少し前の、中3の国語の漢文の授業で、テキストに集録されていた「出藍の誉れ」をあつかった問題を解きました。
君子曰学不可以已。
青取之於藍而青於藍、
氷水為之而寒於水。
君子曰はく、「学は以て已むべからず。
青は之を藍より取りて、藍より青く、
氷は水之を為して、水より寒し。」と。
「青は藍より出て藍より青し」という有名な言葉の元になった文です。
学問の大切さを説いたものであることがわかります。
これを述べたのは古代中国の思想家、荀子です。
荀子は、人間は生まれもって愚かな存在であると考えました。だから、よりよく生きるために、学び続けなければいけないのだ、といいたかったのかもしれません。
「藍」をそのまま放っておけば、「藍」は「藍」のままです。
「青」を得ることはできません。
しかし、正しい手順で、労力を惜しまずに作業を続けることで、素晴らしい成果を得ることができるのです。
(「藍染め」はかなり大変な作業なのです。)
つまり、努力して学び続けることで、人間は、より優れた存在になれるのだということが述べられているのです。
ところが、興味深いことに、「青は藍より出て藍より青し」という言葉は、現在では、かなり「特殊な文脈」で使われる成句となっています。
「もともとあった物よりも優れた性質の物が生み出される」という内容が敷衍されて使われるようになったのでしょう。
この言葉は、「弟子が、師の技量や業績を越えて、師よりも認められるようになる」ということの「たとえ」として広まっています。
さらに、「出藍の誉れ」という言葉も生まれましたが、やはり同様の意味で使われています。
「青」は「藍」という原料を用いて、正しい工程で作業を行わなければ生じない色です。
ですから、この言葉には、「優れた指導者のもとで、正しく学ぶ」という前提があるように思います。
「学問に励み、師を超えるまでになってほしい」という思いを込めて、この言葉を使う教育者も多くいらっしゃいます。
ですから、学校名や塾名でも、「青」や「藍」という字はよく用いられます。
とまあ、そのようなことを何気なく授業で言ったのですが、中3の生徒たちは、なかなか鋭かったのです。
「だからこの塾は『アイビー』なんですか。」
「いや、でも『ivy』は『植物のツタ』の意味だから・・・。」
ちょっとドキリとして、狼狽してしまいました。
そのときにも「種明かし」をしましたが、「藍」はこの塾の塾名とやはり関係があります。
塾名を決めるときに、英語やフランス語、ドイツ語、中国の古典などから、よい言葉はないか探していたのですが、実は、その中に「藍」もありました。
候補を挙げていく中で、「ivy」と「藍」がつながりました。
両者の音が重なっていたことも、塾名を決定する大きな要因だったのです。
あんまりグダグダと塾名の由来を説明するのも無粋なので、特に明かすこともなかったのですが、「ivy」という塾名に込めた思いは、ひとつではないのです。
「i」「v」「y」というそれぞれの文字にも意味があります。
また、小文字を使っていることにも意図があります。
(それはまだ、秘密にしておきます。)
(ivy 松村)