように思えます。

 

本当に「都立高校ではなく、私立でも大丈夫」ですか?

 

 

もちろん、「誠実な私立高校」もたくさんあります。

しかし、そうではない高校がより多くあることは、よく知られた事実です。

 

 

 

もう少し「きわどい」指摘をするならば、「余裕があるはずだ」、という「推定」によって、学校は「寄付」を期待するでしょう。また、「各種団体」も同様の期待をするでしょう。つまり、特定団体に対するものではない、家計への「バラマキ」は、ある種の「ロンダリング効果」があるわけです。

 

 

 

2年前に、私立高校の学費について調べました。

 

参考までに:私立高校の学費 (→「授業料」以外の額が、大きくならないとでも?)

 

 

 

もし、私が毎年数十億の「教育予算」を使えるなら、迷うことなく、都立高校を充実させます。

都立高校の数を増やし、複数回受験の制度を作ります。

それによって、受験生の進学先は、より妥当に学力を反映したものとなるでしょう。

 

 

なぜ、ほとんどの都立高校は、一般入試選抜を1度だけしか行わないのでしょうか。

 

「ある面」からとらえると、それに「あぶれた」生徒を、私立高校に収容させるためであることがわかります。

 

 

 

毎年計上されることになる何十億の予算を使って、都立高校に通える生徒を増やすというのでは、ダメなのですか?

 

 

 

私立高校が困る?

 

高い学費を払っても、その学校に通わせたい、という家庭がある限り、その学校は困ることはないでしょう。

 

そのような学校が増えることは、間違いなく、私たちの社会を豊かにします。

たとえば、「渋幕」のような学校は、ひとつの光明である、といえるのかもしれません。

 

 

それで、「私立高校の無償化」によって、魅力的な高校は増えるのでしょうか。

まともな想像力を働かせれば、即座に思い描くことができます。むしろ、堕落することは明らかです。

 

 

 

少し考えてみればわかります。一体、「どのような私立学校」が困っているのか。

 

 

また、少し調べてみれば、実際には、困る、困ると大声でわめいているのがどのような高校なのか、わかるかもしれません。

 

 

 

それにしても、「困る」のは誰なのでしょう。

 

生徒たちですか?それとも、「利益を気にしている人たち」ですか?

 

 

 

(私立学校の実態について、以下の記事でもふれました。参考までに:私立学校と東京都教育委員会

 

 

 

(ivy 松村)

 

 

 

「入試相談」の話

12月の「三者面談」は、「入試相談」の前に、「推薦」「単願・専願」「併願優遇」などで出願する生徒を確定させるために行うものであるという意味合いが強くあります。

 

「入試相談」の「下準備」として「三者面談」が行われるということになります。また、別のとらえかたをすれば、「三者面談」の「成果」が「入試相談」に結びつくのだともいえます。

 

 

 

中学の「三者面談」は、受験制度をよく知らない保護者・受験生に、その仕組みを丁寧に説明してくれたり、最適な受験校を一緒に考えてくれたりするという「はからい」ではありません。

受験制度をよく知らない受験生に対しては、機械的に「紋切り型」の受験パターンを「割り当てる」ような形になります。先生の立場からしてみれば、相手が「よく知らない」のだから、そうするしかないのです。

 

 

「三者面談」に際して、中学校の先生が最優先に考えるのは、生徒を確実に高校に進学させるということです。

 

中学の先生にとって、「三者面談」は、受験校の選定というよりも、「進学先の確保」という意味合いの方が大きいのです。

 

「三者面談」で、「合格の確約」をもらえる高校を提示し、「受験の意志」を示した生徒に対して「斡旋」を行うわけです。

 

 

要するに、「入試相談」というのは、中学校と高校が、「生徒の受け入れ」について「妥結」をすることであると考えるとわかりやすいと思います。

そして、「三者面談」というのは、実質的に、その「方針」に異議がないことを生徒に確認する場となるわけです。

 

 

中学校は、自校の生徒の進学先を確保したいと思っています。

高校は、多くの「なるべく優秀な」生徒を集めたいと思っています。

 

それで、中学校は、この生徒は「合格の確約」をもらえるのか、というようなことを知りたいわけです。一方、高校は、その生徒の成績を確認したうえで、入学の「約束」を取り付けたいわけです。

 

 

 

「入試相談」は、毎年12月15日以降に行われるということになっています。

 

「そのため」都内の公立中学に通う受験学年の生徒は、「12月15日までに受験校を決定しなければいけない」と言い含められています。

 

 

この説明を「奇妙だ」と気づいた中学生は、なかなか「見る目」があると思います。

 

 

その時点で「推薦」「単願・専願」「併願優遇」等の出願を「決定できる」ということは、そのときまでに「相談」が完了しているはずです。

そうすると、「『その後』の12月15日に相談をする」という「説明」は、よくよく考えてみれば「ちぐはぐ」です。

 

 

そもそも、「入試相談」の「開始」が、すべての私立高校で、12月15日以降にそろえてあるということは、それより前に「入試相談」をしてはならないという「規制」になっているということです。

 

そうすると、12月15日は「規制」が解除される日であって、「締切日」ではないはずです。

 

 

 

実は、高校の入学者募集のスケジュールは、すべて「規制」されています。

入試日も同様に「解禁日」が設定されています。

ですから、都内のあらゆる高校が、同じタイミングで同じ動きをするようになっているわけです。

 

 

それには、「合理的な必要性」もなくはありません。

「教育事業」に、完全な自由競争を導入してしまうと、大きな弊害を招くことがあるからです。

 

「あるタイプ」の私立高校は、なるべく早い段階から生徒を募集し、なるべく早い段階に入学者を確定したいと考えます。「青田買い」を行いたいわけです。

もし「規制」がなければ、各私立高校の競争が過熱し、「入試相談」のタイミングは11月、10月、9月と、どんどん早まっていくことになるでしょう。

 

そうなると、中3の2学期の成績をもとにして「入試相談」をすることができないので、1学期の成績でもよい、といい出す高校も出てくるはずです。

 

教育制度を担う学校教育機関の間で、生徒獲得競争が激化してしまうと、「事業者」にとっても、「利用者」にとっても大きな問題が生じます。

 

私たちの社会では、そのような場合に、行政機関が統制や調停を行ったり、利害関係者の間で調整が行われたりします。

 

 

12月15日というのが、中3の2学期の成績をふまえて「入試相談」を行う上で、中学校と高校が折り合える「絶妙のタイミング」になっているわけです。

 

 

 

さて、「入試相談」の「解禁日」が12月15日となっているということは、12月15日より前に「入試相談」を行ってはならないということです。

 

そうすると、12月15日以降は自由に「入試相談」を行ってよいということになります。

つまり、12月15日は、厳密には「締切日」ではないはずです。

 

 

合理的に思考を働かせれば明らかなことですが、特に、「募集に力を入れたいと考える高校」は、出願の締切直前まで継続して「入試相談」を行いたいはずです。

なるべく多くの生徒の「入試相談」を行って、学力も素行も問題のない生徒が「受験」を希望しているということになれば、受け入れたいと思うはずです。

 

 

では、なぜ、12月15日が「入試相談」の「期限」となっているのでしょうか。

 

答えは単純です。

中学校が、ずるずると「入試相談」を行いたくないからです。

 

中学校の先生は、なるべく「効率的」に中3生の受験校を決定したいと考えます。

 

(念のため:それは、直ちに非難されるようなものではないと思います。極めて人間的で実直な希望であるといえます。私は、学校の先生は、ある種「スーパーマン」だと思っています。膨大な業務を抱え、それを日々こなしておられます。)

 

 

12月15日(以後の数日の間)に「入試相談」を行うということになっているのであれば、そのときに1回行えば十分であるというわけです。何度も何度も行うようなことではないわけです。

 

そして、「入試相談」自体も、できるだけ短時間で終えてしまいたいわけです。だから、12月15日「まで」に「必要な業務」を済ませてしまいたいわけです。

中学校は、12月15日の時点で、あとは高校に出向いて「相談する」という極めて「形式的」な最終業務を残すだけの状態になるように動きます。

 

現在の「入試相談」は、あらかじめ伝えられている「基準」に照らし合わせて、ある程度作業的に受験校を「確定」できるような仕組みになっています。実は 「相談」をする必要も、ほとんどないのです。

「三者面談」をとおして、12月15日「まで」に、そうやって「入試相談への準備」を進めていくわけです。

 

「入試相談」の日には、「受験者のリスト」を手渡すだけの簡素化された業務を行うのみでです。

(実際には、その中身すらも事前にやり取りしているわけですが。)

そこで、お互いが、「規定」となっている12月15日以降に「入試相談」を行った、という「既成事実」を確認するわけです。

 

 

中学校は、「入試相談」を、可能な限り「効率的」に終わらせてしまいます。

「入試相談」は、「解禁」された途端に完了するのです。

そのために、12月15日が「期限」であると説明しているわけです。

 

 

また、そのうえで理解しておかなければならないのは、実質的な「期限」は、実は、「三者面談」の日だということです。

 

 

 

「入試相談」というのは非常にわかりにくい制度です。

 

「入試相談」とは、字面をそのままとらえれば、中学校と高校が「入試」について「相談」をするという「意味合い」になりますが、なにも、両者が膝をつき合わせて「話し合い」を行うわけではありません。

 

 

「入試相談」というものに「実体」はありません。

12月15日以降に、中学と高校の先生が集まって、あれこれ話し合うことなどないのです。

 

むしろ「逆」です。12月15日になったら、何もしないのです。

 

12月15日よりも前にすでに「入試相談」の「実務」は終わっていて、しかも、それは、「相談」というよりも、どちらかというと、「事務的な作業」に近いものなのです。

 

(ivy 松村)

 

 

受験パターンについて⑤(私立高校「一般入試」)

b)私立高校「一般入試」

 

 

例年、2月10日から東京都の私立高校入試がスタートします。

 

私立高校入試の「解禁日」が決められているので、この日から一斉に入試期間に突入することになるのです。

そうしなければ、より早い時期から生徒を集めたいと考える私立学校の、「入試日の前倒し競争」が起こってしまうからです。

 

 

東京都と神奈川県の私立高校入試は一体的な制度になっています。

両都県は、10日、11日、12日の3日間に、ほとんどの高校が入試日を設定しています。

13日以降に入試を行う高校もいくつかありますが、「受験パターン」を組むということは、とりもなおさず、この3日間の受験をどうするのかを決めるということになるわけです。

 

 

「勝負事」の基本的な戦略に基づけば、「もっとも重要な一戦」を最後に残すのがセオリーです。

 

しかし、「受験」の場合は、第一志望の高校の受験日が、必ずしも「後」になるとは限りません。

 

多くの高校は、より早い日程に入試日を設定したいと考えています。

そのため、特に「初日」の2月10日には、人気校の入試が集中します。

第一志望校の試験日が2月10日となっている受験生には、「もっとも重要な一戦」が「初日」に訪れることになるわけです。

 

 

これは、精神的に大きな負荷となります。

多くの受験生は、できれば、第一志望の高校を受験する前に、他の高校の受験を経験しておきたいと考えるはずです。

 

つまり、2月10日の前に、「受験」の「需要」があるわけです。

千葉県や埼玉県などの、東京に隣接する県は、入試の「解禁日」を2月10日よりも前に設定しています。そのため、東京都の受験生も、2月10日以前に近隣の県の私立高校の受験をすることができます。

 

東京近郊の県の入試制度は、間接的に、最大の受験人口を抱える東京都の受験事情と「リンク」していると考えることもできそうです。

 

 

 

さて、私立高校入試の「受験パターン」は、大きく2つの「志向性」に分けることができます。

 

ひとつは、「おさえ」、「学力相応校」、「チャレンジ校」というように、「受験パターン」を階層的に設定するオーソドックスな「戦略」です。

 

もうひとつは、数多くの「チャレンジ校」を受験し、「手数」を増やすことで上位校へ進学する可能性を上げようとする「戦略」です。

 

 

 

後者の「受験パターン」は、「大崩れ」したときに、進学のリスクが大きくなります。ですから、この「戦略」は「判断」を間違うとちょっと怖い部分があります。

 

たしかに、受験の一側面は、誤解を恐れずにいえば、「結果オーライ」の「勝負事」であると考えることもできるわけです。合格という「結果」が出れば、どれほど危うい「戦略」であろうと、「正解」であるという人もいるでしょう。

 

 

 

・・・実は、「受験パターン」を組んで具体的に説明しようと思って、例をいくつか挙げて一旦書いてみたのですが、ちょっと、載せづらいなぁ、と思ってしまって、別の地域の例を書こうとも思ったのですが、試作しているうちに、それも微妙だなぁ、と思ってしまって、結局載せないことにしました。

 

かなり枚挙して書こうと準備していたのですが、ちょっと今回はやめておきます。

(塾内生には、よく話しているような内容です。)

 

時間をかけた割には、薄い内容になってしまいました。う~ん。

 

 

(ivy 松村)

 

 

受験パターンについて④(「単願」・「専願」)

⑤私立高校「一般入試」

 

 

a)私立高校「単願」・「専願」

 

 

私立高校の「一般入試」にも、「入学の縛り」がある受験様式があります。

それは、「単願」あるいは「専願」と呼ばれているものです。

 

「単願」「専願」には、大きく分けて以下のようなバリエーションがあります。

 

・「合格の見込み」がもらえる

・「入試得点」に加点してもらえる

 

 

前者は、出願の時点(正確には「入試相談」の時点)で、進学先が(ほぼ)決定となります。

後者は、入試に、有利になります。

 

 

「合格の見込み」が出されるタイプの受験には、出願の「基準」が設けられています。

 

私立の「一般入試」で「合格の見込み」を出す「単願」や「専願」は、およそ「推薦入試」よりも低い「基準」になっています。ですから、「推薦」に「基準」が足りなかった生徒が「単願」「専願」に回って出願するというケースも見られます。

 

 

 

いずれの「基準」も、中学校の「評定」を基本としています。

たとえば、中学の「評定」は5段階・9教科ですから、満点は「45」となりますが、ある私立高校は、評定が「42」以上の受験生に「合格の見込み」を出すわけです。

また別の高校は「40」、また別の高校は「38」というように、高校やコースなどによってそれぞれが「基準」を設けています。

5教科・3教科の「基準」を設けている高校もあります。5教科・3教科それぞれの「基準」のどれかを満たせばよい高校もあれば、いずれの「基準」も満たしていなければならない高校もあります。

 

 

さらに、「評定」以外の「基準」を認める高校もあります。

 

以下のような項目に当てはまる生徒に対して、合計で2点程度の「加点」を認めている高校が多くあります。ざっくりと調べて見つかったものを挙げます。

 

(念のため述べておきますが、当然、それぞれの学校によって「基準」が違います。)

 

 

・漢検、英検、数検などの3級もしくは準2級

・出欠席日数(皆勤など)

・生徒会活動

・生徒会長、生徒会役員

・委員会活動

・委員長、副委員長

・部活動実績

・部長、副部長

・クラス委員

・校外のクラブチームでの大会実績

・コンクールやコンテスト等の実績

・文化活動、芸術活動

・留学、海外生活経験

 

 

 

上記のような、「証明書」を示したり、中学校が「事実」を保証したりすることができるような項目だけでなく、「幅の広い基準」もあります。

 

下記参照:

 

 

・ボランティア活動

・教会活動

・HR活動

・課外活動

・生徒会・委員会・行事等で活躍

・学校内諸活動においてリーダーとしての活動

・茶道・華道・書道などの特技

・学校行事で貢献

・特別活動実績

・中学校長が特に推薦する者

 

 

このあたりの項目の扱いは、かなり「デリケートなもの」になるのだろうと思います。

これまで、自分が中学生活の中で「どう振る舞ってきたのか」によって、その項目が「有効」になるのかどうかが決まるのでしょう。

 

 

また、「縁故関係」の項目を設けている高校も多くあります。

卒業生(同窓生)の子弟や兄弟姉妹、在校生の兄弟姉妹に加点がもらえるわけです。

 

この項目に「違和感」を覚える人もいるかもしれません。

しかし、実は、欧米の私立学校(や私立大学)では、日本とは比較にならないほど公然と、縁故入学が認められています。これは、(政府が設置するのではない民間の)私立学校の「設立理念」や「運営目的」、「存在意義」などと関係しています。

(これに関しては、また、機会があれば書こうと思います。)

 

 

 

自身が第一志望としている私立高校に、「単願」や「専願」の制度が設けられている場合には、当然、その「基準」を満たすための努力が必要になります。

 

一般的に、「フリー」の受験よりも、「単願」「専願」で受験するほうが合格の可能性が高くなります。

 

特に、「合格の見込み」がある「単願」「専願」の出願は、ある受験生にとっては、自分の学力相応以上の高校に進学するチャンスとなります。

 

とにかく、「基準」を満たすことができるように準備していかなければなりません。

 

 

一方、自校を第一志望とする生徒に対する「加点措置」を行うというタイプの「単願」「専願」の場合は、結局「入試得点の勝負」となるわけですから、他の「一般入試」を受験する場合と同様に、得点力を上げるための「受験勉強」をしていかなければなりません。

 

 

 (ivy 松村)

 

受験パターンについて③(私立高校推薦入試+一般入試)

④私立高校「推薦入試」+私立高校「一般入試」

 

 

私立高校を第一志望とする生徒は、「推薦入試」での合格を目指します。

しかし、難関校の「推薦入試」は、「一般入試」以上に過酷です。

 

「入試得点」で合否判定を行う「推薦入試」は、例年激戦となります。

学力の高い受験生が多数応募してくる倍率の高い入試となるので、「厳しい結果」がもたらされることを覚悟して挑まなければなりません。

 

 

「厳しい結果」を精神的に引きずってしまう生徒には、「推薦入試」などを受けさせないほうがいいという意見もあります。最近の私は、そういう意見にも一理あると思えるようになってきました。確かに、「そういう生徒」が増えています。

 

それでも、私立高校への進学を希望する受験生は、「推薦入試」を受験スケジュールに組み込むべきです。

 

 

都内の私立高校の「推薦入試」は、本年度は1月22日か1月23日に行われます。

「推薦入試」で合格を手にすることができれば、そこで受験が終了となります。

一方、「厳しい結果」となった場合には、2月10日以降の「一般入試」に「再挑戦」することになりますが、それは必ずしも「不利な材料」であるとは限らないのです。むしろ、重要な「布石」となります。

 

 

「推薦入試」の受験が可能であるということは、第一志望の高校を、2度受験する機会が得られるということです。

それは、単にチャンスが多くなるというだけでなく、他の受験生に先駆けて受験を経験できるということでもあります。

さらに、再受験の優遇措置は、「一般受験」の際に非常に大きなアドバンテージとなります。

 

つまり、私立高校の「推薦入試」は、以下のような意味を持つわけです。

 

 

・「合格」の機会を増やすことができる

・受験の「経験値」を上げることができる

・「二回目」の受験が有利になる

 

 

もちろん、「推薦入試」を突破して合格を手にすることが、もっとも理想的です。

しかし、私立高校の「推薦入試」は、現実的に、「一般入試」のためのステップであるという捉え方が必要です。

つまり、「一般入試」まで戦う「心構え」を持って、「推薦入試」を受験しなければならいということです。

 

 

 

私立高校の「推薦入試」は、多くの場合、受験資格となる「基準」が設けられています。

志望校が「推薦入試」の「基準」を設定している場合には、まずは、その「基準」を満たし、「推薦入試」の受験資格を得なければなりません。

 

 

そもそも、「推薦入試」の位置づけは、「成績の優秀な生徒を、中学校が、高校に推薦する」というものです。

学校の成績が優れている生徒に有利な制度になっているのは、ある意味で、必然です。

そのために、受験資格に「内申」等の基準が設けられたり、入試得点に「内申点」が加点されたりするわけです。

 

ですから、原理的にも、「推薦入試」を希望する生徒は、学校の成績をおろそかにしてはならないわけです。

 

まずは、「基準」に届く成績を収めなければなりません。

そして、「推薦入試」にオールインするのではなく、「推薦入試」→「一般入試」というプロセスを踏まえて、受験の戦略を立てていくことが重要です。

 

 

(ivy 松村)

 

受験パターンについて②(私立高校推薦入試)

③私立高校「推薦入試」(合格の「見込み」あり)

 

 

私立高校の推薦入試は、その内容から4つに分類できます。

 

 

一.「入学の縛り」あり・「合格の見込み」あり

二.「入学の縛り」あり・「合格の見込み」なし

三.「入学の縛り」なし・「合格の見込み」あり

四.「入学の縛り」なし・「合格の見込み」なし

 

 

都内の中学生が都内の私立高校の「推薦入試」を受ける場合には、合格者は必ず入学の手続きをしなければならいことになっています。

つまり、日野市や八王子に住む受験生が、都内の私立高校の「推薦入試」に出願するには、その高校が第一志望の高校であることが前提となります。

 

 

高校入試を総括しているのは各都道府県の教育委員会で、それぞれの自治体によって入試制度が異なっています。「推薦入試」に関する取り決めは、それぞれの地域内でのみ有効となります。そのため、自校の所在する地域の受験生と、地域外の受験生とで受験の「要項」を変えている高校もあります。

 

学校関係者や塾関係者の間で、「入学の縛り」のある受験様式を「推薦A」、「入学の縛り」のない受験様式を「推薦B」と言うことがあります。

また、「単願推薦」および「併願推薦」と呼ぶこともあります。

 

県内の受験生は「推薦A」(単願推薦)のみの受験しかできないけれど、県外の受験生は「推薦B」(併願推薦)を受けることができるようになっている高校があるわけです。

 

 

上述のとおり、都内の私立高校の「推薦入試」には、必ず「入学の縛り」があります。

したがって、上に挙げたの分類のうち、「三」と「四」(ほとんどありませんが)は、東京都外の私立高校に限られます。

 

都内の私立高校の「推薦入試」を受けるのは、その高校に100パーセントの入学の意志がある生徒だけです。

 

 

 

さて、ほとんどの私立高校の「推薦入試」には、出願の「基準」があります。

そのうち、一部の高校は、「基準」を満たし「推薦入試」の受験が確定すれば、合格の「見込み」を得ることができるわけです。

 

その「基準」に、検定や部活動などの実績を加えてくれる高校もありますが、基本的には「内申」の点数をもとに設定されています。

 

ですから、「合格の見込みありの推薦入試」を受けたいと考えている受験生は、やはり「内申」を確保するための勉強が重要になります。

 

しかし、無論、「推薦入試」を受ける「基準」に達することができなかった場合、「一般入試」での合格を目指すことになるわけです。「推薦」の「基準」を確保することが厳しいと想定される状況では、「一般入試」を視野に入れて受験を組み立てるほうが現実的です。

 

この受験パターンのもとでは、個別の学習計画が求められます。

状況や見通しを踏まえて、受験勉強の配分を決めていきましょう。

 

 

 

(ivy 松村)

「合格難易度」を読む

私立高校の「合格難易度」が大きく変化することがあります。

 

 

たとえば、ある高校の入試日程が変更された場合、受験生の分散や集中が起こります。

 

昨年度は慶應義塾高校が、神奈川県の県立高校入試の日程変更の影響で、一次試験日を従来の2月13日から2月12日へ変更しました。

これによって、例年2月12日を入試日に設定している明大明治や青学と日程が競合しました。

逆に、慶應義塾と2月13日に入試を行っている国立大附属高校の併願が可能になりました。

 

今年の入試では、桜美林高校の2回目の入試日が2月12日から2月13日に変更されます。

 

 

また、よく知られている中学受験の用語に「サンデーショック」というものがありますが、同じような例は高校受験にも起こります。

「サンデーショック」というのは、主にプロテスタント系の学校が教義で「安息日」とされている日曜日の試験実施を避けて、その年だけ試験日をずらす処置をいうものです。

本来ならば同一日に入試が行われる学校のうちの一部が、入試日程を変更してしまうために、例年とは違った併願受験が可能となります。

(また逆に、併願が不可能となる場合もあるわけですが。)

 

 

その他、選抜基準や試験科目の変更が影響する場合もあります。

 

(選抜基準という点では、私立高校ではありませんが、本年度、東京都立高校入試の内申点の計算方法が変更され、「特別選考枠」が廃止となったことが挙げられます。)

 

法政二高は、神奈川にある男子校ですが、今年度から女子の募集を行います。

共学化によって人気が高まり、受験者数が増加するだろうと予想されています。

 

私立高校の入試では、優遇制度や加点制度が度々変更されることもあるので注意が必要です。

 

配点や試験内容が変更されることもあります。

この場合、あらかじめ告知される場合と、入試本番にそれに気づかされる場合があります。

「その情報」を高校側が発信している場合には、それを見逃すことがないようにしましょう。

 

 

 

さて、「合格難易度」の変化をもたらすもっとも大きな要因は、募集人員や定員の増減であるといえます。

 

ある私立高校が、「特進コース」や「英語科」のような特別クラスを設けた場合には、募集人員に変化が生じます。

 

あるいは、全体の募集人数が固定されている場合、複数の選抜方式の選抜人数の「配分」によって、結果的に定員が増減することがあります。

たとえば、推薦入試の定員が増やされたときには、その分、一般入試の定員が削減されることになります。

または、推薦入試で予定より多くの合格を出した場合、必然的に、一般入試の定員数が削減されることになるでしょう。

 

 

中学併設校の場合は、中学の生徒数との兼ね合いで、高校の募集人員が増減します。

中学を新しく併設した学校は、当然その分、高校募集枠を減らさなければならなくなります。

また、中学入試で、予想以上の手続きがあった場合には、内部進学生が「超過」状態になってしまうので、高校の募集で「調整」をするために、定員が絞られることになります。

 

 

もちろん、中学を併設していない高校であっても、過去2年の入学者数に応じて、定員を増やしたり減らしたりすることになります。

 

単純化していえば、前の年度で多くの生徒が入学したら、次の年度は合格者数が絞られることになるわけです。

 

各高校で収容できる生徒数は決まっています。一部の高校を除いて、ある意味で「営利団体」でもある私立高校は、限度に近い生徒数を抱えようとします。

ですから、常に生徒数を一定に保とうとするのではなく、「超えてしまったら、減らす」というような対処法的処置を行います。

 

調べてみるとわかりますが、各学年の生徒数が「いびつ」な高校がいくつかあります。

 

高校側は、どれくらいの割合の生徒が入学手続きを行うのか、予測を立てて合格者を出すわけですが、特に、他校の合否結果の影響を強く受ける「位置」にある高校は、「手続率」(歩留まり)を読み間違ってしまうことがあるわけです。

 

 

 

たとえば、ある高校が一般受験で200人の生徒を募集し、「手続率」を4割と予想していたとします。

600人の受験生が集まり、500人が合格を手にします。

500人のうちの4割に当たる、200人が入学する計算でした。

 

ところが、予想以上に「手続率」が高く、5割の生徒が手続きを行い、250人が入学することになりました。

生徒数が「超過」しています。

 

「超過」している「50人」を、次の年で調整しなければなりません。

 

そうすると、次年度、同じように600人が受験した場合でも、150人の入学者となるよう「調整」しなければいけないわけです。

今度は「手続率」を「5割」で考えなければなりませんから、合格者数を300人に絞ることになります。

 

こうして、この高校では、ある年度とその次の年度で、合格者数が「500人」→「300人」へと減少します。

そのため、実質倍率が「1.2倍」→「2.0倍」へと上昇することになります。

 

 

これは、私立高校の「合格難度」が上昇したり下降したりするメカニズムを示すための簡易的なシミュレーションにすぎませんが、実際に起こりうるものです。

 

私立高校の入試は、単純な「高校ランキング」のような指標だけで計るべきではないのです。

 

他の高校の受験状況の影響をうけたり、過年度の入試結果が反映されたりして、「合格難易度」は推移するのです。

 

 

蛇足の話になりますが、学校の「格」や「ランク」を計る一つの目安は、「補欠」や「追加合格」にあると思います。経営や運営に「ゆとり」のある学校は、できる限り合格者数の調整を次年度に持ち越さないようにしているわけです。

 

 

 

さらに、「合格難易度」の話をもう少し。

 

なるべく多くの受験生を集めたい、なるべく多くの生徒を収容したい、と考えている高校は、「併願優遇」を活用します。

 

高校の先生方の「営業努力」が実って、多くの「併願優遇」を利用した受験生を集めることができれば、その分、「フリー受験」の合格者が絞られることになります。

それによって、「合格難易度」が変化する高校があります。

 

 

たとえば、一般受験で200人の募集をしている高校があるとします。

その高校に、合格の「確約」をもらえる「併願優遇」を使って応募した受験生が300人いるとしましょう。

また一方、「併願優遇」ではない「フリー受験」の受験生も同じく300人いるとしましょう。

 

高校側が全体の「手続率」を4割であると予想していたとすると、合格者の合計は500人としなければなりません。

そのうち、「併願優遇」を利用した受験生は300人全員が合格します。

ですから、「フリー受験」の受験生の中から合格できるのは残りの200人ということになります。

 

「入試全体」では600人受験して500人合格ですから、実質倍率は「1.2倍」です。

しかし、「フリー受験」の実質倍率は、300人受験して200人合格ですから、「1.5倍」ということになります。

 

 

さらに、高校の先生方の並々ならぬ努力によって「併願優遇」の受験生がさらに増えると、「フリー受験」はより難化します。

 

次年度、「併願優遇」の生徒がさらに50人増え、350人集まったとします。

「フリー受験」の受験生は前年同様300人としましょう。

「入試全体」の受験生の合計は650人ということになります。

前年と同じように募集人数は200人で、「手続率」の予想は4割です。

 

そうすると、合格する500人のうち、350人が「併願優遇」の受験生ですから、「フリー受験」をする300人のうち、合格者は150人です。

 

「入試全体」の実質倍率は、受験者が増えたために、前年の「1.2倍」から「1.4倍」に上がります。

もちろん、「併願優遇」の実質倍率は「1.0倍」です。つまり、合格率100パーセントは変わりません。

 

一方、「フリー受験」の実質倍率は、「1.5倍」から「2.0倍」へと大きく上昇することになります。

 

「併願優遇」に力を入れている高校の「フリー受験」は、「併願優遇」がより広範に活用されるほどに、厳しい受験となります。

 

 

そのこと自体は、必定のことです。愚痴を言ってもはじまりません。

受験生は、自身の学力や受験制度など、さまざまな葛藤と向き合って自分の「受験パターン」を決めていくのです。それが受験というものの宿命だと思います。

 

 

しかし、仮に、の話ですが、ある私立高校が、「併願優遇」の制度を、特定の受験生だけが参入できるような方法で「極端に拡大」する戦略をとった場合、私は、もう、その高校を生徒たちに勧めることはできません。

 

実際以上に受験が厳しくなるということもありますが、その高校が、生徒たちを大切にしてくれるとは思えないのです。

 

 

(一応念のために 付け加えますが、「併願優遇」という制度そのものは、必ずしも否定的にとらえるべきものではないと思います。この制度が公平に運用されていないのだとしたら、それは問題であるということです。)

 

 

 

私たちのような塾の「ストロングポイント」は、「併願優遇」の安売りを仲介したり斡旋したりすることではありません。

 

しばりのある「併願優遇」に頼らなくても、しっかりとした信頼できる私立高校に、正当な手だてで合格する力と方法を伝えられることです。

 

そして、そのために、可能な限り受験の情報に向き合うのです。

 

(ivy 松村)

「受験相談」報道について考えてみる③

8月20日に、関大一高の「受験相談」の記事が掲載されました。

 

その記事は複数の記者の署名記事でしたが、その翌日、同じ「記者チーム」によって、新たな記事が書かれています。

 

<首都圏の私立高5校>模試の結果で合格確約

 

 

全国展開する大手学習塾が、塾内で実施した模試の成績によって、私立高校から合格の「確約」をもらっていたという記事です。

しかも、その塾内模試を生徒に受けさせる前に、出題される問題を生徒に知らせていたという内容です。

 

 

どうやら、「話」は関大一高だけでは終わらないようです。

 

 

学習塾と私立高校の「癒着」に踏み込んで、「不正を暴こう」という、報道機関の「動き」があり、そのうえで、「火付け」を行って、報道の「波」を作ろうとする意図があったのではないかと思います。

「キャンペーン」、といってよいのかわかりませんが、ある種の「プロジェクト」として一連の流れが仕込まれています。

 

 

上掲の新聞記事では、問題の学習塾名を公表していません。

報道機関にもいろいろなしがらみや思惑、制約があり、思うように記事を書けないことがありそうです。

 

 

記事によれば、件の学習塾は関東と東海に展開しているようです。

すると、「名古屋」あたりが拠点となる塾のようですが、その塾と東京と埼玉の私立高校との間で「約束」があったということなので、首都圏の教室で、記事に書かれているような動きがあったのでしょう。なるほど。

 

ところで、昨年、私はこのブログに、上の新聞記事と関連のありそうな内容を書いています。

あわせて読んでいただくと見えてくることがあるかもしれません。

 

塾の「併願優遇」?

 

 

 

さて、今、ここで焦点となっている「受験相談」の報道ですが、以下のように展開しています。

 

 

1.関大一高の「受験相談」が発覚

<大阪・関大一高>入試前に大半「合格」 中学側と調整(前々回のブログの記事)

 

 

2.文部科学大臣が記者会見で「不透明な入試」についてコメント

文科相:関大一高の選抜、不適切と認識

 

 

3.過去に、首都圏の私立高校が塾に合格の「確約」を出していた

<首都圏の私立高5校>模試の結果で合格確約(上掲の記事)

 

 

4.関西でも私立高校と塾の間で「確約」があったことがわかった

<近畿・一部私立高>塾相談会で合格確約 入試2カ月前

 

 

 

これらは、すべて同じ新聞に掲載された記事です。

下村文部科学大臣の記者会見をあつかった「2」以外は、すべて同じメンバーの「記者チーム」による記事です。

こうしてみると、一連の報道の「流れ」が周到に用意されてあったことが分かります。

 

 

「1」の関大一高の記事が「導入」となって、論難の矛先は、徐々に「本題」に近づいていきます。

以降の記事では、特定の塾名や学校名は伏せられたままです。

世間の耳目をひきつけるには、具体的な「対象」が必要です。それゆえに、「先鋒」の記事にはインパクトが求められたのかもしれません。

 

「2」の記者会見は、「1」の記事の翌日に開かれています。

これは閣議後の定例会見ですが、ここで教育行政のトップからコメントをとって、後の「展開」に組み込めるように、最初の記事を出すタイミングを8月20日にしたのかもしれません。

同じ新聞社の記者が質問をしていましたが、あらかじめ質問内容を知らせていたようです。大臣は、ペーパーを読んで答えていました。

 

「3」の記事は、昨年の報道を「蒸し返す」ものですが、合格の「確約」を得るために、塾側が模試の「予習」を行っていたという新しい事実も明るみになっています。

この記事は、「4」の記事を引き出すために据えられたのかもしれません。

 

「4」の記事の舞台は再び「大阪」です。

今年の入試で、大阪の私立高校と塾との間で「談合」があったことを取材しています。

 

 

実は、関大一高の記事が出た8月20日には、別のニュースも報じられています。

大阪府の府立高校入試で、「全国学力テスト」の結果を高校入試に反映させることが、本年度に限り認められることになったのです。

この件で、かねてから大阪府と文科省は「対立状態」になっていましたが、いったん、混乱は回避される見通しとなりました。

 

これが偶然なのか必然なのかはわかりませんが、もしかすると、府立高校の入試制度改革と一連の報道は、裏でつながっているのかもしれません。

 

 

 

「2」の記事の元になった、下村文部科学大臣の記者会見の該当部分をテキストに起こしてみました。

 

(後ろに要点をまとめておきましたので、読むのが面倒であれば、読み飛ばしてください。)

 

 

下村文部科学大臣の発言:

 

大坂の関西大学第一高等学校、今春の入試で、選抜試験の一ヶ月前に、受験生本人たちに知らせず、複数の中学校と受験相談を行い、中学校での成績に基づき、大半の合格者を事実上内定していたため、選抜試験で高い点数を取ったのに、不合格とされた受験生がいたとの報道は承知をしております。

 

当該学校を所管する大阪府によると、報道は概ね事実とのことであり、文科省としては、入学者選抜は、私立学校を含め、入学者選抜要項に示す内容に沿って行われるべきであり、例えば、中学校の成績を重視して入学を許可する方針であれば、一般入試とは別枠で推薦入試を実施することを含め、その方針を明確に反映した選抜方法を対外的に明示することが適切であると考えます。

 

また中学校側も特に、個別の生徒の進路について高校と相談する場合は、保護者や生徒に対して適切な情報提供を行うことが必要であると認識をしております。

 

全国の学校にあっては、保護者や地域の信頼を得られるよう、今後とも入学者選抜の公正・公平な実施に向けた取り組みを進めていただきたいと思います。

 

本来は、高等学校への入学は校長が許可するものであり、また、特に私立高校の入学者選抜については、自主的・主体的な改善が図られるべきものであります。

 

が、改めて文部科学省として、来月、9月30日に行う全国の都道府県の担当者を集めた会議の場で、ひとつは高等学校において、選抜要項における各学校の選抜方針を明確に反映した選抜方法を明示すること、ふたつ目に、中学においては、生徒や保護者に向けた適切な情報提供など、適切な選抜の実施に向けた取り組みを促すことを、この会議の場で文部科学省としても提起していくことによって、徹底を図ってまいりたいと思います。

 

 

要点:

 

・関大一高の報道は知っとるよ

・関大一高は、「推薦」などの別枠の入試を用意するべきやったね

・入試の方針と合格の基準はわかりやすく示さんとあかんよ

・中学校も、高校との「入試相談」の結果を保護者・生徒に伝えんとダメやろ

・まあ、でも、私立高校の入試のやりかたは、本来高校が自分で決めるべきものやからね

(せやから、ホンマはワイらがとやかく言うことでもないんやで)

・来月全国の「担当者」が集まるから、そこで注意しとくんで、それでよろしく

 

あえて「関西弁」でまとめてみました。

 

 

 

下村大臣の会見では、件の新聞社の記者が「3」の記事の内容についても質問していました。

首都圏の塾で、ある塾の塾内テストの結果をもとに、複数の私立高校が合格の「確約」を出していた問題ですね。

これも、質問内容をあらかじめ伝達してあったようで、大臣はペーパーを読んで答えていました。

 

 

下村文部科学大臣の発言:

 

 

ご指摘の点ですが、文部科学省では、平成五年の通知により、高等学校の入学者選抜は公教育としてふさわしい適切な資料に基づいて行われるべきものであり、業者テストの結果を資料として用いた入学者選抜が行われることのないよう要請をしてきております。

 

昨年、同様の指摘があった際、報道された塾および東京都・埼玉県に確認したところ、域内において確約を行っているような事案はないと、認識しているとのことでありました。

 

また、今後とも、通知の趣旨をふまえ、都道府県等に対し、公教育にふさわしい適切な資料に基づいた入学者選抜が実施されるよう要請してまいりたいと思います。

 

 

 

要点:

・文科省は20年前から、塾のテストを使って合格を出してはダメだと言っている

・去年ニュースになったので、塾のテストで合格を出した高校があるか聞いてみた

・東京と埼玉の担当者は、「ないと認識している」と答えた

 

 

 

俗にいう「つっこんだら負け」というやつですね。

 

 

 

高度に発達した文明の社会集団の中で、原則論や基本道徳にもとづいて、社会や組織の矛盾を指摘することは「痛い行動」であるとみなされることがあります。つまり、「野蛮」な行動であるということです。

 

なぜなら、精巧に組み上げられた人為的システムが完成するまでには、長い時間と労力をかけて、さまざまな利害関係の調整や、現実的判断、理想などの取捨選択がなされており、無責任な煽りは、極めて繊細な構造物を破滅させるきっかけになり得るからです。

 

「受験」の中枢にいる人ほど、横行している「入試の実態」を「公の問題」にできないわけです。

 

現在稼働している受験システムが崩壊したとき、どれほどの混乱が起き、どれだけの受験生や関係者が途方に暮れるのか、想像することができる人間にはその引き金を引くことができないのです。

 

 

一方で、多くの人がそのシステムの疲弊を感じ取っています。

「風穴」を開けてくれるような発言者が求められていることも事実です。

 

個人的には、「3」の記事のように、大手塾が特権的に「併願優遇」や「推薦」を出しているのは大きな問題だと思うので、報道機関には果敢に取り上げていただきたいと思います。

 

(「4」の記事にあるように、塾団体が個人塾を集めて「進学相談会」を開くのもそれが原因です。連合して大手のアドバンテージを追尾しなければならなくなるのです。)

 

 

 

さて、今回のブログでは、関大一高に端を発する「受験相談」報道を追いかけてきました。

 

ありきたりなことをいうようですが、メディア情報には、演出や思惑、打算などが反映されることがありますから、そのままを「鵜呑み」にしてはいけません。

 

 

情報を評価・分析・判断する力のことを「情報リテラシー」といいますが、この力は、これからの時代、さらに重要なものになっていくと思います。

 

 

受験は「情報戦」でもあるので、私を含め、塾の教師は特に情報を深く読もうとします。

 

 

ふと思ったのは、関大一高の入試です。

分かりづらい人には分かりづらいのでしょう。

しかし、インターネットを使って、少し情報を収集するだけで、この高校の入試の全容を理解することができました。

 

 

 

「入試の仕組みが分かりづらい」と多くの人が口に出します。

もちろん、分かりやすい方がいいのでしょう。前回の記事にも「入試制度はわかりやすいほうがいい」と書きました。しかし、なんでもかんでも「1から10まで」説明することが果たして全面的に良いことなのかどうか、という疑問もあります。

 

 

将来を左右する入試という一大事に際して、成り行き任せで情報も集めない人間に、豊かな未来があるとも思えません。

 

 

「オトナの世界」では、「全部」を説明してくれることなどあり得ません。

事態や事情を自分で読み取れない人間は、「その程度」だと評価されるでしょうし、事態や事情を読み取れないおかげで、重大な失敗や損失を招くこともあるでしょう。

 

 

まあ、未来のことはともかく、受験に際しては、周りが噛み砕いてくれるのを待っているのではなく、自ら主体的に情報と向き合べきだと思います。

 

 

 (ivy 松村)

 

 

「受験相談」報道について考えてみる①

8月20日の新聞報道で、大阪にある関西大学第一高等学校が、入学試験前に合格の「内定」を出していたことが問題として取り上げられました。

 

<大阪・関大一高>入試前に大半「合格」 中学側と調整

 

記事によれば、「関大一高」は、受験日の約1か月前に、中学校側との「受験相談」を行い、受験生の中学校での成績に基づいて、合格を決め、中学校側に伝えていたのだそうです。

 

合格の「内定」をもらった受験生は、入試得点いかんによらず、全員合格。

そのために、「内定合格者」よりも高い得点を取ったにもかかわらず、不合格となってしまった生徒が出てしまったということです。

 

 

 

この記事を読んだ当初、違和感を覚えました。問題の焦点がわからなかったのです。

私と同じように、ほとんどの塾関係者や学校関係者は、記事の内容について、あまりにも一般的でありふれた高校受験の一幕だと感じたことでしょう。

 

狐につままれたような感覚に居心地の悪さを感じながら、記事を丹念に読んでみることにしました。

それで、やっと少し状況が整理できました。

 

 

 

このニュースに取り上げられている内容は、高校受験に関わる人にとっては既知のものです。

 

 

東京都の私立高校受験のシステムにも、同じような「入試相談」というものがあります。

中学の先生が高校に出向かれて、生徒の「合格の可能性を相談する」というものです。

 

基本的には、推薦・専願(単願)・併願優遇を利用して受験をする生徒が対象となりますが、高校によっては「一般受験」の入試についても相談を受け付けるところもあるようです。

 

 

「入試相談」は、なかば公的な制度となっています。

現在、東京都の公立中学校に通っている生徒や保護者の方は、自分の中学の「年間行事予定」を見てください。

12月15日に「入試相談」と書かれてあるはずです。

本年度は、この日が「入試相談」の「解禁日」となっています。

 

この日から、ようやく中学校と高校は「相談」をしてもよいということになっています。

が、実際には、この日よりも前に根回しは終わっていて、12月15日には、ただ、中学の先生が、高校を回って「受験者リスト」を受け渡していく慣例的、儀礼的行為を行うだけです。

 

中学校は、2学期の三者面談の際に生徒・保護者に受験の意志を確認し、受験の意志のある生徒の「合格の可能性」を高校に問い合わせます。「合格の可能性」の高い生徒には、当該校の受験を容認し、「合格の可能性」が厳しい生徒には再考を促します。

 

ですから、厳密には、12月15日よりも前に「合格の可能性」がとても高い高校を受験するかどうかが決まっています。

 

 

まあ、はっきりいってしまえば「確約」を出すわけです。

 

 

現実には、12月15日の前には「確約」が出されていますから、「入試相談」の実際は、「12月15日」には完了しているわけです。

 

 

このようにして「入試相談」を通して出願した受験生は、「よほどのことがない限り」合格を手にします。

 

中学の先生は、「入試相談」を使って生徒の進学先や、「保険」となる進学先を確保しようとします。一方、高校側は、「入試相談」を多くの受験生を集める「営業ツール」として活用します。

また、受験生・保護者にとっても確実に合格を押さえることができるというメリットがあります。

 

 

一方で、「入試相談」を受け付けていない私立高校もあります。

人気のある私立のブランド校、特に難関大学の付属高や系列校は、中学校と「合格の可能性」について話をすることはほとんどありません。

ですから、私立上位校の入試は、ほぼ「ガチンコ」の本番勝負になります。

 

 

 

対照的に、東京の私立高校には、「入試相談」を積極的に活用しているところがいくつかあります。

受験生が1,000人を超えるようなところもめずらしくありません。

そのうち、「入試相談」を通さずに受験をする場合、極端に「ボーダー」が上昇する高校があります。「入試相談」を通して「確約」を大量に出しているため、「確約」を持たない受験生が競う「一般入試」で、合格者を出す「枠」がとても少なくなっているからです。

 

こうした高校は、「偏差値」と「難易度」がかみ合っていません。

あるいは、状況を利用して「偏差値」を上昇させようという戦略なのではないかとうがった見方をしたくなります。

 

(「ランキング表」を盲信して高校の「格」をはかろうとするのは、危険です。特に、最近の私立高校の「ランキング表」は、あまりにも多くの思惑を反映し過ぎています。)

 

 

しかしそれにしても、たとえ入試以前に「確約」を出していても、上記のような高校をことさら非難する声は起こりません。

「入試相談」はある意味で「平等」な制度です。端的に、当該の高校にどうしても合格したければ、「推薦」「専願(単願)」「併願優遇」を利用して受験をすればいいからです。

 

「入試相談」と「確約」は呼応関係にありますが、無条件ではありません。そこには「基準」があります。

多くの場合、内申点の「基準」を満たしているかどうかで「確約」が決まります。

ですから、こうした制度は、別の見方をすれば、「学校の成績をもとに入試を行っている」ということになります。

 

大枠で捉えれば、生徒の学力を判定するという「入試の機能」と同等であるといえます。

 

「学力が足りないために入試で不利になる」という事態は、極めて普遍的なものであり、問題視するべきものであるとは思われていません。

 

 

 

この制度の是非にも触れたいところですが、ひとまず置いておきましょう。

ともかく、関大一高が行っていた「受験相談」というものは、東京では「入試相談」と呼ばれ、同じように行われているものです。

 

しかし、この件は、文部科学大臣を始め、識者がこぞってコメントを出したり、議論に取り上げられたりして、大きくクローズアップされることとなりました。

どうしてこの件が大きな問題として取り上げられるに至ったのか、次回、もう少し考察してみましょう。

 

(ivy 松村)