英語の語順の話④

日本語は、語順操作が可能な言語ですが、常に恣意的に「語」が配置されるわけではありません。「基本語順」があります。

 

 

日本語の「基本語順」:

 

 

・「主語」→「時間」→「場所」→「目的語」→「動詞(述語)」

 

 

「動詞」は文末に配置されます。「動詞」が、この位置から移動するときには、文法を逸脱した「倒置」が起こっていることになります。

ときに、文章や詩句にリズムを作り出したり、ある語を強調したりするためにあえて動詞を移動させるような技法的な配置が行われますが、原則として「動詞」は文末に「固定」されています。

 

 

 

ある言語の文法について分析する際に、多くの言語学者は、「動詞」を中心に考察します。

それは、「文構造」の「核」となるのが「動詞」であると考えられているためです。

 

日本語やドイツ語の「動詞」の位置が原則的に「固定」されているのも、それを示唆していると考えられます。

 

 

 

さて、日本語は、「動詞」が文末に置かれるので、必然的に動詞の後ろに「語」を置くことはできないということになります。

 

「動詞」に隣り合うことができる位置は「動詞の前」だけです。

つまり、「動詞」に隣接して配置される「語」は、ひとつだけしかありません。

 

おのずと、その位置には「動詞」と最も「つながり」の強い「語」を置きたくなるはずです。

 

それは「目的語」です。

 

 

 

以下の文を見てみましょう。

 

 

「彼は毎日部屋で本を読む。」

 

 

この文の「動詞」は「読む」です。

その直前に、「目的語」である「本を」が置かれています。

 

 

「読む」と他の「要素」の「つながり」を並べてみると:

 

 

・「彼は・読む」…主語-動詞(主語-述語)

・「毎日・読む」…時間(連用修飾)

・「部屋で・読む」…場所(連用修飾)

・「本を・読む」…目的語-動詞(連用修飾)

 

 

 

「本を・読む」という「目的語-動詞」の関係が、もっとも緊密な意味の「つながり」を持っていることがわかるでしょうか。

 

小中学校の「文法の勉強」では、「彼は・読む」にあたる「主語-述語」関係を重視します。

しかし、「文構造」を分析する際には、「読む」という「動詞」が最も強く「要求」している「要素」を考える必要があります。「だれが読むのか」ということよりも、「何を読むのか」という「まとまり」の方が、「意味」を構成するうえで重要になります。

 

「読む」という動詞は「目的語」がなければ「完全な意味」を生成しません。

「彼は読む」というフレーズと、「本を読む」というフレーズを比べてみると、前者は「不足」が生じ、不安定な文になっていることがわかります。

 

意外に思えるかもしれませんが、「目的語-動詞」は、「主語-動詞」よりも強い関係なのです。

 

 

 

英語と日本語の「語順」について考察するときにも、「動詞-目的語」関係から考えなければなりません。

 

 

「He reads books in his room every day.」

 

 

「目的語」は「動詞」の後ろに置かれます。やはり、文の中心となる「動詞」と最も「つながり」が緊密な「目的語」を動詞の近くに配置します。

 

 

 

英語は「主語・動詞・目的語」(+「場所・時間」等)の「語順」で文を構成します。

 

 

・「主語」…英語で「subject」。通称「S」。

・「動詞」…英語で「verb」。通称「V」。

・「目的語」…英語で「object」。通称「O」。

 

 

言語学的には一般に、英語のような「語順」の言語を「SVO言語」といいます。日本語のような「語順」の言語は「SOV言語」といいます。

 

 

「SVO言語」は使用人口が多く、広く分布しています。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語などは「SVO言語」です。また、中国語も「SVO言語」です。

 

一方、 地球上に存在する言語のうち、もっとも数が多いのは「SOV言語」です。日本語のほか、朝鮮語、チベット語、モンゴル語、トルコ語などが「SOV言語」です。

(実は、英語を始め、ヨーロッパの主要言語はもともと「SOV言語」でした。この話は、またいつか。)

 

 

 

前回の記事で確認したとおり、英語は「孤立語」であり日本語は「膠着語」です。

それだけでなく、英語は「SVO言語」、日本語は「SOV言語」であるという違いがあることがわかりました。

よく知られていることではありますが、「基本語順」が違うわけです。

 

 

 

ここで、日本語の「名詞修飾」について考えてみましょう。

 

国文法では、これを「連体修飾」といいますが、わかりやすく「名詞修飾」ということにします。

 

 

「本」という名詞を修飾する要素は、その前方に置かれます。

 

 

・「面白い

 

 

「修飾要素」は、前方に配置されます。

 

 

魯迅の

読むべき

魯迅によって書かれた

魯迅が書いた

 

 

日本語は「前置修飾」の言語ですが、それは「SOV言語」にとっては「自然な選択」です。

 

 

以下の文を見てみましょう。

 

 

「彼は毎日部屋で魯迅が書いた本を読む。」

 

 

「動詞」と、「目的語」を隣接させるためには、「前置修飾」でなければならないのです。

 

 

 

今度は、英語の「名詞修飾」を確認してみましょう。

 

英語は、形容詞が「名詞修飾」を行うときは「前置修飾」です。

 

 

たとえば:

 

・「many books

 

 

これでは、文を作ったときに、「動詞」と「目的語」が乖離してしまいます。

 

 

「He reads many books in his room every day.」

 

 

 

しかし、英語には、もう一つの「名詞修飾」のパターンがあります。「後置修飾」です。

 

 

the book of Lǔ Xùn (魯迅の本) 〔前置詞による修飾〕

the book to read  (読むべき本) 〔不定詞による修飾〕

the book written by Lǔ Xùn (魯迅によって書かれた本) 〔分詞による修飾〕

the book that Lǔ Xùn wrote (魯迅が書いた本) 〔関係代名詞による修飾〕

 

 

そうすると:

 

 

「He reads the book written by Lǔ Xùn in his room every day.」

 

(彼は、毎日部屋で魯迅によって書かれた本を読む。)

 

 

「動詞」と「目的語」は隣接しています。

 

「SVO言語」である英語にとって、「後置修飾」は最も自然な配置です。

 

実は、英語という言語にとっては、形容詞の配置は「イレギュラー」なのです。

 

 

 

同じ「SVO言語」であるフランス語やスペイン語は、名詞を修飾する形容詞を名詞の後ろに置きます。

 

 

フランス語の例を見てみましょう。

 

 

「Il lit le livre intéressant.」

 

(彼は面白い本を読む。)

 

 

「le livre」(その本)の後ろに形容詞の「intéressant」(面白い)が置かれているのがわかります。

 

したがって、「目的語」を修飾しても、「動詞」の「lit」と「目的語」の「le livre」は、緊密に隣り合ったままです。

この配置は、フランス語の「文構造」から考えて、妥当です。

最も強固な関係である「動詞-目的語」を隣り合わせる形で文を構成するほうが、「文構造」が安定するからです。

「SVO言語」であるフランス語は、合理的な「後置修飾」を「選択」しているわけです。

 

(ドイツ語は、英語と同じように名詞の前に形容詞を置きますが、語順操作が可能な言語なので、英語の「語順の問題」とは同列に語れません。また、ドイツ語には、形容詞にも「格変化」があること、過去の文や複文では動詞の配置が変化することなど、「語順」について分析する際に、考慮すべき点がいくつかあります。)

 

 

 

英語の学習者がつまずきやすいのが、「後置修飾」です。

慣れるまではかなり混乱したという人も多いと思います。

 

英語学習者は、最初に、形容詞の「前置修飾」から習うことになるので、これが刷り込まれてしまって、「後置修飾」の理解に手間取ってしまいます。

 

しかし、ここまで見てきたとおり、英語にとって「自然」なのは「後置修飾」です。

「後置修飾」が本来の「語順」で、形容詞の修飾の方が「例外」なのです。

 

英語は、「後置修飾」を基準にして考えると、わかりやすくなると思います。

 

 

 

(ところで、実は、「SVO言語」であるにもかかわらず、「前置修飾」の言語があります。それは、中国語です。「漢文」を見ればわかりますね。中国語の「語順」はちょっと「やっかい」です。中国語の「語順」については、機会があれば。)

 

 

 (ivy 松村)

 

英語の語順の話③

英語は、「語順」が定められている言語です。

そのために、「語順整序」のような問題形式があり得ます。

 

一方、日本語は、厳密な「語順」が定められていません。

「助詞」の働きによって「文の成分」が表示されるために、文中のどの位置に「語」を配置しても文意を損なうことはありません。

そのために、自由な語順操作が可能となります。

 

ふたつの言語は、非常に対照的です。

 

しかし、実は、古い英語は、日本語のように「語」を並べ替えることができるタイプの言語でした。これは、意外に知られていません。

 

 

日本語と同じように、語順操作が可能な言語のひとつにドイツ語がありますが、英語の元になったのは、ドイツ語の方言なのです。

 

「古英語」(Old English)は、現在のドイツ語と同じように、語順操作が可能な言語でした。

 

 

 

5世紀ごろに、現在のドイツに住んでいた「ゲルマン人」の、大規模なイギリス移住が起こりました。彼らの話していた言語が英語の「母体」となったのです。

 

 

 

ところで、公立中学では、ほぼ例外なく音楽の時間にシューベルトの「魔王」を学習します。

その中で、いくつかのドイツ語に触れる機会があります。

そこに出てくるドイツ語の単語が、英語に非常によく似ていることに気づいた人もいると思います。

 

 

ドイツ語 英語
私の~ mein(マイン) my(マイ)
息子 Sohn(ゾーン) son(サン)
Varter(ファーター) father(ファーザー)
子供 Kind(キント) kid(キッド)

 

 

 

英語とドイツ語は、もともと「祖先」が同じ言語です。

 

しかし、現在の英語とドイツ語には、非常に大きな相違があるわけです。

それは、英語は「語順」が固定されているのに対し、ドイツは「語順」を操作できるという点です。

 

 

 

次のドイツ語の文を見てみましょう。

 

「Mein Vater liest das Buch.」

 

これは、英語の「My father reads the book.」という文に対応しています。

 

「Mein Vater」=「私の父」

「liest」=「(彼は)読む」

「das Buch」=「その本を」

 

 

(ドイツ語で本のことを「Buch」(ブーフ)と言いますが、英語の「book」と対応していることがわかりますね。)

 

 

さて、英語は、当然のことながら「My father reads the book.」以外の「語順」で語を配置することができないわけです。

「主語・動詞・目的語」の「語順」は「絶対」です。

 

ところが、ドイツ語は、以下のような「語順」で「語」を並べ替えることが許されているのです。

 

 

「Das Buch liest mein Vater.」(その本を、父は読む。)

 

 

「目的語」である「das Buch」が、動詞の前に配置されています。

英語の文法では、その位置は「主語」が置かれなければなりませんが、ドイツ語の場合には、「目的語」や副詞などの「修飾要素」を置くこともできます。「語」の自由な配置が許されているわけです。

(ただし、「動詞」は「第二番目」の位置に置くことが定められています。)

 

 

 

上記のドイツ語と「同じ語順」で英語を並べてみると:

 

 

?「The book reads my father.」(?その本は私の父を読む。)

 

 

まったく「意味不明」の文が出来上がります。

 

 

 

では、なぜ、ドイツ語は英語とは違って、語順操作が可能なのでしょうか。

 

その理由は冠詞と代名詞にあります。

 

「Das Buch liest mein Vater.」という文には、「das」という冠詞(英語の「the」に相当する)と「mein」(英語の「my」に相当する)という代名詞が現れています。

 

実は、これらの語が「主語」や「目的語」を示すように「変化」しているのです。

 

(実際には、少しまぎらわしい部分もあるのですが、)「mein Vater」は必ず「主語」であることを表し、そして「das Buch」は、「目的語」であると理解されるのです。

 

ですから、この2つの「要素」を入れかえても、文意を混同することはあり得ないわけです。

 

 

 

ドイツ語は、「主語」や「目的語」を示すのに、「単語を変化させる」タイプの言語なのです。

 

 

 

まとめてみましょう。

 

 

・「英語」…「主語」や「目的語」を示すのは「語順」

・「日本語」…「主語」や「目的語」を示すのは「助詞」

・「ドイツ語」…「主語」や「目的語」を示すのは「単語の変化」

 

 

 

さて、英語はもともとドイツ語と同じように、語順操作が可能な言語だったという話でした。

 

現代の英語は、古い時代の英語とは「全く別物」となっているのです。

 

かつての英語は、ドイツ語によく似た文法を有し、自由に語を配置することができるタイプの言語でした。

しかし、数百年ほどの間に、英語は急激な変化を遂げ、現在の形になります。

おそらく英語は、地球上のあらゆる言語の中で、ほんの数世紀という短期間に、最も大きく変貌した言語です。

 

 

 

ところで、伝統的な言語学では、言語を3つの類型に分類します。

それは、「言語類型論」と呼ばれます。

一般的には、以下のような分類であると理解されています。

 

 

・「屈折語」…単語が「変化」する(ロシア語・ドイツ語など)

・「膠着語」…単語に付属する「機能語」(つまり「助詞」)がある(日本語・トルコ語など)

・「孤立語」…「単語の変化」や「単語に付属する語」がない(中国語・ベトナム語など)

 

 

実は、言語学の専門家のなかにも、「言語類型論」の本質を見誤っている人がいます。

 

「言語類型論」は、実は、「格」の表示方法によって言語を分類するものなのです。

 

「格」とは、簡単にいえば、「文中での名詞の働き」のことをいいます。もう少しわかりやすくいえば、「主語」や「目的語」といった「役割」のことです。

つまり、「主語」や「目的語」の表しかたによって、言語を分類するわけです。

 

 

したがって、それぞれの言語の「類型」は、以下のような「説明」が、より的を射ています。

 

 

・「屈折語」…単語を変化させて「格」を表示する

・「膠着語」…「機能語」を付属させることによって「格」を表示する

・「孤立語」…「語順」によって、「格」を表示する

 

 

この分類に従えば、現代英語は「孤立語」の特性を持った言語であるということがわかります。

英語は、「屈折語」から「孤立語」へと、その性質を根本から変えてしまった言語なのです。

 

 

「屈折語」であるドイツ語や「膠着語」である日本語は、「主語」や「目的語」を顕在的に示すことができるので、語順操作が可能になります。

 

一方、「孤立語」である英語は、「語順」によってのみ、「格」の表示が可能となります。

 

ですから、「The book reads my father.」という文も、理性的に考えて「私の父はその本を読む。」と言いたいのだな、と頭の片隅では理解していても、その解釈は否定されてしまうわけです。

 

 

「語順」だけが、英語の「格」を決定する「ルール」だからです。

 

 

 (ivy 松村)

 

英語の語順の話②

英語を聞き取るときに、「語順」を意識することが、リスニング上達のポイントです。

 

 

ある英語のセンテンスが、「ミ・シスタ・サー・ラ・キャッティン・ラ・パーケェスタディ」と聞こえたとします。

 

 

まず、最初の「ミ」ですが、その後ろの「シスタ」が「sister」であることがわかるので、その前に置かれるはずの語を「推測」します。

 

「名詞」の直前に置かれる語は、形容詞や冠詞、代名詞などがあります。

「ミ」と聞こえるわけですから、それは「m」という子音をもつ1音節か2音節の語であると考えることができます。

 

そうすると、「my sister…」という「意味のかたまり」が浮かび上がってきます。

 

 

「ミ」という「音」から判断するのではなくて、「シスタ」を含め、文を構成する語との「関連」で捉えるわけです。

「ミ」と発音された瞬間に「その語」の意味が特定されるのではなく、文全体の構成が明らかになるにつれて、「その語」が輪郭をあらわすイメージです。

 

 

「my sister」の次に「サー」と聞こえる語が続きます。

 

文頭にある「my sister」は、名詞の「かたまり」ですから、これが「主語」であると推測することができます。すると、「サー」は動詞であると考えることができます。

 

今度は、「s」という子音を持つ1音節か2音節の動詞を類推します。

 

「see」や「sell」「sit」「set」「say」…などが候補となります。

 

しかし、「主語」は「my sister」です。

その動詞が現在形なのだとすれば、「s」が付けられることになります。

 

「sees」「sells」「sits」「sets」「says」…。

 

そうなると、これらの語は「サー」と聞こえるはずがありません。

 

当然、進行形や完了形、未来形であるはずがないので、「サー」と聞こえる語は過去形であるということになります。

 

「saw」「sold」「sat」「set」「said」…。

 

「sold」は除外されます。「sat」「set」「said」には破裂音が現れます。「ッ」という「つまる音」(促音)です。

 

よって、「サー」と聞こえる動詞は「saw」(ソウ)しかありえません。リスニングの経験を積んで、「サー」と聞こえる「音」と「saw」という語が脳内で常に連結されるようになれば、自然に意味を感知できるようになります。

 

 

同じように、「saw」の後ろには「目的語」が置かれるはずだということが推測てきます。

つまり、名詞か名詞句が並べられるはずです。

したがって、「ラ」と聞こえる「弱い音」が、「the」なのだと特定できるわけです。

 

「キャッティン」と聞こえる部分の後ろにも「ラ」と聞こえる「the」があります。

そうすると、さらにその後ろにある「パーケェスタディ」も、名詞を含む語の「かたまり」であるということになります。

 

 

「パーケェスタディ」は、「音の連結」によって語が「つながって」います。

後半部分が「yesterday」であるとわかれば、前半の「パーケ」と聞こえる部分の語末は「k」の「音」であると思いつくことができるでしょう。

すると、これらの語の「かたまり」は「the park yesterday」となることがわかります。

 

 

「the park」という名詞の前には、前置詞が配置されるはずです。

 

したがって、「パーケェスタディ」の前に置かれている「キャッティン」と聞こえる語のつながりは、前半が名詞、後半が前置詞であるということになります。

 

これが「cat in」であると特定できれば、文全体が浮かび上がってきます。

 

 

「ミ・シスタ・サー・ラ・キャッティン・ラ・パーケェスタディ」

 

→「My sister saw the cat in the park yesterday.」となるわけです。

 

 

 

もちろん、全ての英語話者が、毎時このような「パズル」を解きながらコミュニケーションしているというわけではありません。

 

耳が慣れてくると、もっと直接的に、発音された英語の文の意味を把握することができるでしょう。

 

 

 

耳が慣れてくるまでは、「考えながら聞く」ことがとても重要です。

 

英語の聴き取りは、「音」だけを頼りにして語を特定しようとしても、なかなかうまくいきません。

短期間で英語のリスニングの力を向上させていこうとすれば、「語順」を意識しながら練習したり、訓練したりすることが必要です。

 

 

(ivy 松村)

 

 

英語の語順の話①

英語のテストで出題される典型的な問題形式に「語順整序」があります。

いわゆる「並べ替え問題」です。

 

英語の基本語順は:

 

 

「主語」→「動詞」→「目的語」→「場所・時間」

 

 

になります。

 

このうち、「場所・時間」は、強調したいときなどに文頭に置くことができます。

つまり、「倒置」が可能です。

 

しかし、「主語」→「動詞」→「目的語」の語順を動かすことはできません。

語順を変えてしまうと、文意が変わってしまうからです。

 

 

 

例を見ながら考えてみましょう。

 

My sister saw the cat in the park yesterday.

(私の妹は昨日公園でその猫を見た。)

 

この文は、以下のような「倒置」をすることが可能です。

 

In the park my sister saw the cat yesterday.

(公園で私の妹は昨日その猫を見た。)

 

Yesterday my sister saw the cat in the park.

(昨日私の妹は公園でその猫を見た。)

 

 

「時間・場所」などの修飾要素は文頭に置くことができます。

ですから「語順整序」の問題で、答えを「一通り」にするために、文頭や文末が指定されることがあります。

 

 

 

しかし、以下のような語順操作は許容されていません。

「内容」が変わってしまうからです。

 

 

* The cat saw my sister…

(その猫は私の妹を見た・・・)

 

 

元の文の主語は「my sister」ですが、その位置に目的語である「the cat」を入れてしまうと、「the cat」が「主語」であるとみなされてしまいます。

 

英語は、「主語→動詞→目的語」の語順が固定されている言語です。

 

 

 

一方、日本語は、英語よりも「倒置」の許容範囲が広くなっています。

以下のような語順操作が可能です。

 

 

「私の妹は/その猫を/見た。」

 

→「その猫を/私の妹は/見た。」

 

 

日本語は、文末に述語(動詞)を置くというルールがあるのみで、語順を自由に操作できます。

 

以下のすべての文が許容されます。

 

 

「私の妹は昨日公園でその猫を見た。」

「私の妹は昨日その猫を公園で見た。」

 

「私の妹は公園で昨日その猫を見た。」

「私の妹は公園でその猫を昨日見た。」

 

「私の妹はその猫を昨日公園で見た。」

「私の妹はその猫を公園で昨日見た。」

 

「昨日私の妹は公園でその猫を見た。」

「昨日私の妹はその猫を公園で見た。」

 

「昨日公園で私の妹はその猫を見た。」

「昨日公園でその猫を私の妹は見た。」

 

「昨日その猫を公園で私の妹は見た。」

「昨日その猫を私の妹は公園で見た。」

 

「公園で昨日私の妹はその猫を見た。」

「公園で昨日その猫を私の妹は見た。」

 

「公園で私の妹は昨日その猫を見た。」

「公園で私の妹はその猫を昨日見た。」

 

「公園でその猫を私の妹は昨日見た。」

「公園でその猫を昨日私の妹は見た。」

 

「その猫を昨日公園で私の妹は見た。」

「その猫を昨日私の妹は公園で見た。」

 

「その猫を公園で私の妹は昨日見た。」

「その猫を公園で昨日私の妹は見た。」

 

「その猫を私の妹は昨日公園で見た。」

「その猫を私の妹は公園で昨日見た。」

 

 

 

実際には、述語(動詞)を「倒置」することさえ可能です。

語順操作をしても、文意を損なうことはないからです。

 

 

「見た、私の妹は昨日公園でその猫を。」

「私の妹は見た、昨日その猫を公園で。」

「その猫を私の妹は見た、公園で昨日。」

「公園で見た、昨日その猫を私の妹は。」

「昨日その猫を見た、公園で私の妹は。」

 

 

つまり、厳密には、日本語は、ほぼ全ての「要素」を自由に並べ替えることができるのです。

ですから、「日本語の試験」では「語順整序」の設問が成立しません。

 

 

 

なぜ、日本語にそのような自由な「かき混ぜ」が可能なのかといえば、それは日本語に「助詞」があるからです。

 

「私の妹はその猫を見た。」という文の「主語」は「私の妹は」です。

 

(正確には、「私の妹は」は連文節なので、国文法の説明では「主部」になります。)

 

「私の妹は」という語が、「主語」であると認識されるのは「は」という「助詞」が付属しているからです。そのために、文中のどの位置にあっても、この語は「主語」であると見なされるのです。

 

同様に、「その猫を」が「目的語」であると認識されるのは、「を」という「助詞」の働きによるものです。その機能によって、やはり、文中のどの位置にも置くことができるのです。

 

(国文法では、この語は「連用修飾部」であると説明されます。)

 

 

 

英語は、「位置」によって「主語」と「目的語」を認識します。

 

「my sister」が動詞の前に置かれれば、「my sister」が「主語」になり、「the cat」が動詞の前に置かれれば、「the cat」が「主語」になるのです。

 

 

 

日本語は、文の意味を構成するのに「助詞」に依存する言語です。

 

一方、英語は、文の意味を構成するのに「語順」に依存する言語です。

 

 

 

英語を学習するときには、常に「語順」を意識してください。

 

「語順」が言葉の意味を確定するのですから、英語を読み取ろうとするときには、「語順」を踏まえて考えなければならないのです。

 

 

「語順整序」の問題だけについて述べているのではありません。

当たり前のことですが、英語を読解する際に、常に「語順」を分析する必要があるわけです。

 

 

そして、これは本当に重要な指摘になりますが、実は、リスニングが上達するためには、「語順」を意識しながら聞き取らなければならないのです。

 

 

私たちは、リスニングの際に、つい「音」をクリアに聞き取ろうとしてしまいます。

それは、私たちが日本語話者であることと関係しています。

 

日本語を聞き取るとき、私たちは「助詞」によって意味を把握します。

そのために、私たちは、単語に付属している「助詞」が「が」なのか、それとも「を」なのか、あるいは「に」なのか「の」なのか……集中して聞いているのです。

日本語話者には、「音」を頼りにして「発話内容」を理解しようとする習性があるのです。

 

同じようなアプローチで「英語を聞き取ろう」としても、なかなかうまくいきません。

なぜかといえば、英語話者は、日本人に比べて「音」への意識が希薄なので、非常に散漫な「発音」をするからです。

 

(一応念のためにいっておきますが、私は、英語話者が「いいかげん」であるといっているのではありません。それぞれの言語の「相対的な特徴」についての話をしているのです。)

 

 

英語話者にとって重要なのは「音」に加えて「語順」なのです。

彼らは、私たちがルーズだと感じてしまうような「発音」の意味を理解できます。

それは、文の中で、ある「位置」を占拠するべき語がどのようなものなのか、推測しながら聞き取っているからです。

 

「リスニング」といっても、英語話者は、「音」だけを判断材料にして「内容」を飲み込んでいるのではありません。

「語順」という「フレーム」を前提として発話し、また、聞き取っているのです。

 

 

 (ivy 松村)