私立高特進クラス(高校受験考察④)

石原都政下での都立高校改革や、高校無償化の追い風を受けて、都立上位高校は、進学校としての地位と機能を有するようになりました。つまり、「ブランド校」化したのです。

近年では、高校受験の中心の地位を築いています。

 

一方、一部の私立校は、生徒の「囲い込み」を行い、大学受験に向けた「指導体制」を整えようと、一貫校への再編を加速させました。そのために、中学受験に特化する方向へ動きました。

 

 

こうして、お互いの「棲み分け」が固まりつつあります。

 

しかし、この流れについていけない私立高校がやがて出てくるでしょう。

 

 

 

中等教育課程には、3本の太いレールが敷かれつつあります。

 

・大学まで「エスカレーター」の私立名門大学の附属校

・6年間の中高一貫校

・3年間の中学校+3年間の高等学校

 

このいずれかのレールの中心にいなければ、衰退を免れることはできません。

 

 

 

現代の教育行政・制度・産業・・・は、「少子化」への対応という究極的な「命題」を突きつけられています。

 

生徒募集は、私立の学校(や塾)にとっては死活に直結する問題です。

経営のためには、学校側が要求する学力に届いていない生徒を入学させることも必要になってきます。

 

 

中学受験は、特に中位・中堅校以下で易化しています。

それは、中学受験の間口が広がった後に、景気の悪化によって志願者が減少し、競争が緩和されたことが要因として挙げられます。

 

2000年の後半くらいまでは空前の中受ブームと呼べるほど、首都圏では中学受験者数が増加しましたが、リーマンショック以降、急激に「中学受験人口」は減少しているというデータがあります。

 

実際に、数年前までは5・6年生でしっかり受験勉強しなければ入ることができないレベルだった中学に、受験勉強をほとんどしていないで合格した生徒を何人も知っています。

 

「私立に行きたい!」と思ったら、取りあえず受験してみれば、それなりに名の知れた中学に合格できるという状況になってきています。

 

 

少子化が進行する中で、学力上位層は都立高校に流れ、私立志向の生徒は上位層だけでなく、中堅層・下位層までが中学受験に奪われているということになります。

 

つまり、私立高校のニーズが下落しているのです。

 

 

そのあおりを受けて、急速に私立高校の二極化が進んでいます。

 

もちろん、これまでにも、「エリート校」、「ブランド校」と呼ばれる高校が人気を集める一方で、「底辺校」、「低ランク校」などと呼ばれる高校がありました。「あまり評判の良くない高校」というのはどの地域にも存在していましたが、そうした高校は、地域の中で社会的な役割を担ってきました。

 

しかし、これからの少子化の時代において、評価の低い高校の意味合いは大きく違ってきます。淘汰される対象となるのです。

世の中に子供があふれていて、待っていれば受験に来てくれる時代は終わってしまったのです。

 

「底辺校」は淘汰され、中堅校は「底辺」へと移行させられていくのです。

 

 

 

多くの中堅校が、「進学校」に変身しようと努力をはじめています。

 

最も大きな流れは、『特進』の設置です。

選抜された少人数の「特別クラス」や「選抜クラス」を鍛えて大学合格実績を積み上げ、高校の地位やブランド力を高めようという戦略です。

 

予備校の衛星授業を取り入れたり、予備校の講師を招聘して授業を行ったりしている高校もあるそうです。

 

 

大学への進学を考えている生徒にとって、こうした『特進』は、都立高校進学の代替校、あるいは併願校としてとして考慮の対象となりはじめています。

都立のトップ校と、こうした新興の『特進』の高校を併願する受験生もかなりいると聞きます。

 

塾の教師としては、「偏差値ランキング」などで、実感以上の上位にランクされているのを見ると、感嘆よりも先に、不思議な気持ちになります。

「いろいろ頑張っていらっしゃるのだろうな」と思ってしまいます。

 

 

伝聞ながら、ちょっと気になる情報がありました。ある高校の『特進』は、「指定校推薦」が受けられないのだそうです。

 

それを聞いたときは、なるほど、と思いました。しっかり大学受験指導を受けた『特進』の生徒たちには「実戦」で成果をあげてもらい、それにプラスして、『普通』のクラスに指定校推薦を出せば、合格実績を底上げできるというわけです。

 

あり得る話だな、と思いました。

 

 

 

大学附属高ではない私立高校のいくつかは、「単独」の3年間の高校として、大学受験指導という機能を先鋭化することで、ブランド価値を高め、生き残ろうとしています。

そのために、『特進』という「売り」を作り出し、生徒を集めています。

 

かつて、学力上位層の受け皿となった私立進学高が高校募集をしなくなりつつある今、『特進』という波が、都立トップ校を蹴ってでも行きたいと思えるほどの魅力ある選択肢になってくれば、受験生にとっても本当に意義のあることだと思います。

 

 

 

 

ちなみに、大学の名前を冠していても、「上の大学」への進学率があまり高くない高校があります。こうしたいくつかの高校は、どちらかといえば「進学校」として運営されています。

 

 

例:ICU(3割ほどがICUに進学)、帝京大学高校、日大二高、国学院久我山、拓大一高、桜美林、東京電機、など

 

このうち、「単独」の高校は、ICUと拓大一高です。

 

 

(ivy 松村)

「一貫校」への高校進学(高校受験考察③)

学校教育の段階を分類すると、

 

・初等教育…(小学校)

・中等養育…(中学校・高等学校)

・高等教育…(大学、短大、専門学校など)

 

という3分類になります。

 

勘違いしやすいのですが、「高等学校」は「高等教育機関」ではありません。

 

「高等学校」という名称と、その役割がくいちがっているのは、第二次世界大戦後、学校制度の改革があったためです。

現在の学校制度が整えられる前は、「高等学校」は大学に直結する「予備門」のような位置づけで、その名のとおり「高等教育機関」だったのです。

 

現在の高等学校は、「後期中等教育」を担う教育段階という位置づけになります。

 

 

現在の日本の公教育の制度の下では、中等教育は前期(中学)と後期(高校)で分断されています。

前期にあたる中学までが義務教育期間であり、後期にあたる高校は、入試という「選抜制度」を経て振り分けられるシステムになっています。

 

 

その一方で、私立(国立)の学校では、中等教育課程を一体化した「一貫校」が存在します。

 

さらに近年では、「完全一貫校」へ移行したり、中学校を併設したりして、一貫校としての機能を拡張・強化する私立の学校が増えてきました。

また、公立一貫校が続々と誕生しました。

 

「完全一貫校」のいくつかの学校は、「中等教育学校」という名称を使用していますね。

(制度上は「中等教育学校」と「中高一貫校」は違うものですが、実質上の違いはないといっていいと思います。)

 

ある意味で、ゆるやかな教育の「複線化」が顕在化しつつあるといえるのかもしれません。

 

中等教育課程には2つのルートが存在することになります。

 

・中学校3年間+高校3年間――というルート

・中高一貫校6年間――というルート

 

 

 

問題は、「高校受験」です。

 

高校受験は、後期中等教育課程を選択する(あるいは選抜される)機会であるということになります。

 

一般的な認識では、中学を卒業すれば、高校に入学し、新しい区切りがスタートすることになります。

 

次の3年間を通うことになる学校を探すわけです。

公立中学を卒業する中学生にとっては、「高校からの生徒を募集する一貫校」もその対象のひとつとなります。(受験生の側からみれば、こうした高校は「中学併設型高校」ということになります。)

 

 

高校の募集は、一貫校側からすると、「6年制」の教育課程のうちの後半の3年間を、「外部」に開放しているという意味合いを持ちます。

 

この場合、中学から進学してくる「内部進学生」と、高校受験に合格し入学してくる「外部生」とが合わされることになりますが、当然、「内進生」が主体として位置付けられることになります。

形の上では「高校入学」ですが、構造的には、一貫校に途中から「編入する」という意味を持つことになります。

 

このような高校を選択する場合、注意しなければならないことがあります。

 

よく話のネタになるのは、「内進生」の結束や仲間意識が強すぎて、「外部生」の肩身が狭い…というような、学校生活面での不都合ですが、もっと本質的な問題を考えなければなりません。

 

 

「内進生」と「外部生」の学力差が大きすぎて、同じ内容の授業を行うことができないのです。

 

中学を併設している進学校――特に難関国立大学への合格実績が高い学校――は、公立中学よりもハイレベルな授業を行っています。

「内進生」は、中学受験時に密度の高い勉強を経験したうえで入学しています。その知識や思考力を下地としたカリキュラムのもとに中学3年間の学習を行って、それから高校に「上がって」くるのです。

 

そのため、多くの場合、「内部進学生」と「外部受験生」の合流がうまくいきません。私立の進学校の場合、1年次は「内進生」と「外部生」を「合流させない」で別立ての授業をする学校がほとんどです。

その後、「内進生」と「外部生」を2年次で混合するところ、3年次で混合するところもありますが、混合しないところもあります。

 

混合しない高校では、お互いに交流がほとんどないような高校もあります。

この場合には、「高校に入学する」というよりも、「おじゃまする」という印象になってしまうことがあります。

 

別立てのクラス編成も含めて、「外部生」は、「内進生」に比べて、さまざまな面でデメリットを感じることがあるようです。

 

その学校が、大学進学実績も高く、さらに、校風や設備の面で非常に魅力を感じたとしても、実際に入学するかどうかは、こういった指導体制も含めて考えた方がよいと思います。

 

 

 

「まともな」進学塾で学習指導を 受けていればまだしも、ちょと微妙な塾に通っていた生徒は苦労すると思います。

一例を上げると、「うちは『都立専門』だから、国語で、古文は教えない」というような塾があるそうです。単純に、古文の知識は、都立入試に有利になることを理解していないのが「残念すぎる」だけでなく(どうして有利になるかわからない講師はアホだと思います)、私立入試を考えていないという態度が無責任極まりなく、悪質です。

まして、私立難関高の合格実績を自慢しているような塾がそうであったなら、意味不明どころか、もはや怪談の世界です。

そして、そんな塾に通っていた生徒は、高校でゼロから勉強を始めるわけです。

 

 

 

ちなみに、私立大学附属高の一貫校の場合は、生徒間の学力差は本質的な問題にはなりません。

大学進学への路線が定まっていますから、私立大学附属高校の授業は、大学受験に照準したものにはなっていません。ですから、生徒間の競争や序列化を前提として学習指導を行わなくてもよいのです。

 

「内進生」と「外部生」との間に学力差があっても、クラス編成において、基本的には、そのことを考慮する必要がないのです。

 

 

 

よく、受験勉強を必死にしてきた「外部生」の学力のほうが高い、というようなことをいう人がいますが、その場合、「そういう結果となる相手」と比較していることが多くあります。

一部の優れた「外部生」と、学力テストなどで下位にいる「内進生」と比較することに意味はありません。

 

もちろん、逆に、明らかに「外部生」の学力のほうが高いという学校は、実際にあります。その場合、問題は別のところにあります。

単純に、その学校の指導力に難があるということです。

「外部生」の方が優秀で、「やったー!」となりますか?

まともな感性の人間なら不安になって、そんな高校にはあまり入りたくないと思うのではないでしょうか。

 

 

華々しい大学進学実績に惹かれて入学してみたのはいいが、実際には、手厚く面倒をみてもらえるのは「内進生」だけ、ということも大いにあり得ます。

 

クラス別の進学実績を見てみると、難関大学合格者のほとんどが「内部生」ということも少なくありません。

 

 

 

難関中学の入試問題は、例えば、社会だと、都立高校の入試問題よりもはるかに難しいです。

 

彼らは、高校入試に必要な知識よりももっと深い内容を、「小学生の時点」で学習しています。

 

私は、以前に、多摩地区最難関に位置づけられる中学をめざす小6を指導していた経験があります。

ある生徒が、解いてみたいというので、ある年度の都立高校入試の社会の問題をやらせてみたことがあるのですが、彼は20分もたたないうちに満点の解答を作りました。

 

 

「社会科」に関していえば、「彼ら」は中学入学の時点で、公立中学3年生の知識はほぼすべて習得しています。(一方、特に私立を第一志望にしている中学生は、社会をなおざりにしていることが多いでしょう)

 

さらに、「彼ら」は、中学の3年間でさらに奥深い内容を学習します。

公立中学校が使っているような教科書は使いません。

 

別の、完全一貫校の上位進学校の事例を紹介します。

その学校では、中1から「世界史の内容」を教えています。中1の一学期の定期テストの範囲が「古代ギリシャの社会と文化」でした。中堅高校と同じレベルの学習内容です。

 

おそらく、「中学を卒業する」までには、「大学受験に直結する内容」の3分の1から、半分くらいの知識を得ることになるのではないでしょうか。

 

もちろん、難関中学の授業についていけなくなる生徒も大勢います。

同じ中学内にも学力差があり、中には、「外部生」に負けてしまう生徒もいるはずです。

しかし、実は、最大の焦点は、「学力差」ではありません。

「勉強文化」がまるで違っているということです。

 

 

「一貫校」の方向性は明確です。

中学受験を勝ち抜いて入学してきた能力の高い生徒を6年間鍛えぬいて大学受験に送り出そう、というものです。

高校からの募集枠は「本業」ではありません。高い能力の生徒が入ってくる可能性を残しておくというものです。

 

近年では、優秀な生徒の多くは都立高校に流れていますから、期待できる「外部生」も少なくなっています。

 

名門の一貫校は、基本的に「6年制の学習指導ノウハウ」を洗練させることで大学合格実績を高めてきました。それに加えて、別立てで、3年間で生徒の能力を高める指導を維持しようとすれば、非常に大きなコストがかかります。

 

(もちろん、「内進生」「外部生」ともに熱心に指導を行っている学校もあると思います。もし、そのような学校の情報を得られたら、生徒・保護者の方にもお伝えしていこうと思います。)

 

 

学校が「内進生」と「外部生」との格差は埋めがたいものであるという認識をもったとき、「外部生」への指導は負担となります。

「内進生」に対する指導に集中したほうが、学校運営にとってプラスになると考えた高校は、高校募集を停止するのでしょう。

 

それは誤った方針ではないと思います。そうすることによって、「内進生」への指導が充実します。また、放置される「外部生」という存在をなくすことにもつながるわけですから。

 

 

 

私が述べたいのは、難関私立に通う中学生はすごい、ということではありません。

お伝えしたいのは、「中学併設校」に高校入学するときに、被る可能性があるデメリットについてです。

ただ単に、学校「全体」の情報からは見えてこないことがあります。特に、大学進学実績の数字には注意が必要だと思います。

(同じことは、「特進クラス」を設置している高校にもいえます。)

 

以上のようなことから、難関大学への進学を希望する公立中学校に通う中学3年生が、次の3年間通う高校として選ぶのは、3年間で大学受験に備える指導を行ってくれる「単独」の高校のほうが望ましいということが、改めてわかります。

 

指導ノウハウの蓄積がある高校では、「3年間」で一貫校の生徒に追いつき、追い越す生徒が数多く現れます。

 

(ivy 松村)

 

高校受験の保守的傾向(高校受験考察②)

高校受験は、大学受験や中学受験とは、異質なものであると感じています。

 

実際には、受験産業全体では高校受験のニーズが最も多く、全国にある学習塾も7割が中学生を対象としています。

単純に、公立中学に通う中学生のほとんどが高校へ進学することを希望し、そのための受験指導を必要としています。高校受験は、「受験生」の絶対数が多いのです。

 

一方、中学受験や大学受験は、受験期を迎える世代の一部だけが、その対象となるものです。

 

「多数派」である高校受験が「異質」であるというのは、奇妙な言い回しですが、「高校受験」は、その他の受験と比べて大きく違う要素があるように思います。

 

そのひとつは、「経済性」です。

中学受験や大学受験は、ある意味で、家計における経済的な余裕に支えられています。

 

もうひとつは、「必然性」です。

現代の日本のような、高校進学率が100%近くになる社会では、その進路は、踏み外すことのできない設定のようなものとして捉えられることになります。

つまり、「高校に行かない」という選択や状態は「考えられない」のです。

 

 

 

最近読んだ論文に興味深いことが書かれてありました。

 

日本の高校進学率は、1950年代では40%程度でしたが、1970年代前半には90%を超えます。

 

このような急激な高校進学率上昇について、主流となっている分析は以下のようなものです。

 

・高度経済成長によって所得が増加し、教育への「投資」が活発になった

・社会の分業が進み、社会階層の流動性が高まったことで、学歴への期待値が高まった

・「民主主義」的な教育観が浸透し、高校への進学が、エリートの選別であるという観念が薄められ、一般化した

・上記のような背景をもとに、ベビーブームの世代の進学希望者を収容するために高等学校を増設した

 

 

私が気になったのは、これらとは別の視点からの分析です。

戦後のGHQの教育改革で、「単線系」の学制が敷かれたことが、高校進学率上昇の要因の一つであるとするものです。

(新井 郁男 1982「なぜ塾が増えるか」、小林 弘典 2012「学習塾変遷の歴史と概観」)

 

第二次世界大戦前の教育制度では、小学校を出た後に進む進路が複数ありました。また、(旧制)中学を出た後に進む学校の種類も複数ありました。つまり、旧制度では、次の教育課程に進むルートが一つではない、「複線系」の学制が敷かれていたのです。

 

受験競争が過熱し、そのために塾が乱立するのは戦後になってからですが、これは、小学校→中学校→高校→大学という「単線系」の学制になったことによって、同一の方向に、進路の指針が集中したためだとみることができます。

 

大学までのルートが、簡明に、直接的に、「リアル」に示されたことで、進学に対する意思と期待が大きくなり、それが高校進学率を押し上げる要因となったと考えられるのです。

 

高校に進むことが、大学進学を含めた「将来への投資」と考えられるようになったのです。

 

つまり、将来に向けた準備と、高校進学は同義になっていったのです。

現代の私たちの感覚からすると、それは当たり前のように感じてしまいますが、昔は、「将来のために高校に行かない(行けない)」という選択が普通にありえたのです。

 

今日では、高校進学は、疑いようのないほどに当然のライフコースとなっています。

 

「単線系」の、現代の日本の社会では、知識や技術を習得するにしても、将来に向けて資格を得るにしても、「次の教育課程」に進まなければなりません。

「中卒では…」ということです。

 

 

「将来への投資」という圧力は、高校進学率だけではなく、大学進学率をも押し上げました。

 

やがて、相対的に、高校に進学することは特別視されるものではなくなっていったのです。逆にいえば、高校進学が一般化し、大衆化したともいえます。それは、「高校に行くのが当たり前」という状況を生み出しました。

 

つまり、何の話をしているのかといいますと、現実的に、現代日本のほとんどの中学3年生は、高校進学以外の進路は考えられない、ということです。

 

 

当然、そこには功罪がありますが、考えたいのは、そのことによって、高校受験がどのように規定されることになるのか、ということです。

 

 

高校受験には、「おさえ」が絶対に必要です。これが中学受験や大学受験とは違う性質を作り出していると思います。

 

中学受験には、もし、志望する中学に合格できなければ、公立中学に進学して高校受験で「リベンジする」という道があり得ます。

また。大学受験には、浪人という選択があり得えます。

もちろんそれは不本意なことにちがいありませんが、再チャレンジの道がないわけではありません。

 

ですから、中受や大受では、行きたいと思える学校だけを受けるという選択が、一般的にみられます。積極策を取る受験生も多くいます。

 

しかし、高校受験では、必ずどこかの高校に進学しなければならないという「底」が設定されています。

 

「併願優遇」というような制度が生み出される下地も、そこにあります。

 

 

中受や大受は「学校に入る」ということをまず先に考えます。

それに対して、高校受験は「学校に入れない」ということがないように、組み立てなければなりません。

学力上位層であっても、「おさえ」の確保が最優先となることには変わりありません。

 

その意味で高校受験は保守的な傾向をもっています。そして、悲観論的な見方が強く出ることが多くあります。

 

中受や大受の場合、「ここに入りたい!」と決めて、そのための勉強をしていくという受験生が多いですが、高校受験の場合には、学力に合わせて志望校を決める受験生・ご家庭が多くなります。

 

それはしかたのないことです。というよりも、そうでなければならないのです。

 

「高校受験の保守的傾向」は、個人が持つ価値観によるものであるというよりも、制度や文脈によって高校受験がそう規定されているからなのです。

 

(ivy 松村)

 

「私立安心校」(「都立併願③)

「都立併願」の最大のデメリットは、都立高受験の結果が厳しいものであった場合、自動的に進学先が固定されてしまうことです。

 

これまでにも何度も述べてきましたが、塾教師の目から見て、学校の先生が勧める「併願校」は、受験生の学力に見合ったものでないことがかなり多いのです。

 

見方を変えてみるならば、「都立併願」は、何人かの受験生にとっては、「確約」の見返りに、自分の学力より「ランクの低い高校」に入学する義務を負うというものなのです。

 

 

理想を述べるならば、都立がダメだったときに、進学先として納得のいく、満足できる、愛着の持てる私立高校に入学する権利を得たうえで、都立高校入試に挑むのが望ましいと思います。そのような高校を仮に「私立安心校」と呼ぶことにしましょう。

 

「私立安心校」は、必然的に、「確約なし」の受験になりますから、難しい入試になります。

しかし、「私立安心校」の合格を勝ち取ることができれば、都立入試に向けて弾みにもなりますし、精神的にも余裕をもって都立入試に挑めます。当然、良い結果が出る可能性は高くなりますし、万が一、都立の結果が厳しいものであったときにも、ダメージは最小限にとどめることができます。もしかしたら、かえってよかったという場合もあるのかもしません。

 

都立高校と私立高校では、費用面で大きな差があります。私立高校に入学することになれば、相応の学費を支払うことになるのですが、「私立安心校」に支払うのと「都立併願校」に支払うのとでは、大きな違いがあるように思います。

 

「絶対に都立に受かってほしい」と思うだけで、「私立に入学する可能性」を意識から追いやってしまっていると、「都立に行くのだから、私立は併願で受験すればいい」という発想になってしまいます。

「私立に入学する可能性」を考えれば、少しでも上の私立高校に合格したほうがいいということがわかると思います。

 

 

要は、どこに「リスクをかける」のか、ということだと思います。

 

「都立併願」を選択し、私立入試のリスクを回避した場合は、都立の入試結果によってリスクが生じます。

 

一方、私立入試にリスクをかけて「私立安心校」入学の権利を得ることができれば、都立の入試結果に対するリスクは軽くなります。

 

 

・「都立併願」・・・「ノーリスク」私立入試(「併願校」確保) × 「ハイリスク」都立入試

・「私立安心校」・・・「ハイリスク」私立入試 × 「ローリスク」都立入試(「私立安心校」確保)

 

 

傾向として、中学校の先生は、前者で受験を組み立て、塾の教師は後者で組み立てることが多いと思います。

 

 

しかし、「都立併願」に頼らない受験パターンを組むためには、新たな「リスク」を引き受けなければなりません。

「私立安心校」を受験するために、別の「おさえ」が必要になります。

「併願優遇」がなければ、その「おさえ」も「実力勝負」で取りに行かなければならなくなります。

 

ですから、一般的に、進学塾では、複数の私立高校の受験を提案します。

 

都内の私立高校は、おもに2月10日~2月12日に入試日を設定してありますから、3回の受験が可能です。

また、国立大附属高校を含め、それ以降に受験日を設定している高校もありますので、場合によっては、さらに受験校を増やすことができます。

 

帰結として、

 

・「おさえ」(すべり止め)

・「相応校」(受かっておきたい高校)

・「チャレンジ校」=「私立安心校」

・+都立高校

 

という受験パターンが典型になります。

 

さらに、他県の高校は2月10日以前に受験日が設定されているので、ここで「おさえ」を確保し、「チャレンジ校」の受験を増やすことも考えられます。

 

 

私立の入試結果によって、志願変更を行い、都立の受験校を変更します。

 

「チャレンジ校」合格 → 都立上位校

「相応校」合格 → 都立進学校

「おさえ」合格のみ → 都立進学校 or 都立中堅校

 

 

 

受験校を増やすことで、当然デメリットも生じます。入試対策の面で時間的、労力的に負担感が大きくなってしまいますし、費用の面でも負担が増えてしまいます。

一方、「都立併願」組は、都立受験に集中できるという見方もできます。

 

こうした複数の私立高校の受験を勧める塾の姿勢に、疑念を持たれる受験生や保護者の方もいらっしゃると思います。塾は、合格実績を稼ぐために、多くの高校を受験させようとしているのだと思われてしまうのです。

もちろん、塾によってはそういう意味合いを含めて受験を勧めるところもあると思います。

 

しかし、さまざまな要素を勘案して、「塾の視点」から総合的に「高校受験」全体をデザインしようと考えたとき、上記のような組み立てが、自然と浮かび上がってくるのもまた、事実なのです。

 

 

 

「都立併願」についてまとめてみましょう。

 

「都立併願」のメリット:

 

・「おさえ」の高校を確保できる

・都立高校入試に専念できる

・受験にかかる費用を抑えることができる

 

 

「都立併願」のデメリット:

 

・都立がダメだったときに、思い入れのない高校に進学することになる

・「入試の経験」を積むことができない

・「志願変更」のきっかけがなくなる

 

 

(ivy 松村)

「入試の経験値」(「都立併願」②)

受験生の多くは都立高校を第一志望にしています。そして、都立高校の入試は、当然リスクのある「実力勝負」です。

 

ですから、学校の先生は、万が一都立がダメだったときのために、私立の進学先を「確保」するように動きます。

 

そこで、「都立併願」という、合格を「確約」するかわりに、「しばり」がつけられる受験パターンが示されることになります。

 

この「都立併願」という受験パターンは、学校の先生が得意とする、最も基本的な高校受験の様式です。

 

「都立併願」の受験は、通常は、「おさえ」の私立併願校と「本命」の都立高校の2校のみの受験になります。

 

学校の先生は、用意する調査書を最小限にとどめておきたいと考える方が多いので、極力受験校を減らそうとする傾向があります。

ですから、その意味でも、学校の先生にとっては、このパターンは理想的です。

 

もし、都立に無事合格できれば、言うことはありません。最も効率的で経済的に受験を終えたということになります。

 

 

 

「塾の視点」から都立高校受験を考えたときには、別の受験パターンが典型として浮かび上がってきます。

 

 

「都立併願」は、「入試の経験値」が上がっていかない怖さがあります。

 

このパターンにはめられてしまうと、本番である都立高入試の前までに、1度しか入試を経験できません。しかも、「都立併願校」の入試は、「確約あり」であることを伝えられているので、「真剣勝負」にはならないのです。

 

 

「ガチンコ」勝負の私立入試で結果を出せれば、大きな経験を積むことができるだけでなく、精神的ゆとりと、確かな自信を手にすることができます。

 

「入試の経験値」を積んだうえで都立高校入試を「最終戦」として戦う受験生に比べて、「入試の経験値」の少ない受験生が苦戦する傾向は否めません。

 

そのような観点からみても、実力よりも上の都立高校にチャレンジしたいと思っている受験生には、塾としては、「併願優遇」を勧めたくないのです。

 

 

 

また、「都立併願」の受験パターンを組んでしまうと、都立の「志願変更」の「きっかけ」が失われてしまうというデメリットが生じます。

 

都立高校の入試では、入学願書を提出した後で、一度だけ、願書を取り下げて、受験校を変更することができます。今年度は、取り下げが2月13日、再提出が2月16日になっています。

 

これは、私立高校の入試結果をふまえて都立の受験校を決めなさい、という配慮です。

 

例えば、「私立の上位校に合格したので、都立はさらに上の高校にチャレンジする」といった変更や、「私立で受かっておきたかった高校がダメだったので、都立は、確実に受かる高校に下げよう」といった変更ができるのです。

 

もう少し付け加えるなら、私立入試を経験して、受験生は都立高入試への手応えをつかむことができます。その感触を頼りに、都立の見通しを持つことができます。

 

つまり、都立受験をふまえたうえで私立受験を組んでおけば、私立高校入試の結果を材料として、都立受験を再度組み直すことが可能なのです。

 

一方、「都立併願」組には、そういった志願変更を考え直す「材料」がありません。

 

「都立併願」での受験が決まるのは、12月の三者面談です。そこから、「志願変更」まで2ヶ月間あります。その間に学力が伸びることもあれば、伸び悩むこともあるでしょう。しかし、2ヶ月前に決められた形を崩すことができないのです。

 

過去問演習などの得点が伸び悩んで不安を感じたとしても、思い切って「志願変更」をするだけの明確な理由となりにくいのです。「本番で何とかがんばる」などといって、不安を抱えたままの入試に突入してしまいます。

 

 

「都立併願」という受験パターンは、私立入試を都立入試のために活かすことができないというデメリットがあるのです。

 

(ivy 松村)

 

「塾の視点」(「都立併願」①)

「都立併願」について考えてみたいと思います。

 

 

・「都立に行きたい」→わかります→「私立のおさえはどこでもいい」→理解不能です

 

受からなかったとき、「どこでもいい」私立に進学することになってしまいます。

「絶対都立に受かるから大丈夫!」というような、知性のない精神論は無意味です。

意気込みはもちろん大事なものですが、やる気と結果は別物です。

 

「都立に行きたい」→わかります→「でも、受からないかもしれない」→その可能性はあります→「だから、行きたいと思える私立に合格しておかなくては」

 

このような発想で受験を考えなければならないと思います。

 

 

 

「都立併願」で受験をした場合、都立高入試の結果によっては、「併願校」へ進学することになってしまいます。

 

その高校が、十分に魅力のある学校だと思えるのであれば、問題はありません。しかし、もしも、そうではないのなら、どうして、その高校へ進学する「しばり」を自らに課してしまったのか、という話になってしまいます。

 

 

あまりにも不用意に「都立併願」を選択する受験生が多すぎる、と感じています。

 

第一志望の都立高へ進学したい気持ちを「100」だとしたら、まあ、併願校は「50」ぐらいでしょうか。人によって違うと思いますが、そこには大きな差があるものだと思います。

 

他の可能性を考えてみる必要があります。「都立併願」で受験しなければ、「80」や「90」の私立校を受験することができるのです。

 

もちろん、そこにはリスクがありますが、そういった受験もあるのです。

「別の道」について考えたことはありますか?

 

「50」を確実に手に入れる安全な道と、「90」を求めるいばらの道。

 

どちらを選ぶのかは、その人の置かれている状況や価値観によるものなので、一概にどちらが賢明であるとはいえません。

 

問題は、今の中学生は、強力に「50」の道へと誘導されていて、「別の道」へのルートは、さも危険で異常なもののように伝えられているということです。

 

「都立併願」が当たり前で、一般受験をするのはとんでもないことのように言われたことはありませんか。

 

 

 

もちろん、「都立併願」が悪いわけではありません。この制度を使うことが、本当に有意義になる生徒もたくさんいます。多くの受験生にとっては本当にありがたい制度です。特に、学力が不安定な受験生は、絶対に「併願優遇」で受験するべきです。

 

しかし、学力の高い受験生であればあるほど、この制度は足かせになり、デメリットになるのです。

 

 

「都立併願」のデメリットがあまりにも認知されていないために、毎年、「50」の高校に進学することになってしまう生徒がいます。しかも「90」の高校に合格するだけの力を持っているのに。これは、不条理だとは思いませんか。

 

 

それは学校の先生のせいでもなく、受験生・保護者の方のせいでもありません。はっきりいってしまえば、通っている塾のせいです。

 

学校の先生に任せれば、「都立併願」に固められてしまうことは、わかりきっています。でも、何もしない塾がほとんどです。

(もしかしたら、私立上位校の入試対策を指導できない塾なのかもしれません。)

 

 

学校の三者面談で決まった形を追認するだけの塾が本当に多いです。そんな塾に通っている受験生・保護者は「自衛」しなければなりません。自分で情報を集めて、自分で判断しなければならないのです。

 

このブログの目的のひとつは、1人でも2人でも、そんな受験生を救うことです。そのために、連日何時間もかけて書いています。

 

 

 

学校の先生は、「おさえ」があれば「大丈夫」だから、都立は好きなころを受けてもよい、と言います。

 

しかし、「おさえ」に進学しなければならないという「リスク」も考えるべきだろうと思います。

 

特に、進学指導重点校やハイレベルな争いになる激戦の都立進学校を受験する場合。

一か八かで可能性の低いチャレンジ校を一縷の望みをかけて受験する場合。

そんなリスクのある受験で、どうして、受かることだけを考えることができるでしょうか。

 

「都立併願」のパターンで一番危ないのは、緊張するタイプの生徒が、ギリギリ合格できるかどうかのレベルの都立高校を受けるときです。

 

逆に、図太いタイプの生徒は、あっさり受かってしまうこともあります。結果オーライというやつです。

 

何事にも功罪はありますから、一概にはいえませんが、「第一志望がダメだった」という結果の意味が、受験のパターンによって大きく変わってくるのです。

 

 

「おさえ」があるから「大丈夫」だといって、「都立併願」で受験をして、都立がダメだったとき、本当に「大丈夫」だったね、と思えますか?

 

 

 

これまでの受験指導の経験から、「塾の視点」で受験を見ていない受験生や保護者の方が、けっこうたくさんいらっしゃることがわかってきました。

 

「塾の視点」とは、要するに、戦略的に受験を考えるということです。

きちんとした「まともな」塾は、置かれている状況や条件の中で、よりよい成果を得るために、受験をどうとらえ、どう行動するべきなのかということを常に考えています。

 

「塾の視点」から受験というものを知っていただくことは、受験生・保護者の方にとっても有意義なのではないかと考え、ブログに書かせてもらっています。

 

「家庭の視点」「学校の視点」そして「塾の視点」で受験を見直したときに、受験に「別の道」がみえてくることがあるかもしれません。

 

 

もちろん、大前提として、受験生は、自分の学力、家庭の事情などを考慮して、現実的に、志望校を考えなければなりません。

 

そして、どのようなパターンで受験に挑むのか、その決断をするのは、受験生とご家庭です。

 

誤解のないよう、念のため再度付け加えますが、私は「都立併願」で受験するべきではないといっているのではありません。

私が懸念しているのは、受験の全体像を知らされないで、判断を迫られている受験生・保護者が数多くいらっしゃるのではないかということです。

 

「塾の視点」もふまえて考えた結果、やはり「都立併願」で受験しよう、と決められたのであれば、その受験を、私たちは最大限サポートしていきます。

 

(ivy 松村)

高校受験を見渡す③(私立一般入試と都立高一般入試)

実力勝負となる「確約なし」の一般入試は、「オープン」と呼ばれることがあります。

一発勝負の入試では、「実力勝負」とはいっても、学力どおりの結果がでるとは限りません。

「運も実力のうち」などといいますが、現実に、「番くるわせ」は毎年起こっています。「実力」的には合格するはずのランクの高校であっても安心はできません。

 

そうした、「怖さ」も含めて、受験を考えなければなりません。

 

 

3.「本来の一般入試」 (「確約なし」)

 

①加点あり

②加点なし

 

 

私立の一般入試では、推薦入試受験者に加点を行う高校があります。

内申点の基準を満たしている受験者に対して、加点を行う高校もあります。

 

私立の難関校では、「併願優遇」などの制度がないところがほとんどなので、(加点を含めた)入試の得点で合否が決まります。

 

ひたすら、第一志望の高校の過去問を解いて、万全の準備をして、本番に挑まなければなりません。

 

 

注意しなければならないのは、「併願優遇」制度がある学校を「オープン」で受験する場合です。

「併願優遇」の枠で多くの合格者を出す高校は、相対的に「オープン」の一般受験での合格者の割合が少なくなっています。そのため、「オープン」での受験者の合格ラインが想定よりも高くなり、厳しい入試になることがあります。

 

つまり。「併願優遇」が取れれば、非常に「おいしい」形になるけれども、「オープン」で受けるのは得策ではない高校があるのです。

 

地域によって、「『おさえ』といえばこの高校」というような受験の定番があるものですが、もし、その高校をおされられなかった場合は、その形にとらわれずに、別の受験パターンを考えた方がいいかもしれません。

 

 

Ⅱ.「都立高校一般入試」

 

都立高校

 

 

受験生の多くは都立高校を第一志望に考えています。

都立高校入試は、「高校入試」の中で、最後の受験になります(通常であれば)。

最後の大一番、受験勉強の集大成として、持てる力を最大限に発揮するために、都立高校を受験する受験生は、2月24日にピークを持っていくように準備しなければなりません。

 

そのためには、私立高校の受験を、都立入試に向けてのプロセスとして捉え直す必要があると、私は考えています。

 

つまり、よいコンデションで都立高校の入試を迎えられるように、私立高校の入試を活用するべきであるということです。

 

「都立高校に合格するために」、私立高校の受験をどう組み立てるのか、という視点は、都立高校受験を考えるうえでとても重要であると思います。

 

 

 

原理原則からいえば、義務教育は中学校までで、高校は、「行かせてもらう」ところです。生徒にも、高校に進学できることは恵まれたことであって、感謝しなければならないことなのだと、よく言っています。

 

しかし、時代によって、価値観や標準となることがらは変わってくるものです。現代は、高校に進学することが極めて一般的な時代ですから、そのことに特別な感慨を抱くことはなかなか難しいことだと思います。「行かせてもらえるだけありがたく思え」というような言葉にリアリティーはありません。

 

生徒たちは、むしろ、大変なプレッシャーを背負い、高校受験という「勝負」に駆り立てられているのです。それが、「今」という時代です。

 

 

毎年、私立の「おさえ」なしに、都立高校だけを受験する生徒がいることを話に聞きます。

 

ご家庭の考えもあるので、断定的にコメントすることはできませんが、たとえ、私立に通学させないという方針であっても、どこか、私立高校の入試を経験しておくべきだと思います。

 

それが今の時代の標準であって、周りと同じステップで受験を経験させることは、必ず大きな意味になるはずだと、私は思っています。

 

経済的に大変な家庭もあるとは思いますが、日野市には、受験チャレンジ支援事業というものがあります。

 

都立高校入試の前に、一回、入試を経験するだけで、どれだけ精神的に助かるだろう、と思います。

 

 

 

「入試の経験値」というものがあると、私は感じています。

 

困難や試練を乗り越えるほどに、人間という存在は成長していくものです。

仕事がら、「入試」あるいは「受験」という経験が、生徒をどれだけ成長させるだろうか、ということをよく考えます。

 

これまで多くの受験生をみてきましたが、「入試の経験値」を多く積んだ生徒ほど、精神的に強く、たくましくなり、最後の大一番に最大限の力をぶつけていけるようになっていると思います。

 

都立高校の入試は、「ラスボス」のようなものだといえるかもしれません。

 

 

 

どのように転ぶかわからない「怖さ」というものが、受験にはあります。

 

であるからこそ、自分がやれること、正しいと信じていることはやり切りたい、というのが私の考えです。

(このブログの記事を書くこともその一環です。)

 

 

「入試の経験値」を少しでも多く積むべきであるという持論は、そのような思いから出てきたものです。

 

もちろん、すべての人に当てはまるとは思いません。入試を経験し、その結果によって、慢心してしまったり、ショックを引きずってしまったりする生徒もいるでしょう。

 

そうならないように全力でサポートするのが私たち塾教師の仕事だと思っています。

 

 

 

 

最後に。

いろいろと書かせていただいていますが、別の考えをお持ちの方はたくさんいらっしゃるはずだと思います。当たり前ですが、私の受験に対する考え方が、唯一正しいものではありません。

 

受験生・保護者の方は受験に際して、いろいろと悩まれたり、考えたりされていると思います。もし、参考になれば、という思いで書いております。

 

(ivy 松村)

高校受験を見渡す②(併願優遇)

2.併願優遇

 

①「確約あり」で「しばりあり」(第一志望がダメなら入学義務)

②「確約あり」で「しばりなし」

③「確約なし」(加点あり)で「しばりあり」(合格し、第一志望がダメなら入学義務)

④「確約なし」(加点あり)で「しばりなし」

 

 

私立高校の受験には「併願優遇」という制度があります。この制度が非常にわかりづらいのは、高校によって運用の仕方や中身が違い、場合によって、名称と内容がかけ離れたものになっているからです。

 

「併願」というのは、「併せて出願する」ということで、第一志望以外の高校を受験することを指しています。

 

その意味では、ほとんどの受験生は複数の高校を受験するわけですから、「併願」をしているわけです。しかし、「併願優遇」という制度の念頭にあるのは、「その高校以外に進学することを希望している」受験生に、なんとか入学してもらいたいという、高校側の事情です。

 

逆にいえば、「『おさえ』の高校を確保したうえで第一志望の入試に挑みたい」という受験生のニーズに応える形で生徒を募集しているということにもなります。

 

 

具体的には、「基準」以上の受験生に対して、「第一志望がダメだったらうちに来てください」という「しばり」をつけて、「優遇」措置をとるというものです。

 

この「基準」、「しばり」、「優遇」の内容が各高校で画一ではないのです。それぞれバリエーションがあり、さらに、表面的な内容と、実際の内容に違いがある(裏設定がある)ことがあります。

 

 

 

・「基準」について

 

「基準」は、9科の内申、5科の内申、3科の内申によるものがあり、どれかを満たしていればいい場合と、複数の基準を満たしていなければならない場合があります。

 

さらに、漢検、英検、数検などの検定合格が加味されることがあります。その場合も、学校によって、その点数や加点方法が違います。

 

また、部活動(部長経験)、生徒会活動、特別活動、リーダーとしての実績などが点数として上乗せできる学校もかなりあります。

 

そして、なによりも知っておかなければならないことは、学校によっては、「入試相談」によって、基準を「考慮」してもらえるということです。

 

 

・「優遇」について

 

「優遇」とは、受験に有利になる措置のことです。その内容は2つあります。「加点」と「確約」です。

 

「加点」は、入試で得た得点にさらに「優遇」措置としての得点が加算されるものです。

内申点によって、加点の点数が違っている場合もあります。つまり、内申点40以上で+10点、内申点35以上で+5といように。

 

「確約」は、「よっぽどのことがないかぎり合格できる」と高校側が認めているということです。

通常、「併願優遇」というと「確約」がもらえるということだったのですが、最近は「加点」に切り替える学校も増えてきました。

 

しかしまた複雑なのは、公式には「加点」措置であるという説明になっていても、実際には「確約」を出す高校もあるということです。

 

「入試相談」を通して、高校に聞いてみないと、高校側が「合格できると考えているかどうか」は、わかりません。

 

 

・「しばり」について

 

最も一般的な「しばり」のタイプは、「都立校高がダメだったら、うちに来てください」というものです。これはよく、「都立併願」と呼ばれますが、中学校の先生は、都立第一志望の生徒に対して、ほぼ例外なくこれを勧めます。

 

第一志望が都立ではない受験生には、私立を第一志望とする「併願」を認めている高校もあります。

 

これらは、いずれにしても、「併願優遇」の高校を「第二志望」に設定することを条件としているわけです。

 

「優遇」の内容が「確約」の場合には、「第二志望」の高校の合格が確定しているわけですから、後は、第一志望を受けるだけになります。

この場合には、学校の先生は、2校以外の受験は基本的に認めません。過去に「併願校」以外の入学を強行する「約束破り」があったようです。

 

中には、「自分の学校」を第三志望にしてもよいとしている高校もあります。

 

そして、「しばり」が全くないのに「優遇」措置を取ってくれる高校もあります。入学義務がないので、さらに別の私立高校の受験が可能になります。

 

「確約あり」で「しばりなし」の高校があれば、「おさえ」の受験としては理想的です。

 

高校側は、優秀な生徒に入学してもらいたいと考えているので、内申点などによって、「確約」を出すことがあるのです。

また、ある場合には、ある種の「信頼関係」によって、この形を、高校側が了承してくれることがあります。

 

あるいは、「しばり」なしで、「加点」を行う高校もあります。

 

この場合には、法政大学高校のような、内申によって加点が行われる高校の「オープン入試」とあまり変わらないものになります。

いずれにしても、内申の高い受験生が有利になりますから、成績の良い生徒を集めることができます。

もしかすると、「入試相談」で何か話し合いがあるのかもしれません。

 

 

 

わかりやすく整理してみましょう。

 

「基準」は省きます。

 

①.「確約あり」で「しばりあり」

②.「確約あり」で「しばりなし」

③.「確約なし」で「しばりあり」(加点あり)

④.「確約なし」で「しばりなし」(加点あり)

 

 

①は、最も一般的なもので、典型的な「併願優遇」の形です。

 

②は、受験生にとって最も「おいしい」形です。デメリットがありません。

 

③は、「加点」タイプですが、実は「確約」がもらえるという場合もあります。

 

④は、加点分だけ、入試に有利になるというものです。

 

 

(ivy 松村)

高校受験を見渡す①(推薦入試と単願・専願入試)

高校入試の入試制度のうち、「推薦入試」と「単願」/「専願」についてみてみましょう。

 

 

一.「推薦入試」

 

推薦入試は、合格したときには入学義務が生じます。ですから、原則として「入学を希望する高校」の受験であるということになります。

 

受験をするうえで、推薦入試が戦略的に活用される場合もあります。

都立高校のように、一般入試とは異なった内容・形式の推薦入試を実施している高校の場合には、それぞれの試験に対して相性というものが出てきます。当然、推薦入試のほうが有利になるタイプの生徒もいます。

また、一般的には、内申は高いが得点力が物足りないタイプの生徒は、推薦入試のほうが向いているといえます。

 

そのような観点から、塾の方でも、生徒の個性を考えて、推薦入試を受けてみたらどうかと提案する場合もあります。

 

 

Ⅰ.「都立高校 推薦入試」(合格すれば入学義務)

 

都立高校の推薦入試には出願の基準はありませんが、あまりにも無謀な出願は、学校の先生に許可されないでしょう。

 

Ⅱ.私立高校 推薦入試

 

①「確約あり」(入学義務)

②「確約なし」(合格すれば入学義務)

 

ほぼすべての私立高校では、出願の基準が設けられています。

内申などによる加点措置が設けられている場合もあります。

 

①は「入試相談」を通して出願します。実質上の進路決定になります。

「確約あり」の場合には、学校の先生から、一般受験の出願を見合わせるように指示があるはずです。

 

②は、通常、難関私立高校で行われるものです。その高校を第一志望としていて、かつ、内申などの基準を満たしている受験生は、推薦入試と一般入試、あわせて2度の受験機会を持つことができます。

 

 

高校によっては、推薦入試の結果が不合格であっても、一般入試に向けて大きなメリットが得られる場合があります。

学校によっては、推薦入試の受験者は、一般入試での加点などの優遇措置を受けられます。

 

 

 

二.「一般入試」

 

Ⅰ.「私立高校一般入試」

 

1.単願 / 専願

 

「単願 / 専願」といういい方には、「その高校しか受験しない」「他の高校も受験するが、受かれば、必ずその高校に進学する」というような定義もあるそうですが、内容としては、「その学校だけに進学したい」という意思を明らかにするものです。

推薦入試と同じく、合格したときには入学義務が生じます。ですから、やはり原則として「入学希望の高校」を受験するということになります。

 

多くの高校で、出願に基準が設けられています。

 

①「確約あり」(入学義務)

②「確約なし」(加点などの優遇あり)(合格すれば入学義務)

 

 

①は、「入試相談」を通して出願します。実質上の進路決定になります。

「確約あり」の私立の推薦入試もそうですが、最もスムーズに生徒の進学先を確定させることができるので、学校の先生は、内申点を持った生徒に対して、このパターンを提示することが多いです。

 

②は、合格したときに、必ずその高校に進学するという約束と引き換えに、加点などの優遇措置を受けるものです。

「第一志望優遇」といったような表記の場合も内容はほとんど変わりません。

 

②の体裁となっていても、実質的には「確約」をもらえる場合もあるそうです。

中学校の先生は、リスクを背負った受験をさせることはありませんので、「合格可能性がわからない」場合には、別の「おさえ」の学校を受けるように指示があるはずです。

当然、「おさえ」の学校は、「しばり」がなく、かつ、確実に合格できるところでなくてはなりません。

 

 

 

「推薦入試」、「専願 / 単願」は、合格とともに入学義務が生じます。ですから、入学するのに十分納得がいく高校がその入試制度を行っていて、さらに、出願の基準を満たしている場合に活用するものです。

 

そして、「確約あり」と「確約なし」では意味合いが違うので注意が必要です。

「確約あり」の場合は、成績や(スポーツなどの)能力にによって進路を確定させるもの、「確約なし」の場合は、「第一志望」の受験が「複数回受験」や「加点」といった部分で有利になるというものです。

 

(ivy 松村)

塾が勧める受験をどう考えるか

中学校の先生は、生徒の「学力」に見合わない高校の受験を勧めることがあるので、注意しなければいけないことがあります。

簡単にいえば、「入りやすい高校」の受験を提案するケースが多いということです。

 

 

その理由をまとめてみましょう。

 

・中学校の先生は、受験生の、入試問題への対応力や得点力を確認したり、指導したりする機会を持っていない

・そのために、合格の可能性をシビアに判断できない

・中学校の先生は立場上、生徒の進路、進学に対して保守的にならざるを得ない

・時間的、労力的な制約のなかで職務を行うため、型にはまった対応になりがちになってしまう

・本気で受験を考えているのかを確認するために、厳しい意見を伝えることがある

 

以上のような理由が考えられます。

 

 

学校とは反対に、塾はなるべく高いレベルの学校に挑戦することを推奨することが多いです。

 

 

図式的にとらえると、

 

・学校は「低いランク」の高校を受けさせようとする

・塾は「高いランク」の高校を受けさせようとする

 

という構図になります。

 

 

端的にいって、中学校は公的な教育機関です。一方、塾は、産業的営利組織です。ですから、一般的な感覚からして、中学校の方が信頼できるはずだという考えを、世間の方々が持たれたとしても無理のないことだと思います。

 

特に、何らかの理由によって、通っている塾に不信感を抱いている生徒・保護者の方は、塾の受験指導は、生徒のためではなく、塾の都合によって行われているのではないかと考えがちになってしまわれます。そして、それは、あながち間違っていない場合も多くあります。

 

 

 

ここで、一般に広く信じられている塾の「合格実績主義」について考えてみましょう。

 

塾が、合格者実績を稼ぎ出すために、過度の受験を勧めてくるというものです。

 

そういった塾も、現実に数多く存在しています。

 

実際に、都立高校の推薦に受かった生徒に、何とか早慶の附属高を受験させようとしている塾教師を見たことがあります。あるいは逆に、私立の第一志望に受かった生徒に、都立の受験を勧める塾もありました。

 

そのような姿勢は、合格実績を広告として使いたいという、営利的な目論見によるものです。

または、他塾に負けたくないという、競争意識のあらわれです。

経営的な立場の方が、そのような指示を出したり、自らそのような行動に出たりすることがあるのでしょう。

 

また、営業的な見地からではなく、ある意味で「純粋に」合格実績を収集したいと考える塾教師もいます。

 

塾教師という仕事には「職人的」な側面があります。

合格実績は、自らの技能の高さを数値化したものであり、己の価値を示すものであると捉えられています。つまり、合格実績を伸ばすことは、塾教師にとって、栄誉、誇りを手にすることでもあるのです。

そのために、生徒に難関校の受験を後押しする塾講師がいることも事実です。

 

 

 

どちらにしても、これらは塾側の都合によって受験が扱われているものであって、生徒・保護者の方からすれば、受け入れがたいものであると思います。

 

しかし、塾からの受験校の提案等が、塾の都合によるものなのか、本心から生徒のことを考えてのものなのかは、判別つきがたいことが多いのではないかと思います。

 

ですから、より良い形で受験に臨むためには、先入観や偏見を排除して、どのような選択がベストなのか、という視点から、受験校を考えていただくほうがいいと思います。

(当然、あまりにも、あからさまな場合には、拒否するべきだと思います。)

 

大事なのは、塾の動機ではなく、受験生の進路選択にとって有効であるかどうかです。

 

塾が「高いランク」の高校を勧めてきたとします。もちろん、良くない結果が出るリスクはあります。そして、それは、塾側の都合によって提案されている可能性もあります。

 

しかし、もし、その高校に大きな魅力を感じ、それがリスクを背負ってでも受験しようと思うほどのものであったとしたら、やはり受験したほうがよいのではないでしょうか。

 

当たり前ですが、全く可能性のない受験を勧めるような塾教師はいるはずはありません。

可能性があるからこそ、話に上るものだと思います。

 

 

何やら、他塾を擁護するような内容になってしまいました。結局は私も塾の人間ということなのかもしれません。

(しかし、ここまで書いた後で、ivyは大丈夫ですよ!といっても、白々しいというか、 欺瞞的な感じがしてしまいますね。う~ん、失敗しました。大人しくまな板の上にのって、判断は、生徒・保護者の方にゆだねることにします。)

 

ただ、せめて、受験生や保護者の方に忘れないでいただきたいと思うのは、基本的に塾は、「受験を成功させるために動く」ものであるということです。

 

 

受験校、受験方法、受験パターンの選定はとても精神的に「しんどい」作業です。

生徒本人の希望や性格、高校から先の進路なども考える必要があります。

当然、高校のスクールカラーや校風、学習指導のありかた、進学実績、費用や通学時間なども考慮しなければなりません。部活や制服などを重視する人もいますが、そのときは、もちろん希望に沿って情報を集めます。

また、入試日程、優遇制度、入試傾向との相性なども押さえなければなりません。

 

そして何より、生徒の学力=合格可能性と、リスクを踏まえて、最良の受験の形を導き出そうと、絶えず頭をひねっているのです。

 

私たちは、ただやみくもに、自分たちの利得のみで動いているわけではないことをご理解いただければ幸いです。

 

 

 

(「合格実績主義」に関しては、合格者の「水増し」の問題があります。さまざまな「手口」がありますが、これは詐欺であって、もはや犯罪です。この件に関しては、後日また、書くつもりです。)

 

(ivy 松村)